「津波地震/津波マグニチュード(Mt)」についてまとめてみた

【はじめに】
この記事では、「津波地震」や「津波マグニチュード」について、日本語版ウィキペディアの記載などを通じて学んでいきたいと思います。

皆さん、「津波地震」って知ってる?

「津波地震」について聞いたことのない方もいらっしゃるかと思いますので、日本語版ウィキペディアの記載を、わかりやすい部分に絞って概要をご説明していきたいと思います。

津波地震とは、地震動から求められるマグニチュードの大きさに比して、大きな津波が発生する地震のことである。1972年地震学者金森博雄が定義した。

津波地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして、以下のように「概要」が書かれているのですが……(↓)

( 同上 )

少し内容が難しく感じたので、更にポイントを絞ってみました。こちらなら皆さんも分かりますかね?

一般的に断層運動の大きさ(モーメントマグニチュード)が大きいほど、地震動も津波の規模も大きくなる。しかしながら、地震動と津波の大きさがリンクしないことがあり、体感もしくは地震計によって観測した地震動は比較的小規模であるにも拘わらず、大きな津波が発生する場合もある。このタイプの地震を津波地震と呼称する。

地震の揺れ自体が小さいにもかかわらず大きな津波を発生させる津波地震の特性から、地震発生直後の避難が難しく被害が拡大する危険性をはらんでいる。津波地震の顕著な例として知られる1896年の明治三陸地震では、2万人以上の死者を出した。

地震学では一般的に、実体波マグニチュードに対してモーメントマグニチュードや津波マグニチュードが1以上大きくなるような地震が津波地震に分類される。

( 同上 )

えっ、(マグニチュード)聞いてたよりも、

(もしくは)揺れそんなに強くなかったのに、

津波めっちゃ高くない?

っていう傾向が顕著な地震が「津波地震」のイメージに近いのではないかと思います。

(参考)「津波マグニチュード(Mt)」について

これから実例を解説するにあたり、「津波マグニチュード(Mt)」という指標についても最低限の部分だけ触れておきたいと思います。

マグニチュード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本で一般に「マグニチュード」といえば、地震の規模を表す数値のことを表します。

テレビの地震速報などで報じられる「マグニチュード(気象庁マグニチュード)」は1つの値しか発表されないので普段意識することはないのですが、実は測り方や定義によって「マグニチュード」には幾つもの種類があるのです。

左は日本語版ウィキペディア「マグニチュード」の目次なのですが、少なくともこれだけの種類が解説されているのです。(知らない方には驚かれるかも知れません)

そして、これらは種類によって、マグニチュードの値は同じ地震でも異なる結果が出てくるのです。

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今回取り上げたい「津波マグニチュード(Mt)」は、『4. 特殊なマグニチュードの種類』の一番下(4.5)に取り上げられているので、専門的にならない範囲でまとめていきたいと思います。

( 同上 )
  • 要するに、他のマグニチュードでは適切に評価できない津波地震などの規模を評価するための種類の一つとして「津波マグニチュード」が考案された。
  • 「津波の高さ(H)」と「伝播距離(Δ)」に、調整のための定数(D)を加えて計算する。

以上によって求められる値が(表面波マグニチュード:Ms)などと大きく異なる場合、『津波地震』と見做されるといった訳です。

昭和の時代の研究になりますが、阿部勝征氏の論文が閲覧できますので、興味のある方は下記のリンクからダウンロードしてお読み頂ければと思います。特に「5.津波地震」では具体例が示されています。

阿部勝征 (1988)、「津波マグニチュードによる日本付近の地震津波の定量化」 『東京大學地震研究所彙報』 1988年 63巻 3号 p.289-303.hdl:2261/13019, 東京大学地震研究所

「津波地震」の有名な例をまとめてみた

下の表についても、「津波マグニチュード(Mt)」という概念が理解できていると、読み取りやすいと思います。昭和後半において、従来のマグニチュードで表現できていなかった『津波地震』の規模を、2種類のマグニチュード(Mw、Mt)によって計算すると値が大きく異なったのです。

津波地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

頻度は少ないとはいえ、古今東西いくつも例はあるのですが、その最たる例として現代も語り継がれる『明治三陸地震津波』を取り上げることにしましょう。

『明治三陸津波』震度3前後なのに遡上高38.2m

この地震では、平成の三陸地震津波(東日本大震災)をも上回る犠牲者が出ました。その顛末については、日本語版ウィキペディアより、下記のリンクにある『失敗知識データベース』さんの『失敗事例』の内容が興味深いかと思います。

失敗知識データベース > 失敗事例 > 明治三陸大津波

ちょうど旧暦・端午の節句で、従軍兵士の凱旋を迎えての祝賀行事が行われ、日が沈んだ直後に起きたという事実は、他のページではあまり見かけなかったものの、決して軽視できない事情かと思います。

明治三陸地震は、1896年明治29年)6月15日午後7時32分30秒、日本の岩手県上閉伊郡釜石町(現・釜石市)の東方沖200km三陸沖北緯39.5度、東経144度)を震源として起こった地震である。マグニチュード8.2- 8.5の巨大地震であった。
さらに、東北地方太平洋沖地震前まで本州における観測史上最高の遡上高だった海抜38.2mを記録する津波が発生し、甚大な被害を与えた。

概要
各地の震度2 – 3程度であり、緩やかな長く続く震動であったが誰も気にかけない程度の地震であった(最大は秋田県仙北郡震度4)。地震動による直接的な被害はほとんどなかったが、大津波が発生し、甚大な被害をもたらした。

明治三陸地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

以下、日本語版ウィキペディアから『メカニズム』の項を抜粋して引用します。

  • 明治三陸地震は、震度が小さいにもかかわらず巨大な津波が発生し2万人を超える犠牲者が出た。これは、この地震が巨大な力(マグニチュード8.2- 8.5)を持ちながら、ゆっくりと動く地震であったためである。
    最近の研究では、このとき、北アメリカプレート太平洋プレートが幅50km、長さ210kmにわたって12 – 13mずれ動いたことが分かってきた。太平洋プレートの境界面には柔らかい堆積物が大量に溜まっており、それが数分にわたってゆっくり動いたと推定される。その独特の動きが激しく揺れる地震波よりもはるかに大きなエネルギーを海水に与えたと考えられる。
  • また、地震動の周期自体も比較的長く、地震動の大きさのわりに人間にはあまり大きく感じられない、数秒周期の揺れが卓越していた。
    このため、震度が2 – 3程度と小さく、危機感が高まりにくかったと考えられる。
  • 日本では後年、明治三陸地震や1946年アリューシャン地震のような地震発生時の地殻変動が通常の地震に比べて急激ではなくゆっくりと長時間続く地震を「ゆっくり地震」、それにより地震動が小さいにもかかわらず大きな津波を発生させることのある地震を「津波地震」と言うようになった。

この地震津波の日本史上、特筆すべき点は『震度3程度の揺れだったのに、遡上高38.2mの巨大津波が夜の三陸海岸を襲った』点かと思います。

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揺れが小さくても油断してはならない理由がここにある

東日本大震災から10年が経ち、地震の経験則が高まった東日本の方々は、『強い揺れが来なかったから今回避難しなかった』という傾向が徐々に高まってきている印象があります(インタビューなどで)。しかし(2010年のチリ地震津波や2011年3月9日の前震がそうであった様に)揺れが大きくなくて、津波も騒がれたほどでなかったとしても、その次に来る津波が地震の揺れから想定されるほどに小さいとは限りません。実際、明治三陸津波では震度3~4でも巨大津波が甚大な被害をもたらしました。

ニュースでは東日本大震災以降、どんなに規模や揺れが小さくても、『津波の心配はありません』などと情報を必ず伝えるようになりましたが、ややもすると“形骸化”してしまう危険性と隣合わせです。

現代を生きる我々は、東日本大震災後の「アウターライズ地震」なども要警戒とされていますが、そもそも過去に起きた(明治三陸地震津波)が再び起きた時に正しく対応できるのでありましょうか。そこを考えるだけでも、また『津波地震』という地震があることを知るだけでも、一つ進歩といえるのかも知れません。

それこそ『津波地震』が日本周辺で起きるのは、数年どころか十数年ぐらいに1回のスパンです。もし仮に近年起きていなかった『津波地震』が発生してしまった時に、この記事で触れた内容がお役に立てば幸いです。

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