【新年・地理】の季語について纏めて紹介してみた

【はじめに】
この記事では、【新年】の俳句歳時記に記載されている【地理】の季語について纏めていきます。

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ウィキペディアで学ぶ「概要」

まずは、日本語版ウィキペディアから「季語」についての概要をざっくりおさらいしておきましょう。

季語の種類
季語はその成り立ちによって三種類に分けることができる。

  1. まず一つは「事実の季語」で、雪は主に冬に降るから冬、梅の花は春に咲くから春、という風に自然界の事実にしたがって決められているものである。
  2. 次に「指示の季語」があり、「春の雨」「夏の山」「秋風」というように、事物の上に季節を表す語がついて直接的に季節を示しているものである。
  3. 最後に「約束の季語」があり、これは実際には複数の季節を通して見られるものであっても、伝統的な美意識に基づく約束事として季節が決まっているものである。先述の「月」(秋)や「蛙」(春)、「虫」(秋)、「火事」(冬)といったものがその例である。

現代の歳時記においては一般に、四季+新年の五季ごとに季語の内容から「時候」「天文」「地理」「生活」「行事」「動物」「植物」という分類がなされている。

季語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

季語を幾つかのカテゴリーに分ける時の一つに「地理」があり、四季のほかに季節として「新年」というものが設けられているのが、ある種、昔からの歳時記・季語の「お約束」となっているのです。

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1872年12月より日本に太陽暦が導入され、歳時記の内容に大きな混乱をもたらした。1874年の『俳諧貝合』(香夢)が陽暦による最初の歳時記であり、同年序の『ねぶりのひま』(四睡庵壺公編)では四季とは別に新年の部を立て、立春を2月において陰暦から1か月遅れで調整しており、現在の歳時記の多くがこの方法を引き継いでいる。その後改造社の『俳諧歳時記』(1933年、全5巻)が出て近代の歳時記の体裁が整えられた。

歳時記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「新年」という季節の発案は、太陰暦と太陽暦を両睨みして、両方の季節感において培われた「新年」の季語を纏めて併記した、そんなものとなっているのです。基準とする季節感が異なる季語がごちゃ混ぜになっている点で混乱を生じやすいのでしょうが、ざっくり今までの歳時記はそういう扱いとするのが半ば慣例となっているのです。

著名な新年・地理の季語

ここ最近に出されたメジャーな俳句歳時記を見る限り、季語の数が非常に少ないのがこの「新年」×「地理」のカテゴリーです。その数は基本的に1桁で、5~6個といった具合です。なのでここではそれらを3つほどに整理して皆さんにお届けして行きたく思います。あくまでも私なりの分類・解釈ですので、詳細については市販の歳時記をお手元に置いてぜひ確認してください。

若菜野

先に単独気味なこちらの季語を紹介しましょう、「若菜野」です。字面だけを見ると何となく春の季語っぽく感じますが、ここでいう「若菜」が何かがわかれば新年らしさが出てくると思います。

七種粥ななくさがゆに入れる若菜を摘みに出かける野。』

(引用元)『合本俳句歳時記』
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そう、正月七日の「人日の節句」に食べる『七草粥』に入れる春の七草を摘むための野のことです。 人日の節句はもちろんのこと、七種、七草、七種粥、七種売、若菜粥、若菜の日、若菜の夜などと幾つも生活の季語が俳句歳時記には傍題として収録されていました。

現代人にとっては「七種粥」を食べること自体が稀になっていて、ましてや野に摘みに行くことなどは更に稀でしょうが、こういった季語が『新年 地理』にあることは十分に理解できるものかと思います。

初景色、初気色、初山河

ここからは「初◯◯」シリーズが始まります。「note」にも書いたとおり『初◯◯』という季語は本当にたくさんあります。新年の季語の半数にのぼるんじゃないかと思ってしまうほどです。

その中でも最も広い地理の季語が恐らく「初景色/初気色」ではないでしょうか。俳句歳時記によると『元日に眺める景色』のことを指すようです。

  1. 『みちのくの海がゆさぶる初景色』/佐藤鬼房
  2. 『初景色水平線のほかあらず』/岡本まち子
  3. 『筆立の筆一本も初景色』/神蔵 器
  4. 『緋の鯉の緋いろめでたき初景色』/三田きえ子
  5. 『誰よりも遠いところを初景色』/山崎聰

海も空も人々の営みも、全て年が改まれば「初景色」といった感じです。3句目などは特にその感慨に溢れている印象です。何にめでたさを感じるかで「初景色」は勝負すると面白いでしょう。

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そして、海や空でなく山河に注目した「初山河」という季語も立項されています。厳密には下に連なる季語たちと要素は近いのですが、具体的に言っていないという点でこちらに分類しました。

  1. 『幼な名で呼ばれ眩しき初山河』/中村苑子
  2. 倭建やまとたけるの火は見えざるや初山河』/原田喬
  3. 『初山河郵便船が離れけり』/松山足羽
  4. 『ゆりかもめひらりと青し初山河』/山田みづえ
  5. 『初山河火種に息を送りけり』/山田禮子

海や空や都会でなく、山や河にフォーカスした点で「初景色」とは少し違った印象となります。加えて日本の原風景などと合わせて考えると、「『故郷』に戻って迎えた元日」という要素をどこかに孕んだ季語なのではないかと感じます。

そして、以下に個別の地名を含めた季語を列挙していきたく思います。

「初富士」を始め固有名詞を組み合わせた季語

俳句歳時記によって多少のズレはありますが、パターンとして最も多いのが「初◯◯」に『固有名詞』を入れた形です。「山」や「神社」、「地名」などを含んだ形を取るものですが、言ってしまえばこれらは無数に生成可能だと思います。

  • 『稜線も襞も女神や初浅間』/西本一都
  • 『鶏鳴に覚めゆく裾野初赤城』/池畠敏子
  • 『緲渺と落ち轟音の初華厳』/岡田日郎
  • 『初秩父扇ひろげしごとき空』/皆川盤水

なので皆さんの地域やゆかりの固有名詞を入れて季語を造ってしまうのも良いのではないでしょうか?

ちなみに、北関東でも最も作句例が多そうなのが、「初筑波」です。連歌を『筑波の道』と言った故事も相俟ってか、霊験あらたかに多くの例句が歳時記には掲載されていました。

  • 『ちちははのもやなつかしき初筑波』/原裕
  • 『ひたち野のどこからも見え初筑波』/小室善弘
  • 『初筑波古事記の径を訪ねをり』/神原栄二
  • 『初筑波湖上に白帆うかべたる』/小林螢ニ
  • 『セザンヌの使はぬ色の初筑波』/石平周蛙
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そして関西の代表格となっているのが「初比叡」です。実際に初詣などに行ってしまうと『人事生活』などにカテゴライズされてしまうため、眺望したりといった意味の「地理」の季語としては適度な距離にあったのかも知れません。

  • 『うつすらと雪に烟りて初比叡』/細川洋子
  • 『初比叡聳えてきたる舳先かな』/三関浩舟
  • 『母校より仰ぐ初比叡間近なる』/前田攝子
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この形の代表選手のようになっているのが「初富士」でしょう。西の「初比叡」に対比されて、東日本、ひいては全国的に詠まれるのが「初富士」です。昨今は、テレビやYouTubeなどでも「初日の出」を富士山とともに中継するのを各局が競うようになってきていますよね。

  1. 『初富士や幾たび愛で河口湖』/松根東洋城
  2. 『初富士の赤富士なりしめでたさよ』/大橋越央子
  3. 『初富士のあけの頂熔けんとす』/山口青邨
  4. 『初富士へ農家はラヂオかけ放す』/田川飛旅子
  5. 『初富士を得しどよめきの食堂車』/浅野右橘

富士山の麓を詠んだ句が多い印象の中で、5句目のような『得し』とか『どよめき』といった言葉選びが非常に新鮮でした。こういったアプローチもアリだと思います。

最後に「プレバト!!」でも詠まれている『初富士』の傑作をご紹介しましょう。年始一発目の特番で披露された作品となります。

  1. 2017年『初富士や北斎のプルシャンブルー』/東国原英夫
  2. 2023年『初富士は青しケサランパサラン来』/森迫永依

どちらも「青」と「白」を独特の表現で描いた破調の句です。東国原さんは特待生1級に、森迫さんは非特待生でありながら冬麗戦で大活躍をみせました。

ただ、ここでも一つ注意が必要なのは、「初富士」といっても毎年その姿は違うという点です。富士山を描く時もうっかり固定観念的な絵を描いてしまいそうですが、よくよく描写してみると、何合目あたりまで雪が積もっているかとか雲がどれぐらい覆っているかなどで表情が変わって見えるものです。

例えばツイッターで「富士山」や「初富士」と「◯◯年1月1日」で高度な検索をかけてみると、その年々で違った個性の初富士を拝むことが出来るでしょう。そこらへんの違いに気づくことの出来る視点を持てるようになれば、去年までとは違った『初◯◯』など新年・地理の季語で1句読めるようになるのではないかと思います。

天気概況
2023晴れ雪は中腹あたりまで積もっていたものの、
強い風で7合目あたりは吹き飛ばされ薄く、
代わりに宝永山の東側に厚い雪が残る形
2022晴れ雪は中腹までほぼ均一に積もる均整取れた形
宝永山の西側は雪が厚いが、東側は雪なし
2021晴れ雪は中腹まで積もるが、地肌が見える所も
裾野はどちらかというと緑がかって見える
2020曇→
晴れ
雪は非常に厚く、中腹までほぼ地肌見えず
朝のうちは雲が目立つも昼前には晴れ、
平年に比べて暖かい元日となった
2019晴れ平成最後の初富士は、中腹まで雪が深め
但し、南東側だけは雪が浅く、麓はやや
枯れたようなくすんだ色味が強めな印象

それこそ定点観測ではないですが、数年分の「初富士」と比較してみると面白いかも知れません。それにここ最近は晴れの年が多いですが、エリアによっては遠くて富士山が隠れてしまったり、雨や雪で拝むことが難しい年もありましょうから、そういったことも含めた作句に励んでみると面白いかも知れませんね。皆さんの地域の「新年の地理の季語」の作品もぜひコメント欄でお寄せください!

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