(新)季語解説「案山子(かかし/かがし)」

【はじめに】
この記事では、季語「案山子(かかし/かがし)」について私(Rx)なりに調べてみたので、皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。

ウィキペディアに学ぶ「案山子」について

かかし案山子、鹿驚)は、などの中に設置して、作物を荒らすなどの害獣を追い払うための田畑に立てる竹やわらなどで作った人形やそれに類するなんらかの仕掛けである。地域によっておどしそうずなどさまざまな異称がある。

かかし
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本語版ウィキペディアの「案山子」の冒頭部です。我々が想像する案山子が端的に書かれています。

機能と前提

古典的には、かかしはで造形した人形であることが通例であった。これは機能の面から言えば、鳥獣に対して「人間がいる」ように見せかけることを目的としている。人間が農作業をおこなっているときには鳥獣は近づかないからである。
和漢三才図会』の「案山子」の絵図には、笠をかぶり、蓑を着させ、竹足は3本で、弓矢を構えて威嚇する狩人タイプが見られる。

現代においては巨大な目玉を模した風船なども用いられる。これは、大きな目を恐れるという動物本能を利用したものである。

カラスなどは特にその能力が高いが、田畑を狙う側も当然ながら学習能力があり、動かないかかしは無害なものと認識されてしまう。そのため、やその他の動力によって不規則な動作をするものも工夫された。田畑の上に糸を走らせ、そこに風車の類を通したり、銀色のテープを多数吊り下げることで、きらきらと光り鳥獣を威嚇する効果を出すものなどがある。

( 同上 )

「カラス」などの頭の良い動物の『慣れ』との戦いの歴史であるということが窺える様々な工夫が読み取れます。

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名称

「かかし」の直接の語源は「嗅がし」ではないかとも言われる。鳥獣を避けるため獣肉を焼き焦がしてに通し、地に立てたものもカカシと呼ばれるためである 。これは嗅覚による方法であり、これが本来のかかしの形であったと考えられる。

また、「カガシ」とも呼ばれ、日葡辞書(17世紀に発行された外国人の手による日本語辞典)にもこちらで掲載されている。またカカシではなくソメ(あるいはシメ)という地方もあり、これは「占め」に連なる語であろう。

( 同上 )

後述しますが、俳句歳時記などでは「かし」と濁って読むものもあります。これらの語源に「嗅が」す などがあるための濁りではないかと思います。

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ちなみに、2022年の金秋戦で2位になったフルーツポンチ村上名人が句の解説をする時も『かがし』という歳時記に収録されている表現と一般向けの『かかし』という読みを両方使ってたのは、こういった歴史にも配慮していたのだと思います。

農耕社会とかかし

神とかかし
かかしは、民間習俗の中では田の神の依代(山の神権現とも言われる)であり、を祓う効用が期待されていた。というのも、鳥獣害には悪い霊が関係していると考えられていたためである。人形としてのかかしは、神の依り代として呪術的な需要から形成されていったものではないかとも推察できる。蓑や笠を着けていることは、神や異人などの他界からの来訪者であることを示している。

見かけだけは立派だが、ただ突っ立っているだけで何もしない(=無能な)人物のことをかかしと評することがある。確かにかかしは物質的には立っているだけあり、積極的に鳥獣を駆逐することはしない。だがしかし農耕社会の構造からすると、農作物(生計の手段)を守る役割を与えられたかかしは、間接的には共同体の保護者であったと言えよう。

古事記においては久延毘古(くえびこ)という名の神=かかしであるという。彼は知恵者であり、歩く力を持っていなかったとも言われる。立っている神 → 立っている人形、との関連は指摘するまでもないとも考えられるが、上記の通り語源との関係で、明確ではない。

( 同上 )
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かかし揚げ
かかし引き、ソメの年取り、とも言う。農耕社会の一部で行われる行事で、旧暦10月10日に かかしを田から引き上げ庭に立てる。これはかかしが神として祀られる重要な例の一つで、蓑笠をかぶせて熊手などを持たせ、などを供える。かかしの神が天に上がる、あるいは山の神になる(戻る)日であるとされる。また、関東には1月14日にかかしの神を祀る風習をもつところもある。

( 同上 )

この「かかし揚げ」は、俳句歳時記でも季語として収録されているものがあります。そして、以下に「かかし祭り」の例が示されていますが、当然全国各地に似た風習があり、季節が違うため、個々の祭事については個別にググって頂ければと思います。

かかし祭り

自作のかかし作品のコンテストを行う「かかし祭り」が、日本全国の各地で行われている。

俳句歳時記にみる「案山子」について

そして、手元の電子辞書などで「案山子」を調べると、歳時記によって幾つかの傾向が窺えました。

歳時記名かがしかかしその他
角川俳句大歳時記×「嗅し(かがし)」が【焼帛(やきしめ)】の傍題
合本俳句歳時記×
ホトトギス俳句季題便覧
よくわかる俳句歳時記
現代俳句歳時記×
◎:主季語、◯:傍題、×:記載なし

『現代俳句歳時記』以外は、主たる読みを「かし」として、物によっては「かかし」と清音のものも記載しているという状況です。なので、俳句中級者以上は『かし』と読む傾向が強まるでしょうね。

『かし』という読みを知らない初心者が中心の場では『かかし』と読み、『かかし』と読むと不勉強だと誤解されそうな場では『かし』と読むなどの使い分けも必要かも知れません💦

「プレバト!!」金秋戦で2位になった『案山子』の句

先ほども触れましたが、「プレバト!!」の2022年・金秋戦で2位になったフルーツポンチ村上さんは、『案山子』の句を披露して、優勝まであと一歩のところまで行きました。

金秋戦決勝2位大谷の球大谷が打つ案山子

史上最高難度とされた「大谷翔平」という兼題で、大谷に負けない季語が負けないよう工夫する必要があり難しいと語っていた村上さんですが、季語の『案山子』が活きていると周囲からも高評価でした。

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ただ優勝を逃した主要因として、『夢オチ』の俳句バージョンともいえる『案山子オチ』が発想として無くはない(多少の類想感という)点がわずかに減点されたとのことでした。

俳句歳時記にみる「案山子」の例句5句

ある意味、「案山子オチ」が俳句の世界ではベタなのでしょう。だからこそ俳句歳時記にはあまり大胆な「案山子オチ」は見受けられませんでした。以下に5句を例句から紹介します。

  • 『ふと恐し人に似すぎてゐる案山子』/高田伸美
  • 『担任の教師に似たる案山子かな』/稲荷霜人
  • 『案山子立つうしろ姿の山頭火』/武田和郎
  • 『雀らと遊び惚けし案山子抜く』/石井青波
  • 『磔刑のいつまで続く捨案山子』/小木田久富

上の2~3句は、「案山子」を何者かに見立てた作品です。人を模したものを想像する「案山子」に、何者かを連想するという発想がベタながら鉄板なのかなと思いました。

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そして、基本的に「案山子」も季節感があると共に、刈り入れの時期を終えて冬を迎えれば、その年の役目を終えます。『捨案山子』も季語として収録されていますが、そうした所からも季節を感じます。

皆さんもベタになりすぎない程度に、様々な発想を巡らせ、『案山子』という季語にチャレンジしてみて下さい! 俳句が出来たら、ぜひコメント欄にもお寄せ頂ければと思います。ではまた。

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