【はじめに】
この記事では、「50cm以上の津波が観測された地震など」をピックアップし、その際に発表された「津波警報」などが発表されてから解除されるまでの時間を振り返って集計していこうと思います。
なお、もう少し規模の小さな地震津波を含めた先行記事については(↓)をご覧ください。
警報などが発表されてから「津波実測」まで
まずは、津波注意報や警報などが発表されてから、実際に津波が観測され、それが世間に発表されるまでの時間を見ていきます。国内と国外で順番がかなり異なりますので、そこを先に区別したうえで見ていきます。
①が地震発生時刻で、②が津波警報・注意報などが発表された時刻です。2023年の鳥島近海のように、地震発生から1時間ほどが経過し、基準を超える津波が実測されたことを受けて後追いで発表する事例も時折見られます。しかし基本的には津波警報クラスを引き起こすような規模であれば、通常どおり、地震発生から数分で気象庁から発表されます。
②津波警報などが発表されたタイミングで、「③最短での津波到達予想時刻」は猶予があって十数分、早ければ地震発生から数分もかからずに第1波が到達してしまいます。実際には、津波注意報などで伝えられるよりも「④第1波観測時刻」は遅れることが多いのですが、早いものでは誤差数分で到達し始めます(最悪、到達してから警報などを出すこともあるので、間に合わない可能性も拭えません)。
中央値でみると、地震発生から数分で津波警報などが発表され、早いところではすぐに津波の第1波が観測され始め、警報などが出されてから1時間以内には最初の情報が伝わるという流れになります。
上の表の事例でいくと、父島近海や三陸沖など陸地から遠いところを震源とする地震では、第1波の到達に時間が掛かるため、警報などが出されてから小1時間、「実際に観測された」という情報がないまま緊張感を高まらせる呼びかけが続くこととなります。ややもすると、「過剰なのでは?」と考えてしまいそうですが、津波警報級の事例でも最初の数十分は実測の情報が来ないこともありましたので、改めてですが油断は禁物だということになります。
次に海外の事例をみますと、フンガ・トンガの火山によるものは例外としてみると、2010年代中盤までの「南米からの遠地地震」にもパターンがあります。
遥か南半球で巨大地震が起きると、ハワイやグアム・サイパンといったアメリカを始めとする太平洋各国の実測情報と、津波の到達予想時刻のシミュレーションをもとに、気象庁が日本列島に到達し始める数時間前に警報・注意報を発表します。更にその可能性が高い場合には予め「津波◯◯報を◯時以降に出す見込み」などと臨時の情報発信をすることもあります。
津波警報などが発表されてから、日本国内に到達するまでは数時間の猶予があります。これは、津波の到達する時刻が(特にチリなどでは)ある程度、精度よく予測できるためであり、時間単位での誤差は否めないものの物理現象として地震に起因する津波は予測しやすい面があると一般には考えられています。
そして、遠地地震は1回の波が数十分単位となることもあって、「②警報などが発表」されてから、気象庁の観測点での「⑤最初の実測発表」までは4時間前後かかることも珍しくありません。実際には、警報などが出されて注意喚起が何百回と繰り返される訳なので、その緊張感を維持するのは容易でないと肝に銘じる必要があります。
言ってしまえば、遠地地震での津波は特に「長期戦」となることを覚悟しなければなりません。
実際に津波が観測されてから解除されるまで
⑤実際に津波が観測されてから、⑧警報・注意報が解除されるまでの時間をみていきましょう。
「⑥最大波を観測」した時刻は、おおよそ第1波を観測してから1時間程度あとのこととなることが多いように見えます。例えば、2011年の東北地方太平洋沖地震であれば、相馬の潮位が欠測となる直前の15時50分台に記録されたのが名目上の最大波であり、これはちょうど東日本大震災を引き起こした超巨大地震から1時間数分後のことでした。
幸い、⑥最大波を観測(更新)してからその⑦情報の発表までには10分足らずとなることが多く、ここは比較的リアルタイムに情報発信してくれることが多そうです。
最後に、皆さんが最も気になる「⑧津波警報などの解除までに掛かる時間」についてお話しします。 東日本大震災のように、発災から2日以上を要することもありますが、基本的に一つの目安は数時間といったところです。具体的に見ていきますと……
- ②津波警報などが発表されてから4時間弱
- ⑥最大波観測から2時間半ほど経ってから
というのが50cm以上の津波を観測した平成後期以降の少ない事例から見える一つの『目安』かも知れません。ただ、あまりにも母数が少ないこともあるので、参考程度になさってください。
海外についてみると、そのタイムスケジュールが2~3倍になっている印象でしょうか。少し値を調整してあるので実際の統計データとは違うかも知れませんが、おおよそ上の表のようになります。
最初の津波を観測してから最大波を国内で観測するまでに少なくとも3時間以上かかっていて、更に、その観測したという情報が発表されるまでに30分かかったりするのが『長期戦』となる遠地津波です。
そして、改めて集計してみて気付かされるのが、⑧津波警報などが解除されるまでの時間です。情報の集められた2014年以降の3例をみても、
- 警報・注意報が発表されてから半日以上かかる(昼に出たら夜、未明に出たら午後)
- 最大波を観測してから数時間(1桁の後半程度)
というのが現実的な過去実績という訳です。「未明に注意報が出て、午前中に数十センチの津波を観測して、解除されるのがお昼すぎ」といったスケジュール感が遠地津波と向き合う際に必要だということは、改めて国民が共有しておくべきではないかと思った次第です。
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