世界で起きた深発巨大地震についてまとめてみた

【はじめに】
この記事では、世界で起きた「深発巨大地震」(ざっくり深いところで起きたM8以上の地震)についてまとめていきたいと思います。

定義が曖昧なのですが、やはり巨大地震のクラスともなると、世界的にみても10年に1~2回程度あるかどうかなので、珍しい事例なのは間違いありません。実は日本列島の周辺でも起きたことがありますので、早速みていきましょう。

複数の媒体での検索結果を比較してみた

定義が曖昧なこともあるので、ひとまず、日本付近で起きた地震については、気象庁の「震度データベース検索」を利用してみるところから始めたいと思います。

気象庁 震度データベース検索

(出所)気象庁 > 震度データベース検索
・地震の発生日時 : 1919/01/01 00:00 ~ 2022/05/22 23:59
・地震の規模 : M 8.0 以上、M 9.9 以下
・震源の深さ : 100km 以上、999km 以下

該当は2例となりました。このうち、2015年の地震については、気象庁マグニチュードはMj8.1と巨大地震の範疇ですが、別のはかり方(モーメントマグニチュード)ではMw7.9となり、後述するUSGSの検索結果には反映されていないことを予め申し添えておきます。

日本語版ウィキペディア「深発地震の例」

続いて、日本語版ウィキペディアの「深発地震」には「深発地震の例」という項があり、そこを見るとここ半世紀あまりの例が幾つか載っていますので、そちらも引用します。

明確にM8以上となっているものを抽出しましたが、どことなく見づらい感じがするので、後ほど表にしようと思います。

USGS(アメリカ地質調査所)

上のウィキペディアの記載で世界の事例が網羅されていれば良いのですが、どうもそうではなさそうなので、こちらもリストアップの際の参考にしたく思います。USGS(アメリカ地質調査所)の検索結果です。データを広めに取るために、深さ100kmを基準として抽出した図がこちらです。

(出典)USGS(アメリカ地質調査所):深さ100km以深+Mw8.0以上

ここ100年で全部で9回起きていて、いずれも「環太平洋火山帯」のプレート境界かその少し内陸部を震源としているようです。

大体の傾向を掴んで頂いたところで、ここからは個別事象をみていきます。

日本付近で過去に起きた2~3例(+新事実?)

日本付近では気象庁震度データベース検索でみた通り、2010年代に2例発生していますので、そこから見ていくことにしましょう。

2015年「小笠原諸島西方沖地震」(Mj8.1・Mw7.9、最大震度5強)

2015年の小笠原諸島西方沖地震は、2015年5月30日20時23分に発生したM8.1の地震である。小笠原諸島と神奈川県の一部で震度5強の揺れを観測したほか、深発地震による異常震域によってほぼ全国的に震度1以上の揺れを観測した。震源の深さは681kmと非常に深く、日本で発生した深発地震としては観測史上最大の規模である。また、これまでの「小笠原諸島西方沖地震」としても観測史上最大となった。

小笠原諸島西方沖地震 (2015年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この地震の特徴的な点は気象庁の観測史上でみても幾つもあります。具体的に列挙していきましょう。

  • 現在の日本の領海内では初めての「深発巨大地震」だった点
  • マグニチュード8前後と深発地震としては世界的にみても大規模だった点
  • 震源の深さが680km台と、日本の観測史上、極値に近いほど深かった点
  • 深発地震の観測例としては最も強い「最大震度5強」を観測した点
  • いわゆる「異常震域」によって、関東地方などでも震度5クラスを観測した点
  • 過密となった現代の観測網をして史上初めて「47都道府県」全てで有感となった点

これらだけを見ても、極めて特筆すべきところの多い地震だったことが分かります。この地震では、「緊急地震速報(警報)」こそ(当時の基準・技術では)発表されなかったものの、非常に広範囲が強い揺れに襲われ、エレベーターや交通などへの影響が広域に及びました。

(出所)気象庁 > 震度データベース検索 より
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html#20150530202302

2013年「オホーツク海深発地震」(Mj8.3・Mw8.3、最大震度3)

気象庁震度階級では日本北海道秋田県で最大震度3を、メルカリ震度階級ではカザフスタンアティラウで最大震度Vを記録したほか、震源から遠く離れたドバイモスクワなど、北半球の広い範囲で有感地震となった。

オホーツク海深発地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

上の地図でみると興味深いですが、「東京」すら近く感じてしまいます。この地震では、カスピ海に面したアティラウ(カザフスタン)でメルカリ震度階級Ⅴ相当の揺れを、モスクワ・ドバイなどで有感。そして、日本列島でもかなり広域で有感となりました。再び気象庁の震度データベース検索です。

(出所)気象庁 > 震度データベース検索 より
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html#20130524144448

サハリンの北、カムチャッカ半島の西側(深さ約600km)を震源としているのですが、日本では、北海道猿払村と秋田県秋田市で震度3、東京都青ヶ島や鹿児島県錦江町で震度1を観測しました。強烈な揺れではなかったため、人的被害は世界的にみても伝わっていませんが、有感地震の範囲は非常に広かったといえます。

(参考)1932年「日本海北部」(Mj6.8・Mw8.7?、最大震度3)

もう一つ、今回記事を書くにあたって調べた中で、初めて知った地震をご紹介します。まず、気象庁の震度データベース検索での出力結果を上と同じく表示します。

(出所)気象庁 > 震度データベース検索 より
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.html#19321113134701

気象庁マグニチュードは「Mj6.8」と、大規模地震にもわずかに届かない程度。国内での震度も最大で3(弱震)ということで、あまりこれまで注目してきませんでした。とても今回の記事の基準には当てはまらないかのように感じます。しかし、先のUSGS(アメリカ地質調査所)のHPをみてみると、

(出所)USGS(アメリカ地質調査所) > https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/iscgem906454/executive

何と驚くことにこの地震、モーメントマグニチュードでMw8.7とされているのです。仮にこの値が事実であるとしたら、20世紀に起きた地震の中で世界5位タイとなり、ランキング表の順位を左右するほどの世界的な大地震だったということになります。

が、しかし、私が調べた限りでは、今までこんな規模だと推定されたという情報は聞いた覚えがありませんでしたし、ましてそんな地震が日本のすぐ近くで起きたという可能性は夢にも思っていませんでした。これが事実なのかは私の調べられる範囲では分かりませんでしたが、今回判明した内容として参考までにお伝えしたく思います。

※ただ、個人的には、2010年代に起きた深発巨大地震と比べて、有感の範囲が国内だけでみても狭いことから、Mw8.7という値は俄に信じがたいというのが正直なところです。

世界で起きた深発巨大地震

ここからは、世界で起きた深発巨大地震について、ブロック別にざっと見ていきたいと思います。

アジア・オセアニア

  • 1939/12 Mw8.1(~8.6) 150km インドネシア・スラウェシ島
  • 1963/11 Mw8.1(~8.4) 110km インドネシア・バンダ海
  • 2018/08 Mw8.2(~8.2) 600km フィジー近海

主に以上の地震が知られています(日本列島付近の上述の地震を除く)。直近の例としては2018年8月に起きたフィジー近海の地震。実に、2,000km以上離れたソロモン諸島やニュージーランドでも有感であったとの報告がUSGSのDid You Feet It? には届いています。

(出所)USGS > https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us1000gcii/dyfi/responses

南米大陸

ペルー・チリ海溝沿いのうち「チリ沿岸」で起きた【浅い】地震の方は(↑)の記事からどうぞ。

もうひとつこういった地震活動が認められるのが、南米大陸です。ペルー・チリ海溝から内陸に入った領域に沿って4例ほどが観測されています。

( 同上 )

地図で上から(時系列は前後しますが)簡単にピックアップしておきます。

  • 1970/08 Mw8.0 644.8km 震度Ⅲ
    コロンビア地震 ブエノスアイレスやメキシコでも有感
  • 2019/05 Mw8.0 122.6km 震度Ⅸ
    ペルー地震 稍深発地震で死傷者。複数点で震度Ⅸ報告
  • 1994/06 Mw8.2 631.3km 震度Ⅵ
    ボリビア深発地震 首都ラパスでⅥ、北米でも観測
  • 1950/12 Mw8.2 113.9km 震度Ⅶ
    チリ地震 チリ・アルゼンチン国境付近

直近では、2019年5月に起きた地震が、深さ120km台ということで、激烈な揺れに見舞われた地域もあったと報じられました。日本でいえば、震度6クラス以上でもおかしくない体感報告です。

こうしてみると、日本では「主要4島」付近ではこうした深発巨大地震は起きていませんが、2015年の小笠原諸島西方沖地震をみるにつけ、強烈な揺れの襲う地震が(過去例がないからといって)今後も絶対に起きないとも限りません。
また、南米やアジア・オセアニア以外でもこうした事例が起きた場合を、頭の片隅においておく必要があるのではないかと感じました。

2010年代には世界で複数回観測されましたが、20世紀以降の活動歴をみれば、10年に1回程度の頻度で発生してきているとは言えそうです。また、こうした地震が起きた直後に日本付近で地震活動が顕著になるといった事例もあまり見えませんでしたので、不必要に恐れず、普段より若干注意する程度で、普段からの備えを点検するキッカケとしていただければと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました