(新)季語解説「俳句甲子園」(夏井いつきの一句一遊 定番の兼題)

【はじめに】
「夏井いつきの一句一遊」というラジオ番組では、『俳句甲子園』を季語とするべく毎年のように兼題として出題されています。初心者の方が陥りやすい罠だったり、企画の趣旨を丁寧に解説していきますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

ウィキペディアで「俳句甲子園」をざっくりおさらい

まずは、日本語版ウィキペディアで「俳句甲子園」を引いてみて、冒頭部を引用してみましょう。

全国高校俳句選手権大会(ぜんこくこうこうはいくせんしゅけんたいかい、通称:俳句甲子園)は、愛媛県松山市で毎年8月に開催されている、高校生を対象とした俳句コンクールである。社団法人松山青年会議所NPO法人俳句甲子園実行委員会が主催。当地が正岡子規高浜虚子など著名な俳人の出身地であることから、これにあやかって1998年に始まった。

俳句甲子園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

要点を絞れば、四半世紀ほどの歴史がある「高校生を対象とした俳句コンクール」となります。そしてここに一つ情報を加えるとすれば、無名に近かった夏井いつき氏が立ち上げから関与している点です。

( 同上 )

以上、沿革等を画像引用しましたが、参加校1桁という時代から地元の青年会議所と協力し、年を追うごとに注目度の高まる中にあって「俳人」としての中心的な役割を果たしています。豪華な10名以上の俳人を審査員として招くのも、「プレバト!!」俳人をゲストに招いて対外試合を行うのも、夏井先生の存在がなければ叶わなかったでしょう。

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全体では1年かけて準備を行っているのでしょうが、全国を巻き込んで開催されるようになった「俳句甲子園」は、夏井先生を始め関係者ならびに参加者にとっての夏の一大イベントでしょう。各地方予選から全国大会・決勝リーグ戦という構図となって久しいですが、令和に入ってYouTube生配信なども行われるようになったことで、より多くの方が「俳句甲子園」を観戦できるようになりました。

初回から携わってきた夏井先生が「俳句甲子園」に懸ける思いは人一倍強く、自身のYouTubeを始め、様々な媒体でもその熱い想いを語っておられます。ぜひ調べてみて欲しいです。

「夏井いつきの一句一遊」の兼題としての『俳句甲子園』

夏井先生が心血を注いでいる『俳句甲子園』。愛媛県・南海放送で20年以上続いている俳句の帯ラジオ番組である「夏井いつきの一句一遊」では、毎年の様に『俳句甲子園』が兼題として出されています。

夏井いつき
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

画像の関係で読めない字の大きさにはなっていますが、黄色く塗ったところが「俳句甲子園」を兼題として出題したタイミングです。2011年に始まり(1度=2017年だけ出し忘れたことがありますが、)基本的に毎年出されている定番の兼題です。

『俳句甲子園』が兼題として出題されるポイント2つ

「夏井いつきの一句一遊」では、かつては1週ごと、現在は2週ごと、1つの兼題(時として「テーマ」)が出され、その兼題を詠み込んだ作品を投稿することとなっています。そして、漢字シリーズ等の例外を除き、基本的に兼題となるのは『季語』です。

現実には、『俳句甲子園』は【まだ】季語として市販の俳句歳時記には掲載されていません。しかし、番組の中では『俳句甲子園』を季語として出題し、リスナー俳人は詠み込んでいるのです。今年初めてこの兼題に触れた方は面食らうかも知れませんが、大事なポイントを以下にまとめます。

  1. 夏井組長が関わってきた『俳句甲子園』を、季語として俳句歳時記に掲載させるための出題である
  2. 季語として俳句歳時記に掲載されるには、名句および多くの作句例が必要となるため、それをリスナー俳人に求めている

上の2点こそが『俳句甲子園』が出題される「主旨」です。まずここをしっかりと抑えなければなりません。(本家である『夏の甲子園』の掲載度合いを見る限り、)現実に一般の俳句歳時記に載ることは令和の時代に叶わないかも知れませんが、そういった壮大な計画の1ページとしての試みだということを抑えておきましょう。

投句するリスナー俳人が守るべき鉄則3つ

察しの良い方はわざわざ書かなくても理解できるでしょうが、まだ番組のルールやコンセプトを抑えていない方もこの記事をお読みかと思いますので、個人的に『リスナー俳人が守るべき鉄則』を以下のとおり纏めてみました。

  1. あくまで『俳句甲子園』であって、高校野球などの他の「甲子園」のことではない
  2. 『俳句甲子園』を季語とするプロジェクトなので、『俳句甲子園』以外の季語は基本的に入れない(『俳句甲子園』以外の季語を入れてしまうと、企画の趣旨に反する:本末転倒)
  3. 他の兼題と同じく季語を体験するよう努める。『俳句甲子園』への参加・(ネットを含め)観戦・協賛に積極的に携わる

特に2つ目が重要なポイントでして、もちろん季重なりとして傑作を作る可能性もあるのですが、主旨を理解できていないと判断されてしまうと損です。基本的には「夏休み」とか「汗」とか「炎天」とかの夏の季語などを使わずに「俳句甲子園」という季語を信じた17音を詠じるよう努めましょう。

上の2つを抑えるだけで火曜日クラスは堅い(どちらかに引っかかると月曜日行き & 俳句甲子園への熱意やお便りを読む時間が削られてしまう)ですし、恐らく3つ目のポイントを実践すれば水曜日クラスも視野に入るのではないかと思います。私も含め実践して参りましょう。

ちなみに上の記事にも書いた「麦のパパさんのnote」や「やのひろみチャンネル」の過去を紐解けば、過去の金曜/銀曜日クラスの作品が出てきますので、そちらも向学の参考となさってください。当然、他の方の作品の転用はNGですので、節度あるご利用をお願いします。

(参考)『俳句甲子園』が「俳句歳時記」に掲載されたら

ではここで、私が仮に「俳句歳時記」の編者になったら……と妄想し、『俳句甲子園』の解説文を考えてみようと思います。

[夏 ~ 初秋] 俳句甲子園【はいくこうしえん・はいくかふしゑん】 [人事・行事]

俳句甲子園は、正式名称を「全国高校俳句選手権大会」という高校生を対象とした俳句コンクール。1998年に第1回が行われ、規模を全国区に拡大しながら回次を重ね、現在は地方大会を経て毎年8月に俳都・愛媛県松山市で全国大会が行われる。
競技は1チーム5人の団体戦で行われ、2チームが「句合わせ」の形式で赤白に分かれて戦う。句の作品点と質疑応答(ディベート)における鑑賞点により、プロの俳人達からなる審査員に評価され、その判定結果をもって優劣・勝敗が決する。
単に俳句の出来だけでなく、作品の鑑賞やディベートを含めた練習が部員の間で繰り返され、俳句と共に成長するドラマに着目されることも少なくない。作句の際は、「俳句甲子園の壇上での戦い」にのみ取材するのではなく、俳句甲子園に青春を懸けた若人の輝きに着目したい。

(例句) ※上にリンクを示した金曜/銀曜日の作品をご参照ください

こんな感じでしょうか。少し長くなってしまいましたが皆さんが作句する際の参考になれば幸いです。

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