「プレバト!!」俳句だけで『月百句』作ってみた【2023年版】

Part1:月のプレバト!! 名句を味わう

伝統的に三大季語とされる「雪・月・花」。雪や花は季節感が強い(というか時期を選ばないと見ることすら出来ない)ですが、月は一年間見上げれば空あるので意識しないと『季語感』が弱いものです。

ただここから見ていく9句はいずれも「月」という季語をしっかりと立てています。私(Rx)オススメの作品で、「月」俳句の魅力を堪能していきましょう。

  • 君の耳ただ満月の照らす音/向井慧
  • 大仏の御手から月は生まれます/藤本敏史
  • 夜晴れにペリッと剥がせそうな月/村上健志
  • 月光のひとつぶ電波時計ぴくん/藤本敏史’
  • スマホ死す画面に浮かぶ指紋と月/北山宏光
  • 総立ちのフェンウェイパーク星月夜/横尾渉
  • 夕月夜一人暮らしの光熱費/二階堂高嗣
  • アクセルを開くや鉄馬月に吠え/的場浩司
  • ホークスは白星中洲には満月/篠田麻里子’

Part2:月のさまざまなプレバト!! 俳句を味わう

冒頭にも書きましたが、「月」は一年中空に浮かんでいます。そのため、「月」に関する季語は秋だけでなく、その他の季節にもあります。先に秋に至るまでの各季節の季語をまとめておきましょう。

【冬】(旧暦10~12月)

そのまま「冬の月」という語だけでなく、「冬月」、「月氷る」や「月冴る」等の傍題も見られます。

  • 冬月を捕う輪ゴムの輪の中に/千原ジュニア’
  • かぶりつく肉まん天に冬の月/イワクラ’
  • 我が息に曇る鏡や冬の月/NANAMI’
  • 百万個の電飾冬の月高し/丸岡いずみ’
  • 冴ゆる月眠りにつけぬ深夜便/パックン

「百万個の電飾」はひょっとするとクリスマスの時期かも知れませんし、神戸ルミナリエかも知れません。「肉まん」を冬の季語とすると季重なりですが、こちらは相互に冬を盛り上げている効果も出しているように思えます。

そして、輪ゴム、曇る鏡、深夜便といった季語でない単語との取り合わせが、冬の月(夜)を強く印象づけます。この他、下のように「枯柳」を主たる季語として月を弱い季語とするのも手だと思います。

  • 枯れ柳風に踊れば月笑う/髙田延彦

そして、「冬の月」よりも更に季節が進んで、真冬【晩冬】の季語として“寒”の字を用いた「寒月」を詠んだ句も披露されたことがありました。

  • 寒月終電LEDのひかりの粒/哲夫’

【春】(旧暦1~3月)

「春の月」というと、秋と似た気温のはずなのに、湿度も多く気温が上昇する時期だからか、どこか温かみの強い作品が多いように感じます。例えば、

  • 春の月消しゴムのカスあたたかし/村上健志
  • 縦列駐車こつん春の月くすっ/東国原英夫
  • 鍵失せてファミレスにいる春の月/こがけん
  • 抱く犬の目よ春月の校舎裏/的場浩司’

フルポン村上さんの句は、『消しゴムのカス』という非常に小幅なぬくもりのものが、「春の月」という季語と程よい距離感・温度感で、特待生時代の初期の傑作だと思いました。

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 高野辰之作詞岡野貞一作曲小学校唱歌に『朧月夜(おぼろづきよ)』があります。この唱歌の歌詞の歌いだしが 菜の花畠に、入日薄れ、 とあるように、春の情景を描いたものです。

  • (おぼろづきよ、おぼろづくよ) がほのかに霞んでいる情景を指す言葉。春の季語。朧月夜の発生は黄砂影響によるものであり、また天体観望、観測には不適とされる。
朧月夜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そんな「朧月」を使った春の俳句を2つ紹介しておきましょう。どちらも外の情景となっていますね。

  • 朧月旅の鞄を枕とし/鷲見玲奈’
  • 遠吠えや家路に遠き朧月/愛華みれ’
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【夏】(旧暦4~6月)

一応、「夏の月」という季語もあります。しかし、真夏の熱帯夜に月を見上げて鑑賞する余裕がない上に、湿度も高く曇りがちなため賛美に適さないためか余り作句例は多くない印象です。

  • 裏道も尾灯果てなし夏の月/和田アキ子’
  • 歩きつつ噺の稽古月涼し/瀧川鯉斗
  • 延長の末に引き分け月涼し/村上健志
    延長に引き分け夏の月赤し/村上健志

むしろ、「月涼し」という季語が好んで使われるかも知れません。但し、現実には『涼し』と感じられるような月の夜は令和の御代においては稀で、連日の『熱帯夜』な夏ではなく、歳時記的には秋に入ってからでないと「月涼し」と感じるようなタイミングは期待できなそうです。

  • 冷酒に心の月を入れて呑む/立川志らく

ちなみに上の句。『月』は季語ではないですが、冷酒は夏の季語ですし、何となく心地よい感じのする作品です。

【初秋】(旧暦7月)

そして、秋を迎えます。太陽暦でいえば「立秋」の8月上旬、太陰暦(以下「旧暦」)では旧暦7月ですから、まだ暑い盛りに始まる“暦の上での秋”。

「月」は秋の季語と言いますが、厳密には秋に3~4回来るすべてを指す場合もありますが、いわゆる「中秋の名月」(旧暦8月15日)を主に「月」が指すことも多いです。

俳句の世界で単に「月」と言った場合、それは秋の月をさし、それ以外の季節の月は「春の月」「夏の月」「梅雨の月」「盆の月」「冬の月」などと呼び区別する。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そのため、秋になって最初の満月(新暦でいう8月下旬頃、旧暦でいう7月15日)は、「盆の月」などと形容され、区別したうえで鑑賞されます。

  • 野球部の従兄は素振り盆の月/村上健志

最後に、秋野暢子さんが作った句を紹介しますが、俳句で「踊り」と単独で言った場合は『盆踊り』のことを指します。今は月遅れの8月15日を指すことが多いですが、本来は「旧暦7月15日」の満月の日が「お盆(盂蘭盆会)」でした。

  • 亡き母とならんで踊る月あかり/秋野暢子’

Part3:【仲秋】(旧暦8月)の月を味わう

いよいよ旧暦8月の各季語を紹介していきます。「旧暦」は太陽暦と異なる月の満ち欠けを基準としているため、年によって数週間前後します。それをしっかりと把握しておくことが季語の本意を理解する第一歩かと思いますので、最初に簡単に「旧暦8月」を解説しておきましょう。

新暦20232024202520262027
朔日09/1509/0309/2209/1109/01
上弦09/2209/1009/2909/1809/08
名月09/2909/1710/0609/2509/15
下弦10/0609/2410/1310/0209/22
晦日10/1410/0210/2010/1009/29

このようなスケジュールが見込まれています。旧暦8月といいますが、まさに「秋の真ん中」といった具合の新暦の時期に当たります。「中秋の名月」は、新暦9月後半から10月上旬あたりとなるのです。これなら多少は体感とも合いそうです。

細かい部分は、冒頭にも紹介した「夏井いつき」先生の「『月』の歳時記」に譲るとして、ここからも「プレバト!!」で披露された俳句を中心に、秋の月の季語を纏めていきます。

朔日から上弦まで

旧暦8月1日の様に、月が隠れて見えない一日のことを「朔日(さくじつ)/朔(さく/ついたち)」などと言いました。そこからちょうど半月(上弦の月)になる8日までを取り上げます。

旧暦月齢20232024202520262027季語・異名など
朔日09/1509/0309/2209/1109/01朔日の月、朔日ごろの月
初月、初月夜
2日二日月、繊月
3日三日月、新月、若月、眉月
4日四日月
5日五日月
6日
7日
上弦
(7.5
09/2209/1009/2909/1809/08弓張月、弦月、半月、片割月
月の弓、月の舟、上の弓張

月齢としては「0」ですが、数字のゼロの概念が導入される前に生まれた「旧暦8月◯日」という表現は「仲秋の月齢0の日≒8月1日」としているため、月齢と日付に1日程度のズレが生じます。なので近年のカレンダーアプリなどで「月齢」が出るものが良く用いられますが、旧暦の数字とイコールではない点に注意が必要です。

旧暦8月1日
朔日は月が見えないのですが、それを敢えて「朔日の月」などという季語で表現することも可能です。「初月」は俳句では旧暦8月1日に限定して使うことが一般的とされています。

旧暦8月2日
ようやく細く「月」を視認できるのが月齢1の旧暦8月2日頃でしょう。「繊月せんげつ」の文字どおり極めて細い月を鑑賞して、現代風にいう「カウントダウン」を楽しみます。

旧暦8月3日
いわゆる「三日月」です。但し、現代人が注意すべき点として、

 ・(上記の理由から)「月齢3」ではなく「月齢2」が『三日月』である
 ・月齢2の月だから、実際に見ると絵で書くよりも(思ったよりかなり)細い
 ・欠けていく下弦の頃の細い月は、本来は『三日月』とは呼ばない

これらは挙げられると思います。

  • 三日月が冷やかす夜の半袖を/筧利夫’

旧暦8月4日:四日月
旧暦8月5日:五日月

ここらへんに来てようやく我々が日常「三日月」と思うような太さになってきます。しっかりと月齢を抑えたり、日々鑑賞していないと、細かく区別できないため、どうしても作句例は「三日月」に収斂をされてしまう事情もあり、俳句歳時記でも小型なものなどは、ここまで細かく立項していないことも多いです。

旧暦8月6日・7日
旧暦8月8日:弓張月、弦月、半月、片割月、月の弓、月の舟、上の弓張etc

ちょうど半分の月になるのが膨らむ時期にあっては「上弦の月」です。上弦の見分け方としては、

  • 東からのぼって夕方に南中し、真夜中に西の空へ沈んでいく
  • 西側が明るく、太陽光の当たらない東側が暗い

これらが我々でも判別できそうなところとして知られています。この朔月から上弦までに至る時間帯に知っておきたい季語として以下の2つを紹介しましょう。

月代/月白(つきしろ)
月がのぼる前に、東の空が白く明るむ様子を表す言葉で、これは俳句歳時記では一般的には「三秋」の季語となっています。なので、これは旧暦8月に限らないのですが、知っておくと便利でオシャレな語だというふうに思います。

  • 寒に覚め窓には月白の蔵王/馬場典子

夕月夜、夕月、宵月夜、宵月
前述のように、夕方にのぼってきて夜半には沈んでしまう“上り月”の頃を指す表現です。「プレバト!!」でも作句例は多くて、

  • 名前なき猫と君待つ夕月夜/千原ジュニア’
  • 長身の君とあいみみ夕月夜/トリンドル玲奈’
  • 夕月が囁く妻と帰る道/蛭子能収’

いずれも愛しい人との日常を「夕月(夜)」という季語に託した添削後の秀句だと感じます。

上弦から待宵(十四夜月)まで

「上り月」が進むに連れて、月は明るくなっていきますが、半月を過ぎると「満月」まであまりめぼしい命名の季語は少なく、14日目の満月前日まで飛んでしまいがちです。一応、『十日月』などもおるので掲載しておきますが、作句例は多くありません。

新暦月齢20232024202520262027季語・異名など
上弦09/2209/1009/2909/1809/08
10十日月
14待宵、待宵の月、
小望月、十四夜月
名月1509/2909/1710/0609/2509/15

近世・近代のように月暦に馴染みの深かった時代と異なり、14日の月であっても見かけ上はほぼ満月ですし、そこらへんの鋭敏さを欠いてしまった現代人にはもう違いが分からないかも知れません。

ここでは本番の前に、「月」単体で詠まれている俳句を一気に紹介しておきましょう。

  • かに道楽見上げ月夜の酔っ払い/立川志らく’
  • 月光をまとうて大仏の白し/篠原梨菜’
  • 実朝のやぐらをぐらし月煌々/林修
  • 月なにを思ふ文明開化の灯/北山宏光’
  • ニュータウンの剥げたポストや月煌々/横尾渉’
  • 水匂う古都の逢瀬の月影よ/ミッツ・マングローブ’
  • 月今宵八坂の塔へ影ふたつ/市毛良枝
  • 静けさや月の八坂に影ふたつ/石田明’
  • 月光に古塔の影や君想う/吉村涼’

まずは日本列島を中心に、昔ながらの名所もめぐりつつの9句。更に、地球全球的に見られるからこそ日本に限らず、そして時代を超えて様々な切り口の俳句を生み出す器の広さがあります。

  • 月清かパリの封筒切るナイフ/藤本敏史’
  • 封筒の刃痕やボンの月の暈/鈴木光
  • 妻を待ち静かな月のサンルーフ/村田秀亮
  • 無線絶え耳に風 見上げ、月/木瀬哲弥
  • 月着地したるがごとくすすき原/ラサール石井’

ここには載せませんが、「プレバト!!」で披露し、一般大会でも入選していた「他流試合」での高校生(当時)の作品も、『アポロ計画』が題材となっていました。ラサール石井さんの頃には月着陸を真似た経験が一般的だったでしょうが、21世紀のうちに「月面詠」が誕生するかも知れませんね。

旧暦8月15日「中秋の名月」

旧暦では7~9月を秋としており、そのちょうど真ん中にあたるから「中秋(の名月)」と呼び習わされている旧暦8月15日。現代天文学における「満月」と太陰太陽暦が必ずしもイコールではないため、旧暦8月15日が満月とならないこともありますが、おおよそこの頃に『月』の季語は集中しています。

新暦20232024202520262027
朔日09/1509/0309/2209/1109/01
上弦09/2209/1009/2909/1809/08
名月09/2909/1710/0609/2509/15
下弦10/0609/2410/1310/0209/22
晦日10/1410/0210/2010/1009/29

風習などについては、Wikipediaの『月見/観月』『中秋節』が詳しいのでそちらに譲るとしますが、「天文」と「人事・生活・行事」のカテゴリーで多くの季語が受け継がれています。

  • 月見酒ほんのり甘き里の味/中村俊介’

「月見」の傍題として、「観月」、「月祭る」、「月の宴」などのほか、「月見酒」、「月見団子」が代表的なところかと思います。

月見団子 月見 かわいい お月見【お月見だんご1セット】 クーポンあり お月見 和菓子十五夜 十三夜 中秋 十五夜 お月見 だんごうさぎ 中秋 飾り 団子 菓子 置物 月見 団子飾り 花 月見月餅 造花 お月見うさぎシール ハロウィン 秋

そして、天文の方では「中秋の名月」をメインとして、季語として「名月」、「明月」、「望月」、「十五夜」などが月そのものを指して並びます。

  • 望月は明し無駄なき我が板書/林修’

こうした「中秋の名月」の夜をしみじみと楽しむ様子を、「良夜」や「良宵りょうしょう」、「佳宵かしょうなどと形容します。そもそも秋は夜長などというように夜を楽しめる季節ですが、特に「良夜」と称すれば、この「中秋の名月」の夜を指すのです。

  • 古書街を漁る一冊 帰路良夜/大久保伸也’
  • 豚骨のスープ良夜のご報告/横尾渉’

どちらも外出をした中での、それぞれの「良夜」です。

もちろん、「中秋の名月」を秋晴れの中に見られる年ばかりではありません。月が雲に隠されたり、或いは雨が降って全く見えなかったりすることもあるでしょう。しかしそんな年にも季語が設けられていて、無月むげつといいます。

  • 無月なり紙ナプキンの置き手紙/村上健志

当時としては健闘の部類だった村上さんが初の2位となった金秋戦の作品でした。

旧暦8月15~16日「満月」

現代の天文学では厳密には区別されますが、基本的には区別されないのが「中秋の名月」≠「満月」となりうるパターンのことです。詳細の説明は煩雑になるので、各々で調べて頂ければと思います。

7. ^ 必ず十五夜に満月(望)になるわけではない。太陰太陽暦では、15日と16日とが半々くらいである。たまに、17日の未明が満月になることがある(例えば、2015年6月3日)。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「満月」を使った「プレバト!!」俳句から2つ。それぞれの人生に様々な経緯がありますが、「満月」の持つ力を17音にも受けているように感じられます。

  • 満月に包まれ眠るベビーカー/藤本敏史’
  • 満月に相輪の影ひとつあり/市川猿之助

「名月」とすると人が賛美する気持ち、「中秋の名月」や「月見」とすると行事の印象が強まり、「望月」とすると平安の雅な感じとなります。対して「満月」はややそういった印象が弱まり、むしろ自然現象として現代的な印象が強まるように思えます。

十六夜からの秋後半の季語

「中秋の名月」の後の季語については、雑学などで聞いたことのある方もいらっしゃるでしょうか。下にざっくり纏めておきましたので参考として下さい。

旧暦月齢季語・異名など
8月15日14十五日月、十五夜、望月(もちづき)、満月
8月16日15十六夜(いざよい)、十六日月、既望(きぼう)
8月17日16十七日月、立待月(たちまちづき)
8月18日17十八日月、居待月(いまちづき)
8月19日18十九日月、寝待月(ねまちづき)、臥待月(ふしまちづき)
8月20日19二十日月、更待月(ふけまちづき)
8月23日22.5下弦の月、半月、二十三日月、弓張月

中秋の名月の翌日に「十六夜」があり、その後は立待 → 居待 → 寝待/臥待 → 更待 と推移していくこととなります。「プレバト!!」ではあまり作句例がないのでここは流します。

先程の「夕月夜」の反対に、下弦の月となると、深夜に月がのぼり明け方に南に正中して西の空へ沈んでいきます。そのため、西へと下る半月を明け方の空に認めることができ、これを季語としては、「有明月」であったり「朝の月」、「残る月」などと呼びます。

  • 大仏を睨むボクサー朝の月/千原ジュニア’

まさに旧暦8月の仲秋を通じて、月の動きを楽しんでいくのが雅とされてきたのです。それだけではありません。旧暦9月13日の月を「後の月」や「十三夜」などとして愛で、中秋の名月とは違った食材で祝う風習も根付いてきました。興味のある方は調べてみて下さい。

最後に一つ要注意の季語を紹介しておきます。「星月夜」です。どうしても「ゴッホ」の絵画があまりにも著名なので引っ張られてしまいますが、ゴッホの絵画が描かれたのは1889年のことで、世界的に著名になったのは20世紀に入ってからです。一方、季語としての「星月夜」は江戸時代には詠まれていたものであることから、注意が必要です。「プレバト!!」の作句例を先に見ますが、

  • 独立の夜やゴッホの星月夜/堀未央奈
  • 銀色の廃墟星月夜のチムニー/千賀健永’
  • 星月夜オペラ幕間の紅茶の香/高田万由子’
  • 星月夜五畳酒場のさざめきに/篠原ゆき子’
  • 赤ちゃんポストに赤ちゃん動く星月夜/東国原英夫’
  • 星月夜ファーストピアスの重力/松岡充
  • 花の名を教えし祖父や星月夜/柴田阿弥’

上2句はゴッホを念頭に置いており、雰囲気は良いですが、本意にマッチしているかは微妙なところ。では、「星月夜」の季語としての本意は何かというと、『月がない(朔日)の夜空なのに、星明かりでまるで月夜のように明るいこと』を指すのです。

ただ、山間部などであれば別かも知れませんが、現代において、特に都市部の明かりがある中では、『星自体が見えない』のが現実です。まして「星明かりだけで月夜のように明るい」という状況があまりにも浮世離れしていて、実感のある句を描けないのではないかと思うほどです。街灯一つに負けうるそんな現代社会ですからね……。

故に、ゴッホの『星月夜』であったり、或いは文字面から「星と月で明るい夜空」をイメージすると、本意を逸脱したものとなってしまうため、そこは誤解なきようお願いします。

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