【冬・天文】季語「ダイヤモンドダスト/細氷」(Diamond dust)

【はじめに】
毎年2月17日は、日本では「天使のささやきの日」と制定されています。ここでいう「天使の囁き」とは『ダイヤモンドダスト』のことを指し、俳句の世界では『細氷』などと共に晩冬の季語とされています。今回は、「ダイヤモンドダスト」に関する情報をまとめましたので、ぜひ気になるところをピックアップしてお読みください!

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ウィキペディアに学ぶ周辺情報

「天使のささやきの日」&「天使の囁き記念日」

本題に入る前に冒頭でも触れた「天使のささやきの日」について、日本語版ウィキペディアを通じて学んでいきましょう。ネーミングからSNS映えもするワードですが、どういった経緯で制定されたのでしょうか。


天使の囁き記念日
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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由来となったのは、1978年2月17日、北海道大学が幌加内町の母子里(もしり)で氷点下41.2度を記録したという出来事です。気温の記録は様々ありますが、少なくとも「戦後最低気温」として、非公認の記録ながら良く話題になります。ちょうど昭和50年代は「アメダス」観測網が日本列島に整備されていって、気象官署で人間が目視なりしていた近代のやり方が現代化されていく過渡期であったことも影響しているかも知れません。

実際のところ、最高気温は昭和の偉大な記録を平成以降更新することが珍しくなくなりましたが、最低気温に関しては地球温暖化の影響もあってか古い時代の記録が並び、Top10に名を連ねることも21世紀では殆どなくなりました。そうなるとなおのこと、この1978年に観測した戦後の最低記録が、象徴的なものとなっていくのだと思います。

要するに、『天使のささやきの日』の由来から言い換えると、『戦後最低気温記念日』な訳ですね。

「ダイヤモンドダスト」の別名『天使のささやき』の謎

ただ、『戦後最低気温記念日』では堅い感じがするので、極端な寒さでないとお目にかかれない観光物の「ダイヤモンドダスト」に着目したのは十分理解できます。では、度々登場する「天使のささやき」とは何なのか。今ひとつ分からなかったのすが、幾つか分かったことと仮説を書き置いておきます。

『天使のささやき』に関する気になる点(雑感)
  • 洋楽『天使のささやき』の影響はなかったか

    ・1978年に氷点下41.2℃が観測される数年前、スリー・ディグリーズが歌う楽曲『天使のささやき』(When Will I See You Again)が、『第3回東京音楽祭』で金賞を受賞し、オリコン洋楽チャートで週間1位に輝いたことがありました。
    ・制定に携わった方々の世代に、案外この曲の存在がなかったか気になります。

  • ラベル
    極東ロシアの『星のささやき』との混同はなかったか

    ・お天気番組などでも触れられることのある類似のものに『星のささやき』というこちらもお洒落なネーミングの単語があって、「ささやき」は重複してます。
    ・これは極東ロシアでの氷点下50℃頃に見られる現象の異名で、『人間の吐いた息が耳元あたりで結氷した時の音』が聴覚で感じ取れることを指すのだそう。
    ・結構、ロシア由来の気象言葉が(様々な経緯で)日本に輸入・定着したこともあるので、ここと混同ないし借用した経緯があったのかも気になります。

  • ラベル
    ネット上にはあまり由来が落ちていなかった

    ・『ダイヤモンドダスト』の異名に『天使のささやき』があること
    ・2月17日が上記の由来で『天使のささやきの日』となったこと
    ・『天使のささやきの日』の天使の囁きはダイヤモンドダストの別名であること

    これらはネット上でもかなり引っかかります。しかし、なぜ『ダイヤモンドダスト』を『天使のささやき』と見立てたのかの経緯は殆ど見当たりませんでした。
    もともとアイヌの人々が言っていたのか、あるいは戦後に誰かが発案したのか、そういった経緯がないあたりに謎が含まれているように感じます。
    あのキラキラしたダイヤモンドダストを『天使の◯◯』と形容するのは良くわかりますが、そこに『ささやき』という聴覚を当てはめるのはかなり飛躍がある様に感じるからです。

どうもネットやPR記事などを見ても「ダイヤモンドダスト」が「天使のささやき」とされた経緯に疑問を持つものは極めて少なく、大手が調査した記事は寡聞にして見当たりませんでした。ご存知の方いらっしゃいましたら、コメント欄にお願いします。

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ウィキペディアで学ぶ「ダイヤモンドダスト」について

さてようやく本題です。「ダイヤモンドダスト」についてウィキペディアでざっくり学んでいきます。

細氷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

『ダイヤモンドダスト』は英語版でもDiamond dustで、日本語版ではあまり馴染みがありませんが、『細氷(さいひょう)』が見出し語となっています。ちなみに、中国語版では『鑽石塵』となっていました。やはり、漢語よりは英語由来の方がお洒落に見えるのかそちらで早くから定着しています。

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最もよく似た現象に『氷霧(こおりぎり、ひょうむ、ice fog)』があるので、そこと比較すると違いが分かりやすいかと思います。

氷霧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

空気中の水蒸気が寒くて凍った「霧」が『氷霧』であり、方向は下から上ないし停滞しています。一方『ダイヤモンドダスト』は晴れた日に起こる現象ではあるものの、上から下へと落ちる『降水現象』の一種であり、天気の区分としては『雪』に分類されるのだそうです。

俳句歳時記にみる季語としての「ダイヤモンドダスト」

俳句の世界では各俳人の思いのままに季語が取捨選択されて歳時記が編まれています。『ダイヤモンドダスト』は、日本語として『細氷』などが一応あるものの、多くの歳時記で『ダイヤモンドダスト』として掲載されています。カタカナ語でなおかつ9音もある長い単語をそのまま載せる事例は、どちらかというとレアケースかも知れません。バレンタインデーですら「愛の日」としてしまうぐらいですから

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そして、多くの歳時記では、冬、細かく言えば『晩冬』の季語となっています。太陽暦でいえば、小寒(1月5日頃)から立春の前日(=節分:2月3日頃)までを指す『晩冬』が主たる想定時期となっている訳ですが、上でみてきた通り、『天使のささやきの日』は2月後半です。

あくまでも歳時記の季語の羅列の中での位置づけに過ぎませんので、季節に厳しい俳句の場なら別ですが、仮に実際に『ダイヤモンドダスト』らしき現象を目の当たりにしたのであれば、それが立春を過ぎていようと思いのまま詠むのが良いかとは思います。

さて、科学的な視点をどの程度取り入れるかは編者、時代によっても様々ですが、むしろ大半の歳時記は『ダイヤモンドダスト』の傍題として『氷霧』を入れています。実際、区別している歳時記の方が珍しいのではないでしょうか。上記の『角川俳句大歳時記』など大判の歳時記でもしかりです。

もちろん、傍題が主たる季語と全く同じものではないことは理解して注意して読者は使用しなければならないことは前提とすべきですが…… 解説文の中に違いを全く盛り込まず、両者を混同している本も少なくない点は注意すべきですし、やはり配慮してもらいたいなと感じる部分です。

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俳句という文芸に野暮で適さないのかも知れませんが、この記事をお読みの方は、『ダイヤモンドダスト』と『氷霧』の違いを理解したうえで、俳句を詠み、また鑑賞していただけたらと思いますね。

俳句歳時記などにみる『ダイヤモンドダスト』の例句

『ダイヤモンドダスト』は極寒の時期のお洒落なワードということで、季語であるかを問わず多くの人に知られ、愛されてきました。例えば「プレバト!!」でも使用例が最近ありました。

  • 3位57点 :『静寂に響くダイヤモンドダスト』/酒井美紀
  • 冬麗戦14位:『ダイヤモンドダスト ファンが持つライト』/二階堂高嗣

1つは平場で酒井美紀さんが披露された句。そしてもう1つはKis-My-Ft2の二階堂さんが年始のタイトル戦のために詠むもTop10圏外のためTVer以外では披露されなかった作品です。後者については季語を比喩として使っていますが、前者は『ダイヤモンドダスト』という季語に真正面から向き合った「一物仕立て」の作品。添削後の『静寂に響けりダイヤモンドダスト』はカッコイイなぁと感じました。

反対に、二階堂さんの気持ちもわかる反面、季節の言葉としての季語を主役に立たせたい有季定型俳句において、『印象』が先行しがちで実物を目にしにくい季語を詠むことは非常に難しいと痛感します。そこで、俳人の例句を歳時記から拾って鑑賞していきましょう。

  • 『ダイヤモンドダスト言葉のはじめなり』/松澤雅世
  • 『ダイヤモンドダスト太古の空の青』/鈴木貞雄
  • 『ダイヤモンドダストの予報 名寄発』/後藤軒太郎
  • 『ダイヤモンドダスト遠くに海の黒』/染谷佳之子
  • 『星がかるい音楽になるダイヤモンドダスト』/伊藤畠夫

第一に注目すべきは「ダイヤモンドダスト」という9音をどう17音の器に盛り込んでいるかです。最後の句はかなりの破調で下五を倍近い9音にしていますが全体的なバランスは取れています。他方、上の4句はダイヤモンドダストを句の半分とし、それ以外の部分を8音ないし9音程度にすることで、句またがりの立場を取っています。

もちろん、プレバト!! でよくあるように上五字余りにするのも手としてはありますが、流石に9音ともなると字余りがリズムを崩してしまう点、むしろ「ダイヤモンド」を上五とし、「ダスト」の3音分を中七の前半とした『ダイヤモンド ダスト◯◯◯◯ ◯◯◯◯◯』の方が柔軟性は高いかも知れません。

例句にまた目を向けると、2句目の「青」や4句目の「黒」のように、本来のキラキラとした無色白色ではない色とぶつける取り合わせの句も目立ちますし、3句目のように北海道の固有名詞を入れるのも効果的です。1・5句目のような概念的なものとの相性も良いでしょうが、まとめるのは上級技な様な気がします。

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