【海外地震】トルコ・シリア地震を本州に置き換えてみた(後編)~日本の地名と震度で時系列に~

【はじめに】
前編では、2023年2月に起きた「トルコ・シリア地震」を『本州』に置き換えるという想像してみましたが、今回はより具体的に日本の地名と震度(気象庁震度階級)に置き換えたうえで、時系列に当日の地震の発生状況をシミュレーションしてみようと思います。

(前編)は上のリンクからどうぞ。

2回の大地震を本州に置き換えると

前編では、「トルコ・シリア地震」の余震分布図を日本列島に(回転させたうえで)置き換えるという手法を取り、皆さんがイメージしやすい形を目指しています。

上のツイートの下の2枚の画像にもありますが、パターン(1)は『関東地方』を起点とし、パターン(2)は『糸魚川静岡構造線』に沿った形で想定しています。

ここからまずは、トルコ・シリアでどういった体感報告が寄せられていて、それを日本(気象官署)に置き換えるとどんな感じになっていたのかのイメージを膨らませていきましょう。

午前4時過ぎの『M7.8』

まず1回目の地震(M7.8)の現地の体感報告(DYFI?)はこんな感じです。断層に沿って「MMI:9」が並び、かなり遠くまで「MMI:8」が連なっています。そしてトルコ・シリア国境方面にかなり広くオレンジ色(MMI:7程度)が分布しています。

・MMI9:Antakya、Hassa、İslahiye
・MMI8:Kahramanmaraş、Gaziantep ほか

ざっくりイメージとしては、断層直上は日本でいう震度6強~7であり、断層に沿って「震度6以上」に覆われています。そして『東日本』といった広範囲ほぼ全域が「震度5クラス」といった具合です。これはもはや『東日本大震災』の時の震度分布に匹敵するような面的な広がりだという風に感じます。

これを私でいう「旧震度」(気象官署での震度観測網)に簡易的に当てはめてみますと、

イメージ(1) 265°回転(2) 290°回転
震度7(激震)横浜、館山、勝浦諏訪、飯田、甲府
静岡、三島、石廊崎
震度6(烈震)上越、長野、松本、
諏訪、甲府、河口湖
東京
上越、長野、松本、
軽井沢、網代、大島
震度5(強震)柿岡、宇都宮、日光
前橋、熊谷、秩父
千葉、飯田、軽井沢
新潟、富山、輪島
高山、網代、三島
会津若松、新潟
前橋、宇都宮、日光
熊谷、秩父、東京
横浜、館山、御前崎
富山、輪島、高山

これぐらいのスケール感になろうかと思います。規模としてはちょうど『関東大震災』に匹敵するほどの範囲になっていてもおかしくない被害が、事実2月には、トルコやシリアにもたらされています。

お昼すぎの『M7.5』

そして現地時間では当日の昼に起きた「M7.5」の地震では、今までとは少し違ったエリアが激烈な揺れに襲われ、新たな被害を各地にもたらしました。USGSの「DYFI?」を再び引用すると、

カタカナの「イ」の左側の部分にあたるようなエリアが激烈な揺れに襲われたことが分かります。加えて、シリアのアレッポなどでも被害が顕著だった報告が寄せられているように、「熊本地震」の2回目の地震と同様、弱くなった建物が新たな強い揺れで倒壊するといったケースもあったと窺えます。こちらも先ほどと同様、日本に簡易的に当てはめてみますと、

イメージ(1) 265°回転(2) 290°回転
震度7(激震)諏訪、飯田、静岡高山、岐阜
震度6(烈震)御前崎、三島、網代名古屋、諏訪

こういった範囲が『余震』とも言えるような地震で強烈に影響を受けている点は見過ごせないと思います。やや小規模かも知れませんが、(1) なら富士川沿いの断層帯、(2) なら明治の『濃尾地震』の再来のようなエリアが本震以上の揺れに襲われることになると見られます。

ではここから、タイムライン的に実際の地震の発生状況を、敢えて2つのパターンで『日本』式に表現してみようと思います。

2つのパターンを時系列に追ってみた

まずは、未明(午前4時過ぎ)に本震(M7.8)が発生して上越から千葉や伊豆といった太平洋側まで、一気に断層が破壊される昭和以降で最悪の内陸地震が発生してから、明け方までのタイムラインです。

(1)本震 → 大都市にM6.7 → 数分起きの緊急地震速報

発生日時M震度パターン(1)パターン(2)
04:17 (2/6)7.8上越 ~ 千葉上越 ~ 伊豆
04:265.75強東京多摩静岡市葵区
04:286.76強東京多摩静岡市葵区
04:365.65強東京23区静岡市清水区
04:585.1神奈川県西部静岡市駿河区
05:035.55弱長野県北中部長野県北中部
05:235.2東京多摩静岡市葵区
07:185.05弱新潟県上越新潟県上越

最初の地震で大混乱に陥った後、まだ日も明けない午前5時までに計5回、首都圏や静岡市内を中心として緊急地震速報が連発し、本震の11分後には2004年の『新潟県中越地震』クラスの地震が余震として政令指定都市の間近で起きる計算となりました。

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さらに、本震の約19分後の午前4時36分の地震は、パターン1ならば東京と千葉、パターン2なら静岡市の駿河区と清水区の境辺りという都市圏でM5クラス後半の地震(イメージ的には2021年10月の千葉県を震源としたやや深い地震が、ごく浅い所で起きる感覚)が起きています。

そこから午前5時からは長野県や上越へと中規模地震の中心地は移りますが、断層に沿ってM4クラスで震度4前後の地震は止まることを知らず、東日本から中日本は大混乱に陥ります。

(2)最大誘発地震で再び県を跨いで震度7相当 → 6クラス連発

発生日時M震度パターン(1)パターン(2)
04:17 (2/6)7.8上越 ~ 千葉上越 ~ 伊豆
13:247.5諏訪 ~ 静岡長野 ~ 岐阜
13:266.06弱長野県北部長野県北部
13:355.86弱長野県中部長野県中部
13:515.76弱長野県北部長野県北部
14:015.05弱山梨県西部長野県南部
14:055.1長野県西部岐阜県美濃東部
15:026.06弱静岡県北部岐阜県美濃西部
16:075.05強  〃   〃
16:395.35強長野県中部岐阜県飛騨
16:445.05弱長野県北部長野県北部

このように、2回目の地震は「イ」の左側にあたるようなエリアで新たに『最大震度7』相当の地震となり、最初の地震では震度4~5クラスだった地域でも新たに激烈な被害が出たと想定されます。

そこから30分のうちに『震度6』クラスの地震が立て続けに長野県あたりで3回、更に昼過ぎになっても長野~静岡や、長野~岐阜といった想定エリアで強烈な揺れを齎す地震が続いたことになります。

どうでしょう? 皆さんはこのクラスの地震だったということを理解していましたでしょうか? この震源地や震度はあくまでも私のざっくりとした「イメージを伝える意味での推定」ですが、マグニチュードや深さは実際にトルコで起きたものを元にしています。

(参考)日本の歴史上の広域に被害が出た内陸地震

日本では少なくともこれだけ広域にまたがる『プレート境界型の内陸地震』は例がなく、歴史的にみても百年に1~2回あるかどうかといったレベル感かと思います。しかし裏を返せば、

  • 818年8月ごろ(弘仁9年7月) 弘仁地震 – M7.9、上野国武蔵国などの関東内陸で液状化を伴う地震。死者多数、山が崩れ数里の谷が埋まり、数え切れないほどの人々が圧死。現在の震度階級にして震度5以上の揺れが、関東地方のほぼ全域で観測されたとみられている。
  • 1586年1月18日(天正13年11月29日) 天正地震(東海東山道地震、飛騨・美濃・近江地震) – M7.8 – 8.1(8クラスの地震と6クラスの地震が接近して立て続けに発生した可能性あり)、死者多数。
    飛騨・越中などで山崩れ多発、白川郷で民家数百軒が埋まる。内ヶ島氏帰雲城もろとも滅亡。余震が1年以上続く。三河湾若狭湾という日本海・太平洋両岸での大津波記録が複数あり、複数の地震の同日発生の可能性がある。
    近畿から東海北陸にかけての広い範囲、現在の福井県、石川県、愛知県、岐阜県、富山県、滋賀県、京都府、奈良県、三重県(越中加賀越前飛騨美濃尾張伊勢近江若狭山城大和)に相当する地域にまたがって甚大な被害を及ぼしたと伝えられる。また阿波でも地割れの被害が生じており、被害の範囲は1891年濃尾地震(M8.0-8.4)をも上回る広大なものであった。
  • 1614年11月26日(慶長19年10月25日) 広い範囲で地震 – M7.7。畿内以外の記事は後世の信憑性の劣る史料であり京都付近の地震ともされる。南海トラフの巨大地震とする説あり。震域は会津、伊豆紀伊山城、松山諸国まで及んだ。越後高田藩では地震と津波により死者多数とする記録もある※が疑わしい、京都で寺社・民家が多数壊れ 死者も出たことから、震源が京都付近の局所的な地震とする見解もある。
    同日に、伊豆と小田原と広い範囲で有感。津波が発生し千葉県銚子市飯沼観音の境内まで到達したとの記録がある。池上本門寺五重塔が傾く。

こういった『疑わしい』とされるほど広域に被害の記録がある地震に関しても、ひょっとすると、今回見てきたような数百キロの長さを持つ巨大な断層帯を持つ地震活動がヒントになるかも知れません。

もちろん、上に書いてきたような地震はこういった断層が現実に存在する訳でなく、あくまでもトルコで起きた地震を日本地図に置き換えたシミュレーションに過ぎません。しかし、糸魚川静岡構造線や中央構造線などで最大として想定されている『M8前後』の活断層型の巨大地震がひとたび現実に起きれば、少なくとも上でみてきたようなエリアが激烈な揺れに見舞われることが想像されるのです。

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日本の建物は確かに耐震強度は高いですし、震度階級もマグニチュードも断層の破壊される角度なども違うかとは思いますが、実際にトルコで起きたような地震が日本で絶対に起きないと言い切れるものでもないかと思います。

かつては、「日本ではM9クラスの超巨大地震は起きない」というのが定説だったと聞きます。古文書や歴史書にある記述が誇大な表現だとして軽視され、地質的な津波の痕跡がようやく見つけられ注目され始めた頃に起きた『東北地方太平洋沖地震』(2011年・東日本大震災)は、十分に想定することが出来ていませんでした。

万が一、政府などが評価している大断層が大地震を発生させてから、上に見られたような地震が再注目されるかも知れません。私の記事で見てきたような活動が起きないことを願うばかりですが、こればかりは分かりません。せめて、今回の事例を対岸の火事として捉えるのでなく、皆さんのお住まいの地域の近くで起きることも想定しつつお過ごし頂ければと思います。以上、Rxでした。

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