ここ最近の大きな地震での日米の震度について比較してみた

【はじめに】
この記事では、日米の震度階級(日本:気象庁震度階級、アメリカ:改正メルカリ震度階級)を、特にここ四半世紀の大きな地震の揺れのデータを簡単に比較していきたいと思います。

各用語についてウィキペディアで学ぶ

今回の記事でも良く使われる用語について、ざっくり日本語版ウィキペディアの説明を引用して振り返っていきたいと思います。

震度階級の種類(抜粋)
震度の階級表は国際的に統一された標準的な規格はなく、それぞれの国や地域が採用したいくつかの指標がある。主な海外で使用されている震度階級としては以下のようなものがある。

なお、それぞれの震度階級の間で、数式などを用いて対応関係を示すことは難しい。また同じ震度階級でも機関によって運用や基準が異なり、単純に同じとはみなせない場合がある。各国の気象機関で公式に使用する震度を定めていないところも多いが、メルカリ震度階級を使用するところが多い。

震度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
  • 気象庁震度階級
    日本の気象庁震度階級は、現在では機械による計測値、いわゆる「計測震度」を使用しており、デジタル震度計が観測した計測値を10段階に換算して気象庁が発表している。
  • メルカリ震度階級
    ……現在ではIからXIIの12階級からなる修正メルカリ震度階級(Modified Mercalli intensity scale、MMI scale)という。アメリカ韓国などの国で使われている。

メルカリ震度階級(メルカリしんどかいきゅう、: Mercalli intensity scale)とは、ある地点における地震の程度(地震動)を表現する指標。地球表面の構造物に与える影響や人間が感じる揺れの大きさに基づいて、人が判定する。

メルカリ震度階級は過去の地震の被害状況をもとに、被害の大きさの違いが明瞭に分かるよう区分されており、日本の気象庁震度階級のように計器観測に基づく数値により厳密に定義されたものではない。一般に、小さな揺れの場合には人間の感じた揺れの大きさに基づいて判断され、揺れが大きい場合には地形植生などの自然、ビルや家屋、橋、ダムなどの建築物構造物の被害状況に基づいて判断される。

アメリカ地質調査所(USGS)が地震情報の中で用いているMM震度分布図「シェイクマップ」では、算出式に最大速度(PGV)および最大加速度(PGA)の値が用いられている。これは推定値の算出用であり、場所によって変わる地震波速度の分布データ、マグニチュード、観測点での加速度などをもとに発表される。震度とは正反対に、各階級に後付けで数値をあてはめたものである。

メルカリ震度階級
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
( 同上 )

(一般的な注意点その1)震度階級ごとの最大値の違い

このほかにも世界では幾つかの震度階級があるのですが、むしろ日本の最大「震度7」というのが珍しくて、改正メルカリ震度階級(以下、改正をつけなくとも原則、MMIのことを指す)などのように、12などの2桁が最大値となっていることが多いです。

なので、震度とマグニチュードを混同した記事なんかは論外ですが、そうでなくても実際に、「◯◯で震度9」などというネットニュースの見出しが出ることがあります。大抵そういった場合、気象庁震度階級以外で震度IXを観測したといった意味合いなので間違いとも言えないのですが、ちゃんとした説明もなく、或いはちゃんとした理解のないまま見出しだけをみると、

震度は「7」が最大(気象庁震度階級のみ)なのに、「震度9」なんてあるわけないじゃん

みたいな短絡的な誤解や誤った伝わり方をしてしまう可能性もありますし、仮にこれが「メルカリ震度階級VII」を「震度7」として報じてしまうと、

「震度7」って一番強い揺れじゃなかった? 国外の地震だけど心配ね。

などと、いらぬ誤解を招いてしまう可能性もあります。既にご存知の方は流していただければ結構ですが、案外こういった誤解を招くような自動生成的なニュースの見出しがタイムラインを賑わせてしまうことがあるので、惑わされないようお願いしたく思います。

震度階級の間での比較について

そして、ウィキペディアの引用の項の冒頭部で赤太文字にした部分を再び引用しますと、『それぞれの震度階級の間で、数式などを用いて対応関係を示すことは難しい。』とされています。

この表現に少し補足を入れますと、例えば、日本で良く使われる指標と海外の指標との対応として、

華氏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「摂氏何度」と「華氏何度」の対応のように、数式で一対一で算出できるものも多くあります。他にも「ヤード・ポンド法」と「メートル法」で距離単位を揃えるといった具合です。震度階級に関しては、こういった単純な数式で表すことは確かにできません。しかし、私が思うに、同じ目的で作られた指標である「震度階級」は、かなりの類似した関係性を持っていることを示すことは可能だと思います。

例えば、個人サイトの「地震インフォ」さんのツイートを引用させてもらいました。下が改正メルカリ震度階級で、左軸が気象庁震度階級です。おおよそ「右肩上がり」のトレンドを形成していることが窺えます。

確かに、「日本でいう震度6弱が、メルカリ震度階級で震度幾つ」と一対一の関係性でいうことは困難なように感じますが、大体このあたりという心の中の目安みたいな物は持てそうに直感的に思います。

(一般的な注意点その2)ウェザーニュースなどの記事を読む際に

私がこれについて詳しく説明したのには理由があります。昨今、Yahoo! ニュースなどでも多く採用されている「ウェザーニュース」さんの遠地地震などに関する記載で気になる部分があるからです。例:

震源が陸域で浅かったことから、震央近くでは改正メルカリ震度階級のIXの激しい揺れがあったと見られます(単純比較は出来ないものの、日本の震度階級で5強から6弱に相当)。激しい揺れによって建物が倒壊するなどして、多数の死者が出ています。

ウェザーニュース HPより
週刊地震情報 2021.8.15 海外ではM7超の地震相次ぐ ハイチの地震では多数の死者も

これは、2021年8月にハイチで起きたM7.2の大地震に関する記載。『単純比較は出来ないものの、』と前置きをしていますが、『メルカリ震度階級IXが、気象庁震度階級5強から6弱に相当』するという一対一関係を持っているかのように見えてしまいます。この文言を読むに注意すべきは以下の点です。

  • しかし、上の「地震インフォ」さんのグラフからも明らかですが、
    「メルカリ震度階級IX」は、日本で起きた地震の実測値でいうと「震度6弱~7」に対応しています。詳細は長くなるので割愛しますが、昔の震度階級(平成初頭まで)でいう「震度5(強震)~6(烈震)」には相当しそうですが、ここ四半世紀で日本の震度階級も印象や頻度が変わりました。ここ最近のデータで再検討するべき時期が来ているのではないかと思います。
  • また様々な前提条件がない記述のため、以下のような飛躍が生じる恐れがあります。
    • ハイチは、日本に比べ、建物の揺れへの備えが脆弱で被害が拡大しやすい
    • 仮に同じ揺れが襲ったとしても、ハイチの方が大災害になりやすい傾向がある
    • 現代の日本で「震度5強」というと大災害になるイメージはしづらいが、諸々の条件が異なれば、日本で想像するのとは大きく異なる被害となるケースもある

一番怖いのは、『震度5強ぐらいなら大したことないじゃん』と、上の一文を読んで変な安心感を与えてしまうことです。実際この地震では、2,000人以上の方が犠牲になり、負傷者は1万人を超え、13.7万棟以上の建物が全損壊したと伝わります。我々が経験則的に覚える「震度5強~6弱」とは明らかに違った被害が起きていることの認識を遅らせる可能性があります。

皆さんはどうぞ、ウェザーニューズさんなどの記事で見かけるこの表現を、鵜呑みにしすぎないよう、ご自身でも情報のアンテナを高く持っていただければと考えます。

メルカリ震度の「体感」報告(Did You Feel It?)と比較

ここからは、USGS(アメリカ地質調査所)がホームページで世界から募っている「体感」報告である『Did You Feel It?』と、気象庁震度階級を比較していきたいと思います。

最大震度7:メルカリ震度階級Ⅸ相当

下の表は、メルカリ震度階級で「Ⅶ」以上を観測した地点数を示しています。日本の観測史上最大だった東日本大震災では、震度Ⅸを5地点で観測したほか、震度Ⅶ以上を76地点で観測している…といった見方をしていただければと思います。

発生日地震名
11/03/11東日本大震災 53437
16/04/14熊本地震(前震) 1
16/04/16熊本地震(本震) 1 1 2
18/09/06北海道胆振東部地震 1 2 4

「震度Ⅻ(12)」までが設定されている「メルカリ震度階級」ですが、現代では世界的にみても「震度Ⅹ(10)」ぐらいまでしか観測されませんし、日本でのDFYI? の報告例では「震度Ⅸ」ぐらいが最高かと思います。

上の実績値からすると、気象庁震度階級「震度7」は、おおよそメルカリ震度階級で「震度Ⅸ」に相当するという理解が正しいかと思います。

ですから、もし仮に海外の地震で「メルカリ震度階級Ⅸ」などと報じられる機会があれば、日本でいう「震度7」かも知れないという目線でご覧になる事をオススメします。

最大震度6強:メルカリ震度階級Ⅶ~Ⅷ相当

2007年以降に震度6強を観測した地震をまとめてみました。2021年の福島県沖地震では、全壊家屋も多くみられるなど被害が甚大だったため、最大震度6強ながら「震度Ⅸ」の体感報告がありました。

発生日地震名
07/03/25能登半島地震
07/07/16新潟県中越沖地震 2
08/06/14岩手・宮城内陸地震 2
11/03/11茨城県沖 1 4
11/03/12長野県北部
11/03/15静岡県東部 2
11/04/07宮城県沖 2 6
16/04/15熊本県熊本地方
19/06/18山形県沖 1
21/02/13福島県沖 2 910
22/03/16福島県沖 715

その他に関しては、海域で起きた地震では「震度Ⅷ」を、内陸の地震では「震度Ⅶ」を体感したという報告が寄せられています。これが上の注意書きの部分とも合致する実測データです。

体感報告の過疎地帯ということもあるかも知れませんが、気象庁の観測網では「震度6強」となる地震でも、体感報告が「メルカリ震度階級Ⅵ」以下という例も結構あることは特筆すべきかと思います。

最大震度6弱:メルカリ震度階級Ⅵ~Ⅶ程度

そして、震度6弱については、結構「メルカリ震度Ⅶ」を観測していない地震が多かったので、「震度Ⅶ」以上を観測した地震に限って表としています。ご了承ください。

発生日地震名
05/03/20福岡県西方沖地震 1
05/08/16宮城県沖 3
08/07/24岩手県沿岸北部 2
09/08/11駿河湾 1
11/04/11福島県浜通り 3
11/04/12福島県中通り 2
14/11/22長野県北部 1 2
16/10/21鳥取県中部 1
16/12/28茨城県北部 1 1
18/06/18大阪府北部   3 8

ここ10年で震度Ⅷ以上が報告された地震も増えてきましたが、大半は震度Ⅶ以下となっています。そうした意味では、「メルカリ震度階級Ⅶ」といったら、日本の「震度7」でこそないですが「震度6弱」相当でも全くおかしくないため、ウェザーニュースさんの記事の表記などを盲信せず、しっかりと警戒をもって報道に目を向けていただければと思います。

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