【はじめに】
この記事では、「NHKのど自慢」が2023年度になってリニューアルされたことを受けて公開された記事(特に「カラオケ化」&「バンド廃止」に関するもの)について記事を引用する形で振り返っていくと共に、一視聴者である私(Rx)の感想と、それにまつわる私的な現実解を紹介していきたく思います。
(オススメ)私(Rx)の思うNHKのど自慢の「本当の『禁止曲』」について
2023年4月の記事(集英社)
「NHKのど自慢」がリニューアルされたのは2023年4月2日のことであり、廣瀬アナに続いて二宮アナが初司会を務めたのが翌週9日。それに前後して、大手新聞社でも「のど自慢」のリニューアルについて報じるようになります。例えば、
- (2023/04/01・産経)
「NHKのど自慢」生演奏からカラオケに 2日放送から バンドの味わい惜しむ声も- NHKは「誰でも、どんな曲でも、気軽に挑戦できるようにした」と理由を説明するが、生伴奏を根強く支持するファンも多く、バンドによる演奏を惜しむ声が聴かれた。
- 3月31日に行われた改編発表を受け、ニュースサイトの掲示板やSNSでは「経費削減ではないか」「らしさが失われる」などと批判的な声が多く投稿された。
- のど自慢の演奏に憧れ、自らも趣味でピアノ伴奏を行う岡山県倉敷市の公務員、佐藤孔基さん(42)は「出演者にとっては一生に一度の晴れ舞台。生バンドでやるから意味があり、本当に残念」と悲しむ。
- 番組改編について「カラオケで歌いやすくなる」「変えるのが遅すぎた」と、好意的に受け止める声もある。
と、リニューアル初回放送の前日には、『ネガティブ』の比重がやや高い記事が公開され、放送後は、
- (2023/04/02 → 03・毎日)
NHKのど自慢、刷新 生バンド伴奏→カラオケに 批判の声も - (2023/04/16・朝日)
「のど自慢」生演奏からカラオケに NHK「多様化する音楽に対応」
と日曜日の午前中に初稿が出され、翌日にかけて更新された(ネットでは有料)記事が出されました。こちらでは『批判の声も』とタイトルにネガティブなニュアンスが滲んでいます。
そして、公式見解ともいえる林理恵(前)メディア総局長の記者会見が2023年4月19日に行われて、上記記事を受けての見解が示されました。
- (2023/04/19・スポニチ)経由で引用
NHKメディア総局長 カラオケになって批判続出の「のど自慢」に「生バンドでは歌いたい曲に…」- 「生バンド演奏は他の番組にない魅力だけど、近年音楽が多様化。歌謡曲を想定したバンドで編成した場合、出場者の皆様がお歌いになりたい曲に対応しにくくなってきている。ということで皆さんが慣れ親しんだカラオケ音源の採用に踏み切りました。今回採用したことで、この仕様は当面続きます」と語った。
こういった記事と一線を画していたのが『集英社オンライン』の記事です。番組卒業から半月あまり経ったところで、鐘の秋山気清さんにインタビューをし、率直な感想を引き出しているのが特徴的です。
- (2023/04/20・集英社オンライン)
「NHKのど自慢」に批判続出。21年間、鐘奏者を務めた“鐘のおじさん” 秋山気清さんはカラオケ仕様にリニューアルされた番組を見て何を思う?- 国民的音楽番組「NHKのど自慢」。この4月からリニューアルし、演奏が生バンドからカラオケに変更されたところ批判が続出。だが、NHKは4月19日の定例会見で「この仕様は当面続きます」と発表した。(中略)
- 秋山さん「これまでの『のど自慢』は生放送とはいえ、どこかのんびりした空気があったのですが、新しくなって少しせわしくなった印象を受けました。カラオケ音源もやはり残念ですね。生バンドの良さは、歌い続けたおばあちゃんの話のようにアドリブができること。
素人の方だと、本来より遅いテンポで歌ってしまうこともありますが、バンド演奏ならさりげなく伴奏のスピードを落とすといった調整をしていたんです。ですから、どのような理由かはわかりませんが、そこ(生バンド演奏)は貫いてほしかった」 - もちろん、秋山さんはすべてを批判的に見ているわけではなく、「新『のど自慢』もこれからどんどん良くなってほしい」と古巣にエールを送る。(後略)
4月19日のNHKの定例会見を受けた記事という建付けですが、秋山さんが『どのような理由かはわかりませんが』と理由を濁した上で私見を述べたことや、『少しせわしくなった印象を受け』、『カラオケ音源もやはり残念』と語ったことは、視聴者の代弁・投影であるかのように受け入れられました。
ただ、全文文字起こしではないため、秋山さんも古巣に対して『ネガティブ』な意見が中心だったというより肯定・否定をフラットに語っている中で読者受けするネガティブに編集側が比重を置いた可能性もあると思います。額面通りに受け取ると秋山さんにまで要らぬ“巻き込まれ”が生じかねないか心配をしていました。
2023年5月の記事(新潮)
NHKのメディア総局長が個別の番組について説明をしても、なかなか現場の空気感が伝わってこないということもあってか、2023年5月12日に「新潮」が以下の記事を公開しています。
- (2023/05/12・デイリー新潮)
NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1
今回はこの記事の気になった部分を幾つか引用していき、私の雑感を述べたいと思います。もちろん、チーフPさんの発言に納得する部分もありますが、疑問符が残る部分を中心に触れていくこととなるため若干ネガティブよりな感想が過半を占める点は予めご了承ください。
( 上記記事 )
- ならば《どのような理由》でカラオケ音源に変更したのか、そもそもなぜ「のど自慢」はリニューアルする必要があったのか、チーフプロデューサーの中村雅郎氏(53)に訊いた。
- (中略)「去年の夏に福岡から東京に異動になると、上司から『「のど自慢」のリニューアルを担当してほしい』と異動理由について説明を受けました。収録の現場は何度も経験していたため、私も改革の必要性は痛感していました。何より、新型コロナの影響で2020年3月から何度も放送が中止となり、様々な問題点が浮上していました。昨年の夏頃、ややコロナ禍が沈静化したこともあり、番組スタッフの間でも『このタイミングで一気に懸案事項を解決しましょう』という声が高まったのです」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1
中村さんへのインタビュー記事で、冒頭は、のど自慢と中村さんの関わりとNHK芸能番組における立ち位置の説明に始まりました。そして、「博多一風堂」の創業者・河原成美氏の言葉を引用する形で、『変わらないために変わり続けていく』ことへの思いを強めていったとしています。
好意的そうな「往復葉書」+WEB応募 と 賛否分かれる「バンド廃止」を同列には……
番組視聴率も“残酷な現実”を示していた。長期にわたる下落傾向のため、70代以上の視聴者への偏りが著しい。視聴者の多くから「『のど自慢』は魅力的なコンテンツではない」と言われても仕方なかった。
「リニューアルすれば10代や20代の視聴者はすぐに戻る……なんてことは、もちろん考えていません。ただ、新規参入の少ない業界が滅びるのは歴史の鉄則です。まずは出場希望者を増やしたい。そこで“出場者ファースト”という旗を掲げ、一から十まで聖域なく全ての制作プロセスを見直しました。すると様々な問題点が明らかになったのです。例えば、当時、応募は全て往復葉書でした。若い人は使ったことがないでしょう。そこでWEBでの応募をスタートしました」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=2
さらっと読むと「良い話」のようですが、以上に関して、私の雑感を列挙しておきます。
- 『変わらないために変わり続けていく』こと自体は、77年続く長寿番組として当然。大事なのは、本当に“出場者ファースト”なのかという点。
- 番組視聴率は“残酷な現実”を示している とあるが、それはテレビ「視聴率」が全般に下がっているという傾向の中で、相対的にどうなのかという視点が記事からは見えない。(他番組と比べて本当に「善戦」していないの?)
- そして番組視聴率でなく、『SNSのバズり』などについてはどうか。日曜昼の番組全体を見渡しても、それなりに関心度の高い番組でバズる頻度も高いように感じる。一側面から都合良く解釈していないか?
- 『出場を躊躇する人の障壁を下げる』ことは“出場者ファースト”として適当で、「往復葉書」は確かに良い改革だと思う。これに反対する視聴者は殆どおらず、変えてこなかったのはひとえにNHK側の問題。
ただ反対意見の少なそうな「往復葉書」の成功体験と、賛否分かれる「カラオケ音源化」を並列に扱うことに違和感を覚えざるを得ない。こちらについては、バンドを廃止する方がNHK側の都合である割合が強いように感じる。
後述しますが、特に一番下の部分が『NHK側の言い訳だ』と主張するSNS上の過激派にある「番組側への不信感」の根底にあるのだと感じています。
生バンドのパートで一番最初に出てきた記述は……
さらに「一刻も早く改善しなければならない」課題として伴奏の問題が浮上した。
「以前はステージの真ん中にバンドが陣取り、上手側に“出場者だまり”を作っていました。18組とか20組の出場者が固まって座り、そこから1組ずつ中央に進んで歌ってもらっていたわけです。ところが新型コロナの感染拡大で、出場者もバンドもゲストも距離を確保してもらう必要が生じました。そこで出場者の皆さんは客席に降りてもらったんです。苦肉の策ですから、もし将来、新型コロナの第9波が猛威を振るったり、他の感染症が世界的に流行しても、同じことは避けたい。となると、バンドと出場者が同じステージに立つのは、スペースの問題からやはり無理ということになりました」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=2
まずもって気になったのが「伴奏の問題」と、伴奏してくれていたバンドメンバーへの経緯が地の文から感じ取れなかったところ。後述する音楽の変遷・変化については致し方ない部分があったにせよ、今まで誇りをもってNHKのど自慢の出場者の要望にできる限り応えようとし、聞いたことの少ない楽曲や打ち込みで生演奏が困難な楽曲にも最大限努力してきてくださった方々に対して、いささか冷たく感じてしまいました。
そして、「コロナ禍で出場者の皆さんが客席に降りた」ことは違和感なかったですし、コロナ禍が5類云々になるタイミングで元の形に戻すことは基本的には賛成です。ただ、上の記事を真正面から読むと
- 「バンドと出場者が同じステージに立つのは、スペースの問題からやはり無理」
だから、
「出場者をステージに残す」トレードオフとして「生バンドは泣く泣く諦めた」
的な意味不明な因果関係のように見えてしまったのです。極論を言えば、「出場者をステージに残す」よりも「生バンド」を優先して欲しかった! とSNSでは抵抗の声が出てきてもおかしくないような記述に思えます。実態としては後述の音楽性の移ろい+費用面が主たる要因だったのでしょうが、それを後ろにして最初にこれを書くような部分から『言い訳に防戦一方』に見えてしまう節があるのでしょう。
生バンドのメリットとデメリット
予選会の流れを見てみよう。葉書やWEBを通じて1000人単位の応募がある。2人や3人での応募も多いため、現場では「組」が単位だ。スタッフは応募者の“出演動機”を丹念に読み込み、200組を厳選する。
個人情報保護に細心の注意を払いながら、200組が歌う200曲のリストを作る。生バンド時代は、急いで楽譜を手配する必要があった。「『のど自慢』は地域密着を重視していますから、バンドも……全国のブロック別に組んでいました。皆さんベテランばかりで、……何度も演奏したことのある曲なら全く問題はありません。予選の持ち時間は1分で、少しでも長く歌ってもらうためにイントロを短くするのもバンドならお手の物です。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=3
ところが、アニメ『チェーンソーマン』の主題歌で米津玄師さんの『KICK BACK』となると、バンドの皆さんが『弾いたことないんだよなあ』ということが起きてしまいます」
メリットとデメリットの冒頭で書かれた上の文言での私の雑感は以下のとおりです。
- そもそも「1000人単位で応募がある」って時点で、現代テレビにあって、視聴者から支持・人気を得ている番組なんじゃないの?
- 『200組を厳選』ってあるけど、諸々考慮したときにそこを見直す発想には至らなかったの? 例えば、120・150組にして負担・コスト軽減を図る等
- 具体例として『KICK BACK』と挙げてしまうと、どの日のどの会場のどの出場者かを特定できてしまうし、そういった意図がなくても失礼な読み方をする読者から『KICK BACKを選ぶ出場者 や 本音を漏らすバンドメンバーが悪者にされてしまっている!』と感じてしまわれないか?
こういったところが本論に入る前に気になってしまいました。そして、
しかも中村氏がシンセサイザーの奏者に聞き取りを行うと、「最近のヒット曲は打ち込みが主流のため、手弾きで再現するのは不可能な曲が増えてきている」と断言されたという。
「結局、バンドで演奏できるよう苦労してアレンジするしかありません。しかし、サンプリングされた特殊な音が楽曲の重要なモチーフだったりすると、アレンジしても似て非なる曲になります。予選会で『この曲、YOASOBIだよね?』と首を傾げながら歌う応募者もいらっしゃいました。これでは選考の公正性に疑問を投げかけられたら反論できません」
「のど自慢に対応できるバンドメンバーの人材不足も深刻な問題でした。30年以上、中には40年続けてくださっているという方もいました。ある地域では、新しいメンバーによる再結成も検討しました。ところが、新たなミュージシャンを見つけるのが困難で話が前に進みません。他の地域でも、一部のメンバーは東京から連れて行くとか、大阪のギタリストが広島も兼務するといった対処法を続けていたのですが、人材不足は明らかで、いつか限界を迎えるのではと考えていました」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=3
以上について、例えばTwitterで『納得』とワード検索してみると好意的な意見を出される方の多くが、ここの部分に共感をしていました。ただ一方で個人的には、
- 『手弾きで再現するのは不可能な曲が増えてきている』と言われたものの、0か100かではなく割合が増えてきているだけ。前述の『風雪ながれ旅』などは依然としてバンドメンバーにはお手の物だったはず。
- 『選考の公正性に疑問を投げかけられたら反論できません』は事実だが、『カラオケでリズムに遅れる恐れの高い人』などに対する選考の公平性が、これまで以上に問われる事態となっていることとのトレードオフでは?
ここらへんは書き残しておきたい部分だなと感じていました。
この後、高度経済成長期からの時代の移ろいにあって、『生音信仰』という造語による論を展開していますが、これは肯定派と否定派で水掛け論になりそうなので、私は敢えて立ち入らないことにしようと思います。
日曜の生放送、高齢の出場者が歌い出しのタイミングを間違えた。だが、百戦錬磨のバンドマンたちは、出場者の歌に伴奏を合わせる名人芸を披露した──。
生バンドの素晴らしさとして語られることの多いエピソードだが、中村氏によると「順番が逆」だという。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=4
こう書き出す「カラオケで激減したトラブル」では、『カラオケで練習した高齢者が生バンドに困惑(カラオケ音源ならいつもの“きっかけ”の音があるので、歌い始められる)』した事例や、『予選:カラオケ、本番:生バンド をコロナ禍初期に試したが本番では総崩れになった』事例を紹介しています。
視聴者が、番組側に積極的に情報提供して欲しかったのはまさにこの部分です。現場の声、試行錯誤のプロセスとそれに至った経緯です。後述しますが、これを明らかにせず「結論部分」だけ「決定事項」としてリリースしたから反発の意見が爆発したのだろうと感じます。
「『のど自慢』が長寿番組であるのは、視聴者だけでなく出場者や予選会に参加してくださった皆さんのおかげであることは言うまでもありません。そして『最新のJ-POPを歌いたい』、『ヒットしているアニソンを歌いたい』という方々が増えています。求められる楽曲の変化にはビビッドに対応すべきです。カラオケ音源に変更すると決断したのは、こんな背景があるとご理解くだされば、私たち作り手としても非常に嬉しいです。何よりバンド演奏だった予選会でアレンジされた楽曲を歌い、『こんなはずじゃなかった』と落胆して帰られる方が激減したのは、カラオケに変えたおかげだと言えるはずです」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121103/?all=1&page=5
1本目の記事の締めとして公開されている上の文言が人によって刺さらないのは、視聴者側の感情論に現実的な理論で解答しているからでしょうか。
そして、後半になってようやくもう一つの「メリット」が提示されます。予選会に関する部分です。
歌う時間は1組につき1分。そこで問題になるのはイントロが長い曲だ。曲の冒頭からきっちり1分間というのが予選のルールだ。そうしないと予選会の進行が停滞してしまう。
(中略)バンドからカラオケ音源に変えたことで、予選会の進行がスムーズになったという。
「ミュージシャンの方も安定した演奏するために、休憩が必要です。今でも50組ごとに休憩を挟みますが、どれだけ演奏してもカラオケは疲れません。休憩時間が短くなったことで、出場希望者の皆さんをお待たせすることも減りました」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121104/?all=1&page=2
予選会(待ち時間)の長さは確かに解消されたでしょうし、バンドメンバーの疲労という人道的(?)な観点からすると、カラオケは疲れない点は大きなメリットに違いありません。一方、この後は、カラオケ音源に対する熱意が語られていますが、これもどこまで突き詰めても『カラオケ音源がバンド音源を代替しない』と考える人には響かない“言い訳”と捉えられておしまいでしょう。厳しい言い方をすれば、『カラオケ音源にするならばそれだけ努力するのは当たり前だし、どれだけカラオケ音源を磨いても、テンポずれなどを回避することはできない』となってしまうからです。
『当初は「バンド存続」だった』と言われても変わらないんでしょ?(諦観)
カラオケ化への賛成の声があるのは当然で、ここまで幾つもカラオケ化によるメリットを示されているので、そのメリットそのものを否定したいとは私も考えません。例えば、
- バンドからカラオケ音源に変わったことを一番歓迎しているのは出場者のようだ。
- 「批判のご意見もたくさんいただいていますが、『カラオケ賛成です』というお葉書やお手紙もたくさん番組に届いています」
といったプラスの評価に対する文言が見られました。その一方で、NHK側が軽視していたと感じるのは以下の側面です。
カラオケへの変更を発表する際、中村氏は「かなり批判的な意見が殺到するだろう」と予想していたが、「これほどとは思いませんでした」と言う。特にネット上では「NHKがバンドメンバーを無慈悲にもリストラした」との受け止めが目立った。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121104/?all=1&page=3
そして、4ページ目では以下のような表現が続いています。
ミュージシャンや音楽の専門家にヒアリングを重ね、打ち込みが主体のデジタル音源にどう対応するかもプランを練った。
「従来のバンドではキーボード担当は2人でしたから、これでは足りないのは明白でした。デジタル音源に対応できるミュージシャンを増やし、地方ではミュージシャンを見つけるのが難しいので東京で“のど自慢専属バンド”を結成する。そして1年間、全国で行われる生放送に出演してもらうことも考えました。
しかし、現実的には厳しかったですね。クオリティが求められますから、一流のプロミュージシャンを『のど自慢』のためだけに1年間拘束するとなると、予算だけでも桁違いです」ネット上では「バンドをやめてカラオケとは、予算削減のポイントが違う」、「受信料を徴収しているのだから、バンドの人件費は負担できるだろう」といった資金面に注目した批判も目立った。だが中村氏は「確かに予算の問題もありましたが、あくまでも解決すべき多くの課題のひとつにすぎません」と言う。
「様々な問題が複合的に絡みあっていました。例えば、大手のレコード会社が手がけるメジャーな楽曲でも、現在のレコーディングは打ち込みの楽曲が増えています。バンドを存続しようとしてもプロのミュージシャンは減り続けており、なかなかメンバーが見つからない。コロナ対策も重要ですし、出場希望者の皆さんがカラオケ音源を希望しているという現実も大きい。バンド存続のため、ありとあらゆるシミュレーションを行いましたが、やはりカラオケしかないという結論に達したというのが正直なところです」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121104/?all=1&page=4
もちろん視聴者側には予算面の実額は分かりません。それを公開してくれとも全く思いません。ただ、この記事を受けて『アマチュアの有志や学生といった選択肢』がSNS上で議論されたりもしました。(現実的かは度外視ってなるでしょうがww)
「『セレモニー』問題」に対するSNSの軽視と深層心理(?)
中村さんが最も心に刺さったというSNS上の私的が以下の部分だったといいます。引用します。
批判的な意見の中で中村氏の印象に強く残ったのが、「なぜ番組でセレモニーを行い、功労の大きなバンドメンバーに感謝を捧げないのか」というネット上の指摘だったという。
「拝読して、『あいたたたた……』と呟きました。いや、全く仰る通りなんです。でもセレモニーを開くとなると、約2カ月間、毎週日曜に“さよなら公演”を放送する必要があります。北海道、東北、中京のバンドはセレモニーを行ったが、九州・沖縄のバンドは割愛するというのは不公平でしょう。しかし、全バンドを対象に日曜の生放送でセレモニーの場面を流すのは現実的ではありません。そこで小田切千アナウンサー(53)と鐘担当の秋山気清(きせい)さんに花束を渡すというアトラクションを、番組放送終了後のステージで行いました。バンドの皆さんにはカメラの回っていない場所で感謝の気持ちを伝えました」
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121104/?all=1&page=4
中村さんもある程度ご存知だったとは思いますが、SNS上では『バンドメンバー』が小田切アナや秋山さんに次ぐ人気を博していました。バンドメンバーを紹介する時の皆さんの振る舞いに注目が集まり、個人名は避けますが、ノリノリで演奏する様が微笑ましく、素人の歌唱より「プロのバンドメンバーが楽しそうに演奏する様子」や「プロのアレンジの妙味」を楽しみにしている人すらいたほどです。
「バンドの廃止」について、熱心な視聴者から批判が大きかったのは、ただ音源が生演奏でなくなったことだけでなく、『バンドメンバーの方々(○○さん)をクビにした』といった人間的な視点に立った感想が多かったからなのだと思います。
まるで、企業・企画の合理化の名のもとに、「一番費用の高い『人件費』をコストカットする」構図を否が応にも連想せざるを得なかったからだろうと推測します。そこを番組サイドは軽視していた節があったのではないかと思うのです。
ここからは、現実的な私の意見としての「解」の案を述べていきたいと思います。
Rxの考えた現実解のシミュレーション
① バンドメンバーのご挨拶動画を撮り溜めてツイートしとくべきだった
「バンドの皆さんにはカメラの回っていない場所で感謝の気持ちを伝えました」などとありますが、それはビジネス上、当たり前の話です。視聴者が求めていたのは『ショーとしてバンドメンバーに最大の感謝を伝える演出』だったのではないかと考えます。「NHKのど自慢」というアットホームさを売りにしている番組なのですから。
視聴者は知っています。45分番組に大々的な特集を組む時間的余裕がないことを。だからこそ、秋山さんと小田切アナの番組卒業を手短ながら地上波放送の中で触れられたことは良かったと思います。後日公式Twitterで「ゲストから花束が渡される」シーンが呟かれたことで『気持ちが晴れた』方も一定数いらっしゃったと思います。
ただ、だからこそ言いたいのだと思うのです。『カメラの回っていない場所で感謝の気持ち』を伝えるだけでなく、『もっとその感謝の気持ちを伝える機会を視聴者側にも与えて欲しかった!』と。そこの演出化が軽視されていた節は否めないと思うのです。結果論ではありますが、現実解の一つとして、
まあ、本当の理想は、小田切アナ『今回で、○○ブロックの演奏を担当してくださった皆さんは最後となります。バンドメンバーの皆さんに盛大な拍手をお願い致しまーす!』と暗示していれば、たった15秒ほどで解消できていたであろうに、口惜しく思います。
そうすれば、『○○さんのノリノリな演奏を見られるのは今回が最後だったか』とか『○○さんの笑顔での楽しげなお手振り(紹介を受けての反応)が見られなくなるのは寂しくなるなぁ』的だったはず。
② NHK全般に「事前に発表してほしかった」
2023年2月8日に司会者交代が発表され、リニューアルが対外的に発表されたのにも関わらず、その他の変化(秋山さんの卒業やカラオケ化)については一切触れられず、最終週で怒濤のように発表されるバタバタ感が否めませんでした。
もちろん2月8日の時点で最終的な決裁が下りていなかったかも知れませんが、まさか3月下旬まで調整を行っていたこともないでしょうから年始の段階で概要が内々に決まっていたはずです。できれば、最終週の12時50分頃に発表するのではなく、もっと早く明言されてたなら……と感じてしまうのです。
きっとこれは「NHKのど自慢」に限らず、NHKの番組全般に言えることなのでしょうが、『番組内で触れられるのが最終回のみ』というのは悪しき習慣だと感じています。もちろん今はネット上で情報を取ることも出来ますが、記事にもあったように視聴者の多くが高齢者であることに鑑みればです。番組内でもっと早く伝えておくのが『仁義』であったようにも思えてくるのですが如何でしょうか。
太字にした部分を挟めれば、軟着陸が期待できたであろうに、それをさせなかったNHKの体制などから「不信感」も募ったのでしょうし、上をすればリニューアルに対する抵抗感も和らげられるほか、最後の現体制ということで視聴者も増えていただろうと思うに……
「三方よし」の真反対になってしまったことは重い現実だと受け止めざるを得ません。むしろここは、中村さんたち番組サイドだけでなく、NHK全般に要望したいことと感じます。
③ バンド廃止を0か100かでなく、記念回だけでも……!
最後に、気になったのは「0か100か」で物事を考えている姿勢です。SNS上で見られる『折衷案』は「バンド演奏を何とか続けられないか」を模索したい視聴者なりのアプローチです。結果的にNHK側が全てを考慮した上で却下というか現実的でないとして「カラオケ一本化」したことは理解できます。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05121104/?all=1&page=4
- 「(前略)東京で“のど自慢専属バンド”を結成する。そして1年間、全国で行われる生放送に出演してもらうことも考えました。しかし、現実的には厳しかったですね。クオリティが求められますから、一流のプロミュージシャンを『のど自慢』のためだけに1年間拘束するとなると、予算だけでも桁違いです」
- ネット上では「バンドをやめてカラオケとは、予算削減のポイントが違う」、「受信料を徴収しているのだから、バンドの人件費は負担できるだろう」といった資金面に注目した批判も目立った。だが中村氏は「確かに予算の問題もありましたが、あくまでも解決すべき多くの課題のひとつにすぎません」と言う。
- 「(前略)出場希望者の皆さんがカラオケ音源を希望しているという現実も大きい。バンド存続のため、ありとあらゆるシミュレーションを行いましたが、やはりカラオケしかないという結論に達したというのが正直なところです」
ただ、上に対しては、どこまで読んでも『テンポがズレる人にカラオケ音源は対応できない』、『カラオケ音源を希望している人が多いのが現実だとしても、生バンドを従えて歌いたいという願望が叶えられることがなくなる』といったデメリットへの返答としては不十分です。「変えることのメリット」を切々と説いても、「変えないことのデメリット」を唱える人とは平行線で水掛け論となるでしょう。
そこで、私が考える「折衷案」として以下のものを考えました。中村さんの率直な意見なども反映させた私なりの折衷案です。
- 折衷案として、「記念回」で生バンド演奏を部分復活させる(予算との相談)
- 上を見る限り、『毎週、生バンドが困難』というだけであって、『年に数回』が不可能とは読めなかった。だから、メンバーが揃い、費用的に出来る範囲で『生バンドを復活』させてはどうかと考えました。具体的には、今でも開催される、
- 年度に1回の「グランドチャンピオン大会」(←東京だからマスト)
- 実質的に開催される象徴的な回(例えば、3月2週に開催される東日本大震災の被災地の回、4月3週に開催される熊本地震の被災地の回など)
- (バンドメンバーが集まりやすそうで遠征費や楽器の搬送代があまりかからなそうな)各ブロックの主要都市(例えば、北海道なら札幌周辺など)に限って、各ブロックで年1回(全国で年数回)生バンド回を作る
そして、『打ち込み楽曲は慣れないけど、昔から演奏している定番曲ならお手の物』というバンドメンバーの「疲労」も考慮して、以下のような手法を検討しては如何でしょうか。
- 予選会200組のうち、「生演奏希望50組×2、カラオケ希望50組×2」に分け、それぞれで9~10組ずつ選出する。予選会は、カラオケ→生演奏→カラオケ→生演奏で50組ずつ演奏させ、バンドメンバーの休憩時間を確保すると共にカラオケ歌唱でテンポアップを図る。
- 定番曲やご高齢の方でカラオケを希望されない方は生演奏を基本とし、若者でもバンドメンバーがアレンジが困難と思う曲はカラオケ演奏とさせてもらう。(全曲をバンドが演奏するという負担を解消)
- 本番では、「生演奏」と「カラオケ」を1組ずつ交互に歌唱させる。
これが年に数回ならば、東京で「のど自慢バンド」を結成し、1年まわるよりも人件費を抑えられますし、『生バンドが復活』することを喜ぶ意見も見られるのではないでしょうか。(←これも短絡的でしょうが、0か100かよりは……と思います。)
【まとめ】「NHKのど自慢」のカラオケ問題とその本質
そして、各メディアの報じ方に関しても気になる点があります。ここからは更に私の意見ですが……
ここらへんは他の方とも共有したいと感じる部分です。「まとめ」まで来て、私の意見を示すと、
こんなところは強く感じたところです。これは人によって意見が異なるでしょうし私に対する反対意見も多いでしょうが、一定程度の論点整理と深層心理、現実解の一部を示すことは出来たと感じます。
最後に根源的な所にフォーカスしておきたいと思います。「『NHKのど自慢』に何を求めるか」です。言い方を少し平易にしましょうか。
皆さん、「NHKのど自慢」って、どのジャンルの番組だと思いますか?
例えば、「音楽番組」に重きを置くか、「音楽バラエティ番組」に重きを置くか、「オーディション」の側面に重きを置くか。或いは「ご当地番組」に重きを置くか、「人間ドラマ」に重きを置くかです。
個人的には「音楽番組」に重きを置いているのですが、上の選択肢の全てに結構な割合で分散をしているのではないかと感じますし、反対に「これは正直あんまり求めていないんだけどな~」ってことが、個々人の本心としては持っているのではないかと思います。
そして、NHKの番組制作スタッフ内では共有されているのでしょうが、個人的にはやや「人間ドラマ」と「ご当地番組」の比重がコロナ禍を経てより高まってきているのではないかと感じるのです。歌唱の前に個々人のエピソードに触れるのは、「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」とは対照的です。
ひょっとしてNHKサイドは内心、「ご当地・人間ドラマ」の比重が視聴者よりも高く見定めていたがために「音楽」にまつわる部分でこんなに反発が大きいことに面食らったのではないかと感じるのです。(もちろん一視聴者の推論にすぎないのですが)
ここらへんはもう哲学とか宗教に近い部分で永遠に渡り合えない部分かとは思うのですが、様々な見方で「NHKのど自慢」を視ていた方がいらっしゃって、今回のリニューアルによってその見どころが削がれてしまった方がいらっしゃったのだろうと思います。(バンドメンバーや秋山さんに癒やされていた方々に、論理で説明しても感情的に承服しかねるのは当たり前のことです。)
「カラオケにする論理的なメリット」で『納得』した方については、Twitterなどで『のど自慢+納得』と検索すると出てきますし、今回の説明で納得できなかった方に関しては、『のど自慢+言い訳』で検索をすると露骨に意見が二分されてヒットします。
あなたは、「NHKのど自慢」に何を求めて日曜昼にご覧になっていますか? これを最後の問いかけとしたく思います。では、Twitterなどでお会いしましょう。Rxでした。
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