【はじめに】
この記事では、震央が内陸なのに「津波警報・注意報・予報」などが出された地震について振り返っていきます。
内陸の地震なのに「津波」に関する情報が出されることなんてあるの?
とお思いの方、「津波警報・注意報が出されたら必ず津波が起こるもの」と思っておられる方は、ぜひこの記事をお読みいただいて、情報の受け止め方、捉え方の参考になさってください。
平成時代
2011/04/11(Mj7.0・Mw6.6)福島県浜通り
福島県浜通り地震は、2011年(平成23年)4月11日17時16分、福島県浜通りを震源として発生した地震。地震の規模はマグニチュード7.0で、福島県と茨城県で最大震度6弱を観測した。
気象庁は地震発生直後、茨城県沿岸に津波警報を発表し、宮城県・福島県と千葉県の九十九里・外房に津波注意報を出したが、震源域が主に陸域であったため、4日前の宮城県沖地震同様、津波は観測されず、同日18時05分に全て解除した。
福島県浜通り地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
陸域でM7.0という大地震が発生し、観測上は最大震度6弱ですが、極めて強い揺れと激しい余震活動が目立った「福島県浜通り」の地震。この地震では『津波警報』が出されました。
速報段階で震源位置は正しかった(いわき市の辺り)のですが、気象庁は津波警報を発表しています。結果的には津波が発生しなかったのですが、これは決して誤報という訳でなく、意味があるものです。
以上が「内陸の地震でも津波注意報などが発表される理由」としてよく語られる理由となります。ここで繰り返しになりますが、「内陸の地震でも津波警報・注意報が発表されることがある」という点が一つの学びであり、もう一つ「津波警報・注意報が出されたとしても、必ずしも津波が発生するとは限らない」という点も再確認して頂ければと思います。
2016/04/16(Mj7.3・Mw7.0)熊本地震
地震発生直後には、有明海と八代海の沿岸に津波注意報が発表されたが 2時14分に解除され、津波は観測されなかった。
熊本地震 (2016年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
こちらは「熊本地震」の2回目の震度7の地震であり、いわゆる本震にあたるものです。上に書いた2011年の浜通りの地震と同様、実際には津波は観測されず、1時間弱で津波注意報は解除されました。
実は気象庁は、「発表した津波警報・注意報の検証」というページで、かつて出した情報が適切だったか素直に検証しています。(←問題ありならばちゃんと改善に向かっていた)。その時の評価がこちら(↓)
津波予測の評価
気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 発表した津波警報・注意報の検証 > 2016/4/16 熊本県熊本地方の地震
この地震による津波は観測されなかった。津波が観測されなかった理由は、内陸で発生した地震であったためである。但し、地震発生直後の段階では、地震に伴う地殻変動が海域にも及ぶ危険性を考慮したため、津波注意報を発表した。
そして、内陸の地震で津波が観測されなければ、1時間足らずで解除されます。これらは津波に関する情報を発表する際に許容すべき誤差であることを皆さんにお伝えしたいです。
また同じく震度7を観測した内陸地震では、2018年9月6日の「北海道胆振東部地震」でも、津波予報が発表されていました。ある程度の規模の地震になると、内陸地震でも決して珍しいことではないことをご確認頂ければと思います。必ずしも津波が起きる訳では無いので、そこは冷静に情報を見極めて!
令和時代
2022/09/18(Mj7.3・Mw6.8)台湾・台東県での地震
中国語版のウィキペディアでは「2022年台東地震」として、2022年9月17日の前日の震度6強の地震から一連の地震活動を一つの記事としています。現地時間で18日の午後2時44分、Mw6.8の大地震が非常に浅いところで起き、物的・家屋被害や地面・インフラへの被害が甚大なものとなりました。
日本時間の午後3時44分に起きた地震で、日本国内では震度1を観測。そして、その直後に津波注意報が国内向けに発表されました。これも遠地地震ながら基本的には上の2例と同じで、規模の大きな内陸地震ということもあって、(念のためで)津波注意報を発表したものと思われます。
そして時悪く、まさに「台風14号」による特別警報が発表されていて九州に迫っており、加えて津波注意報のニュースを報じている間に「大雨特別警報」が宮崎県に発表されるという危機的な状況でした。
NHKニュースやWNI(ウェザーニュースLiVE)を中心に、どのニュースを優先して伝えるかで、非常に難しい選択を迫られた瞬間だったかと思いますが、個人的には「実際に発生しているか分からない津波注意報(注意報クラス)」よりも、「既に発生して災害が迫っている特別警報(特別警報クラス)」を優先して頂きたいかなと感じました。ケース・バイ・ケースですが、津波が実際に観測されるまでは、優先順位は相対的に低いはずですから。
2024/01/01(Mj7.6・Mw7.5)能登半島地震
令和6年元日に起きた「能登半島地震」は、能登半島の内陸部を速報値での震央としていますが、地震の発生領域から推定するに、佐渡島の西から能登半島の西に至るまでの広域の断層が破壊され、逆断層型に破壊された領域を波源域として津波が発生したと見られます。
令和6年能登半島地震は、2024年(令和6年)1月1日(元日)16時10分(日本時間)に、日本の石川県能登半島(穴水町の北東42 km)を震央として発生した気象庁マグニチュード (Mj) 7.6の地震である。
地震発生を受け、気象庁は石川県能登に大津波警報を、日本海各地の沿岸にも津波警報・注意報を発令した。大津波警報の発令は、2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を惹起したMw9.0の巨大地震)以来である。
令和6年能登半島地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現行制度となって初の「大津波警報」が発表され、輪島で1m20cm以上の津波が観測されました。内陸を震源とする地震での「大津波警報」は遡っても恐らく初と見られます。
(参考)阪神・淡路大震災では津波が起きていた
ここまで津波警報・注意報が発表された事例を紹介しましたが、反対の事例もご紹介します。代表例の「阪神・淡路大震災」に触れましょう。津波警報・注意報が発表されなかったものの、実際には津波が発生していました。
気象庁は本地震発生後間もなく、各予報区に「ツナミナシ」の津波注意報(なし)を出した。顕著な津波も見られず、津波被害は報告されていないが、各検潮所の記録を解析した結果、淡路島の江井で最大振幅68cm、大阪の深日で同40cmなど、小規模な津波が発生していたことが明らかになった。……地震の規模に対し2段階ほど小さいものであった。
兵庫県南部地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
結果的には、津波は被害をもたらすような規模でなかったですし、震害による被害が遥かに大きかったことを思えば、この対応は結果オーライでした。但し、「津波ナシ(若干の海面変動)」という情報が出されていたとしても、必ずしも津波が発生しないとは限らないことも知っておいて下さい。
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