Rxブログ歳時記「桜蘂降る(さくらしべふる)」【春・植物】

【はじめに】
皆さんは、「桜蘂降る」という季語を知っていますか? これで「さくらしべ ふる」と読みます。季語を通じて世の中の事象の名前を知ると、世界の見え方が変わってくることがあります。どういった状況なのか、一緒に見ていきましょう!

季語「桜蘂降る」についての解説

では「桜蘂降る」という季語について、『合本俳句歳時記』の説明文を見ていきましょう。(↓)

[春]【桜蘂降る(さくらしべふる)】 [植物]
桜の花が散ったあとで萼(がく)に残った蕊が散って落ちること。散った蕊で地面が赤くなっているのを見かけることもある。「桜蘂」だけでは季語にならない。

(引用元)『合本俳句歳時記』
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「桜蘂降る」は晩春の季語とされています。一応、「桜」そのものも「晩春(4月頃)」の季語とされていますが、植物の生態としては当然「桜の開花 → 満開 → 散り始め」のステップを踏んで、まず桜の花びらが散っていきます。いわゆる「花びらの絨毯」が名所の道を彩るシーンです。

しかし、俳句歳時記を読むと、「葉桜」という夏の季語の前に、この「桜蘂降る」という季語が立項をされているのです。「花びらの絨毯」となってしまうと春の桜が終わってしまうかの様に感じますが、季語への理解が深まるとこの「桜蘂降る」という季語の季節があると認識できるのです。

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上のリンクの句集にあるような光景を「桜蘂降る」というのです。ややもすると、『汚い』と感じてしまう状況なのですが、これにも「雅」を感じられるのが「俳句」を始める魅力かも知れません。

俳句歳時記にみる「桜蘂降る」の例句5句

実際に「俳句歳時記」に詠まれている例句を幾つか見ていって、その魅力を味わっていきましょう。

  1. 『流したる水桜しべ押してゆく』/波多野爽波
  2. 桜蘂降り込む山の投句箱』/古賀まり子
  3. 桜しべ降るにまかせて大社』/鷹羽狩行
  4. 桜しべ降りつぐ無人駅ホーム』/渡辺真奈美
  5. 桜蘂こぼしてたたむ喪のテント』/渡辺真帆

「桜蘂降る」には、『降る』という動詞があることで動きが出ます。これを活かした作品として2~4句目を取り上げました。3・4句目も凡人に陥りやすいワードが入っているのですが、それをしっかりと例句になるほどのレベルに引き上げるのは『桜蘂降る』という季語の動きの魅力でしょうか。

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そして「桜蘂」そのものだけでは季語とならず、「桜蘂降る」という形が基本であるという前提を共有した上で、上に「桜蘂」のみで「降る」という動詞がない句も2つほど取り上げました=1・5句目。

どちらも共通しているのは「桜蘂」が落ちた後(≒ 桜の木に付いたままではない)状況を詠んでいる事が明らかなことでしょうか。「降る」の動詞がなくても『桜蘂降る』の状況だということが分かれば、というパターンがあることを示しているのだと思います。

ただ、あくまでも「桜蘂降る」という形が基本形であり、それを外れることに難しさがあることは理解して頂ければ有難いです。

「プレバト!!」で詠まれた『桜蘂降る』俳句2句

そして、世間からすると知名度が低いはずの『桜蘂降る』という季語が、プレバト!! では複数回詠まれています。どんな句だったか振り返っていきましょう。

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まずは、梅沢永世名人が44句目の掲載決定となった作品です。『一人十色』でも詠めるでしょうね!

『桜蘂降るハシビロコウ瞬く』/梅沢富美男

その風貌が非常に特徴的な「ハシビロコウ」を詠み、『降る』という動詞の動きと、動かない「ハシビロコウ」の『瞬く』という動詞の相対的に小さな動きの対比が見事でした。

  • 2022年5月5日に詠んだ「桜蘂降るハシビロコウ瞬く」が夏井から「素晴らしい気づきな上に読み手である私の血液が綺麗になっていく」と大絶賛された[20]
梅沢富美男
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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そして、2023年の春光戦(決勝)で、もし春風亭昇吉さんに敗れれば、「(昇吉さんのことを)師匠と呼ぶ」と豪語するも想定外の順位となってしまってショックを受けた表情だった「立川志らく」師匠の作品です。

『桜蘂降る陸自の戦車しづか』/立川志らく『戦車しづか桜蘂降る駐屯地』(添削後) 

春風亭昇吉さんは、『映像/場所が見えない』と酷評していましたが、確かに添削後の作品をみると、語順を変えて「陸自(陸上自衛隊)」から「駐屯地」と変えただけなのに映像の立ち方が段違いとなりました。

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