【プレバト!! 俳人列伝】森迫永依(もりさこ・えい)

【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」の俳句査定で特待生候補のお一人【森迫永依(もりさこ・えい)】さんの俳句を振り返っていきます。

森迫 永依(もりさこ えい、1997年9月11日 – )は、日本女優である。千葉県印西市出身。上智大学国際教養学部卒業。テアトルアカデミーを経て、太田プロダクションに所属している。

森迫永依
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

一般参加者時代(2022~23年)

世間的には、実写ドラマ『ちびまる子ちゃん』のイメージが(未だに)強い森迫永依さん。彼女が「プレバト!!」に初出演したのは、2022年10月のことでした。

2001年に劇団に入団。2003年10月ドラマ『あした天気になあれ。』で一躍注目される。その後、ドラマでは『新しい風』や『汚れた舌』に、映画では『キャシャーン』や『天使』など、他にも数々の映画ドラマコマーシャルメッセージなどに出演した。

2006年4月には、実写版『ちびまる子ちゃん』で主役のまる子を演じてブレイク。なお、後の『まるまるちびまる子ちゃん』では、身長の関係上、伊藤綺夏に交代となった。それ以降もドラマや映画の主演も務め、2011年の『冬のサクラ』にも出演した。

成城学園中学校高等学校を経て、2016年4月に上智大学に入学し、2020年3月に上智大学国際教養学部を卒業した。大学では政治学社会学を学んだ。

( 同上 )

社会人となって、むしろ「上智大学卒」の高学歴で元子役といった具合に、バラエティ的にキャラ付けしやすかった側面もあったのかとは思います。しかし、そんな彼女は実力で道を切り開いていきます。

衝撃デビューの72点:『いちじくを運ぶ掛け声朝の鐘』

初挑戦で、いきなり才能アリ1位。しかも、75点には届かないものの「72点」という高得点でのトップでしたから、その時のインパクトは大きなものでした。テクニカルな部分でいくと、2位の篠原ゆき子さんが70点でしたから、通常であれば「71点」というのが推移律としては基本です。しかし、森迫永依さんは1点飛ばして「72点」という評価を得てデビューしたのです。その句というのが、

(22/10/06)『いちじくを運ぶ掛け声 朝の鐘』

でした。冒頭で『いちじく』という想像しやすい植物(果実)の季語が置かれ、そこから『いちじくを運ぶ』と展開されることで、上から読むと人(農家?)のような存在が一旦浮かびます。そして掛け声と展開することで、いちじくも人も単体ではなく複数であることが暗示されるのです。

そして「プレバト!!」をご存知の方ならば恐らく把握しているでしょうが、初回にして『難しい型』に挑戦しています。すなわち、「季語を含む12音のフレーズ」に「季語ではない5音」を取り合わせるという形に初出演で挑戦している点です。

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加えて言えば、取り合わせられた季語ではない5音が『朝の鐘』という予期せぬものでした。少なくとも多くの方が「日本の農村・田舎」を連想したのだと思うのですが、作者の意図は、学生時代に訪れた「モロッコ」の朝市の鐘だったのですから。

もちろん、「朝の鐘」というのを農村の寺社の鐘だと読んでも良いのですが、ひょっとしたら日本でも九州・キリシタン文化の根の張った地域かも知れません。「教会の鐘」と読むことも出来るかも知れません。そして、海外だとしても、なかなか「モロッコ」だと想像する方は少なかったかも知れません。

それでも、答え合わせをされた瞬間に、『いちじくを運んでいた』存在が、日本の農村や八百屋などではなく、アフリカで働く人々(ひょっとすると子供かも知れない)に飛躍した点はあまりにも鮮やかでした。

  • 村上「こんな景色を僕に見させてくれて有難う」
  • 梅沢「この子は『俳句の申し子』かも知んない」

などと両永世名人(当日はどちらも掲載決定の句を詠んでいた)も絶賛する句の出来で、初回からおっちゃんは『俳句の申し子』というフレーズを使っていました。もちろん、夏井先生も『楽しみな存在』だと仰るポテンシャルの高さであったことは言うまでもありません。

2回目の挑戦は初回から間を置かず、同じ10月の最終週(22/10/27)でしたが、(私も期待が大きすぎたのか)「凡人50点」の3位に沈み、一旦は『特待生候補』から注目されない存在となりました。

リベンジ達成再び72点『冬晴の小樽ことりっぷの折り目』

初出演が10月だったのを思うと、2022年の年内に3回も出場したのは異例でした。ある意味で期待の表れだったのかも知れません。いずれにしてもリベンジを狙う3回目の挑戦では、勝村政信さんや鈴木絢音さんを相手に、再び2位と2点差の72点で復活の才能アリを獲得したのです!その時の句が、

(2022/12/15)『冬晴の小樽ことりっぷの折り目』

夏井先生も調べたという『ことりっぷ』について、私からは昭文社の文章を引用しておきましょう。

『ことりっぷ』は20~30代の働く女性に向け、週末2泊3日の小さな旅を提案したガイドブックです。旅好きな女性の声を反映、「大人かわいい表紙柄」「平均150グラム(国内版)の<小さくて軽い>ガイドブック」として「女性にほんとうにおすすめの情報を厳選」しております。コンセプトは「等身大の旅」。現地を<おさんぽ>するように無理なく楽しむ旅を提案しています。

(引用元)女性向けガイドブック『ことりっぷ』シリーズ、1000万部突破!|株式会社 昭文社ホールディングス

下のRinkerでお示しした通り、見た目も意識したガイドブックとなっています。書店などで並んでいるのを見かけたことのある方もいらっしゃるかも知れません。

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何も難しい言葉を使わず、これだけの情景を17音の器で描く技量というのは、正直、もはや伝説となっているプレバト!! 俳人の「鈴木光」さんに通ずるものがあるのではないかと感じるほどです。

ある意味、俳句の型やセオリーをしっかりと学習し、過去の名句を勉強して臨んでいる……のかは分かりませんが、中級者の型のレベルを『飛び級』で出場してきている印象がありました。

2023年・冬麗戦に非特待生として参加!【後日更新】

そして、2023年最初の放送(2023/1/12)となった冬麗戦では、初登場の時に詠んだ作品が高評価を得て本戦出場15人に抜擢。個人的に実力としては申し分ないと思っていたのですが、番組上は『まさかの』といった感じで取り上げられることとなりました。

Kis-My-Ft2・二階堂高嗣さんのような常連や、伊集院光さんや本上まなみさんといった才能アリ率100%の方、そして実写ドラマ『ちびまる子ちゃん』で共演していた【高橋克実】さんと共演する格好ともなった冬麗戦は、終盤まで名前が呼ばれず上位を残すのみとなる中で、

名人・中田喜子さん……ではなく、何とモニターに映し出されたのは【森迫永依】さん! 通常挑戦者としては、2021年夏の犬山紙子さん以来の快挙でした。

プレバト!!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

タイトル戦 初挑戦として詠んだ俳句というのが、

冬麗戦1位『富士は青し ケサランパサラン来』

こちらの作品でした。東国原永世名人がタイトル戦の始まる前に『初富士や北斎のプルシャンブルー』と詠んだのと似た形、そしてインパクトのある句を通常挑戦者の身分で見事に詠み切ったのです!

ここでいう「ケサランパサラン」というのは、語源も由来も今ひとつ特定されていない『伝承上の生き物』のこと。「初富士の青」と取り合わせる白い物として定番の冬ではなく、それを連想させつつも、冬の季語というわけではない「ケサランパサラン」を組み合わせる化学反応がお見事でした。

ケサランパサラン、ケ・セランパサランは、江戸時代以降の民間伝承上の謎の生物とされる物体。外観は、タンポポの綿毛や兎の尻尾のようなフワフワした白い毛玉とされる。西洋でゴッサマー(gossamer)やエンゼル・ヘア(angel hair)と呼ばれているものと同類のものと考えられている。

ケサランパサラン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

あまりの驚きに涙目となり駆け足で1位の席に向かう森迫永依さんを、既に順位が決まっていた2位から下の特待生・名人がスタンディング・オベーションで迎える様は、まさに期待の新人が誕生した瞬間だったと言えるでしょう。

特に(本人の句は下位に沈んだ中で)我が事のように喜んだのが梅沢富美男永世名人でした。以前から『この子は俳句の申し子だ』と繰り返していたおっちゃん(既に49句掲載決定で残り1句という状況)が、『私の後はこの子ですよ』と太鼓判を押す素晴らしいクオリティの作品となりました。

特例での特待生時代(2023年~)

通常「プレバト!!」の特待生制度では(最初期を除いて)、通常回に出演してそのタイミングで「特待生昇格」を告げられるのが通例でした。しかし、森迫さんはここまで見てきたとおり、

才能アリ → 才能アリ → 冬麗戦優勝

という過去に例を見ない安定感と破壊力で名人・特待生を含め無敗でなぎ倒していった功績から、原稿制度になって初めて、「タイトル戦優勝」の実績を買われて通常回(3回連続才能アリ)を待たずしての特待生昇格が決まったのです。

このことは、2月に入った辺りで「プレバト!!」のホームページなどに『予告』が公開されると、森迫さんが一般参加者ではなく『特待生』枠として出演すると分かり、一部視聴者がSNS上で盛り上がっていました。詳しく知っている人ほど、通常回をスキップとして特待生昇格する珍しさを知っていたのです。

2023年:特待生初挑戦で「マキロン」の難しい句

特待生としての初出演でまず光ったのは、突然振られて動じていても非常に的確に他人の俳句の「良いところ」を理論的に説明できる点です。コメントの的確さは、かつての鈴木光さんの最初期と同等か、あるいはそれ以上かも知れないと思うほどの説得力を持っているようにすら感じました。

夏井先生が書籍の中で、「作句」と「鑑賞」は両輪だと仰っていますが、それを1年足らず体現されているかのような末恐ろしさすら感じました。

大きな本屋(大型書店)へと行って俳句関係の本を買い漁ったと語る森迫さん、エピソードや言葉選びからその言動までが愛されている感じを受ける中、特待生として初めて披露した作品というのが、こちらでした(↓)。

5→4級『春風のマーチ擦り傷にマキロン』
↓
添 削 後『擦り傷にマキロン春風のマーチ』

個人的には『よくこれだけの情報量を詰め込んだな』と関心するほどでした。これは天性のバランス感覚や才能がなければ「17音」という小さな器には盛れない容量だと感じます。

番組内で語っていたエピソード全てを盛れているかは別問題としても、「春風」、「マーチ」、「擦り傷」、「マキロン」という強い4要素を入れ込んでいる点、もちろん「マーチ」と「マキロン」という韻を含めた取り合わせの感性は完璧だと感じさせられる1句でした。

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冬麗戦でいきなり2位に入って(当時、非特待生の女性2人がワンツーとなり話題となった)【本上まなみ】さんも、この回に一般参加者として出演しており、1位72点で堂々の特待生昇格を決めていることからも、あの2023年の冬麗戦を勝ちきった実力は本物だったのだなと強く感じる次第でしたね。

To Be Continued…

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