【プレバト!! 俳人列伝】東国原英夫・永世名人

【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」で永世名人となり、政治家・タレント・俳人としてマルチに活躍される「東国原英夫」永世名人について振り返っていきます。

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一般・特待生時代

2015年:初挑戦で才能アリ、当時のルールから1回で特待生に

早稲田大学に在籍し、芸人・タレントから「宮崎県知事」を2007~11年に担当。そして2012年から約1年間、衆議院議員を務めていた東国原英夫さん。政治家としての経歴から、コメンテーターとしての活動が増えていた2015年に「プレバト!!」の俳句査定コーナーに初出演します。

2015/11/26『紅葉燃え五右衛門殿が屋根に立つ』

初挑戦にして1位70点でのデビューとなり、特待生制度が未発達だったこともあって、僅か1回で「特待生」昇格を果たします。(※当時は限定的に才能アリ1回で特待生昇格が標準だった。特待生→名人も段級が分かれておらず一発査定だった名残)

2016年:昇格5回も、降格2回と波もある中、特待生2級に

2016年2月の放送に2回出演するも現状維持、その後1回昇格するも直後に降格をしショックを受ける東国原さん。それだけ俳句にのめり込んでいったのだと思います。

  • 16/03/10:5→4級『椅子しづかあの日のごとく窓に花』
  • 16/05/12:4→5級『新茶踏み鉄の白竜まっしぐら』

夏井先生は、「新茶」というお茶農家さんの一年間の努力の結晶とも言えるものを、『踏む』というデリカシーのない動詞を使って始めたことに激怒。「鉄の白竜(≒新幹線)まっしぐら」という『疑似化』も厳しい評価をし、5級に降格しました。

しかしそこからは一念発起したかのように3連続昇格を果たします。全ての句に添削の赤ペンは入るものの、句の出来が安定してきて、おっちゃんに続く名人昇格を狙える位置となっていきます。

  • 16/05/26:5→4級『滝落つる水の身投げのごとくなり』
  • 16/06/23:4→3級『老猫や背筋のばして見る蜥蜴』
  • 16/07/14:3→2級『日雷バスのブレーキキーと鳴る』

そして、特待生2級となった2016年7月28日。結果的には「現状維持」となりますが、東国原さんを象徴付ける作品、そして添削が誕生します。

16/07/28・現状維持
『向日葵や眠るむくろに頭垂れ』
 ↓
『向日葵や畜魂二十九万頭』

「眠るむくろ」と「頭垂れ」という漠然とした表現の裏にある苛烈な経験(宮崎県知事時代の口蹄疫への対応)に夏井先生が痛く感動し、添削でなく改作となることを承知のうえで行った「神改作」です。多くの視聴者が感銘を受け、何より東さん御本人から『目が覚めました』という言葉が出るほどの鮮やかさでした。

ちょうどそんな頃に掲載された2016年秋の日刊スポーツの記事を引用したウィキペディアの記載では、

  • 夏井から、東国原の俳句は、作品のアップダウンが激しく、発想は面白いのだが兼題によっては発想に酔ってやりすぎてしまう。俳句を真剣にやったら上手くなると評価している。
東国原英夫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

と評価されており、この記事が公開された当日のスペシャルでは2度めの降格(『鉄格子隙間さ迷ううろこ雲』に【独房】という重要な情報が欠落しているため)を経験し、再び打ちひしがれますが、

  • 16/09/29:3→2級『大拍手空舞うコスモスのブーケ』
  • 17/01/05:2→1級『初富士や北斎のプルシャンブルー』
  • 17/01/19:1→初段『紅梅や1km10秒縮めたり』

と再び3連続昇格で、当時はまだ珍しかった「名人」昇格を果たしました。

名人時代

2017年:MVH2回、タイトル戦 優勝2回

梅沢富美男名人が一気に昇格を重ねる中、フジモンや横尾名人を少し抜かしてナンバー2として安定感を発揮した2017年。何より大きかったのが、この年始まったタイトル戦で2回優勝を果たした点です。

  • 17/04/06:俳桜優勝『野良犬の吠える沼尻花筏』
  • 17/06/22:初→2段『送り梅雨船員送る千の傘』
  • 17/06/29:炎帝3位『夏の果ボサノバと水平線と』
  • 17/08/10:2→3段『鎌で切る鶏の首盆支度』
  • 17/09/07:3→4段『秋夕焼赤黒き一〇〇〇グラムの吾子』
  • 17/10/12:金秋優勝『紅葉燃ゆ石見銀山処刑場』

1句1句のインパクトは段位では先を行くおっちゃんよりも強く、そうしたインパクトがタイトル戦の舞台で発揮され、初のタイトル戦となった俳桜戦と、金秋戦で強さを見せる結果となります。秋を迎えることには充実期を迎えていて、盆支度の句も秋夕焼の句も鮮烈な印象を残しています。

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2018年:2人目の名人10段に、傑作続々

名人4段だった東国原さんは、僅か半年で(史上2人目の)名人10段に到達します。なお、その中にはX(旧Twitter)で盗作疑惑が上った「顔に×」の句も含まれていることを申し添えておきます。

以上の騒動もあって、秋からはやや安定感のない結果となりますが、夏までは傑作が続いていました。

  • 18/01/18:4→5段『柩追う犬ごと攫う雪しまき』
  • 18/04/12:春光優勝『花震ふ富士山火山性微動』
  • 18/08/30:☆0→1『草茂る洞窟のこと他言せず』
  • 18/09/20:俳句甲子園『鰯雲仰臥の子規の無重力』

春光戦を制した句は、後(2020年6月)に「プレバト!!」俳句のベスト1に選ばれることとなったわけですが、(↓)

プレバト!!歴代俳句ベスト50①【春/夏】
 https://note.com/yequalrx/n/ned5f8a7efcfe

個人的には、俳句甲子園のエキシビションで高校生相手に披露した『鰯雲仰臥の子規の無重力』こそが「プレバト!!」史上最高傑作なのではないかと思っているほどです。歴史に残るような傑作を披露した東国原さんは、永世名人を目指すも☆を重ねられない苦闘の日々を過ごすこととなります。

2019年:政治的メッセージ抑えた句で初の☆2へ

東国原さんが独自色を出すにあたって、おっちゃんとは対極的にこの頃から「政治的メッセージ」を加えた作品が増えていきます。夏井先生は好意的に評価する機会も多かった一方で、名人中位に上がった頃までとは句柄が変わってしまったと感じる場面が目立ちました。

年始の冬麗戦を『凍蠅よ生産性の我にあるや』で、10月の金秋戦を『信号の点滅は稲妻への合図』で制しますが、通常査定では「☆0→1→1→0→0→1」のような昇降を繰り返し、初めて☆2に到達するまでに10段昇格から1年半を要してしまいました。その句というのが、

19/12/12:☆1→2『オッケーグーグル冬銀河にのせて』

「オッケーグーグル」という長いカタカナ語を前半に据え、それに負けない季語として『冬銀河』を設けると共に、「冬銀河にのせて」というファンタジーなお願い事をすることで季語を立たせたのは、まさに名人10段に相応しいテクニカルな作。これでこそ、といった感じを受けたのを覚えています。

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2020年:たった5回の出演も、4句は添削ナシ

コロナ禍が襲った2020年、プレバト!! への出演が激減し、数えると5回程度しかなかったように思えます。それでもそのうち添削ナシが4度ほどと安定感は維持していました。全ての句を並べると、

  • 20/01/03:冬麗2位『湯豆腐の湯気アインシュタインの舌』
  • 20/04/09:春光優勝『まるでシンバル移り来し街余寒』
  • 20/05/28:☆2→3『百円玉とヤモリがオレの守り神』
  • 20/08/06:炎帝6位『ポイントでもらひし蛍なほいきる』
             →『ポイントでもらつた蛍なほいきる』
  • 20/12/17:☆3→4『ほしかもんはなかジャングルジム冷たし』

このように政治的メッセージ性は弱まり、実体験などに即した句が戻ってきた感じがしました。春光戦はやや展開に恵まれた面もあったかも知れませんが、コロナ禍の不安が巷を襲う中、なんとか開催できたタイトル戦を制し、実に6度目の優勝となったのも印象的でした。あと個人的には、12月の「ジャングルジム」の句が印象に残ってますね。

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2021年:史上2人目の永世名人へ

2021年は一転して出演回数が増えると共に、おっちゃんに次ぐ永世名人がいつかが焦点となりました。2021年3月18日の放送回は☆4で挑んだ最初の俳句。『テレビテレビテレビ菫菫菫』という夏井先生も度肝を抜かれる挑戦の1句は現状維持査定となります。続く、春光戦でも、

21/03/25 <志村けんさん一周忌>
『山も笑う「最初はグー」の発明者』
↓
『山も笑う最初の最初の「最初はグー」』

こちらの原句はハイレベルな中7位と沈みますが、添削時にはスタジオ全員が唸るほどの傑作に。素材が良いからこそ夏井先生の手が加わると、元は評価が高くなかった作品でも一気に見違えるのだという風に再認識させられました。

そして、2021年4月29日、『ユンボの一撃花冷えのごみ屋敷』という句で☆5に到達し、番組史上2人目の永世名人となります。しかも、おっちゃんに比べて句集に掲載できる俳句の数が多いという恵まれたスタートとなりました。さらに夏を迎えてからの3ヶ月は、

  • 21/07/15:『玉葱やこの人結局死んじゃうの』
  • 21/08/12:『音なき音や八月の遠花火』
  • 21/09/02:『秋暑し柱は饐えた父の臭い』
  • 21/09/23:『ラフレシアも秋夕焼も人を食うか』
  • 21/10/14:『林檎のうさぎ雲梯を二段飛ばし』

と、5連続掲載を決めています。一方、タイトル戦では、炎帝戦で『Tシャツの干され西日の消防署』が2位となるも、犬山紙子さんがいきなりの優勝を決めてしまった際の準優勝であったため、それはそれでかなりショックを受けている様子でした。

2022年以降:残り15句として再び政治の道へ!?

年始の冬麗戦で、番組史上最多の7回目の優勝を『片襷硬し四日の身を通す』で達成。そして玉巻アナウンサーが番組を卒業するに際して、(おっちゃんの作と勘違いしていたものの)好きだと語っていた『蝶は測るフードコートの奥行を』なども掲載決定となります。

  • 2022年2月24日に東国原が詠んだ「蝶は測るフードコートの奥行を」が夏井から「永世名人の新たな作風!な上に詠んだ瞬間にうっとりし、こういう句を読ませていただくと読み手である私の血が綺麗になっていく。長生きできそうです」と絶賛された[68]
東国原英夫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして、残り15句(掲載決定35句)となっていた2022年8月、年末に行われる「宮崎県知事選挙」への出馬を表明。2022年7月21日放送回を最後に、番組からは離れています。

個人的には、知事選に落選した段階で番組に復帰するのかと思いましたが、2023年に入っても番組へと復帰する様子は見られず、番組内でも数える程度しか話題にのぼっていません。それでも、

想いでつながる 私の多発性硬化症 俳句コンテスト 受賞作品発表イベント 2023 - バイオジェン
 https://www.youtube.com/watch?v=Xqaq09KORa0

(↑)のコンテストでは、夏井先生の息子さん(俳人・家藤正人さん)と共に、県知事・俳人の両方の知見を活かした特別ゲストとしての役割を担うなど、俳句との縁は続いているようです。番組復帰が叶わなくとも、いつか「句集完成」を少なくとも願いたいところです。
(※ 個人的には、いつか番組復帰を願っていますが、全員参加可能な「炎帝戦」などにも出演しなかったことを思うと、呟きなどからも窺えるように既に番組を半卒業したのかなとも思っています。)

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