津波注意報などが発表されてから解除されるまでの時間を振り返ってみた

【はじめに】
この記事では、津波注意報などが発表されてから解除されるまでの時間を振り返って集計していこうと思います。なお、「50cm以上の津波を観測」してから「津波警報などが解除されるまでの時間」については下の記事を新たに作りましたので、そちらもご参照ください。

カテゴリー別の継続時間

ここから、いくつかカテゴリー別に津波に関する情報の継続時間をみていきます。色付きにしました。データは2000年以降を原則的に対象としています。

海外の地震による津波(遠地地震・遠地津波):数時間から半日以上を覚悟

千島列島やマリアナ海溝、台湾付近などは除外し、日本列島からかなり離れたものを対象としました。物理的な距離の近いフィリピン付近の事例(2012年)が2時間程度で解除されたこともありましたが、基本的には早くとも解除までに5~6時間は掛かります。

そして、チリ沿岸など南米西部を震源とする地震に関しては更に長引きます。2007年に20cmに留まった地震でも津波注意報発表から解除までに半日を要しましたし、2010年のMw8.8という巨大地震では大津波警報を正式に発表してから全てが解除されるまでに丸一日かかりました。

ここは判断が分かれるかと思いますが、遠地地震の場合(トンガの火山噴火などを除き)、地震が発生して第1報が伝えられてから実際に津波に関する情報が出るまでに猶予があります。
津波到達までの時間をしっかりと仕入れ、不必要に慌てずしかし確実に長期戦を覚悟した準備を速やかに行うことをオススメします。

日本付近の地震と同じ注意・呼びかけをメディアはするかも知れませんが、一刻の猶予もない地震のパターンと同じような感じで避難をしてしまうと、半日から1日といった長時間に渡る避難の中で、屋外で体温を奪われることもあるかも知れません。また、長時間に耐えられなかったり忘れ物を取りに行ったり不自由を感じたりで帰宅した際に津波に巻き込まれる可能性もゼロではありません。

国内地震での津波警報以上:津波の最大波が一つの鍵に

津波警報・大津波警報に関しては、継続時間の振れ幅は大きくなります。最長は「東北地方太平洋沖地震」の2日と3時間ですが、実際に警報級の津波が観測された場合は、遠地地震と同様に6時間以上の継続時間となっています。

津波警報以上の判断としてはやはり実際に観測された津波の高さが判断を大きく左右します。

注意報未満(20cm未満)だったり津波が観測されなかった事例では、1時間半未満で解除されることが大半です。しかし、実際に警報に近い注意報クラスの津波が観測されると、少なくとも2時間は継続することを抑えておきましょう。日本列島から少し遠いところを震源とすると、4~5時間といったスパンが見込まれます。

記憶に新しいところだと、2024年の台湾・花蓮を震源とするMj7.7の地震で、注意報が解除されるまでの時間が3時間です。かなり長く感じますが、あれで3時間だと考えると継続時間は見た目以上に長いです。

加えて、令和6年能登半島地震のように、地震が発生して間もなく津波が来襲することもあります。遠地地震の時のような準備をする猶予はないと覚悟してすぐに避難行動を起こす必要があります。

国内地震での津波注意報:半分以上は1時間半以内

当初津波注意報でも仮に1m超の津波が観測されれば津波警報以上に格上げされてしまうので、この表で対象としているのは「津波注意報」止まりだった事例です。例外的に長いものでも5時間程度であり、津波が観測されたとしても大半は2時間程度以内、過半数が1時間半以内に解除されます。

※他の記事でも書いていますが、津波注意報で求められていることは海から上がり、海岸や川の河口付近などから離れることです。
(もちろん高台に避難することを否定はしませんが、海抜ゼロメートル地帯でもない限り、)警報に切り替えられた際にすぐに対応できない高齢者などを除いて、住宅地などにいる方は高台に避難しなくて構いません
(ただ、仮に避難しなくて被害に遭われても責任を負えませんので自己責任でお願いします。)

反対に、津波が観測されなくても1時間程度は継続しますので、迂闊に海に戻ったり様子を見に行くことをしばらく避けていただければと思います。海水浴に来ていた時に2時間程度少し高い駐車場に戻るだけでも効果的といえるでしょうか。

情報をフェーズごとに細かく分析してみた

津波が観測されなかった事例

東日本大震災以降、「津波注意報」以上が発表されたものの、実際には津波が観測されなかった事例を先に比較のために掲載しておきます。(↓)

①が「地震の発生時刻」で、②が「津波注意報等が発表された時刻」、③が「津波注意報の都道府県別の『予想時刻』のうち最短のもの」です。国内で発生した多くの事例については、地震発生から2~3分程度で津波注意報が出されますが、基本的には震央付近では『到達か』などとして発表され、第1波と同タイミングであることが一つ特徴として挙げられます。

そして、途中を省略して⑧としているのが「津波注意報等が引き下げ・解除となった時刻」です。ここで注目すべきは②発表から引き下げまでの時間です。多少の差はありますが、『おおよそ1時間』であり、(内陸などであっても)早くても40分程度、可能性がありそうな大規模な海域の地震では少し時間に余裕をもって1時間20分程度を見込んでいるのだと思います。

ここで難しくなってくるのが、『まだ津波が到達していない』のか、『津波は到達し始めているが、まだ情報が発表されていないだけ』なのかでしょう。そこで次に、実際に津波を観測した国内付近の地震の事例を見ていきます。

津波が観測された事例

情報量が増えるので、タイムラインで分けておきますが、一定程度のパターン化ができる気がしたのでその体感を追っていきましょう。

地震発生から津波注意報などの発表まで

2011年に12例ほど(直近で2023年の鳥島近海の例)を纏めてみました。
このうち2015年の鳥島近海の事例は、M5.9と中規模だったため(もちろんこのエリアとしては十分津波の可能性はあるのですが)注意報としての発表が遅れた面は否めなかったと思います。
更に、2023年10月9日の事例でも、震度0の地震から1時間15分ほど経って突如、津波注意報が発表され、その後も実測されてから注意報に格上げする展開が続きました。

その他は中央値で「4分後」には注意報などが発表されており、少し陸域から遠いこともあって、津波注意報が『既に到達か』となりやすい上の事例とは異なり多少の時間的余裕があるのは特徴的ですね。

注意報等発表から最初の発表まで

津波注意報で発表される「③(都道府県単位での)最短での津波予想時刻」から、各道県に数えるほどしかない観測点で津波を実測することには時間的な差があるため、③と④には数分から数十分のラグがあることは理解できます。

そして、「⑤津波を実測したという情報」が初めて出るのは、基本的に早くても津波注意報が出てから45分程度後(時間が掛かる場合には1時間以上音沙汰なく、普通の人が『津波はなかったのかな?』と思うぐらいのスパン)になることは要注意です。

津波が発生しなかった事例と合わせてみても分かりますが、こういった傾向が一つ見られるでしょう。

  • 1時間ほど経つ前に、津波が観測されたらその情報を発表し、警戒モードを継続
  • 1時間経っても一切津波が観測されていなかったら、『解除』に向かって判断をする

これが一つのポイントになろうかと思いますので、皆さんも『津波注意報』が出されてから1時間程度を過ごす際の参考として頂ければと思います。

最大波観測から解除まで

表示していませんが、④第1波を観測してから⑥最大波を観測するまでに数十分かかることは珍しくなく、更に「⑥最大波を観測」してから「⑦発表」まで十数分かかることにも注意しておきたいです。

特にテレビを見ている方などは、発表された情報が「たった今」であるかのように誤解しがちですが、あくまでも数分ないし十数分は前の情報であることに注意しないと判断を誤ってしまうのが怖いところです(表にはありませんが、東日本大震災の15時台中盤以降が特に顕著だったように思います)。

そして、多くの方が最も注目する「⑧津波注意報等の解除時刻」に関してが、最も振れ幅が大きくなるため予測が難しくなるのですが、ここも2つパターン化しておきます。

  • 「最大波観測」から数十分後に、ピークを過ぎたとして解除されるパターン
    • ※「観測」されてから「発表」されるのにも十数分掛かるため、
       「⑦最大波の実測発表」の直後に「⑧注意報等解除」が来ることもある。
    • ※上の極端な例として、2013年や2019年のように数分orマイナス分もあり、
       それぞれの差をしっかり把握しておかないと、
       『えっ最大更新したのに何で?』と勘違いしてしまうと思います。
  • 「最大波観測」からピークは過ぎたものの、まだ注意報クラスを観測する事例が続いているパターン

ただ結局のところ「中央値」を取ってみると、表の右2行にもあるとおり、『最大波から1時間程度』での解除となるのが標準的なようです。そうして捉えてみると『ピークから1時間後』が一つの目安となるのは注意報クラスならば間違いなさそうです。

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