【はじめに】
この記事では、「溽暑(じょくしょ)」という夏の季語について解説していくとともに、この季語が使われた例句を、俳句歳時記や「プレバト!!」の過去回から振り返っていきます。
ウィキペディアにみる「溽暑」
流石に日本語版ウィキペディアで「溽暑」と調べても立項されておらず、この漢字2文字を含むのも、全部で3ページしかありません。それらを全てみておきましょう。
1つ目は二十四節気「大暑」の最後にある「七十二候」に含まれる『溽暑』です。これについては、下の記事で簡単に触れていますし(↓)、2つ目とも内容が重複するので省略します。
そして、2つ目が「七十二候」の記事です。こちらを少し触れておきましょう。この後話す「溽暑」とは厳密には別物なのですが、ベースにあるのはこの概念かと思います(↓)。
二十四 節気 | 候 | 略本暦(日本) | 意味 | 宣明暦(中国) | 意味 |
---|---|---|---|---|---|
大暑 | 初候 | 桐始結花(きりはじ めてはなをむすぶ) | 桐の花が 蕾をつける | 腐草為蛍 | 腐った草が 蒸れ蛍となる |
次候 | 土潤溽暑(つちうる おうてむしあつし) | 土が湿って 蒸暑くなる | 土潤溽暑 | 土が湿って 蒸暑くなる | |
末候 | 大雨時行(たいう ときどきにふる) | 時として 大雨が降る | 大雨時行 | 時として 大雨が降る |
大暑の次項といえば、7月下旬を指していて、現代の日本だと「梅雨明け」が発表され夏休みが本格的にスタートした後に当たります。真夏日 ~ 猛暑日のカラッとした高温とは違い、数字は低くても湿度が高くて不快指数の高いような暑さを「溽暑」、ここでは「むしあつし」と訓読みしていることが分かります。
そして、俳句の世界に近づけていきます。非常に問題点が多いのが気になる部分ではあるのですが、「季語一覧」という記事があり、その中の『晩夏』の季語として「溽暑(じょくしょ)」がリストアップされています。(↓)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
その周囲にあるのが、大暑、極暑、溽暑、熱帯夜、灼く ですから、イメージ的にも非常に暑い時期の言葉だということが窺えます。
俳句歳時記や辞書の説明で補足
まず、広辞苑で「溽暑」を引いてみると、以下の2つの説明が記載されています。
(引用元)『広辞苑』第七版
- むしあついこと。蒸暑。
- 陰暦6月の異称。
②に関しては、七十二候が陰暦6月にあったため、「陰暦6月の異称」となったのだろうと思います。そして、季語としての意味は①の方。蒸し暑いことを表しています。
そして、広辞苑では季語としての印はありませんが、複数の俳句歳時記に季語として収録されていて、例えば『角川俳句大歳時記』などでは、晩夏と季節を限定したうえで時候の季語と分類していました。
歴史を紐解くと、江戸時代の季寄せなどには七十二候に関連して掲載されていて、「溽暑」単独で季語として立項されたのは、例句などからみても比較的新しいように見えました。
俳句歳時記やプレバト!! でみる「溽暑」の例句
時候の季語としては、比較的例句が少なく思える「溽暑」。作者の名前を見ても、比較的、戦後以降に活躍された方ばかりのように見受けられます。
そして、俳句歳時記の掲載句と比して、非常に「溽暑」が愛用されていると感じるのが「プレバト!!」の俳人たちです。10年足らずで5句も披露され、多くが高評価という点も興味深く感じます。
過去触れた例でいくと、犬山紙子さんが72点という高得点を出した時も「溽暑かな」と落ち着いた下五でしたし、
NON STYLE・石田明さんも、特待生でありながら炎帝戦で2位となった時の句も「溽暑」が詠まれていました。この句は、喧騒、溽暑、潮騒といった熟語を畳み掛ける部分は痛快でした。
その後の2句は少し高評価とは行きませんでしたが、2023年に森迫さんが披露した作品は、浜田杯での下位の鬱憤を晴らすかのような1ランク昇格で、いつもの笑顔が戻ってくる素敵な句でした。
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