【春】の「ひとつ」なプレバト!! 俳句
まずは「春」の俳句から。中田さんの句は春光戦の本戦で上位に入った句、ミッツさんの句は予選落ちした後に本戦に出場していたら! と夏井先生が絶賛した作品です。
- 『若芝に大の字身ひとつの移住』/中田喜子
- 『雛あられ言えないままの恋ひとつ』/HAN-KUN’
- 『沈黙の春尽く角砂糖ひとつ』/ミッツ・マングローブ
一番上は「身ひとつ」と自分の体を、3つ目のミッツさんの句は「角砂糖」という物を『ひとつ』と言っていますが、HAN-KUNさんの作品の添削例では「恋」という実体のない概念に『ひとつ』とつけることで、まるで実体のあるかのように切り分けられたエピソードとしての解像度が上がります。
【夏】の「ひとつ」なプレバト!! 俳句
夏に関しては以下の3句。梅沢富美男さんの句集『一人十色』の14頁にも掲載されている比較的初期の傑作が1番目にあります。仮に事故があった直後であれば複数の花束が供えられているかも知れませんが、時間が経つとそのことも町の中の記憶に風化していき、遺族など一部の親しかった人にだけとどまらなくなる……ことなどが窺える奥行きが見事な作品です。
- 『道ばたの花束ひとつ虹立てり』/梅沢富美男
- 『花火果て星のひとつを探し行く』/杉山愛
- 『石段を走る石竜子や星一つ』/松岡充’
下の2つに関しては、披露された時期に数年の差があります。それでも偶然の一致としての「星」一つであることの映像喚起力は見事だと感じました。
【秋】の「ひとつ」なプレバト!! 俳句
どことなく夏の名残の寂しさが身にしみる秋の俳句たち。静かなところに目を光らせた作品が目立ちました。ちなみに、藤本さんの作品は厳密には「一粒」ですが、意味合いが似ているのでここに加えさせえてください(^^
- 『秋晴や焦げ石に米粒一つ』/北山宏光
- 『月光のひとつぶ電波時計ぴくん』/藤本敏史’
- 『秋夕焼機内に遺影の席ひとつ』/梅沢富美男
さて北山さんが夏井先生から絶賛された2023年8月の作品。アウトドアのカレーという兼題に対して、秋晴れという広い光景から徐々にポイントを絞って、僅か指先レベルの「米粒一つ」にフォーカスするあたりのピントの絞り方はお見事でした。
【冬】の「ひとつ」なプレバト!! 俳句
最後に冬です。いずれもどことなく「冬の中の温かみ」みたいなものを感じさせる『小さいもの』というのが言外に含まれているように感じました。
- 『じっちゃんの咳ひとつ澄んだ空』/梅沢富美男
- 『この先をひとつ曲がれば春近し』/峯岸みなみ
- 『節分の次の日靴に豆ひとつ』/藤本敏史
フジモンの本作は、番組の最初期に披露され、実に80点という今ではお目にかかれないような高得点となった作品。峯岸みなみさんも事前の予想を良い意味で裏切り、70点才能アリを獲得しています。
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