旧震度「大阪」(大阪中央区大手前)

【はじめに】
この記事では、気象官署「大阪管区気象台(大阪中央区大手前)」で観測された過去の強烈な揺れをまとめていきます。

ウィキペディアなどで学ぶ「大阪管区気象台」

まずは、日本語版ウィキペディアから「大阪管区気象台」について見ていきます。

大阪管区気象台(おおさかかんくきしょうだい)は、大阪府大阪市中央区大手前4-1-76の大阪合同庁舎第4号館内(15 – 17階)にある管区気象台

大阪管区(三重県を除いた近畿地方山口県を除いた中国・四国地方)を管轄し、気象情報の発表や各観測を行っている。また、本来気象庁が発表する緊急地震速報が何らかの理由で発表できなくなった場合には、この気象台から発表する。

大阪観測所として1882年(明治15年)7月に大阪市北区堂島に設立。1933年(昭和8年)7月に大阪市生野区勝山通9丁目(現御勝山南公園)に移転し、1968年(昭和43年)7月に再移転している。1954年(昭和29年)に日本国内初の気象レーダーを設置した。

大阪管区気象台
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
( 同上 )

1882年以来、約140年の観測の歴史を持つ気象官署「大阪」。ここからは気象庁の「震度データベース検索」で調べられる1919年(大正8年)以降を対象に話していきます。

震度1以上(有感地震)は年に数回程度

データが固まっている1920年代から2010年代までの100年間を、「年代別回数」で集計した表が下になります。戦後は50回前後で推移していて、年平均とすると5回程度ということですので、まさに数ヶ月に1回という計算になりますかね。

期間震度1震度2震度3震度45弱合計
1920年代6393277
1930年代68220173
1940年代13726104177
1950年代3472144
1960年代2688244
1970年代2110334
1980年代33164154
1990年代43183165
2000年代2182132
2010年代3192143
合計47711339131643
気象庁 震度データベース検索
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 大阪中央区大手前 で 震度1以上 を観測
・地震回数の集計 : 年代別回数

1920年代後半あたりから近畿地方でも地震活動が特に活発になり、1940年代には鳥取地震や昭和東南海地震、三河地震、昭和南海地震、福井地震などでの地震活動が有感となり、184回となっています。

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震度4(中震)以上:10年に1回ずつぐらいで計14回

「大阪管区気象台」での震度4以上は、ここ100年で14回観測されています。1950年代以降に限ってみると、10年代ごとにほぼ1回のペースで発生していることになります。下の表でお確かめ下さい。

地震の発生日時震央地名深さ最大震度「大阪」
1923/09/01 11:58:31.6神奈川県西部23 km7.9震度6震度4
1927/03/07 18:27:39.2京都府北部18 km7.3震度6震度4
1936/02/21 10:07:58.2奈良県18 km6.4震度5震度5
1943/09/10 17:36:53.5鳥取県東部0 km7.2震度6震度4
1944/12/07 13:35:40.0三重県南東沖40 km7.9震度6震度4
1946/12/21 04:19:04.1和歌山県南方沖24 km8.0震度5震度4
1948/06/15 20:44:43.8紀伊水道0 km6.7震度4震度4
1952/07/18 01:09:51.4奈良県61 km6.7震度4震度4
1963/03/27 06:34:39.1若狭湾14 km6.9震度5震度4
1969/09/09 14:15:35.9岐阜県美濃中西部3 km6.6震度5震度4
1985/01/06 00:45:38.5和歌山県北部70 km5.8震度4震度4
1995/01/17 05:46:51.8大阪湾16 km7.3震度7震度4
2004/09/05 23:57:16.8三重県南東沖44 km7.4震度5弱震度4
2018/06/18 07:58:34.1大阪府北部13 km6.1震度6弱震度4
気象庁 震度データベース検索
・地震の発生日時 : 1920/01/01 00:00 ~ 2019/12/31 23:59
・観測された震度 : 大阪中央区大手前 で 震度4以上 を観測

近畿地方の中~大規模地震や関東・中部の大地震で観測された事例が大半で、しかもそのほとんどが、震度4(中震)という判断になっています。直近例をみても、

兵庫県南部地震(1995年)
大阪での震度が4で、大阪よりも震源から遠い京都が5となっている。当時、気象庁が大阪府内に設置していた震度観測点は大阪管区気象台(大阪中央区大手前)の一か所だけで、震度計は上町台地の固い地盤に設置されていたため計測震度が4となっている。

しかし、これが大阪市、あるいは大阪府全体の震度を代表しているわけではなかった。

日本道路公団阪神高速11号池田線の建設現場に設置した震度計が震度7、北大阪急行電鉄桃山台駅に設置した震度計が震度6を観測している。また、地震後の気象庁の地震機動観測班による現地調査では大阪市西淀川区佃、豊中市庄本町、池田市住吉と、大阪府内にも震度6と判定される地域があった。

関西地震観測研究協議会が大阪府各地で行っていた地震観測の記録を気象庁の計測震度を求める方法に倣い算出した震度は、信貴山の震度4(計測震度3.6)を除き何れも計測震度4.5-5.4(震度5弱-5強)となる。例えば大阪市福島区吉野町では震度5強(計測震度5.4)である。

また、大阪管区気象台の記録を今日の計測震度の算出方法に倣って計算し直すと、計測震度4.54-4.55(震度5弱)になるという。

兵庫県南部地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

阪神・淡路大震災では犠牲者が31名、負傷者も3,500名を超えた大阪府ですが、『大阪の震度は4』と報じられ、当時から『もっと揺れは強かったはずだ!』といった声が聞かれました。

一つには観測方法の変更によって、今なら「震度5弱」になっていたというデータもあるようですが、純粋に過去の例かもわかる様に、大阪管区気象台がしっかりと場所に設置されているため軟弱な地盤、建物に比べて揺れが小さくなる傾向があることも一因でしょう。

大阪府北部地震(2018年)
地震当日に時事通信などマスメディア各社は「気象庁が1923年(大正12年)に観測を開始して以来、大阪府で震度6弱以上の揺れを観測したのは初めて」と報道した。

しかし、この間に震度の観測法や観測点の密度は大きく変わっており、過去の地震で観測された震度などの情報と本地震を単純に比較することはできない。

さらに、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)では大阪府に限定しても死者は31人、全壊家屋数895棟と本地震より遥かに被害が大きかった。

大阪府北部地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

メディアが気象庁記者会見で「間違いのない報じ方」を気象庁に詰めて、その結果、正確性をいささか欠いた結果になったのは皮肉以外の何者でもないと当時感じていました。

上記表の様に、「大阪管区気象台で観測された震度」という(地点を変えない)基準で物事を見れば、十数年ぶりの強さだったという見方が出来ます。

確かに大阪府北部の一部地域によっては阪神・淡路大震災を上回る強烈な揺れだったことは事実でしょうが、その他の地点に広げて物事を言うのは、基準も異なる中で誤解を招きかねず、ある意味で正確性すら欠いていた様に感じますね。

震度5(強震):大阪管区気象台で昭和以降で唯一の地震は?

上の様な観点からすると、では「大阪」(大阪管区気象台)で最も強かった地震は何だったのか。そこに注目する必要が出てきます。上の「震度4以上」の図で唯一、「大阪管区気象台」で震度5を観測した事例として出ているのが、1936年の事例です。詳しくみていきましょう。

https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/#19360221100758

1936年2月21日の午前10時7分に起きたM6.4(深さ18km)の地震です。震源は気象庁の分類では「奈良県」とされていますが、ほとんど大阪府との県境付近です。以下、ウィキペディアからです。

河内大和地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

近代以前のネーミングに則って、「河内大和地震」と呼ばれているこの地震は、『2分以上にわたって激しい揺れが続き、大阪測候所の地震計の針が振り切れるほどだったといわれる』とあるほどの強烈な揺れだったそうで、震源の位置などからしても、確かに「大阪管区気象台(当時は測候所)」の観測史上最大級の揺れだったとしても納得が行きます。

当時の被害状況は、様々な文献や論文などが無料で閲覧できますので、各自お調べ頂ければと思いますが、我々の生きた時代より昔の地震活動や揺れを知ることで、正確に恐れることに繋がることを願っています。時代環境も震度階級も観測方法も異なる訳ですから、単純な答えを短絡的に求めようとせず、違った側面からの情報発信をしていければなという風に考えています。

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