【海外地震】トルコ・シリア地震を本州に置き換えてみた(前編)~規模と緊急地震速報~

【はじめに】
この記事では、2023年2月に起きた「トルコ・シリア地震」を(やや雑にではありますが、)日本列島の本州に置き換えて、日本人に実感しやすいようにしてみました。

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今回は、「トルコ・シリア地震」のスケール感と、余震(中規模地震)の回数に着目をして記事を書いてみました。ぜひ学びの一助になれば幸いです。早速みていきましょう。

2パターンの回転でその巨大さを再認識

そもそも、トルコの当たる「アナトリア半島」は『小アジア』の異名を持つほど大きな面積を誇っていて、トルコ共和国の面積は日本の倍以上(約78万km2)に及びます。M7.8であるとか、長さ300kmであるとか報じられても、日本では昭和以降に起きた内陸を震源とする地震では、今回のトルコ・シリア地震に匹敵するような地震が起きていないため、比較対象が小さくならざるを得ません。

陸地の『プレート境界』を震源とする地震ではあるものの、その形から、例えば『熊本地震』や『兵庫県南部地震』のようなモーメントマグニチュードで1程度も小さい地震と近いものだと認識してしまったがために、実態のスケール感を勘違いしてしまっているきらいがあるように感じました。

上の画像も多く注目してもらいましたが、数百キロにも及び震源域という観点では、むしろ東日本大震災を起こした『東北地方太平洋沖地震』に近いスケール感に捉え直さなければいけなかったのです。

そこで、ここからは単純化した2枚の架空の図で、その規模を再認識して頂きたいと思います。USGS(アメリカ地質調査所)が決定した中規模(M5)以上の地震のプロットを、任意の角度で回転させ、同じ縮尺で日本列島の任意の場所に当てはめています。

(1)265°回転:横浜-上越 → 長野-静岡

まずは、人口の多い首都圏の皆さんに身近に感じてもらうべく、「265°回転」の図をご用意しました(↓)。青色で示した大きな丸が『M7.8』の最初の大地震です。東関東が「シリア」方面になる地図と捉えて頂ければ、方向感が伝わろうかと思います。

このシミュレーションでは、東京都多摩地方を震源に、神奈川県東部から糸魚川静岡構造線の北端めがけて数百キロ単位で横ずれ断層が動き、本州の東半分が強烈な揺れに襲われた格好になります。

その後は、上越から長野県にかけて緊急地震速報が出される規模の内陸地震が頻発した後、半日後には長野県南部から静岡市あたりにかけて『M7.5』の地震が発生した計算になっています。

もちろん、神奈川から上越に一直線な断層は想定されていませんので、現実の地質に基づいた想定では全くありません。あくまでもトルコ・シリアの地震のスケール感を共有するための架空の図であることは改めて申し添えておきます。

(2)290°回転:静岡-上越 → 長野-岐阜

もうひとつの図は、いわゆる『糸魚川静岡構造線』に沿った角度に置き換えたものになります。290° 回転させることで、震源が静岡市方面となり、北端が糸魚川付近になるような配置となっています。

静岡市の北端あたりを震源に、駿河湾から糸魚川の辺りまでを『M7.8』が一気に駆け抜け、北アルプス付近で山崩れを引き起こしそうな中規模地震が頻発した後、その日の夜に、明治の『濃尾地震』を彷彿とさせるような『M7.5』の地震が発生したというシミュレーションになります。

地図の南西端は、岐阜市や名古屋市にほど近いエリアまで伸びていて、これが『糸魚川静岡構造線』に端を発したような地震によって誘発されたかと思うと、中部地方に『濃尾地震』の再来のような甚大な被害をもたらすことは想像に難くありません。

現代のハザードマップなどを見ると、M7以上(M8クラスの巨大地震)を内陸の断層地震で想定しているものがありますが、どうしてもマグニチュードだけ聞いても一般の方は想像しづらいかと思います。

しかし、今回の地震がこの規模、このスケールで起きたと仮に想定すれば、いかに耐震強度の高い建物が多いと言われる日本であってもひとたまりもないでしょう。地面がメートル単位で横ずれをしたら、どんな免震・耐震も意味をなさないでしょうからね。

「緊急地震速報」と「中規模地震の回数」

もう一つ、日本人にとって印象しやすいところにフォーカスしてみましょう。「緊急地震速報」です。

日本の「緊急地震速報」と「中規模地震の回数」

「緊急地震速報」は制度開始から15年が過ぎ、日本人にも身近な存在となりました。そして、2011年の『東日本大震災』や2016年の『熊本地震』の際には、1日に何回も(誤報を含めて)発表されたことを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。実際の発表回数としては、

緊急地震速報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

2011年の『東日本大震災』の発災直後は、精度が大幅に低下したり発表すべき地震で発表されない事例が多発したりしましたが、いずれにしても3日間で20回以上の『警報』が発表されています。

( 同上 )

精度が比較的高かった「熊本地震」でも、全部で18回の警報が発表されています。上の事例を見る限り『M5中盤』あたりが一つの目安であるように感じます。
実際にはもっと小さい規模(M4台など)で震度5弱以上を観測することもありますが、それで緊急地震速報(警報)が正確に発表されることは稀ですし、頻繁に発表されすぎるので、そういうものですね。

そうした意味で最も激烈な地震活動が見られたものの一つに、『大正関東地震(関東大震災)』があります。当然まだ緊急地震速報はありませんでしたが、当時を再現した動画などもネット上にアップされていますし、以下の表を見るだけでも、地震活動の活発さが窺えます。

関東地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

以上をもとに、ここ100年の日本で起きた主な内陸地震(の活発な)中規模余震の回数を、気象庁『震度データベース』をもとにざっくり表にしてみました。こちらです。

発生年地震名週間計当 日翌 日2日後3日後
1923関東地震613217
1945三河地震15
1948福井地震10
1995兵庫県南部地震
2004新潟県中越地震1812
2011福島県浜通り10
2016熊本地震18

内陸に断層面が掛かっているものの、面積が桁違いの『関東地震』は61回を数えていますが、その他の地震は多くても10回台です。中規模地震が頻発した印象のある中越地震や熊本地震でも18回です。熊本地震に関しては上で「警報:18回」だったと語りましたが、結果的に同数となっています。

トルコ・シリアの地震を加えると、何と

と、ここまでを前置きに今回の本題である『トルコ・シリア地震』に入ります。上の表へと、厳密にはマグニチュードの基準が違うので同列には扱えないことをご了承いただいた上で、今回の地震の活動を加えてみようと思います。こちらです(↓)。

発生年地震名週間計当 日翌 日2日後3日後
1923関東地震613217
1945三河地震15
1948福井地震10
1995兵庫県南部地震
2004新潟県中越地震1812
2011福島県浜通り10
2016熊本地震18
2023トルコ・シリア地震3425

これがイコールではありませんが、日本でいう「緊急地震速報」の発表回数の一つの目安にはなろうかと思います。その回数は実に25回で、日本では近年類を見ない多さです。

  1. 2/6 04:17 M7.8
  2. 2/6 04:26 M5.7
  3. 2/6 04:28 M6.7
  4. 2/6 04:36 M5.6
  5. 2/6 04:58 M5.1
  6. 2/6 05:03 M5.5(やや北東へ)
  7. 2/6 05:23 M5.2
  8. 2/6 07:18 M5.0
  9. 2/6 13:24 M7.5(最大の誘発地震)
  10. 2/6 13:26 M6.0
  11. 2/6 13:35 M5.8
  12. 2/6 13:51 M5.7
  13. 2/6 14:01 M5.0
  14. 2/6 14:05 M5.1
  15. 2/6 15:02 M6.0
  16. 2/6 16:07 M5.0
  17. 2/6 16:39 M5.3
  18. 2/6 16:44 M5.0
  19. 2/6 18:14 M5.4
  20. 2/6 18:33 M5.4
  21. 2/6 19:43 M5.0
  22. 2/6 21:03 M5.2
  23. 2/6 23:37 M5.3
  24. 2/6 23:44 M5.0
  25. 2/6 23:53 M5.0
  26. 2/7 00:57 M5.0
  27. 2/7 06:13 M5.5
  28. 2/7 10:11 M5.4
  29. 2/7 18:48 M5.0
  30. 2/7 21:10 M5.3
  31. 2/8 00:21 M5.0
  32. 2/8 14:11 M5.4
  33. 2/8 17:20 M5.1

以上の地震が、僅か3日のうちに起きたというのは本当に想像を絶します。過去の日本の地震でも昭和以降で例のない活発な中規模余震の回数だったといえます。

『緊急地震速報』が1時間に何回も発表される状況は、東日本大震災や熊本地震で見られた程度であって、それが何回も頻発するという苛烈さでは、被災地でない人々も心穏やかで居られませんし、何より耐震強度云々の前にそれだけ強烈な揺れにさいなまれてはどんな建物もひとたまりもないでしょう。

遠い異国の地で起きた地震ではなく、このクラスの地震が日本で『昭和以降100年近く起きていない』というだけで、歴史的にみれば起きえていたことに今一度思いを寄せて頂ければと思います。皆さんの「地震への備え」に役だてば幸いです。

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