【はじめに】
この記事では、2022年度から全国6局ネットとなった視聴者参加型の俳句ラジオ帯番組「夏井いつきの一句一遊」について纏めていきます。今回のテーマは、番組初心者必見!「初心者あるある」まとめてみた『“月曜”脱出大作戦!』です。
番組を知ったから早速、俳句送ってみたんだけど「月曜日」って言われちゃった。結構自信作のつもりだったんだけど、なんでだろう……?
こんな経験をされた方、特に「月曜日デビュー」で俳句初心者の方に、20年以上続いてきた同番組で、初期から変わらぬ「月曜日あるある」を解説する事で、番組とリスナー俳人の皆さんのステップアップ貢献できればと思い、今回の記事を書きました。
ぜひ、一歩一歩のステップアップのヒントに、この記事をお読み頂ければと思います。それでは見ていきましょう!
そもそも「夏井いつきの一句一遊」って? 「月曜日」って?
「夏井いつきの一句一遊」という独特のラジオ番組については、ちょうど北陸放送(MRO)のネットが開始した2022年3月末に解説記事を書いていますので、詳しく知りたい方は(↓)からどうぞ。
上の記事と内容が重複するので、画像でも引用しておきます。飾らずにいえば、「月曜日」は『初心者レベル』です。プレバト!! で「火曜日」が『凡人』レベルということなので、それよりワンランク下…とされる月曜日は……まあそういうことです。
ただ、ご安心ください。「一句一遊」に投句するのは、句歴数ヶ月から数十年といった経験抱負な方々が殆どです。先人達も最初は「月曜日や火曜日」でデビューして一歩ずつ上を目指していったのです。
(私も例に漏れず最初は「火曜」デビューでした。下の基本は抑えてたので月曜は免れましたが^^;)
以下、具体的な「月曜日あるある」を見ていきます。ざっくり「俳句の基本」と「番組ルール」の2点に分けられるかと思います、次の項に移りましょう。
2022年春(5週間分)の「月曜日」をパターン化してみた
2022年度からスタートした「MRO」を含む6局ネット体制。夏井組長も丁寧に番組のルールなんかを紹介してくれていますが、改めて「月曜日」の注意事項を表にしてまとめてみました。
2022年3月中旬から4月上旬の5回(MROネットの前後半月ずつのイメージ)の月曜を簡単に類型化して「月曜日あるある」を10個に分類してみました。これで100%ではないですが、9割は網羅できているのではないかと思いますので、ぜひ参考にしていってくださいね!
月曜ポイント | 3月 2週 | 3月 3週 | 3月 4週 | 4月 1週 | 4月 2週 |
---|---|---|---|---|---|
兼題が入ってない | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |
五七五「空白」不要 | ◯ | ◯ | |||
変換ミス、文字化け | ◯ | ||||
季語が入ってない | ◯ | ◯ | |||
季重なり(初級) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |
長すぎ、字足らず | ◯ | ◯ | ◯ | ||
本意の勘違い | ◯ | ◯ | |||
季重なり(中級) | ◯ | ◯ | ◯ | ||
意味、伝わらず | ◯ | ||||
俳句の詩心……? | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
◯印がついているところが「月曜日」に分類されてしまった主なポイント(要因)ではないかなと思う部分です。もちろん複合的だったり、細かく見れば違うケースもありますが、大体の「落とし穴」として捉えてください。
もう殆ど10パターンぐらいしかなく、しかもそれが3週間で1~2度は説明されているのです。これは新しいネット局が始まったからだけでなく、その前からそうです。(NHK「プロフェッショナル」やYouTube、プレバト!! など様々なメディアで夏井先生や俳句、番組を知って初投句という人が増え続けているからです。)
皆さんも、初挑戦の方は特にそうですが、「初心者あるある」に陥っていないか、投句する前に改めてセルフチェック(自己確認)していただけると、夏井先生もきっと喜ぶと思います(^^
月曜日(初心者)あるある10選
もちろんここに書く事項は、「100%ダメ」というものばかりではないですが、(夏井先生が正式に×(NG)と明言されているものも多いことは申し添えときます)最初のうちは『郷に入っては郷に従え』で、基本を抑えるところからスタートして、数年~十数年かけて、「オリジナリティ」を出していけば良いと思います。
①「兼題」が入ってない
「夏井いつきの一句一遊」は、その週ごとに『兼題(お題)』が設定されています。収録番組なので、いま放送されている兼題には投句できず、半月後ぐらいの兼題を募集しているのです。
なので、「兼題」を詠み込んでいない俳句は、(皆さんに注意するために代表して紹介される1句を除いて)原則紹介されません。いま募集されている兼題については「洒落神戸」さんのサイトなどを参照していただき、締切厳守でよろしくお願いします。
《 合わせてお読みください → 》洒落神戸の俳句はじめました さん
また、過去にあったケースとしては、
- 「一句一遊」ではなく、『プレバト!!』の兼題写真など別の番組のテーマで送ってしまう
- 兼題を聞き間違って投句してしまう(カタカナ1文字が違ったり、同音異義語だったり)
ここらへんが代表例です。まず、「兼題」に沿った句を披露し合う番組だということを抑えましょう。
②「五七五」の間を空けない
「俳句に絶対はない」ですし、夏井先生も基本的にはその立場です。しかし、夏井先生が断固として認めず、すぐ直すよう毎週訂正し続けている「タブー」があります。それが『分かち書き』です。
俳句入門本でも、特に本当の「初心者」の目線に立った書籍では、ちゃんとこの当たりから説明をしてくれます。即ち、俳句の正しい表記の仕方です。
『柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺』
などと、国語の教科書でも「五七五」の間に『空白』をあけて表現していますが、本来これは俳句の愛好家たちの間では避けなければならないものとされています。同様に、
柿くへば
鐘が鳴るなり
法隆寺
などと、「プレバト!!」のテレビ画面では良く「縦書き」ではあるものの『三行』に改行して表示していることも良くあります。これも同じで『分かち書き』の一種です。テレビ画面の縮尺の関係で、本来の正しい書き方が出来ないだけであって、バラエティ番組が正しい表記をしている訳ではないのです。
本来の正しい書き方は「縦1行」(使うかどうかは別にして「短冊」で筆でサラサラと書くイメージ)であり、縦書きが出来ないメールなどでは「横1行」も許容されていますが、いずれにしても五七五を分離させるのではなく一連の流れとして一続きとして書くのが大原則になります。
MROラジオの『おいね木曜チーム』の皆さんの3句も、内容は火曜日レベルとのことでしたが、この『分かち書き』をしてしまってたために「月曜日」に紹介されてしまいました。仮にどんなに句の内容が良くても、『分かち書き』なために紹介されるクラスが落ちてしまいかねないので、知らなかったという方は即刻、直してくださいね!
(この説明に夏井先生は毎回10秒近く取られてしまい、句を紹介できる時間が減ってしまいます^^;)
③「変換ミス」や「文字化け」の可能性を最終チェック!
これは俳句に限らずなのですが、メールを送る際に『最終チェック』をしましょう、というのが月曜に時々、夏井先生から注意されます。例えば、
ちょっとこれ、あの、ただの変換ミスだと思うんだけど、送信ボタン押す前に合ってるかどうかチェックするぐらいはやってください!
2022年4月11日(月) 放送分より
と夏井先生も呆れ声でした。まだ意味が伝わるなら良いですが…… 夏井先生からすると、『強い意図をもって敢えてこの表記をしているのか』が分からないため、
『ひょっとすると、作者の意図を私は汲み取れていないのかも知れない……』
と夏井先生が熟考してしまいます。(NHK「プロフェッショナル」でも事例が紹介されていました)
これも夏井先生の負担を不必要に増やさないためにも、皆さんどうかよろしくお願いします。
また変換ミスではないのですが、絵文字などの「機種依存文字」も、文字によって「?」などに文字化けをして届いてしまう恐れがあります。こちらは前述の「洒落神戸の俳句はじめました」さんのホームページにもありますが、『機種依存文字』かどうかを簡便にチェックできる「機種依存文字チェッカー」が紹介されていますので、ぜひそちらで確認を心がけましょう。
④「季語」が入ってない【カタカナ・漢字シリーズでも季語を入れる】
ようやくここから「俳句」の内容に関する注意点に移ります。最初のネックは『季語が入っていない』タイプの句です。通常の兼題は『季語』がお題になっているので、それを入れれば「季語入れ忘れ」になることは少ないです。(俳句中級者が、色々語順とかを推敲し続けているうちに、肝心の季語がうっかり抜けてしまったってケースはありますが^^)
「季語入れ忘れ」が頻発するのは、兼題が『季語以外』のケース。具体的にいえば、「漢字」シリーズや「カタカナ」シリーズといったタイプの兼題の時です。このタイプの兼題の趣旨は、
(×)「漢字」や「カタカナ」1文字を入れればOK ではなくて、
↓
(◯)「漢字」や「カタカナ」1文字を入れた上で、自分で季語を選ぶ練習をする ≒ 季語はこちらで兼題として指定しないから、自分で選んでね
というイメージです。なので、「漢字/カタカナ」1文字を入れるのは最低条件として、有季定型を主とする「一句一遊」では、やはり基本的には『季語』を入れることは必須となるでしょう。
※もちろん無季俳句や自由律俳句もありますが、それを「一句一遊」に投句しても投句する場所を間違っている説はあります。『洋楽』しかかけないラジオ番組に『演歌』をリクエストするようなものかも
⑤ 季重なり(初級編):歳時記を引かなくても気づいて欲しい季語
といって「季語」を入れれば良いかというと、そうでもありません。有季定型俳句には『季重なり』という別の問題もあるからです。敢えて、季重なりな例を私が偏見で作ると、
- 『雪とけて春一番も暖かく』
- 『種蒔きを終えて草餅ひな祭り』
みたく、季語は入っていますが、複数(上の例は色を変えて3つ)入ってしまっています。俳句初心者に、『季語』を意識してもらう意味で、『あれ? これってうっかり書いちゃったけど季語じゃない?』とセンサーを働かせて欲しい という意味で、『歳時記を引かなくても気づいて欲しい』水準の季重なりは、月曜日に紹介することが多いです。
- やっと【兼題の季語】出てきたぞと思うと、◯◯◯ ←これが別の季語が入るんですねぇー、季重なりと言うのも月曜日の特徴です
- ×× は、立派な季語やわなぁー
- くははっ、△△△って書いた瞬間に季語かもって思わんのかね君らほんとにぃ
- □□□□で気が付かんていうのはなんか、逆に尊敬するに値するかもしれませんねえ
などと、2022年3月下旬の兼題では、『季重なり』に対して毒舌先生(だった頃)の辛辣なコメントが次々と投げつけられていました。でも、俳句の練習という意味では重要なのです。
基礎がしっかりと出来てからでも、「季重なり」などの応用技に挑戦したって遅くないと思いますよ?
⑥ 俳句は十七音:長すぎ、字足らず
俳句は五七五の定型を基本としていますが、基本があれば例外もあり、例えば『自由律俳句』は一つのジャンルとして定着しています。また、「字余り」や「字足らず」、「破調」や「句またがり」などの技法は『定型』の派生形という位置づけの場合が多いです。
ただ、下手に字余り/字足らずを作っても、それを夏井先生は認めてくれません(^^; 問答無用で、月曜日に仕分けされてしまいます。『もっとうまく作れる余地/添削案がある』と内心思っているからこそ、はっきり月曜日に選して、『長すぎ!』、『短い!』などとバッサバッサと切るのでしょう。
私は、ルールが決まっている『有季定型』と比べて『自由律俳句』の方が難しいと考えています。仮に定型を外れた分野に挑戦するにしても、基礎基本となる『有季定型』をある程度おさめてから挑戦した方が良いのではないかなと個人的には思います。
⑦ 季語の「本意(ほい)」の勘違い
兼題には、ときどき『罠』のような「季語」が選ばれることがあります。
- 「ながし」……『酒場でギターを弾く流し』ではなく、夏の風「ながしはえ」の傍題
- 「走馬灯」……死の直前に見る比喩……の方ではなく、夏の「灯籠」の一種
こういった兼題が出されては、月曜日に次々紹介されて消えていくのです。後述しますが、何もこれは夏井先生も意地悪をしようとしているのではなくて、ちゃんと『俳句歳時記を引いているか』を試しているのです。
⑧ 季重なり(中級編):俳句歳時記と仲良くなろう
先程も「季重なり」がありましたが、もう少し上のレベルでの「季重なり」となります。ここも具体的に見ていきましょう。再び私が偏見で作った例句たちです。
- 『ブランコで息子と遊ぶこどもの日』
- 『相撲見つつ祖母と葡萄を食べており』
- 『春うらら次のバスまであと五分』
以上の3句、全部「季重なり」なんです。気づきましたか?(季語の強弱とかは一旦置いといて、歳時記に季語として掲載されている単語が含まれているかという観点で。) 分からないという方はぜひ、『俳句歳時記』を引いてみてください。
- ◯◯◯は立派な春の季語ですよぉ、歳時記と仲良くなりましょう
- この番組は、まぁひとまず季語を覚えるところからスタートしましょうねと言うことで、月曜日で×××も夏の季語だよと教えているのです
- これもねえ△△が季語だって思ってない人が多いんですよねえ、歳時記を常に身近なところにおいて、めくってあそびましょう
上は、夏井先生が実際に4月第2週の「一句一遊」の月曜日で口にされた言葉です。
あくまでも誤解してもらいたくないのが、『季重なりが絶対にダメ!』と言っているのではなく、俳句初心者の方に「歳時記を引く癖をつける/季語と親しむ/季語を定着させる」ことが目的なのだということを理解して頂きたいのです。
⑨ 問題はクリアしている。なのに日本語の意味が伝わらない
上に書いたようなたくさんあるハードルを超えてヘトヘトになった方が陥りやすいのが、このハードルです。上に書いた問題は全てクリアした。その結果、「日本語」で書かれているはずなのに、日本語として意味が通じない/意味が分からない こういったことが往々にして起こりがちなのです。
これはむしろ、「プレバト!!」で『才能ナシ』に評価される句だったり、名人・特待生が背伸びをして奇抜な方向にチャレンジした句などで印象深い方も多いかと思います。落とし穴を避けようとし過ぎて道端の側溝に落ちてしまうみたいな『見落とし』があるのです。
また、夏井先生が選をするに当たって、マニアックだったり今どきっぽすぎる言葉や感性は、物理的に伝わらないこともあります。これはジェネレーション・ギャップや世代間ギャップということもありますので、うまく折り合って行きましょう。(私もある程度、選者に合わせている部分もありますし。)
⑩ 俳句の詩心……?
上に書いてきたような形式的な課題も解決し、日本語としても意味が明瞭すぎるぐらいに明瞭。小学生でも、或いは幼稚園・保育園児でも伝わるぐらいの俳句というものもあります。
しかしです。五七五の17音をベースに兼題も入り、季重なりもないのに堂々「月曜日」ってことも結構あります。 「類想類句」の部類でもちゃんとしていれば火曜日には選んでもらえます。じゃあ何か。
- しょうもないダジャレ、親父ギャグ
- 低レベルな有名な句のパクリ(「ギャ句゛」にも満たないレベル)
- 苦笑しか出てこないような内容の句
いわゆる「俳句」という文学の根底にあるとされる『詩心』が皆無と判断された作品群です。
『おウチde俳句』にもあるとおり、トイレだって、介護だって、子育てだって俳句のタネになります。尾籠な話しであっても、松尾芭蕉が詠んだように、場合によっては「俳句」作品として評価されます。
千原ジュニア名人が「プレバト!!」2020年金秋戦で初優勝を飾った句も、『痙攣の吾子の吐物』という綺麗ではないものを詠んでいますが、1位に輝いていますもんね。 題材だけの問題ではないってことです。
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