お天気歳時記「クリスマス寒波」

【はじめに】
この記事ではある意味“冬の季語”みたいなものである『クリスマス寒波』について解説していきます。

「クリスマス寒波」って聞いたけど、具体的にはどんなものを指すの?

という皆さんの疑問に、少し具体的に解説していきたいと思います。早速みていきましょう!

ウィキペディアにみる過去の「12月下旬の寒波」

日本語版ウィキペディアには『クリスマス寒波』という単独項目はありませんが、『寒波』という項目はあります。まずは、概観的なところを抑えた上で、次に過去の事例をみていきたいと思います。

寒波(かんぱ、cold wave)とはその地域の平均的な気温に比べて著しく低温な気塊がのように押し寄せてくる現象のことである。北極周辺の高・中緯度地域に現れやすい。規模の大きいものでは「大寒波」とも呼ばれる。

原理
北極には、極循環によって非常に冷たい空気の塊(北極気団)ができる。この空気の塊は北極を中心として、周囲に膨らんだり縮んだりといった動きを繰り返している。
膨らんだり縮んだりといった動きは寒気の南下・北上を意味し、膨らんだときには「寒気が南下する」あるいは「寒気が放出される」などと表現する。気象学的には「寒気の南下」あるいは「寒気の放出」と解されるものが、いわゆる寒波と呼ばれるものである。

寒波
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

改めて振り返ってみると、紙の辞書などをみても「(極端な)低温」とそれを齎す「寒気」がメインに認識されている印象を受けました。これについて、冬の季語でもある『寒波』を「角川俳句大歳時記」から引用すると、

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この現象は波の押し寄せるように、周期的にやってくることから、「寒波」の名がついた。

『角川俳句大歳時記 冬』(解説:小島健)

とありました。英語で「Cold Wave」との言い方がある様で、地学の勉強からいえば『偏西風の蛇行』によって上空数千メートルに強い寒気が流れ込んでくる……みたいなことを天気予報でも語られる通り一定の周期性が見られることも何となく体感・経験則的にわかりますよね。

そして、ウィキペディア「寒冬」とも合わせて、過去の事例をみていきたいと思います。

昭和以前

  • 1917年12月下旬-1918年1月上旬(低温・大雪)
    西日本を中心に12月としては記録的な寒波(大正7年豪雪)。観測史上最低気温を記録したのは、広島市 -8.6°C。観測史上最大の積雪を記録したのは、福岡市 30cm、彦根町 93cm。
  • 1962年12月下旬-1963年2月初め
    昭和38年1月豪雪は、1962年昭和37年)12月末から1963年昭和38年)2月初めまで、約1か月にわたり北陸地方を中心に東北地方から九州にかけての広い範囲で起こった雪害豪雪)。
    1962年(昭和37年)の12月25日付近を境に、まとまって降り出した雪は翌1963年(昭和38年)1月には本格的な大雪となった。全国的に気温が平年より3℃前後も低い異常低温となり、日本海側では繰り返し日本海寒帯気団収束帯に伴う発達した雪雲に襲われた。
    北陸地方から西の日本海側を中心に、山陽地方の山間部、四国九州などの太平洋側でも歴史的に稀な豪雪となり、戦後の日本のなかでも特に激甚な雪害をもたらした。
  • 1976年12月から1977年2月
    昭和52年豪雪(しょうわ52ねんごうせつ)は、1976年12月から1977年2月にかけて全国的に発生した大雪。全国的な低温と大雪により死傷者や家屋被害が発生した。
    12月の終わりに二つ玉低気圧が通過して、東北地方北海道など北日本で大雪となった。低気圧通過後は強い冬型の気圧配置となり、1月4日まで続いた。東北地方や北陸地方では30cmから多い所では100cmの日降雪量を観測。特に北陸地方は、1945年以来の記録的な低温の下、1976年12月末より長期間異常気象に見舞われ、昭和38年1月豪雪をしのぐ豪雪が北陸全域を襲った。
  • 1980年12月中旬-1981年3月
    五六豪雪(ごうろくごうせつ)は、1980年昭和55年)12月から1981年(昭和56年)3月にかけて、東北地方から北近畿までを襲った記録的豪雪である。
    日本海北部からオホーツク海へ進んだ低気圧が1980年(昭和55年)12月中旬から発達して停滞し、強い冬型の気圧配置が続いた。このため、日本海側の地方で記録的な大雪となった。

平成時代

  • 1995年12月下旬(豪雪)
    三陸沖で低気圧が発達し、本州中部で北北西風が卓越し易い珍しいタイプの冬型気圧配置が続いたため、普段雪の少ない三重県北部に2日間雪雲が流れ込み続け、四日市市で53cmと太平洋側としては稀な記録的大雪となった。伊良湖で12cm、津山市で40cmの積雪を観測。
  • 2003年12月20日(大雪)
    12月としては強い寒波。津山市で観測史上1位タイとなる積雪40cm、日本海から関東山地を隔てた前橋市でも積雪14cmを記録した。
  • 2005年12月中旬(豪雪・低温)
    平成18年豪雪(一八豪雪/〇六豪雪)の中で日本海側以外にも記録的大雪をもたらした寒波。積雪は名古屋市 23cm(58年ぶり)、広島市 17cm(21年ぶり)、高知市 9cm(18年ぶり)。
    当初、気象庁暖冬と予想していたが12月中旬頃から北極振動により日本付近に寒気が流れ込みやすくなった。そのため予想に反して北海道から山陰地方では大雪が続き12月21 – 22日には非常に強い寒気が日本列島に流れ込んで名古屋市で23cmの積雪を記録、積雪が稀な宮崎市でも1cmの積雪を観測し気象庁は暖冬予想を撤回した。12月の月平均気温が戦後最低になった地点が続出し、低温傾向は1月上旬まで続いた。
  • 2010年末〜2011年始(豪雪)
    2010年12月27日には会津若松市で観測史上最深タイの115cmの積雪を記録し、西会津町の国道49号で立ち往生が発生。30日から松江市や福岡市で500hpa気温が過去最低を記録するなどかなり強い上層寒気が西回りで流れ込み、2011年1月1日にかけて九州西部と山陰地方では記録的大雪となった(平成23年豪雪/北陸豪雪/山陰豪雪)。
(出典)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 過去の天気図 > 日々の天気図
  • 2014年12月中旬・2015年1月(豪雪・低温)
    この時期はとても顕著な寒波が多く、12月中旬では非常に気温が低く雪も多くなった。12月1718日は、北海道の東岸を低気圧が猛烈に発達し西高東低の冬型の気圧配置が強まった。
    北海道では大荒れの天候に見舞われ、17日に広島市で8cm、18日に名古屋市で23cmの積雪を観測。特に名古屋市では2005年12月以来9年ぶりの大雪で、統計史上5番目の記録となった。

令和時代

(出典)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 過去の天気図 > 過去の天気図(1日表示)2022年12月24日の天気図

以上の全てが「クリスマス寒波」と呼べる時期ではないのですが、記録に残るような「寒波」や「豪雪」を伴ったことが記載からも窺えます。

ではここから実測値をみていきましょう。過去には、クリスマス付近でどれほど寒く、そして雪が積もったのでしょうか。

過去の観測値にみる「クリスマス寒波」

ここからは、過去の観測値を「気象庁ホームページ」からピックアップしていきます。対象としたのは約半世紀の間に、12月24日前後に『寒波』と呼べるような低温や大雪が観測された事例です。エリア毎に若干の違いはありますが、日本列島全体を覆うようなものをメインに選びましたのでご参考に。

なお、基本的に1地点3行で構成しています。上から「日最高気温」と「日最低気温」の低かった日、そして期間中の積雪深の最大値です。なお、「12月23日以前」や「12月26日」の値なども含んでいるため、厳密な値を知りたい方は、気象庁ホームページの『過去の気象データ検索』で最寄りの観測点をお調べ下さい。

(その他の地域は後日更新予定)

中日本(甲信越・北陸・東海)

ここ半世紀を10年代ごとに区切り、主な「クリスマス寒波」と言えそうな事例をピックアップします。

地点名1973年1984年1995年2005年2010年2022年
甲府5.0℃
-8.3℃
5.3℃
-6.0℃
4.6℃
-2.8℃
6.9℃
-6.8℃
8.0℃
-0.9℃
6.0℃
-4.1℃
長野-1.2℃
-11.0℃
10cm
-2.1℃
-7.5℃
14cm
-1.6℃
-5.8℃
19cm
0.5℃
-10.4℃
35cm
0.7℃
-3.1℃
4cm
0.9℃
-3.9℃
18cm
新潟3.0℃
-1.8℃
5cm
-0.4℃
-3.3℃
35cm
3.1℃
-2.6℃
5cm
5.2℃
-0.2℃
11cm
3.5℃
0.1℃
0cm
6.1℃
0.1℃
31cm
富山0.4℃
-5.5℃
71cm
-0.9℃
-3.7℃
55cm
1.5℃
-2.6℃
11cm
2.3℃
-1.8℃
59cm
2.0℃
-0.8℃
27cm
3.2℃
-1.6℃
21cm
金沢2.0℃
-3.0℃
26cm
2.1℃
-3.4℃
35cm
3.0℃
-1.1℃
1cm
4.9℃
0.5℃
43cm
4.1℃
0.3℃
16cm
3.5℃
-1.9℃
36cm
福井1.2℃
-5.0℃
45cm
2.2℃
-1.5℃
36cm
2.8℃
-0.9℃
2cm
3.5℃
-0.8℃
64cm
3.4℃
-0.1℃
16cm
2.4℃
-1.1℃
20cm
静岡8.2℃
-3.5℃
7.5℃
0.6℃
7.7℃
-0.6℃
 
-2.2℃
7.5℃
2.7℃
7.3℃
1.8℃
高山-2.7℃
-11.6℃
29cm
-4.1℃
-7.6℃
22cm
-3.1℃
-6.0℃
48cm
-1.5℃
-9.9℃
2cm
0.1℃
-5.4℃
35cm
岐阜3.2℃
-4.9℃
 
-0.1℃
-3.5℃
31cm
1.4℃
-1.6℃
8cm
4.6℃
-1.6℃
15cm
3.7℃
-1.1℃
11cm
名古屋3.1℃
-5.7℃
 
1.0℃
-1.4℃
8cm
2.9℃
-1.5℃
1cm
4.5℃
-2.1℃
3cm
4.8℃
-0.9℃
10cm
4.7℃
-0.4℃
0cm
6.4℃
-0.5℃
 
2.3℃
-1.1℃
8cm
7.2℃
-0.3℃
 
5.2℃
0.2℃
 

西日本(近畿~九州)

西日本からは、約半世紀前の「1973年12月24~25日」の『クリスマス寒波』と、阪神・淡路大震災が起きた年の年末、そして2005年と2022年については12月22日の冬至あたりからの値を載せています。

地点名1973年1995年2005年2022年
彦根2.5℃
-2.1℃
30cm
0.8℃
-1.6℃
36cm
4.4℃
-3.9℃
30cm
4.9℃
-0.7℃
 
舞鶴1.6℃
-2.5℃
25cm
1.9℃
-1.2℃
36cm
2.6℃
-2.1℃
53cm
4.6℃
-1.3℃
 
京都3.6℃
-2.1℃
1cm
1.9℃
-1.2℃
14cm
3.4℃
-3.7℃
10cm
4.5℃
-0.4℃
 
大阪4.9℃
-1.4℃
3.5℃
0.5℃
4.1℃
-0.8℃
4.5℃
1.9℃
神戸4.0℃
-1.6℃
3.5℃
-1.0℃
2.6℃
-2.0℃
4.0℃
1.3℃
鳥取3.1℃
-2.9℃
23cm
2.5℃
-0.6℃
10cm
2.1℃
-3.0℃
46cm
3.0℃
-1.8℃
1cm
松江1.4℃
-2.5℃
12cm
2.2℃
-0.2℃
12cm
2.8℃
-3.2℃
13cm
2.2℃
-2.2℃
3cm
岡山4.0℃
-5.6℃
2.9℃
-1.1℃
3.5℃
-2.3℃
3.9℃
-1.6℃
広島3.2℃
-3.5℃
1cm
1.9℃
-0.9℃
4cm
2.7℃
-3.6℃
12cm
1.1℃
-1.8℃
6cm
山口2.3℃
-4.5℃
20cm
1.7℃
-1.9℃
12cm
2.8℃
-2.9℃
3cm
2.3℃
ー1.1℃
2cm
松山4.1℃
-1.1℃
3.6℃
0.5℃
7.3℃
-0.3℃
4.3℃
0.7℃
高知5.3℃
-2.7℃
1cm
4.7℃
-0.1℃
 
4.1℃
-1.7℃
5cm
2.3℃
-2.3℃
14cm
福岡1.4℃
-2.5℃
1cm
3.9℃
-0.7℃
0cm
3.3℃
 
1cm
鹿児島5.8℃
ー3.6℃
6cm
6.0℃
-0.8℃
0cm

俳句歳時記にみる「寒いクリスマス」の例句

最後に、そんな『クリスマス寒波』の日に詠みたい俳句を俳句歳時記からピックアップしてみました。

まずは、「クリスマス」の中から寒々しく暖かい3句です。ホワイトクリスマスが当たり前の地域か、珍しい地域かによっても読み方が変わりそうな気がします。

  • 『雪の戸の堅きを押しぬクリスマス』/水原秋桜子
  • 『湯気のたつ馬に手を置くクリスマス』/大木あまり
  • 『まだ積もるけはひホワイトクリスマス』/木内怜子

そして、「寒波」の中から「クリスマス寒波」に読んでも違和感のないものを選んでみました。一応は純和風というよりかは“テレビでの天気予報が当たり前になった様な時代のもの”を意図して選んだ感じです。

  • 『寒波急日本は細くなりしまま』/阿波野青畝
  • 『山越えの一級寒波来たりけり』/遠藤ふみ江
  • 『列島に二泊三日の寒波来る』/塩路隆子
阿波野青畝への旅 [ 川島 由紀子 ]

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