【はじめに】
この記事では、気象庁がホームページで公開している情報をもとに「津波警報・注意報」が発表されたものの、津波が観測されなかった事例をまとめていきます。
ここ15年のデータ(だいたい3分の1の割合)
令和に入って更新が滞っていますが、気象庁が「気象庁の業務評価」として『発表した津波警報・注意報の検証』を行ってきましたので、一部補って取りまとめてみました。(↓)リンクはこちら。
結論から言ってしまえば、平成19年以降の「約45回」の発表事例のうち、「津波が実測されなかったのは約14回」という結果となりました。単純に割り返せば「30%台」となり、3回に1回は幸い、津波は観測されなかったというケースも結構あることをまず抑えておきましょう。
もちろん、気象庁は膨大なデータベースと速報データにより根拠をもって発表しているものですから、決して油断せず、警報・注意報に従うことを徹底してくださいますようお願いします。
発表日 | 震央名 | 深さ | Mj | Mw | 格 | 発表 → 解除 |
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07/04/20 | 宮古島北西沖 | 21 | 6.7 | 6.4 | 注意報 | 59分後 |
09/08/17 | 石垣島近海 〃 | 48 42 | 6.7 6.6 | 6.6 6.2 | 〃 〃 | 50分後 44分後 |
10/02/07 | 石垣島近海 | 35 | 6.5 | 6.5 | 〃 | 1時間02分後 |
10/10/04 | 宮古島近海 | 53 | 6.4 | 6.3 | 〃 | 43分後 |
11/03/28 | 宮城県沖 | 32 | 6.5 | 6.2 | 〃 | 1時間38分後 |
11/04/07 | 宮城県沖 | 66 | 7.2 | 7.1 | 警報 | 1時間21分後 |
11/04/11 | 福島県浜通り | 6 | 7.0 | 6.7 | 警報 | 47分後 |
11/06/23 | 岩手県沖 | 36 | 6.9 | 6.7 | 注意報 | 52分後 |
11/08/19 | 福島県沖 | 51 | 6.5 | 6.3 | 〃 | 37分後 |
12/08/31 | フィリピン諸島 | 28 | 7.6 | 〃 | 2時間03分後 | |
15/04/20 | 与那国島近海 | 22 | 6.8 | 6.3 | 〃 | 1時間03分後 |
16/04/16 | 熊本地震 | 12 | 7.3 | 7.0 | 〃 | 47分後 |
21/03/20 | 宮城県沖 | 59 | 6.9 | 7.0 | 〃 | 1時間19分後 |
手集計して上の表にまとめました。15年間で14回とは書きましたが、時期には偏りがあり、単純に1年に1回平均とはなっていない点に注意が必要です。14回中の12回は津波注意報ですが、2回は2011年4月に起きた震度6クラスの大地震での【津波警報】であり、警報であってもこれだけの誤差が起こり得ることを認識しておく必要があるでしょう。
また、津波警報・注意報が発表されてから解除(津波予報への切り替え等)されるまでの時間を補記しました。早ければ「40分」前後、(遠地地震(フィリピン諸島の地震では2時間超)を除けば、)長くても「1時間半」程度で解除されているという過去の実績値も抑えておきましょう。津波警報・注意報で避難行動を行う際の参考になる部分があれば幸いです。
震源:内陸でも発表されることが。速やかに行動を
皆さん、津波警報・注意報が発表されるのが、震源が海の地震だけだと思っていませんか?
陸地が震源なのに、津波警報・注意報が出ることなんてあるの?
これが普通の感想だとは思うのですが、実際あるんです。上の表から事例をピックアップしました。
東日本大震災のちょうど1ヶ月後に起きた「福島県浜通り」を震源とする地震と、2016年に最大震度7を観測した「熊本地震」では内陸が震源とされたにもかかわらず、警報や注意報が発表されています。
2011年:福島県浜通り地震
福島県浜通りから中通りを震源に、夥しい数の地震が観測された最初の地震(2011/4/11・M7.0)では、最大震度6弱を観測しました。「震度データベース検索」による震央位置は下の図のとおりです。
内陸とはいえ、海に面した「いわき市」内であり、M7前後という規模です。
- 断層破壊の始まった地点(震源)は内陸でも、海の方に向かって破壊が進めば、海域も震源域となる可能性がある。
- 津波に関する情報を発表する際の「速報値」は、規模・深さ・震央位置ともに「誤差」が大きい。
こういった不確実性もあることから、津波警報・注意報が内陸の地震で発表されることがあるのです。
2016年:熊本地震
同じく、熊本地震で最大規模だった4月16日深夜の地震でも、津波注意報が発表されました。
津波予測の評価
(出典)ホーム > 各種データ・資料 > 発表した津波警報・注意報の検証 > 2016/4/16 熊本県熊本地方の地震
この地震による津波は観測されなかった。津波が観測されなかった理由は、内陸で発生した地震であったためである。但し、地震発生直後の段階では、地震に伴う地殻変動が海域にも及ぶ危険性を考慮したため、津波注意報を発表した。
このように公式に「危険性を考慮した」と明記されていることからも、仮に『内陸を震源とする地震』であっても、津波警報・注意報が発表されることがあることを抑えておきましょう。上の2例は運良く津波が発生しませんでしたが、逆に『内陸を震源とする地震』で津波が発生するような断層破壊が起きていた場合、『陸地に近いところが波源域』となるため、津波は間を置かずにすぐに襲ってくる可能性が高まるのです。
これが強く警戒されているのが、例えば、南海トラフ巨大地震です。上の図を見ればその驚異がお分かり頂けるかと思いますし、実際に過去の事例では間もなく津波が来襲したこともありました。太平洋側よりも日本海側の方が昭和以降でも事例が著名でしょう。
ちなみに、その他の事例では多くが、「津波が起きにくい『横ずれ断層型』」だったとか、「速報値よりも実際の規模が小さかった」とか、上記『検証』ページに「津波が発生しなかった理由」が事後分析されていますが、『CMT解』の解析や『暫定値(マグニチュード等)』への更新には、津波警報・注意報の発表から少なくとも数十分間単位で懸かります。
また上の図で示したとおり、津波が観測されなかった地震では、大抵、1時間半以内には警報・注意報が解除されますので、「速やかに避難行動」を行い、「警報・注意報が解除されるまで行動を続ける」ことが重要だとお考え頂ければと思います。
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