【はじめに】
この記事では、気象官署「石廊崎(静岡県南伊豆町石廊崎)」で観測された過去の強烈な揺れをまとめていきます。
気象官署「石廊崎」について
まず静岡県の東側にある「伊豆半島」南端・石廊崎について、日本語版ウィキペディアを引用します。
石廊崎(いろうざき)は、静岡県伊豆半島最南端の賀茂郡南伊豆町にある岬である。荒々しい海岸の景色で観光地になっている。
概要
石廊崎
太平洋に突き出たこの岬より西は駿河湾及び遠州灘、東は相模灘である。また、太平洋とフィリピン海の境界でもあり、相模灘側が太平洋、駿河湾側がフィリピン海である。岬の先端付近には石廊埼灯台、その先には石室神社、最突端には熊野神社の祠(ほこら)がある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
静岡県の「駿河湾」は、西の南端『御前崎』と東の南端『石廊崎』に気象官署があり、どちらも静岡県に多くある震度観測点の一つとして1930年代から震度を観測してきました。
かつては上述の「石廊埼灯台」もある当地には、「石廊崎測候所」があり、2003年の無人化まで有人で気象観測を行っていました。震度観測は、1990年代から全国的に「震度計」での観測に完全移行していきますが、本記事では体感時代の震度と自動計測時代の震度を原則区別せずに説明していきます。
静岡県 伊豆 | 南伊豆町 石廊崎(旧) | 賀茂郡南伊豆町石廊崎石室山546-4 (石廊崎特別地域気象観測所) | 19390601 |
静岡県 伊豆 | 南伊豆町 石廊崎(臨時) | 賀茂郡南伊豆町石廊崎石室山546-4 (石廊崎特別地域気象観測所) | 201312191200 |
静岡県 伊豆 | 南伊豆町 石廊崎 | 賀茂郡南伊豆町石廊崎石室山546-4 (石廊崎特別地域気象観測所) | 201402261200 |
現代の町名などで示すと、「賀茂郡南伊豆町石廊崎石室山546-4(石廊崎特別地域気象観測所)」が、気象官署「石廊崎」のことを表します。ここからは、1939年(昭和14年)以降の「震度」のデータを気象庁の「震度データベース検索」と共に見ていきます。
「石廊崎」の年代別の震度1以上の回数をまとめてみた
早速、気象庁の「震度データベース検索」で、観測データが揃っている1940年代から2010年代まで、10年間ごとの「年代別回数」で集計して出力させた図がこちらとなります。
期間 | 震度1 | 震度2 | 震度3 | 震度4 | 5弱 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
1940年代 | 23 | 6 | 3 | 0 | 0 | 32 |
1950年代 | 7 | 1 | 2 | 1 | 0 | 11 |
1960年代 | 6 | 13 | 1 | 0 | 0 | 20 |
1970年代 | 210 | 44 | 7 | 1 | 1 | 263 |
1980年代 | 68 | 25 | 4 | 0 | 0 | 97 |
1990年代 | 51 | 16 | 2 | 1 | 0 | 70 |
2000年代 | 54 | 14 | 2 | 1 | 0 | 71 |
2010年代 | 35 | 5 | 3 | 1 | 0 | 44 |
合計 | 454 | 124 | 24 | 5 | 1 | 608 |
・地震の発生日時 : 1940/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 南伊豆町石廊崎(旧) もしくは 南伊豆町石廊崎(臨時) もしくは 南伊豆町石廊崎 で 震度1以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数
1960年代までは10~30回台と少なかったのですが、1970年代に入ると約10倍の263回に増加し、その後(2000年代まで)は70~90回台で推移していました。しかし、2010年代には半世紀ぶりの少なさとなる「44回」に減少しています。
また、震度階級別にみると、約80年間の歴史の中で、震度6(烈震)は1回もなく、最高でも震度5(強震)が1回。震度4(中震)も10年に1回あるかどうかということで、半島から突き出た地点としては揺れの回数が思ったよりかなり少ないという印象です。
ちなみに突出して多かった1970年代については、後述するとおり「伊豆半島沖地震」が発生し、観測点が断層の間近だったこともあり、多くの揺れを捉えたことによるものです。
唯一の 震度5(強震):1974年「伊豆半島沖地震」
「石廊崎」の観測史の中で最も強い揺れとなったのが、1974年5月9日に起きた「伊豆半島沖地震」での震度5(強震)です。当時の震度分布がこちらとなります。
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/#19740509083327
最大震度5というと、現代の感覚からするとそこまで大事に感じないかも知れませんが、下の記事でもご紹介しているとおり、当時としては(実質的に)上から2番目の等級に当たり、被害は激烈でした。
概要
伊豆半島沖地震
1974年(昭和49年)5月9日08時33分27秒に発生した。過去に地震被害の記録のない地域で発生した地震であり、震源は北緯34度37分48秒、東経138度46分48秒の石廊崎沖南南西約5kmであった。やや北方の南伊豆町の海岸付近とする説もある。震源の深さは9kmで地震の規模を示すマグニチュードはMj 6.9(Mw 6.4)。
静岡県の石廊崎測候所(賀茂郡南伊豆町)で最大震度5を観測し、死者30名、全壊134棟など大きな被害を出した。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
当時の被害については、百聞は一見にしかずでしょう。気象庁のPDFから写真を2枚ほど引用します。
https://www.data.jma.go.jp/obd/bsdb/data/files/sg_history/22000/1974/22000_1974_2_25_1.pdf
今の我々が考える「震度5」とは明らかに違う激烈な山間地~海岸沿いの被害が生じました。これが、現時点での最大震度となる「震度5(強震)」の唯一の事例です。
震度4:ここ70年間で5回(20年で2~3回程度)
もう1ランク落として、震度4(中震)ではどうでしょうか。下の図となります。いずれも静岡県周辺を震源とするM6以上の地震に限っています。
地震の発生日時 | 震央地名 | 深さ | M | 最大震度 | 「石廊崎」 |
---|---|---|---|---|---|
1956/08/13 01:59:32.4 | 新島・神津島近海 | 3 km | 6.3 | 震度4 | 震度4 |
1974/05/09 08:33:27.7 | 駿河湾 | 9 km | 6.9 | 震度5 | 震度5 |
1978/01/14 12:24:38.6 | 伊豆大島近海 | 0 km | 7.0 | 震度5 | 震度4 |
1990/02/20 15:53:39.8 | 伊豆大島近海 | 6 km | 6.5 | 震度4 | 震度4 |
2009/08/11 05:07:05.7 | 駿河湾 | 23 km | 6.5 | 震度6弱 | 震度4 |
2011/08/01 23:58:11.0 | 駿河湾 | 23 km | 6.2 | 震度5弱 | 震度4 |
・地震の発生日時 : 1939/01/01 00:00 ~ 2021/12/31 23:59
・観測された震度 : 南伊豆町石廊崎(旧) もしくは 南伊豆町石廊崎(臨時) もしくは 南伊豆町石廊崎 で 震度4以上 を観測
・検索結果地震数 : 6 地震 (「地震の発生日時の古い順」で検索)
単純に10年に1回という訳ではないですが、20年に2~3回ぐらいの感覚が近そうです。直近ですと、平成年間で3回(1990・2009・2011年)であり、伊豆半島の東西で起きた地震が要因でした。
一方で、2011年の超巨大地震や、2000年などに起きた伊豆諸島北部の群発地震、或いは伊豆半島でも北部で起きた群発地震などでは「震度4」を観測しておらず、思いの外「強い揺れ」への耐性が弱い…そういった領域なのかも知れません。
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