【はじめに】
この記事では、ここ6年(2019~2024年)のレースレーティングをみて、ほぼ同条件でありながら、G2よりもG3の方が高い「逆転現象」が起きている重賞をピックアップしました。
距離や条件が違えば、ある程度の逆転現象は致し方ないかと思うのですが、ほぼ同じ条件なのに格付けが逆転しているのは容認しがたい部分が直感的にもあろうかと思います。JRAのお偉い方に届く……とは思いませんが、ぜひ皆さんが考える際のヒントになれば幸いです。早速みていきましょう!
- 2023年に「紫苑S」がGIIに昇格したため、3歳牝馬路線で1つ解消
- 2025年に「東海S」がGIIIに降格したため、ダート路線で1つ解消
1.アーリントンC(vs ニュージーランドT)
2018年に1ヶ月半繰り下がって4月中旬の開催となり、NHKマイルCの前哨戦となった「アーリントンC→チャーチルダウンズC(G3)」。その結果、従来からトライアルだった「ニュージーランドT(G2)」から流出が顕著となり、2021年に至っては103.50とG2の基準すら下回る事態となってしまいました。
ニュージー ランドT (G2) | 年 | アーリントンC → チャーチルダウンズC (G3) |
---|---|---|
110.00 | 2018 | 110.00 |
106.75 | 2019 | 110.00 |
106.50 | 2020 | 108.75 |
103.50 | 2021 | 112.50 |
108.75 | 2022 | 111.50 |
113.00 | 2023 | 110.00 |
110.00 | 2024 | 108.00 |
108.08 | 6年平均 | 110.13 |
「ニュージーランドT」については、2022年までしばらく「アーリントンC」に一度も勝てない年が続いていました。特に2021年までの3年間、「ニュージーランドT」はG2維持の基準を下回り続けるなどJRAの全重賞の中でも最も降格の危機が迫っているレースとしてその動向が注目されていました。
しかし、2022年に107.50をなんとか上回ってひとまず危機を回避すると、2023年には久々に標準的なG2らしいレートである「113.00」を記録。現行スケジュールになって初めてアーリントンCに勝利。とはいえ、2023年のNZTを制したエエヤンの評価というより、このレースで惜敗した各馬が秋に活躍を見せた(2着ウンブライル、3着シャンパンカラーがNHKマイルCで連対、4着モリアーナが紫苑Sを優勝)ことによる面が大きく、引き続き安閑としてはいられません。
2.共同通信杯(vsスプリングS)
出世レースの代表格であって、『スーパーG3』と見做される年も多い「共同通信杯」は、1800m戦。こちらも中山競馬を冷遇する訳ではないですが、同じG2でフジテレビ賞の社杯であるため悪くは言いづらいものの「スプリングS」は、平均してレーティングが目安110ポンドを下回ってきています。
スプリングS (G2) | 年 | 共同通信杯 (G3) |
---|---|---|
110.00 | 2019 | 112.50 |
109.50 | 2020 | 108.25 |
108.75 | 2021 | 116.25 |
108.75 | 2022 | 114.25 |
113.00 | 2023 | 112.75 |
108.88 | 2024 | 113.00 |
109.81 | 6年平均 | 112.83 |
「スプリングS」は、皐月賞トライアルとして距離が本番と同じで200mしか違わない「弥生賞」と存在が被っており、レース間隔も現代競馬においては短いように感じるので、改善の余地があるのではないかと考えます。(→ 2025年に1週間ではありますが、前倒しでの開催となりました。)
3.クイーンC(vsフィリーズレビュー)
古くから桜花賞トライアルとして歴史のある「フィリーズレビュー」ですが、1400m戦 ということで最近はその200mの距離差が重要になってきている印象です。代わって台頭してきているのが、本番との距離面でも柔軟性の高い「クイーンC」でしょう。
フィリーズレビュー (G2) | 年 | クイーンC (G3) |
---|---|---|
110.50 | 2019 | 115.25 |
107.00 | 2020 | 109.75 |
109.00 | 2021 | 113.50 |
109.25 | 2022 | 107.50 |
110.00 | 2023 | 113.00 |
108.25 | 2024 | 111.25 |
109.00 | 平均 | 111.71 |
2017年は2着のレーヌミノルが桜花賞馬となったためフィリーズレビューも112ポンド(性別アローワンスの4ポンドを全て調整済、以下同じ)となっていますが、むしろ牝馬三冠路線に繋がる馬の存在は例外的であり、基本的にはスプリンター志向の馬が名を連ねてきています。
2016年はメジャーエンブレム、2019年はクロノジェネシス(4着にはカレンブーケドール)、2021年にはアカイトリノムスメを輩出している「クイーンC」は牝馬三冠路線に直結するようなマイル以上での実績馬への登竜門となっています。
4.平安S(vs 旧・東海S)
ここまで3歳馬のレースばかりでしたので、古馬のレースの中から一つ。抜本的な解決となっていない点で苦しいダート重賞の「(旧)東海S」です。(2024年現在)
東海S→ プロキオンS (G2) | 年 | 平安S (G3) |
---|---|---|
109.00 | 2016 | 108.75 |
108.75 | 2017 | 109.00 |
103.00 | 2018 | 109.75 |
110.00 | 2019 | 111.50 |
108.25 | 2020 | 111.25 |
108.75 | 2021 | 108.50 |
109.25 | 2022 | 111.75 |
108.75 | 2023 | 110.00 |
109.25 | 2024 | 107.75 |
109.04 | 6年平均 | 110.13 |
かつての「ウインターS」は2000年に「東海S」として5月開催となり、2013年に「平安S」と時期を交換して1月開催(フェブラリーSの前哨戦)となりました。開催場が変わっただけで実質的な役割が同じだった一方で、レースの格付けが維持されたことで今回のような「逆転現象」が起きてしまったものと思われます。
現在の「平安S」は「帝王賞」のトライアルとして強豪が参戦する年もあり、レーティングは充実をする傾向がある一方で、サウジCが設立されて更にメンバーが手薄になってしまいそうな「東海S」は、なかなか改善する兆しも見えないような状況と2020年代はなっていきそうな気がします。
これが、2025年からは『プロキオンS』と名称変更し、2026年には京都競馬場での開催となる予定ですが、根本が解決されて「GII」に相応しい実績を重ねていけるかを注目しています。
以上が、「G2の目安:110ポンド」を上回ったら「G2昇格」を推薦してほしい重賞と、「似た条件のG3よりもレースレーティングが低いため改革が必要なG3」でした。少なくともここら辺から、重賞の改革を進めていって欲しいと感じます。皆さんはいかがですか? ご意見をお聞かせ下さい!
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