【ウィキペディア俳人列伝】黛執(1930/3/27~2020/10/21)

黛 執(まゆずみ しゅう、1930年〈昭和5年〉3月27日 – 2020年〈令和2年〉10月21日)は、俳人。長女は俳人・黛まどか神奈川県生まれ。明治大学専門部政治経済科卒業。俳人協会顧問、日本文藝家協会会員。

黛執
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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人物・来歴

「春燈」入会まで
1946年、明治大学専門部政治経済科に入学するが、ほとんど大学へは行かず文芸書を乱読。1949年、同学卒業。東京M社に就職するも肺結核と父の借金返済のため退職し、郷里で家業を手伝いながら、鬱積の日々を過ごす。1951年、結核の治癒に伴い、家業(質屋)の継承を決意。この頃、郷里の仲間たちと語らってガリ刷の同人誌「西湘文学」を興す。

登山の楽しさを知ったのもこの頃で、以来二十年以上にわたって北アルプスなどの山々を歩く。俳句との関わりも、この自然との接触が素地にあったからかと思う。その他スキー、ピアノ、ギター、油絵、篆刻などを多くの趣味を持った。

1963年11月、「西湘文学」 のパトロンだったKが急逝、その葬儀の祭壇に掲げられてあった五所平之助(映画作家)の弔句に感動する。五所平之助の手ほどきで初めて俳句を作る。1965年、北浦馨らと「谺句会」を結成、毎月平之助の指導を仰ぐ。1965年4月、五所平之助の勧めで「春燈」入会、安住敦に師事する。

( 同上 )
  • 1978年、兄事する永作火童の強い慫慂で角川俳句賞に初めて応募した「田植前後」五十句が次席入選。毎日新聞で飯田龍太が「大杉の真下を通る帰省かな」を今年度の秀作10句に選出、講評。なお、角川俳句賞には以降も応募を続けたが、5年連続次席という珍記録を残して撒退を決意。
  • 1980年、毎日新聞で飯田龍太が「身の中を日暮が通る西行忌」を今年度の秀作10句に選出、講評。
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  • 2014年、『煤柱』が第48回蛇笏賞最終候補作品に選出される。
  • 2015年、光村図書出版の教科書(小学校6年・2015年版。2015年から2019年まで使用教科書)に「ひとつづつ山暮れてゆく白露かな」が掲載される。
  • 2020年3月、第八句集『春がきて』を角川文化振興財団より刊行。同月、湯河原町幕山梅林公園に「梅ひらく一枝を水にさしのべて」の句碑建立、除幕式開催。
  • 2021年、『俳句』2月号 黛執追悼特集、『俳壇』2月号「追悼・黛執」、『俳句αあるふぁ』春号に岩岡中正の私が選んだ2020年の秀句に「さびしさは散る花よりも残る花」が掲載。『俳句αあるふぁ』増刊号<追悼忘れ得ぬ俳人たち2020>に島崎寛永の「黛執」作品論「風景から世界を捉え直す」と同氏選の20句が掲載される。
    『潮』5月号に中西進が病床吟「音たてて星の流るる故郷かな」他の句を引き追悼文「宇宙の韻き」を寄稿。『春野』2020年10月号から2021年1月号まで、病床で詠んだ俳句が発表される。没後1年数か月にわたって未発表句が結社誌に掲載されることは稀有である。

著書&代表句(からRxの好きな1句ずつ)

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  1. 第一句集『春野 黛執集』(現代俳句選書)東京美術 1981
    振り返つてみたくて上る春の坂
  2. 第二句集『村道』(現代俳句新鋭集)東京美術 1986/1/1
    原爆図中みな手を垂るる西日かな
  3. 第三句集『朴ひらくころ』(今日の俳句叢書)角川書店  1995/8/1
    ひたすらにそよいでゐたり余り苗
  4. 第四句集『野面積 句集』 (新世紀俳句叢書) 本阿弥書店 2003/4/1
    海見えてきし遠足の乱れかな
  5. 第五句集『畦の木 句集』角川マガジンズ 2009/1/1
    ふんはりと峠をのせて春の村
  6. 第六句集『煤柱 句集』(角川俳句叢書 日本の俳人100)角川学芸出版 2013/11/23
    どの家も暖かさうに灯りけり
  7. 第七句集『春の村 句集』KADOKAWA 2016/5/24
    晩年の今かなかなの声の中
  8. 第八句集『春がきて 句集』KADOKAWA 2020/3/27
    春がきて日暮が好きになりにけり

この中でも特に好きなのが、『春の坂』(春野)の句や『遠足』(野面積)の句ですね。今回この記事で触れてきたのは、誰でも情景が浮かぶぐらい平易な言葉遣いなのに、どこかに工夫や新鮮なフレーズがある作品たちです。鑑賞するに適しているのではないかと感じました。

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