津波警報・津波注意報等の的中率と注意点などをまとめてみた

【はじめに】
この記事では、津波に関する情報(大津波警報・津波警報・津波注意報など)の『的中率』を試みに算出してみた結果と披露するとともに、情報の読み方や出された時の注意点などをまとめていきます。

  • 津波警報以下の対象範囲は原則2000年以降(大津波警報は事例が少ないので当初から全件)
  • 集計期間は、2024年4月3日の「台湾付近の地震(花蓮地震)」まで
  • 津波の高さは『波高』を原則とし、速報値・暫定値・確定値のほか『実地調査』の結果なども総合的に勘案しました
  • 『的中率』の根拠とする判定基準は、あくまでも気象庁が定めたピンポイントな範囲(津波警報なら1m超3m以下など)

大津波警報:5~6例すべて警報級以上

十数年前まで「津波警報(大津波)」とされていた「大津波警報」は、1953年の房総沖地震から数えて現在までに6回発表されています。

このうち、令和6年の能登半島地震は、当初は「津波警報」でしたが、発表から少ししたタイミングで「大津波警報」に切り替え(格上げ)されました。
また、昭和の時代に「大津波警報」が発表されなかったものの、1960年チリ地震津波、1964年新潟地震、1968年十勝沖地震などは、現在なら「大津波警報」が出されていたような大津波が記録されました。

改めて振り返ってみると、1953年からの約70年間で6例ということですから『10年に1回あるかどうか』という頻度が目安となりそうです。事実、2010・2011年の2年連続は例外としてその他はスパンが10~30年程度となっています。

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そして、実際に観測された津波の高さとしては、日本列島の間近でない下の2例こそ『大津波』の基準には達しませんでしたが、十分に「警報級」だったと言えそうですし、その他に至っては歴史に名を残すほどの大津波ばかりです。仮に『大津波警報』が出されたならば、もうある程度の覚悟を決めなければならないほどの事態だと捉え、速やかに命を守るための行動を取る必要があることが明らかです。

なお、気象庁などの検潮所での値としては、令和6年能登半島地震は「1m未満」なのですが、これはあくまでも各県に数える程度しかない検潮所での値でしかありません。痕跡高では5m弱、遡上高では5m超という高い津波が押し寄せていたことが確認されたので、今回はそちらに依っています。

津波警報:実際に1mを超えるのは2割台だが……

同じような形で『津波警報』も作ってみました。ただ、時代によってその声質が異なるため、今回は、2000年以降に『津波警報』が出された地震を対象としてみます。

  • 令和6年能登半島地震は当初「津波警報」だったため、この表に掲載しています。
  • トンガの噴火による海面変動(津波)も、当初は「予報」でしたが、その後「津波警報」が出されたため、この表に掲載しています。

改めて振り返ってみた時に、「津波警報」15例のうち、実際の波高として最も頻度が高いのは、『津波注意報』レベルという結果となりました。津波警報として想定されている「1m超3m以下」の倍近くに当たる6例です。更に、20cm以下の「津波予報」級、そして実際には津波が観測されなかった事例も2例あることを考えると、『津波警報』の的中度はかなり低くなってしまいます。

『大津波警報』の的中率の高さ(7割程度)に比して、『津波警報』のずばりの的中率が2割台なのは低く見えますが、注意報レベルと言っても検潮所で80~90cm台が観測されているケースも多いこと、また速報での精度を考慮すれば、やはり『津波警報』が出たら、“最悪を想定して高台への避難を行う” ことは必須だと考えます。

津波注意報の上の方以上となると、養殖いかだの破損や小型漁船の転覆などの被害が伝えられるようになりますし、2003年十勝沖地震や2024年能登半島地震では津波に巻き込まれた犠牲者も出ています。

反対に、津波警報が出るとNHKは強く避難を促すようになりましたが、津波の第1波到達予想時刻が数時間後の遠地地震などでパニックになって慌てて避難すると却って思わぬ怪我をする可能性もあります。
『高めに外れたから良かった』と有難がるだけでなく、そこから一歩進んで我々一般人も『津波警報』の特徴や弱点を数値も交えて捉え、更に適切な行動・対応を取れるようにしていきたいです。

津波注意報:的中率は5割程度、とりあえず海岸から離れる

そして、最も頻度の高い「津波注意報」です。2000年から2024年4月現在での約四半世紀のデータをまとめたところ、最終的な的中率は5割程度となりました。一旦、表をお示ししておきます。

  • 2015年5月3日と2023年10月9日の「鳥島近海」の地震は、実際に津波が観測されてから出されたいわゆる『出し遅れ』のパターン
  • 2003年10月31日の宮城県沖と2009年1月4日のニューギニア付近の地震は、当初「津波予報」として出していたものを『津波注意報』に格上げ

「津波注意報」が出されても津波が観測されない事例は3回に1回程度はあります。そして、十数%は若干の海面変動程度を検潮所で観測する程度に留まっています。
それでも、繰り返しになりますが、全体の約半数は実際に20cm以上の津波が観測されています。局所的に数倍の高さになれば人命に関わりかねませんし、それこそテレビの特集などでよく見かけますが、数十センチの津波でも直撃を受ければ立っていることが出来ず、海に飲み込まれてしまいます。

下の気象庁HPの解説記事にもあるとおり、津波注意報が出されたら、『海の中にいる人はただちに海から上がって、海岸から離れる』ことを徹底してください。時間的に余裕のない場合などは当然、海に船の様子を見に行ったり、興味本位で野次馬根性を働かせることは止めましょう。そういったことをしようとする貴方やお仲間に向かって出されるのが津波注意報なのですから。

(出典)気象庁 ホーム > 知識・解説 > 津波警報・注意報、津波情報、津波予報について

ただ反対に、津波注意報では原則、『海岸付近におらず、海抜数メートルにお住まいの方は、わざわざ家を離れて高台などに避難すること』を気象庁は求めていません。 もちろん、海抜0m地帯にお住まいの方や、高齢者などで避難に時間を要する方、不安な方は避難していただいて結構なのですが、情報の定義や過去の被害実績を見る限り、ここの区別が出来ていない方も多いのでご参考までに。

※とはいえ、私のこの言葉を信じた結果、思わぬ被害に遭われても責任を負えませんので、皆さんの中で最後お調べ頂き、最終判断をしていただければとは思います m(_ _)m

津波予報:実は20cm以上を観測していた事例は2桁も

津波予報というのは基本的に、津波注意報の基準(20cm以上)に満たないものを想定して出されるものであり、むしろ『20cm未満のものは津波と呼ばず、海面変動』とする姿勢すら見えるほどです。

本来であれば、20cm以上の津波を観測した場合は、ある種『問答無用』に『津波注意報』以上を発表しなければならないかと思うのですが、案外そうでもないことが今回改めてわかりました。(↓)

当初、『津波予報』ないし津波なしとして安心情報が出されていた地震・火山のうち、上記に関しては結果的に津波注意報(20cm以上)級の海面変動が観測されていたのです。

このうち30cmを超えたもののいくつかは注意報ないし警報が後追いで発表されていますが、30cm以下のものに関しては基本的に『予報』のままで据え置かれ、観測されたことも情報として積極的には発表されません。

もちろん、津波注意報が発表されることの影響は社会に大きいため、30cm程度ならば津波予報の範疇に許容することも考えられなくはないのですが、『噴火警戒レベル』の判断・発表について気象庁が定めとは違った運用をした前科もあるので、そこらへんは元の基準を変えるなどしていただきたいとは感じました。前述のとおり、高さ30cm程度でも、海中にいたら飲まれてしまう恐れがありますから。

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