【冬・時候】季語「節分」(+プレバト!! 節分回)

【はじめに】
この記事では、立春の前日を指すことの多い冬の季語「節分」について、ウィキペディアで概要を知ると共に、俳句歳時記やプレバト!! に登場する名句を複数ご紹介していきます。

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ウィキペディアで学ぶ「節分」について

【時候】の季語としての「節分」

俳句歳時記で「節分」を引くと、基本的には【時候】の季語として分類されています。そこで、節分と言われた時に連想する『行事』としての側面の前に、【時候】としての意味をおさらいしておきます。

節分(せつぶん、せちぶん)は、雑節の一つで、各季節の始まりの日(立春立夏立秋立冬)の前日のこと。節分とは「季ける」ことも意味している。
江戸時代以降は特に立春(毎年2月4日ごろ)の前日を指す場合が多い。

節分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )
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現代日本で詳しくない方には太陽暦も太陽太陰暦も区別せずに『旧暦』と言われてしまうかも知れませんが、この『節分』は太陽暦に基づく『二十四節気』が基準となっているので、『旧暦●月×日』などと言われるものとは別の概念です。これについて、以下のように纏められています。(↓)

太陰太陽暦(旧暦)では、立春に最も近い新月を元日とし、月(太陰)の満ち欠けを基準(月切)にした元日(旧正月)と、太陽黄経を基準(節切)にした立春は、ともに新年ととらえられていた。

したがって、旧暦12月末日(大晦日)と立春前日の節分は、ともに年越しの日と意識されていたことになる。今も節分を「年越し」「年取り」と呼ぶ地域があるのはこの名残である。

( 同上 )

まあ言ってしまえば、かつては……というかかつてもと言うべきか分かりませんが、まとめ直すと、

暦法その前日春の訪れ備考
太陰太陽暦
(月の動き)
旧暦12月29or30日
(大晦日)
旧暦1月1日
((旧)正月)
年によって
週間単位で変化
太陽暦
(太陽の動き)
2月2or3日
(節分)
2月3or4日
(立春)
年によって変わ
っても1日程度

暦によって「新年」と読めるものが2回あったというイメージが近いかと思います。太陽暦でかつては「立春」を一年の始めとしていたことを思うと、その前日の「節分」は単なる季節の代わり目ではなく今の『大晦日』と似た日取りだったのです。だからこそ、下に書くような年中行事が多く行われてきたのですね。

【行事】としての「節分」

一般的な俳句歳時記では、「節分」と聞いて想像する行事を個別の季語として収録しています。幾つもある行事の季語についてはあまり深く触れず、「節分」全体に関する部分を中心に引用します。

一般的には「鬼は外、福は内」と声を出しながら福豆(煎り大豆)を撒いて、年齢の数だけ(もしくは1つ多く)豆を食べる厄除けを行う。また、玄関などに邪気除けの柊鰯などを飾る。これらは、地方や神社などによって異なってくる(後述)。

( 同上 )

季節の変わり目には邪気(鬼)が生じると信じられていたため、それを追い払うための悪霊ばらい行事が執り行われていた。……近代、上記の宮中行事が庶民に採り入れられたころから、当日の夕暮れ、の枝にの頭を刺したもの(柊鰯)を戸口に立てておいたり、寺社で豆撒きをしたりするようになった。

( 同上 )

歴史的には、日本だけでみても1300年以上、古代中国から数えると更に古くなってしまいますし、時代によって暦法も相俟って本当に伝統の変遷は複雑を極めています。そして日本各地の風習となっていることもあって、地域差も見過ごせません。(読み物としては面白いので、ウィキペディア「節分」と各項目を読んで頂ければと思うのですが、この記事で詳細に触れるのは省略します。)

「プレバト!!」の『節分』回の俳句を振り返る

ではここから、毎年2月頃に放送されることの多い「プレバト!!」の『節分』回で披露された俳句作品を幾つか振り返っていきましょう。

まずは、まだまだ俳句査定の歴史が浅かった2017年2月2日放送回から。当時はまだ始まったばかりの名人・特待生制度を駆け上がっていた頃の2人の作品を続けてご紹介しましょう。

2017年2月2日

  • 『帯とけば福豆二つ三つ笑う』/梅沢富美男’
  • 『節分のセンサーライトが照らす闇』/藤本敏史

特にフジモンさんの作品は、この年の月間MVPに選出されるほどの評価を受けていました。そして季語を補足しておきましょう。おっちゃんの詠んだ俳句に登場する『福豆』というのは、

福豆 – 大豆を炒って福豆とする。“あり得ないことが起こる”を意味する「炒り豆の花が咲く」という諺があるので、厄払いに用いた豆から芽が出ないようにしっかりと炒り、豆まきを終えてから食べる。自分の年齢あるいは年齢に1つ加えた数だけ食べるとされ、1回でその数だけ豆を握り取ることができると良いことがあるという所もある。
また、炒り豆を保存しておき、初雷(立春後最初の雷)が鳴ったら食べると「病気をせず健康に過ごせる」「魔除けになる」「落雷の災いから免れる」という言い伝えが各地にある。

  • 豆まきで落花生を撒く地域は当然落花生を食べる。
  • 蓬莱豆 – 蘆山寺(京都市上京区)でまかれる砂糖でくるんだ紅白の豆。紅白一粒ずつ食べると寿命が6年延びると言われる
( 同上 )

のことです。『節分に撒く豆』にも名前があり、季語となっていることを知るだけでも非常に興味関心が広がっていく感じがしませんか?

そんな福豆に関して、翌年の回では、終戦の年生まれの松原智恵子さんが子どもの頃を振り返っての句を披露して、才能アリ1位となっています。

2018/02/01

  • 『節分の豆煎る母の袖を引く』/松原智恵子

添削では『お袖引く』となっていました。戦時中に名古屋大空襲を避けるため母が疎開していた岐阜県で生まれた松原さんの、戦後間もなくの節分でのワンシーンでしょう。リアリティが感じられます。

そして、個人的には「1日1句」で節分の日に取り上げたこともあるおっちゃんの良句が誕生します。

2018/02/01

  • 『春待つや恵方を告ぐる店の声』/梅沢富美男

原句は『恵方知らせる』でした。こちらの句の季語は『春待つ』です。実際、節分の日まではギリギリ「冬」というカテゴリーになりますし、恵方巻を売るための声は立春までで止みますから、『春待つ』という冬の季語のチョイスはピッタリ来ます。

ここでむしろ皆さんに押さえていただきたいのは、『恵方巻』が季語でないか問題です。結論から言ってしまえば『恵方巻』の歴史は(知っている方も多いでしょうが)案外浅く、俳句歳時記の歴史からしたら「掲載するほどでもない最近の流行」ぐらいにしか捉えられていません。

最新の歳時記ではひょっとすると掲載する機運が高まってきているのかも知れませんが、新年に『福袋』、秋に『ハロウィン』などがないことが驚かれることなどと同じく、『恵方巻』もまだ季語として俳句歳時記に載るには時間が掛かるかも知れません。そういったことにも配慮して、おっちゃんは上の句を作っていたことを皆さんも理解していただけると幸いですね。

しばらく「節分」に限定した兼題の回がない中で、2023年に村上健志・永世名人がこんな句を披露して連続での掲載決定を決めました。

2023/02/02

  • 立てかけて清しき巻き 節替り』/村上健志

この句の季語は下五の『節替り』です。俳句歳時記によると、時候の季語である「節分」の傍題となっています。ずっと上の方で引用したウィキペディアにもそう書かれていましたね。そして意味はここまで記事を読んだ方ならお分かりのとおり『季わる』ことに由来しています。

「巻き」というのは、巻きずしなどを作る時に使うアレです。そういった一つ一つの言葉を知るだけでも十分に『俳句』を通じた鑑賞の楽しみに浸れると思います。

そして、同じ2023年の回に披露された他の名人・特待生の句も見ていきましょう。こちらです。

2023/02/02

  • 福豆拾い子のコップで晩酌』/犬山紙子
  • もうちょいと落語に生き豆を撒く』/立川志らく

2人とも結果的に添削されての「現状維持」でしたが、個性が出ていたと思います。いずれにしても、娘との節分を描いた犬山さんも、師匠である故・三遊亭円楽を詠んだ志らく師匠も、『節分』から連想を重ねて俳句に仕立て上げています。

二十四節気によれば大晦日に当たるような『節分』は、非日常な行事が幾つも催されます。そういった一日を丁寧に過ごせば、句材がないということは無いでしょう。『節分』の日にあったことを俳句にしてみては如何でしょうか。ぜひ作品が出来たりネタがあったらコメント欄にもお寄せ下さい。

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