【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」の俳句査定で特待生に昇格した【パンサー・向井慧】さんの俳句を振り返っていきます。
向井 慧(むかい さとし、1985年〈昭和60年〉12月16日 – )は、日本のお笑い芸人、ラジオパーソナリティ。お笑いトリオ「パンサー」のツッコミ担当。立ち位置は真ん中。
向井慧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
一般参加者時代:祖母の形見の俳句の本と。
明治大学在学中に2005年に東京NSCに11期生として入学。同期にエド・はるみ、チョコレートプラネット、シソンヌ、井下好井などがいる。……NSCの先輩にあたる菅良太郎と尾形貴弘と共に『パンサー』を結成し活動する。パンサーにおける役割は「まとめ役」といわれる。トリオ内最年少且つ東京NSCでは一番の後輩。東京NSC11期生。
- 名前の「慧」の由来は、生まれ年の85年にハレー彗星が世間をにぎわせていたため、次のハレー彗星が近づく2061年まで長生きできるようにという意味から名付けられた。
- 千賀健永(Kis-My-Ft2)は小学校と中学校時代の後輩である。
2017年以前:75点デビュー『君の耳ただ満月の照らす音』
高学歴芸人の実力が未知数だった2016年9月15日、初挑戦で75点デビューを果たしたのが、パンサー向井慧さんでした。ちなみにこの2週間後(16/09/29)には、フルーツポンチ・村上健志さんが同じく75点でデビューしています。
鮮烈デビュー度合いの違い(村上さんは2回で特待生昇格し、年始SPで俳句査定初の2ランクアップ)から、村上さんの活躍ばかりが注目されますが、向井さんも後の特待生のデビュー戦らしくこの素晴らしい作品を披露していました。
(16/09/15)1位75点『君の耳ただ満月の照らす音』/向井慧
(16/09/29)1位75点『コスモスや女子を名字でよぶ男子』/村上健志
詳しい解説は下の記事(↓)に譲りますが、『満月の照らす音』と着地した着眼点というのは常人には持ち合わせないものだと感じます。大胆な描写に驚かされたのを思い起こします。
初回がこんな鮮烈デビューだった反動もあってか、一般参加者時代は【ピース・又吉直樹】さん(かつて同居していた時期があり、プレバト!! 初期に活躍していた)のゴーストライター疑惑がイジられ鉄板ネタとなっていました。
そして意図せずそれを証明してしまうかの様に、2回目は60点凡人、3回目は35点才能ナシ、4回目も65点凡人と初回の75点の印象が薄まってしまっていました。
2018年:歳時記の「白南風」を取り合わせて2度目の才能アリ
初挑戦から1年半あまりが経った2018年5月(暦の上では初夏)、悲願の2回目の才能アリに届きます。71点で1位を獲得し、おっちゃん、夏井先生からも高評価を得たのがこちらでした。
1位71点『白南風に揺れ干すシャツのバニラの香』
俳句を勉強して、歳時記を引かなければ知らない方が殆どであろう「白南風(しろはえ)」という季語を取り合わせる感性が見事でした。あまりにも白が鮮やかで爽やかな1句ということで、久々に注目を番組でも集めるようになります。
2019年:家族と共に2度の才能アリ
2019年に入ると4度出演して、才能アリ→60点台の凡人→才能アリ→60点台の凡人 と展開。なかなか特待生には届かないものの、振り出しにも戻らないという状況が続きます。
(19/01/17)2位70点『雪濡らすバス待つ我の単語帳』
(19/09/19)1位72点『ソフトクリーム垂れ点々と子の歩幅』
『白南風』の句で高評価を得て、少し本腰を入れて俳句作りに向き合うようになったのか、2度の才能アリを獲得した2019年、あの小物が登場します。そう、祖母の形見の俳句の本です。(↓)
おばあさんが俳句に凝っていて、その形見とも言える書籍を、お父様から『1位を取った息子(孫)』にということで譲り受けたとのこと。その効果もあってか(?)、着実に成績を安定させていきます。
そして、そんなお父様も登場した作品として、2019年9月に披露されたこちらの句。査定は凡人67点でしたが、何としても取り上げたく思いまして!
67点『御供えの父剥く梨の歪さよ』 ↓ 添削後『母に供ふ父剥く梨の歪さよ』
亡き母に供えるものだというトークを聞いて夏井先生が添削をしたのが下の句です。その家庭の情景がありありと見えてくるようです。ちなみに……参考までに、こちらの情報を載せておきます。(↓) こんな家族だったんだと知ると少し読み方も変わってきそうです。
向井慧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2020年:初の2連続、通算6度目の才能アリで昇格!
2020年は初めて2連続「才能アリ」を獲得、通算で6度目の才能アリとなり『学ぶ姿勢』を評価されての特待生昇格となりました。
(20/01/09)2位70点『微睡の番台起こす春隣』
(20/10/15)1位72点『秋あわれ手札のJ無愛想』
こうして作品をみると、SNS上でも話題になっていたとおり「名詞」(特にカタカナ語)や助詞「の」の使用が目立ちます。対して、切れ字や大和言葉の少なさも特徴かも知れません。少しカクカクとした印象を受ける点で、他のプレバト!! 俳人とも異なる個性を見せつつあった頃かと思います。
ただ、他の句形の作句例が少なく、特待生になってから、初の昇格までに苦労することとなりました。
特待生時代:『母の余命』の句で2ランクアップ
2021年:春光戦予選1位&2ランクアップ
2020年の特待生昇格直後に金秋戦予選最下位(4位)、昇格試験では現状維持と「噛ませ犬」キャラが定着していた2021年の春光戦。予選で誰もが(?)予想していなかった番狂わせを起こし、1位通過を果たします。その時の句がこちら(↓)
予選Dブロック1位『花疲れ臓腑に溶けるチョコレート』
『花疲れ』という季語をチョイスしてきました。これも『白南風』の時と同様、俳句を勉強して歳時記を調べなければなかなか出て来ないボキャブラリーだと思います。
そして、『臓腑(ぞうふ)に溶ける』と中七で展開した段階で、夏井先生(のような🍶がお好きな方)は🍶を想像されたそうですが、下五の着地が『チョコレート』という意外性のあるものだった点を評価しておられました。
花見にあてられて少し疲れを感じる中で食べたチョコレートの甘さが臓腑に溶けて染み渡る様だという情景が非常に良く浮かびます。脳内への喚起能力の高さを物語った作品だと思いました。
……しかし、決勝戦では千原ジュニア名人に『デート(も)おもんない』と酷評をされてしまう『じゃんけん』の句で10位と沈み、炎帝戦はまさかの凡人査定。そして金秋戦も予選5位となかなか通用しないうちに約1年が過ぎてしまいました。
しかし2021年12月2日、俳句査定史上4例目となる『2ランクアップ』を達成した句が誕生します。奇しくも、小中学校の後輩でもある千賀健永さんが2ランクアップを達成した半年後のことでした。
この『母の余命知る』という大胆な上五字余りから始まるこの作品は、強烈なインパクトを残し、SNSでも大きな話題を呼びました。前述の通り、母親を亡くしている向井さんの実体験であり、一般参加者時代から家族を詠んできた彼の半生を17音(+α)に凝縮したかのような傑句となりました。
向井慧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
To Be Continued…
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