【プレバト俳人列伝】NONSTYLE・石田明さん

【はじめに】
この記事では、「喧騒の溽暑走り抜け潮騒」や「紅葉ふるコントラバスを弾くはやさ」など、NON STYLE・石田明さんが「プレバト!!」で披露した俳句を振り返っていきます。

皆さんは、どんな作品が印象に残っていますか? 一緒にみていきましょう!

プレバト俳人としての活躍について

お笑いコンビ NON STYLE(ノンスタイル)のお2人(井上裕介・石田明)は、「プレバト!!」の俳句査定コーナーに、どちらも番組初期(2014年6月)から揃って参加しています。(石田さんが凡人、井上さんが才能ナシ査定)

その後、実は井上さんが先に2回目の挑戦で73点才能アリを獲得しているのですが、3度目の挑戦で初めて才能アリを獲得した石田さんは、一発特待生となり、2019年3月に特待生1級まで昇格しています。2017年度には、タイトル戦で2度もベスト3入りを果たすなど活躍されました。

ただ、実は、2019年の金秋戦を最後に、起稿時点で2年以上も番組に出演されていません。正直、石田さんの句が好きな私としては寂しいのですが、ぜひ早く戻ってきて「名人」昇格を目指していただきたい思いも持ちつつ、早速、過去の名句などを鑑賞していきます。

2016年:特待生昇格 & 2度の昇格

2014年に2度出場するも共に「凡人」査定だった石田さん。NHK「俳句さく咲く!」にレギュラー出演して実力を蓄え、2015年には「R-1ぐらんぷり」決勝進出、「M-1グランプリ」審査員担当など本業でも快進撃をみせる中、番組に1年以上に再出演して披露したのがこの句でした。

70点:湯の猿の群れの頭に積もる雪/石田明

2016/01/21 放送分

初の才能アリとなったこの句は、詠めば皆さんも光景を想像できるのではないでしょうか。何のてらいもなく素直に詠んだからこその高評価だったと思います。

ちなみに、夏井先生はこの句のどこかの『の』を「切れ字」の『や』に変える添削をされていました。どこだと思いますか? 夏井先生の正解は……

 

(添削前)湯の猿の群れの頭に積もる雪/石田明

(添削後)湯の猿の群れ【や】頭に積もる雪  

夏井先生の正解は最後の「の」です。切れ字の『や』が画面カットの切り替えを行うとすると、どう変わるのでしょうか?

まず、『湯の猿の群れ』というニュースなどのテレビでも見かけそうな光景が出てきます。(添削前)ですと、「猿の群れの頭」に雪が積もると対象を限定して読めます。

一方、(添削後)の句ですと、「湯の猿の群れ」の映像の後にカットが切り替わり、「頭に積もる雪」というワンフレーズが独立します。このことによって、「頭」というのが「猿の頭」だけではなくて、ひょっとすると猿と一緒に露天風呂に入っている詠者(≒石田さん?)の頭にも雪が降り積もっているのかも知れないなぁ……と読みが変わってくるのです。

(添削前だと雪降る露天風呂には猿しか入っておらず、人間である私は建物の中でガラス張りの向こうを眺めているようにも感じられました。)主役としたい「雪」の肌感覚は、添削後の後者が勝っていると確かに感じましたねー

ちなみに、当時は才能アリ一発で特待生というルールがあり得たので、3度目の挑戦(しかも初の才能アリ)で、石田さんは特待生に昇格することとなりました。

大相撲では勝ちと負けを繰り返す(○●○●○●……)ことを「ヌケヌケ」と言います。まさにそんな状態に陥っていたのが特待生昇格直後の石田さんでした。でもそれは致し方ない部分もあったと思います。だって才能アリ1回で特待生にされてしまったのですから。「昇格」と「現状維持・降格」を繰り返していたこの頃の石田さんの中で、特に傑作だと思うのが、こちらの句です。

秋の空ただいま秘密基地跡地

2016年9月1日に詠み、特待生3級へワンランク昇格した作品です。石田さんにとって初めて添削ナシとなった句でもありました。『ただいま』で自宅に帰ったのかと思わせて『秘密基地』と展開し、最後に『跡地』と着地する。詠み手が子供ではなく、大人か思春期の青年だったのだと分からせる一抹の切なさすら覚える作品でした。

2017年:充実期 ~タイトル戦で2度のベスト3入り!~

そんな石田さんが飛躍を遂げたのが、2017年でした。

新春スペシャルで4級に降格となりますが、3月には3級に復帰。季節ごとにタイトル戦が催されるようになると、俳桜戦こそ最下位でしたが、続く炎帝戦では、予想だにしない金星を挙げます! その句がこちらでした。

炎帝戦2位:喧騒けんそう溽暑じょくしょ走り抜け潮騒』/石田明

特待生3級の石田さんが、なんと本戦2位に入る大殊勲。『喧騒の溽暑』で8音、『走り抜け潮騒』で9音と、足して17音になりますが、句またがりで破調ぎみな作品です。そんな大技に特待生で挑んでくる人が少なかった当時ということもあり、この句は強烈なインパクトを残しました。

ちなみに、この句の季語『溽暑』とは、“さんずい”が示すように『蒸し暑~い』感じを示す言葉です。

ここからの約半年は、出す句、出す句が傑作ばかりという充実期に入ります。

・(2017/09/21)『秋天を抜け百年をゆく飛球』 【俳句甲子園】のエキシビションで勝利
・(2017/10/12)『空をひっかく葉先から枯るる』 金秋戦3位
(2017/11/09)『秋天はがれ落ちる人にベンチに』 特待生3→2級昇格、月間MVP

俳句甲子園の時までがまさにそうでしたが、「噛ませ犬」的なポジションから、堂々たるディベートに手堅く本格派な句柄に、次なる「名人候補」として急浮上してきたのがこの時期だったと思います。

2018年:コントラバスの句で予選1位通過

2018年は、結果的にタイトル戦の決勝で上位に食い込めない時期が続きますが、前年決勝3位に入った金秋戦の予選で、この句を発表します。私が一番好きな「コントラバス」の句です。

金光戦予選1位:『紅葉ふるコントラバスを弾くはやさ』/石田明

この句は、『紅葉』という秋の植物の代表的な季語と、別の要素を取り合わせた二物衝撃という手法の作品かと思います。「紅葉が枝を離れて地上に落花するまでの十数秒」を何にたとえるかが重要です。

そして、クラシック音楽などに明るくない私でも何となく想像がつくように、きっと皆さんも何となく共感できるのではないでしょうか。『コントラバス』という大きな弦楽器を体を大きく使って弾く様子を、石田さんは『紅葉』が左右にフラフラと風に流され落ちていくことになぞらえたのです。

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惜しむらくは、これが決勝戦ではなく予選だったことですが、実はこの句(コントラバス)と、先ほどご紹介した「喧騒の溽暑」は、2019年に発表された「プレバト!!歴代俳句ベスト50」にランクインしています。石田さんも発表の瞬間、驚いておられましたが、それだけ傑作だったといえるでしょう。

2019年:石田さんの半生が窺える1句

2017年に双子のお子さんが、2020年に第3子が生まれた石田さん、「プレバト!!」以外にも公私ともに多忙となり、2018~19年にはタイトル戦を中心に参加、通常査定は年1回に落ち込みます。しかしそんな中でも、2019年初春の特待生一斉査定では、

(2019/03/07)『春疾風号外の紐ほどきたる』 特待生1級へ昇格

改元直前の空気感をうまく詠んだ句で、名人まであと一歩の特待生1級に昇格しています。

そして、2019年の金秋戦は3年連続の決勝進出を目指して、予選に参加しましたが、その時に披露したのが、こちらの破調の句でした。

金秋戦予選3位:『明日もまた生きるチルド室に葡萄』/石田明

最初は『明日もまた生きる』というのがサラリーマンなどの悲哀・嘆息かと思っていました。しかし、石田さんの生い立ちを知ると、この句の真意が見えてきます。

上は「日本語版Wikipedia」の石田明さんの記事から引用(一部改変)したものです。『実家が、かなり貧しく食生活に恵まれなかった』という記述が出てきました。

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思い返してみると、私がNHK『爆笑オンエアバトル』を毎週楽しみに見ていて、NON STYLEが第9代チャンピオンに輝くまでを見届けたのですが、よく『石田さんの体が弱い(虚弱体質)』であることをネタにしていて、そのエピソードが毎回差し込まれていたのを思い出しました。

お笑いのネタではなく、こうして俳句にすると、また違った形で作品として後世に残りますし、ひょっとすると同じ境遇の(だった)人に届いて、誰かを支えたり救ったりするのかも知れません。 きっと俳句には、こういった力があるのですね。

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この句で決勝進出を果たし、決勝では6位となったのを最後に、石田明さんは「プレバト!!」にここ2年出演されていません。「名人」候補の名人昇格と、タイトル戦での再びの活躍を願いたいところです。

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