「台湾」の主な地震についてまとめてみた(2022年9月・台東地震追加)

【はじめに】
本記事では、「台湾(臺灣)」で発生した地震について私の調べた範囲でまとめていきます。

台湾の地震についての概要

地形
なお、台湾本島はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの交差部に位置するため、日本と同様に地震活動が活発な地域である。また日本と同じ火山帯に属し、温泉も豊富にある。

台湾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) > File:Map of Taiwan.jpg

一度、Google Maps などで確認していただければお分かり頂けるかと思いますが、四国・九州辺りから南西諸島を経由して台湾に至るまで、琉球海溝(南西諸島海溝)が円弧状に繋がっています。現在までに日本列島周辺のようなM8後半の地震は観測されていませんが、決して油断ならない海域です。

出典:ファイル:Taiwan seismicity.jpg user:Hsu.shihhung

上の図は、台湾周辺の1991~2006年の地震をプロットしたものですが、東側海域から内陸部にかけて(極小規模なものが中心ですが)おびただしい数の地震が起きていることが分かります。

台湾本島は3万6千km^2、人口は2,300万人超。九州本島と面積はほぼ同じで人口はほぼ倍ですから、ざっくり、「(人口密度がほぼ倍の)九州」という感じでイメージして頂ければ大きく外れてはいないのかなと思います。

そして、ここからは「台湾の震度」についてご説明していきたいと思います。他の国の震度なんて考えたこともないよー って方が中心かとは思いますが、分かりやすく書きますので、お付き合い下さい。

「台湾の震度」は日本の震度を真似ている!?

2022年3月23日にも「台湾での大きめな地震」が日本でも報道されました。「最大震度6弱を観測」する地震があったといった具合で、日本でも心配する声が多く聞かれました。

世界の震度のスタンダード

ただ、ここで日本人はつい受け入れがちですが、「震度6弱」など日本と同じ響きの震度階級を使っていることに違和感を一度覚えていただきたいとも思います。実は、現代において「気象庁」と同じ表現の震度階級を使っている世界唯一の事例だからです。

震度階級の種類
震度の階級表は国際的に統一された標準的な規格はなく、それぞれの国や地域が採用したいくつかの指標がある。主な海外で使用されている震度階級としては以下のようなものがある。なお、それぞれの震度階級の間で、数式などを用いて対応関係を示すことは難しい。また同じ震度階級でも機関によって運用や基準が異なり、単純に同じとはみなせない場合がある。

日本語版ウィキペディア > 震度 より

下記のとおり、気象庁の震度階級は「日本独自」のもので、日本国外ではかつての韓国と台湾以外では全く使われていないということになります。(世界的にはI~XIIのメルカリ震度階級などが一般的。)

日本以外での使用
日本独自のものであり、周辺国以外では使用されていない。

台湾では、1996年3月以前に日本で用いられていたものから震度7を除いた震度階級(震度分級)、すなわち、1949年以前の日本の震度階級とほぼ同じものが長年用いられてきた。
現行の震度階級「中央氣象局地震震度分級」、2000年8月1日公告修訂版では、震度7が定義されているものの、日本と異なり、震度5・6の強・弱の区分がなかったが、2019年4月、中央気象局は同年内を目途に日本同様の10段階へと改める方針を表明した。

また、韓国では、過去に日本のものを模した震度階級が使用されていたが、2001年からメルカリ震度階級に変更された

気象庁震度階級
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

台湾の「中央気象局震度階級」

そして、日本語版ウィキペディアにも記事が最近(!)作られた「中央気象局震度階級」について、以下のとおり纏められています。上にあった「10段階への移行」は2020年から始まり、現在の気象庁震度階級の体感に近づいていますので、そこについても触れておきましょう。

台湾中央気象局震度階級(ちゅうおうきしょうきょくしんどかいきゅう、中国語: 交通部中央氣象局地震震度分級)は、台湾で使用される地震震度階級である。台湾中央気象局が、1999年集集地震発生後の2000年に制定した。
当初は、1996年9月30日以前の、日本の旧・気象庁震度階級を参考にした震度0級から7級までの8段階の震度階級であった。この震度階級は最大地動加速度 (PGV)を単純に換算したものであったが、この計算方法では短周期地震動による瞬間的な加速度によって、観測震度から予想される被害状況と実際の被害状況に著しい差異が生じることが多くなっていた。

これを是正するため2020年1月1日より、震度5級以上を観測した地点は短周期地震動をローパスフィルタに通して震度と対応する被害状況に近づけさせるよう計算方法を変更し、また震度階級も改正気象庁震度階級と同様の5弱、5強、6弱、6強に細分した震度0級から7級までの10段階の震度階級に変更された。

中央気象局震度階級
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

2019年までは「震度7」が内陸の浅い中規模地震でも頻発していて、被害と実情に合っていなかった様なのですが、2020年からは日本における実感と合ってきましたので、そこは後述しようと思います。

過去に起きた台湾の地震について

ここからは実際に台湾で起きた過去の地震について振り返っていきたいと思います。時代ごとに幾つかに分けてありますが、これは地震学の見識とは違い、この記事での便宜的なものとして捉えて下さい。

(~1999年)20世紀以前の台湾の大地震

発生日M(L)死者倒壊家屋備考
1848/12/03約7.11,03013,993
1906/03/177.11,2586,769梅山地震
1910/04/128.313深さ200km
1920/06/058.35273
1935/04/217.13,27617,907新竹・台中地震
1999/09/217.32,41551,711921大地震
台湾の地震一覧(抜粋)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

まずは「台湾の地震一覧」から、2010年以前で「犠牲者1,000名以上」または「M8以上の巨大地震」という基準で表にしてみました。日本でも数えるほどしかない「1,000名超」の犠牲者を出した地震が九州とほぼ同面積の台湾において複数回観測されています。(なお、九州では近世以降1例もありません)

台湾における地震として、戦後最も深刻だったのが、1999年9月21日に起きた「集集大地震」です。日付を代名詞的に使って地震を象徴するのは、日本でも「1.17(199年:阪神・淡路大震災)」や「3.11(2011年:東日本大震災)」、「9月1日(1923年:関東大震災)」など数えるしかありませんが、この台湾の地震も「921大地震」として台湾では深く記憶に刻まれています。

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(2000~19年)旧・震度階級で「震度7」を観測した地震

1999年の「921大地震」では、何度も激しい揺れが観測され、規模・被害ともに「熊本地震」を上回る大災害となりました。そして、21世紀に入ってもかなり大きめな地震が観測されています。

台湾では、前年の「921大地震」での被害を受けて、気象庁震度階級を参考に「中央気象局震度階級」が2000年に制定されました。以下、台湾の中央気象局のデータをもとに、日本でも取り上げられる「震度7」の地震を私の主観で顕著な地震としてピックアップしました。

発生日M(L)死者最大震度備考
2009/11/056.27:南投名間
2009/12/196.97:花蓮磯崎花蓮地震
2013/10/316.37:花蓮西林 〃
2016/02/066.61177:台南市高雄美濃地震
2018/02/06


6.2


17


7:花蓮太魯閣
  花蓮鹽寮
  花蓮市
  宜蘭南澳
花蓮地震


2019/04/186.317:花蓮銅門 〃
21世紀以降、原則「最大震度7」とされた地震。但し、離島で局所的に観測したのみで、台湾の主要都市に大きな被害のなかったものを除く。
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「921大地震」以来の大災害となったのが「2016年台湾南部地震」です。マグニチュード6中盤という大きめな規模の地震が、台湾南部(内陸部)の浅いところで発生したため、震央の西側に位置する都市「台南市」や「高雄市」などで激烈な揺れを観測し、100名を超える犠牲者を出しました。

(2020年~)新・震度階級で今の「気象庁震度階級」に合致

日本では「最大震度7」を観測していなくとも、大きな揺れを観測したり大都市で被害が発生した事例がありますが、2020年に台湾の震度階級が見直し(気象庁の震度階級に寄せた10段階に変更)され、旧震度階級で「震度7」とされていた様な地震について、新・震度階級では以下の通りとなりました。

2020年2月25日宜蘭縣大同鄉發生芮氏規模5.3地震,最大震度為宜蘭南山5弱(以舊制計算為震度7級)。
2021年4月18日花蓮縣壽豐鄉發生芮氏規模5.8、芮氏規模6.2地震,最大震度分別為花蓮水璉5弱、花蓮水璉5強,為新制震度分級實施後,首次達到5強的地震。
2022年3月23日花蓮縣近海發生芮氏規模6.7地震,最大震度為臺東長濱6弱,為新制震度分級實施後,首次達到6弱的地震。
2022年9月17日至18日臺東縣發生芮氏規模6.4、芮氏規模6.8地震,最大震度為臺東池上6強,為新制震度分級實施後,首次達到6強的地震。

交通部中央氣象局地震震度分級
出典:维基百科,自由的百科全书

上では、2020年に震度階級が見直されて、初めて「震度◯◯」を観測した事例【為新制震度分級實施後,首次達到◯◯的地震】が紹介されています。

このうち、2022年9月には台東県で群発地震が発生。9月17日にM6.4の震度6強の地震があり、翌日に更に規模の大きな(Mw6.8・Mj7.3)地震があり、再び震度6強を観測しました。これはまさに「熊本地震」の様なパターンであり、極浅い地震だったことから直上の建物・インフラ被害は甚大でした。

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