【はじめに】
この記事では、俳句歳時記にみられる「木の芽~~」という形の春の季語について簡単にまとめていきます。「木の芽時」や「木の芽風」といった言葉は俳句に限らず用いられることがありますので、もしそうした言葉に触れた際に、改めてこの記事を訪れて下さい!
意味が2つに大別されるので、簡単に分けてご紹介していきます。早速見ていきましょう~
一般名詞な季語としての「木の芽」
一般的な樹木に対する植物の季語
「木の芽」は、『きのめ』とか『このめ』とか訓みも一定でないほど古い言葉です。後ほど出てきますが『木の芽張る』が『春』との掛詞で和歌に重宝された時代もあったほどです。
そういった流れを受けて季語が生まれていった経緯もあって、今も歳時記には『木の芽~~』という季語が沢山収録されています。ざっと見ていきましょう。
- 木の芽:木に生え出る芽(「○の芽」と個別の植物名を入れて季語となっているものも多数)
- 木の芽張る:「春」の序詞のように用いて、「春」と「張る」が掛かっている
- 木の芽垣
春の時候(天文)としての季語
そして、俳句歳時記に掲載されていないこともありますが、旧暦2月(現在では太陽暦3月頃)の別名に、「木の芽月」というものがあります。ウィキペディアを引用しましょう。
日本では旧暦2月を如月(きさらぎ、絹更月、衣更月と綴ることもある)と呼び、現在では新暦2月の別名としても用いる。「如月」は中国での二月の異称をそのまま使ったもので、日本の「きさらぎ」という名称とは関係がない。「きさらぎ」という名前の由来には諸説ある。
- 旧暦二月でもまだ寒さが残っているので、衣(きぬ)をさらに着る月であるから「衣更着(きさらぎ)」
- 草木の芽が張り出す月であるから「草木張月(くさきはりづき)」
- 前年の旧暦八月に雁が来て、更に燕が来る頃であるから「来更来(きさらぎ)」
- 陽気が更に来る月であるから「気更来(きさらぎ)」
他に梅見月(うめみつき)、木の芽月(このめつき)等の別名もある。旧暦二月は新暦では3月ごろに当たり、梅の花が咲く時期である。
2月
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
それと呼応するように、時候の季語として幾つも季語が載っています。いずれも清々しく知っていたら思わず使いたくなってしまいそうなものばかりです。なお、由来としてはひょっとすると旧暦2月「仲春」に限定すべきなのかも知れませんが、季語の分類も季節も細かく限定されずに使われています。
- 木の芽時、芽立時
春の初め、様々な木の芽吹く時節のこと- 芽立前
- 木の芽晴
- 木の芽雨
- 木の芽冷え
- 木の芽山
- 木の芽風
木の芽を吹く春風のこと
「山椒」の別名としての「木の芽」
そして、いわゆる抽象的な意味合いでの「木の芽」でなく、『山椒』に限定した用例も結構あります。ウィキペディアにもこんなふうに書かれていました。
植物の季語「山椒の芽」の傍題
サンショウ(山椒、学名:Zanthoxylum piperitum)は、ミカン科・サンショウ属の落葉低木である。別名はハジカミ。
山地の雑木林などに自生し、料理に添えられる若葉は食材として木の芽とも呼ばれる。雄株と雌株が別々であり、春に葉のわきに黄緑色の花を咲かせ、雌株のみ実をつける。葉と雄花、球果に独特な香りを有し、香辛料として使われる。
サンショウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「山椒の芽」を使った生活(料理)の季語
さらに、ウィキペディアには『日本における利用』→『食用』として以下のような具体的な解説もありました。いわゆる『季語』も沢山書かれています。(↓)
利用
古くから若葉や果皮は香辛料として使われており、薬用にも使われる。縄文時代の遺跡から出土した土器からサンショウの果実が発見された例も知られる。材はすりこぎになる。しびれるような辛味成分サンショオールは、食欲増進や胃腸の働きを活発にし、抗菌や殺菌作用もある。日本における利用
雄花は「花山椒」として食用にされ、雌花は若い果実、または完熟した物を利用する。食用
( 同上 )
若芽・若葉(木の芽)
春3 – 5月ごろに出る若葉は「木の芽」と呼ばれ、緑が鮮やかで香りが良いため、焼き物、煮物など料理のあしらいとして添えられ、また吸い口として用いられる。使う直前に手の平に載せ、軽く数度叩いて葉の細胞(油点)を潰すと香りが増す。特に筍との相性が良い。
角川俳句大歳時記などをもとに、ざっくり以下に列挙しておきます。詳しくは調べてみて下さい~
- 木の芽味噌、山椒味噌
山椒の芽を細かく刻むか、すりこぎで潰したものに味噌のほか、みりんなどを加えて作る - 木の芽和、山椒和
山椒の若芽をすりこぎで磨り潰し、調味料と混ぜた「山椒味噌」を旬のもので和えた料理 - 木の芽漬、木の芽煮(きのめだき)
1.山椒の葉と実に昆布を加え、長時間醤油で煮て作る時雨煮
2.
概要:京都市左京区の鞍馬寺門前の名物
由来:一説には、平安時代末期に鞍馬山で修行した牛若丸が食べていたとされる「アケビの蔓、山椒の芽、ヤマブキ等の塩漬」(木の芽漬)から発達したと言われている
関連製品:鞍馬で、木の芽煮を製造している業者は、葉山椒、実山椒、ちりめん山椒、山椒昆布、葉唐がらし、蕗しぐれ等も製造し販売している
(注意)『広辞苑』や古くからの歳時記には、『アケビの若芽』を材料とするものを「木の芽漬」としているものがあり、底本や選者によって指すものが違うことがあるので要注意 - 木の芽田楽
木の芽味噌を豆腐に塗り、火にあぶった料理
コメント