都市別の「二十四節気」の気温を比較してみたら!?

【はじめに】
天気予報などで「暦の上では~~」などと語られる『立春』や『立夏』などといった二十四節気。ただ実際、皆さんの地域でどれぐらいの温度なのかを調べたことはありますか?

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ここで一つ問題です。「(1番)立春と立秋」、「(2番)立夏と立冬」のうち、平年値が近い(というか実は殆ど変わらない)のはどちらでしょう。どちらかは大きな差があり、どちらかは2~3度程度です。どちらの方が平年値が近いでしょうか、答えはこの後すぐ!

俳句の都・松山で比較する気温の違い

俳句歳時記では、季節を分ける基準として今も用いられ、2月上旬の「立春」当日からは暦の上では春に分類されます。ここで今回は、俳句の都(俳都)愛媛県松山市の気温を取り上げたいと思います。

節気該当期最高気温最低気温備考
立春2月第1半旬 9.9 2.1ここから上昇傾向
立夏5月第1半旬22.813.3
立秋8月第2半旬33.025.1ここから下落傾向
立冬11月第2半旬19.711.1
気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 過去の気象データ検索 > 平年値(半旬ごとの値)

こうしてみると実は、「立夏(22.8℃)と立冬(19.7℃)」は気温に殆ど差がないのです。字面からは正反対に思えますが、5月と11月と言われれば、だいたい同じという印象は分かりますよね。

冒頭の問題の正解は「(2番)立夏と立冬」が正解でした。正解の皆さんおめでとうございます。

そして、「春」と「秋」は気温が近いですが、その季節の始まりと(暦の上では)される「立春」と「立秋」で比較すると、2月と8月ですからほぼ真逆。気温としても、一年で最も寒くここから上がるという立春と、一年で最も暑くここから下がる立秋では真逆です。

ただ今回調べて全国的に見ても明らかになったことなのですが、「立春」は一年で最も寒く、「立秋」は一年で最も暑い時期で、上昇/下降のトレンドが逆転する時期でもありました。そうした意味では、気温の体感だけでみると違和感を覚えますが、「立秋も『夏の終わり/秋の始め』」という季節の境目としては現代でもなお機能しているのだなと感じました。

北国中心に6地点の気温を並べてみた

そしてここからは、北海道・北東北・南東北・甲信越、関東、そして冒頭に触れた松山市を加えた全国6地点の気温(1991~2020年平年値)を、各節気の初日で並べました。こちらです。(↓)

節気時期松山東京長野仙台盛岡札幌
立春2月1010 4 6 2-1
雨水1111 6 7 4 1
啓蟄3月1312 8 8 5 2
春分15151110 8 5
清明4月1818151311 9
穀雨202018171512
立夏5月232222191916
小満242424212119
芒種6月262525222321
夏至282726242423
小暑7月302928262624
大暑323130272826
立秋8月333232292927
処暑323131282826
白露9月302928262624
秋分282624242321
寒露10月252321212018
霜降222118191715
立冬11月201815161311
小雪17151213 9 7
大雪12月1413 8 9 6 3
冬至1211 6 7 4 1
小寒1月1110 4 6 2 0
大寒10 9 3 5 2-1

俳句歳時記を編んだ名俳人の多く棲んだ「松山市」と、実は「東京都」は殆ど気温に変化がなく、言ってしまえば本州の関東以西の海沿いの多くはこういった(左2行)の推移をたどります。ここで色を付けたのは、四立の気温の平年値です。

例えば、松山や東京では「立春」が10℃付近「立夏」が22~23℃「立秋」が33℃「立冬」が18~20℃となり、歳時記上の『春』は10℃~23℃ぐらいが(現代では)当て嵌る算法となるのです。

そして、もちろんその土地にはその土地なりの「春」や「冬」があるのですが、気温という物理の比較可能な値で、北国に色を付け直すと、「松山・東京での立春(2月)」にあたる10℃付近に達するのは「札幌では4月頃」となります。

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裏を返せば、恐らく「雪解け」などというとどの地域の方も「冬の終わり/春の始まり」を感じると思うのですが、その事象が起きるのは本州では2月頃なのに対し、北国では4月にズレ込むこともあります。ちょうどその頃だと「梅」の開花などもそうかも知れません。日本列島も長いですから、そういう事象は起こり得て当然なのですが、俳句歳時記では大きな問題として取り上げられてきませんでした。

こういった例は幾らでもあって、例えば「初雪」や「初氷」は気温に基づく現象なので気温基準です。関東では冬の印象ですが、北国では恐らく秋の印象でしょう。真反対の極端な例として、南国では「海開き」が春の言葉として定着しています。本来はそういった地域の多様性も季語・俳句歳時記に盛り込んで行って頂きたいなというのが個人的な感想だったりするのです。

各地の四立の平年値を比べてみると?

各都市でみようとしても、上の表では少し情報量が多すぎるかと思ったので、四立の時期の平年値だけに絞った表も作ってみました。こちらです(↓)

節気時期松山東京長野仙台盛岡札幌
立春2月1010 4 6 2-1
立夏5月232222191916
立秋8月333232292927
立冬11月201815161311

こうしてみると、松山・東京の最高気温の最低付近と札幌の立冬(11月)頃の最高気温は同じだということになります。そして、秋から冬にかけては気温が大きく異る長野市と、松山・東京は春から夏にかけては気温がほぼ同じだというのも新鮮な発見でした。

ただ、細かく見れば、特に北海道や南西諸島などは本州と気温が異なりますし、当然、山間部などでは平野部と天候も異なります。こういった事象をしっかりと把握しておくと更に感度が高まりそうです。

本州の気温感を北国に当てはめると?

下の表は参考程度に見ていただきたいとは思いますが、松山・東京などの平年気温を、北国に当てはめるとどういった季節感になるかの早見表です。(↓)

松山・
東京の
松山・東京長野仙台盛岡札幌
立春
約10℃
2月前半3月後半3月後半4月前半4月前半
(3ヶ月)(1ヶ月半)(2ヶ月半)(2ヶ月)(2ヶ月半)
立夏
約23℃
5月前半5月前半6月前半6月前半6月後半
夏~秋(6ヶ月)(5ヶ月半)(4ヶ月半)(4ヶ月)(3ヶ月半)
立冬
約20℃
11月前半10月後半10月後半10月前半10月前半
(3ヶ月)(1ヶ月半)(1ヶ月半)(1ヶ月半)(1ヶ月)
立春
約10℃
2月前半12月前半12月前半11月後半11月前半
真冬(0ヶ月)(3ヶ月半)(3ヶ月半)(4ヶ月半)(5ヶ月半)
立春
約10℃
2月前半3月後半3月後半4月前半4月前半

東京の立春の最高約10℃というのは、長野・仙台では3月後半、盛岡・札幌では4月前半に当たる気温という意味です。そして、立春と立夏の間を「春」と仮に定めると、東京では3ヶ月(2~5月)あるのに、長野はわずか1ヶ月半(3~5月)となってしまいます。

一方、「夏~秋」とした部分は、松山・東京では半年に及びますが、札幌では僅か3ヶ月半です。しかも年間最高気温も本州ほど上がらないことを考えれば、いかに北国の春や夏が貴重であるかが数値でも明らかとなります。

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最後に、松山・東京での「冬」として11月前半~2月前半の最高20℃未満なんてのは、北国では2ヶ月もなく、ここらへんが実質的には北国の「秋」にあたるのだと思います。

そして、松山・東京では平均してめったにない「最高気温10℃未満」を「真冬」としても、本州山間部で3~4ヶ月あり、北海道では実に半年近くに及ぶ訳です。こうした事実をしっかりと把握しておくことが、日本列島の気候の理解を深める第一歩ではないかと感じました。

皆さんの地域はどうですか? どこに近そうですか? 地域ごとに差は激しく、そしてその地域ごとに特有の季節感があります。そこを比較すると新たな発見がありますし、その予備知識のもとに俳句を鑑賞すると新たな発見があるかもしれません。「季節感」はひとまとめにしてしまっている俳句歳時記に様々な奥行きがあることをこの記事で知って頂ければ幸いです。

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