気温でみると「四季」は等間隔じゃなさそう
漢字圏では季節をよく「四季」で分類してきました。日本でも「春夏秋冬」が基本的な分類としてすっかり定着しています。(俳句歳時記では例外的に「新年」を近代になって設けたり、あるいは中国でも「土用」を設けたりして5分類するものもありますが)
そしてその期間については、太陰暦基準では「春:旧暦1~3月」、太陽暦基準では「立春から立夏の前日まで」、現代の気象庁の定義では「3~5月」などと時期に多少の違いはありますが、基本的に12÷4=【3ヶ月】で均等割りしている点で共通しています。
但しです。SNSが発達した昨今、「秋が短い!」だの「夏が長い!」だのと四季に対する不満というか雑感が賑わせることからも分かるように、四季それぞれの定義(というか辞書などの説明)と実感との間に乖離が生じているように思うのです。
一番好きな「秋」が短い! 残暑は長いし、すぐに寒くなって冬みたいになっちゃう……。
そこで少し極端とは思いつつ、過去に「note」で『夏を5ヶ月』にするのを提案したことがあります。
細かい部分は記事に譲りますが、立夏/ゴールデンウィークの頃の「初夏」から、昨今残暑が厳しく残る9月一杯までを広く「夏」とするという案です。年によっても違いますが、『夏日』や『真夏日』等のデータと比較すると案外こういった案もバカにできないのではないかと思っている次第です。
気温で4分割した「四季」を考えてみる
さて今回は、気象庁ホームページの「過去の気象データ検索」から過去30年間の「平均気温」を軸に、気温で4分割して「四季」を作ってみようと考えました。暦でなく実際のデータによってみるのです。
例えば、最高が24℃、最低が0℃という都市があった時に、4分割(厳密には春と秋が同じ基準となるので数字としては3分割)すると以下のようなイメージとなります(↓)。
最高 | 24℃ |
② | 16℃ |
① | 8℃ |
最低 | 0℃ |
これだと冬が8~0~8℃、春が8~16℃、夏が16~24~16℃、秋が16~8℃の期間となります。簡素すぎますが模式化すると以下のようになります。
ただ、このイメージを実際の都市に当てはめてみると、期間が全く「等間隔」でないということが確認できます。そして恐らく、ここに『秋が短い』とか『夏が長い』と感じる根源的な理由があるのだという風に感じたのです。
本州はかなり似通った「春」と「秋」の季節
ここから全国から任意の8都市の過去の気温記録を気象庁HPから取得して、見ていくことにします。
「旬(5日間)」ごとの平年値から、年間の最高と最低、平均を取り、それを2分割する処理を施したのが上の図となります。例えば東京ならば、平均気温の年間最高が27.3℃、最低が5.2℃で、1年を通じての平均が15.8℃となります。
そして、先ほどの表に準じてみると、「東京」を気温で均等割りしたとき、冬は12.6~5.2~12.6℃、春が12.6~19.9℃、夏が19.9~27.3~19.9℃、秋が19.9~12.6℃の期間となります。
と言われても、数字だけが並べられてすぐに分かる方のほうが少ないと思うので、ここから秘蔵(?)データを公開していくことにします。
全国8都市のデータ大公開!
全体のデータが重くなるので表示は少し小さめにしてありますが、何となく色味で雰囲気を感じ取っていただければと思います。左から季節、真ん中に全国8都市の平年値とそれに見合った色塗り(年間平均を緑色とし、青いほど寒く橙色ほど暑く見せています)。
全国的に共通している点としては、
- 年間で一番寒いのは1月終わり頃、一番暑いのは8月上旬頃
- 暑いから寒いへの落ち方が早い(← 秋が短いと感じる要因の一つ)
- 年間の平均が来るのは、春ならば4月下旬、秋ならば10月下旬頃
などが挙げられます。上の表で枠囲みしているのが「春」と「秋」に当たる時期で、札幌や那覇は少し本州と相違していますが、概ね季節感は全国共通となります。すなわち夏と冬は春・秋の倍近く長く、春は4~5月、秋は10~11月ぐらいしかないというのが全体的な傾向です。
【冬】11月下旬~3月下旬(4ヶ月強)
【冬】は、11月下旬ぐらいに始まり(二十四節気でいう「小雪」)、3月に至るまで寒い時期となります。暦の上では「春」とされる2月も確かに寒さの底は抜け出ていますが、まだまだ氷点下も珍しくないですし、3月になって日中は暖かくても、朝晩は冷え込みが厳しくなることもあります。
もちろん3月前半には「春」の始まりを感じる方のほうが多いのかも知れませんが、今回の記事の主旨である均等割りで行くとこれぐらいまでが実質「晩冬」のような扱いになりそうです(初冬:11~12月、仲冬:12~2月、晩冬:2~3月みたいなイメージ)。
【春】4月上旬~5月下旬(約2ヶ月)
今や【春】は「花粉症」シーズンなどの到来で感じる方も多いですが、気温で春を体感するには3月ないし4月というのが現実的なところでしょう。
春としては、新年度を迎える4月から梅雨前5月ぐらいまでを想定することとなります。もちろん5月ともなればすっかり初夏の陽気ですが、一応ここでは気温を均等割りするという前提のもとの集計値となります。
【夏】6月上旬~10月上旬(4ヶ月強)
夏はエリアによって少し気温が異なりますが、1日の平均気温が30℃手前となることもある8月だけでなく、その前後1~2ヶ月もやはり「夏」の暑さとなります。
【秋】10月上旬~11月中旬(1ヶ月半)
今回設けた四季の中では最も短いのが、皆さんの体感どおり「秋」です。10月から11月にかけての(長く見積もっても2ヶ月で、短く見積もれば)1ヶ月半程度となります。
一つには、『秋の日は釣瓶落とし』ではないですが気温の低下の早さが挙げられます。半旬で1℃程度下がっていけば、1ヶ月で4~5℃という計算になります。実際の気温をみても、体育の日(現・スポーツの日)あたりから勤労感謝の日あたりの下がり方は特に急坂です。
でも確かに9月下旬でも残暑厳しいことがありますし、12月近くなれば冬のはじめ頃といった印象が強まることを思えば、現代における体感としての「秋」は2ヶ月もないのかも知れず恐ろしいことです。加えて、11月ともなれば、マフラーやコートを出す人も出てくるなど初冬に感じうるため、そういった方々には更に秋の期間は短く(1ヶ月程度に)感じられてしまいます。
すっかり希少となった春・秋をぜひお楽しみ頂ければと思います。
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