【プレバト!! 俳人列伝】Kis-My-Ft2・横尾渉名人

【はじめに】
この記事では、「プレバト!!」で披露されたKis-My-Ft2・横尾渉さんの傑作句を振り返っていきます。

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(↓)Kis-My-Ft2(キスマイ)の他メンバーの投稿済みの記事はこちらからどうぞ(↓)

2015年:3連続「才能アリ」でキスマイ初の特待生に

番組が始まって2年弱の2015年下半期、Kis-My-Ft2から「横尾渉」さんが俳句査定に初挑戦します。タイミング的にはまだギリギリ20代(29歳)での初挑戦でした。過去の他メンバーの挑戦が、あまり奮わなかったために最初はあまり期待されてませんでしたが、良い意味で予想を裏切る活躍をみせます。

初挑戦で78点:『サングラス外して対す海の青』

現代とは少し得点の付け方が違うため単純比較はできませんが、一足はやく特待生となる福澤朗アナウンサーが80点で1位を獲得したのに次いで、才能アリ2位を獲得した「横尾渉」さん。その得点は何と78点という高評価でした。

初回にして手堅い部分が多くて、例えば「サングラス」が夏の季語であることをしっかりと調べてて、なおかつ「海の青」とすることで季重なりを避けています。『夏の海』などとしたら得点は半分だったことでしょう。

他にも『外して対す』という中七の表現も案外効いていて、夏の気持ちよさが描かれています。そして『外して対す青い海』だと平凡になってしまうのですが、倒置的に『外して対す海 → の』とする事で、『青』に着地することの視覚的効果というのも(まだ完全に意図してかは微妙でしたが)直感的に掴んでいるあたり、初回から後の名人の片鱗を感じ取れました。

  1. 2位78点:『サングラス外して対す海の青』
  2. 2位75点:『夏帽子夜行列車の網棚に』
  3. 1位70点:『秋の夜の酒に肴は選ばざる』

初登場から3回連続、危なげない水準での「才能アリ」、しかも3回とも「添削ナシ」というパーフェクトな成績を残して、3回目の挑戦をした2015年10月にスタートした「特待生」制度で最初期に認定され、ジャニーズ初の俳句特待生の栄誉に浴します。

2016年:3連続昇格などで特待生1級に

Kis-My-Ft2として忙しい中でも、俳句特待生として本気で俳句に取り組むようになる横尾さん。気づけば、梅沢名人から『Mr.プレバトジュニア』を拝命するに至る、名人を目指した特待生時代。しかしこの2016年は、6回中4回「昇格」、しかも夏から秋にかけ3連続昇格を果たすという大活躍を見せます。

個人的には1年に1句ずつ……のつもりだったのですが、絞りきれず2句ご紹介させてください!

特待生3→2級:『許されて寺の笹切る星祭』

「プレバト!!」の『七夕』の句の中でも大変好きなのがこの句です。歳時記では『七夕』の傍題とされることも多い『星祭』という季語を下五に持ってくることでささやかに答え合わせを仕込んでいます。

現代において「七夕」にまつわる行事をやるにしても、プラスチックなどの人工物で済ませてしまう事がひょっとすると多いかも知れません。しかしこの句は、本物の「笹」であることで『七夕』の臨場感を高める効果を持っています。きっと実体験なのだろうと思わせる説得力に満ちています。

仮にこれが「庭の笹切る」だったら相手は家族とかでしょうが、の笹切る」だから本格的ですし、何か厳かな感じがしてくるところも見事でした。そして何より上五の『許されて』という表現が、一見すると俳句になりにくい始まり方に感じるのですが、下五まで17音読み切ると、その世界観に一気に吸い込まれるのです。20世紀を色濃く残した空気感がパッキングされていて、本当に傑作だと思います。

特待生2→1級:『鰯雲蹴散らし一機普天間に』

最終的には「へ」という助詞1字の添削がなされましたが、もはやそんな助詞1文字のレベルの添削がなされる存在になったというのが、初期においては驚きで、夏井先生も嬉しそうに解説していました。

本来、『蹴散らし』という動詞は擬人化でしょうし、『鰯雲』という季語とのバランスが難しいはずなのですが、この句は漢字も多く情報の質量を取るのが難しいのに、絶妙なバランスを保っています。

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固有名詞『普天間』を詠み込む時に、ややもするとイデオロギーが強く出た句になってしまいがちで、有季定型を軸とする番組において「季語を立たせる」ことが難しくなりやすいのですが、この句はちゃんと『鰯雲』という季語、そしてその雲が浮かぶ『秋の青空』が見えてきます。青・白と黒(ないし迷彩色)の人工物の存在の対比も鮮やかに脳内再生されます。

2017年:名人昇格、タイトル戦・準優勝2回

上で2句取り上げてしまったので、2017年は概略だけの解説に止めようと思いますが、この時期の横尾さんは、頼もしい、誇らしさすら感じる無類の安定感を誇っていました。

3月に三度目の正直で名人昇格(『行け行けど迷路のごとき花の路』)を果たすと、秋には名人2段に昇格を果たします。そして、この2017年に始まった「タイトル戦」において、3大会全てで4位以内という抜群のハイアベレージぶりを見せました。準優勝(2位)も2回ありましたね。振り返ります。

  • 俳桜戦:2位『夜に入りて雨となりにし花万朶』
  • 炎帝戦:4位『籐椅子の脚もとにある水平線』
  • 金秋戦:2位『千年の樹海の風と枯葉の香』

春・夏は若干の添削が加わりましたが、案外「古風」な単語を使ってきたり、名詞を効果的に配置したりした本格派な作品が並びます。そして3句とも「定型(五七五)」であることから、梅沢名人にもいたく気に入られ、初優勝への期待も高まりました。また、俳句「四天王」に数えられていた時期です。

2018年:名人3段昇格も……

2018年は、前年に比べて勢いにやや陰りが見えます。冬のタイトル戦では初めて7位と沈み、しかも、後から特待生となった千賀さんが「優勝」するという衝撃的な結果が待っていました。

2→3段:『おもひではぽろぽろ遠い二重虹』

夏に、高畑勲監督の追悼句として詠んだ『おもひではぽろぽろ遠い二重虹』は、私は五七五の句として詠みましたが、番組ではどちらかというと「破調/句またがり」気味として紹介されていましたね。

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『虹』は遠いところにあるもののはずなのですが、この『遠い』という単語があることによって遠近感が強く印象付けられ、夏の季語『二重虹』が立っています。

追悼句の元となった『おもひでぽろぽろ』という固有名詞に通常であれば比重が傾きそうなところを、ちゃんと季語のある後半フレーズを補強するあたり、流石のバランス感覚だったと思います。

炎帝戦5位:『夏の雲ぼくらは日陰探検隊』

原句は『夏の雲ぼくら日陰探検隊』。確かに数えてみると、「5+3+3+6」で17音になるのですが、読んでみるとそのリズムが五七五とは違ったチグハグになってしまっています。私も最初に見た時にその違和感を覚え、夏井先生と同様、「は」を入れたら良いのにな~ って感じていました。

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MV撮影でのエピソードを詠み込んだというこの句の着眼点も流石で、『鰯雲』の句とは違った『雲』を明るく描いている点、流石は名人だという風に感じました。

この年のタイトル戦は、最高でも5位だったのですが、名人・特待生の数が少なく一発決勝戦が当たり前だった時代にベスト5を殆ど外さないというのは、実力の証左だったと今考えると思います。

2019年:名人4段に昇段、復調の兆し

全てにおいて手堅く大崩れをしない印象ではあったのですが、この2019年も「昇段は年に1回」というペースに落ち着いていました。それでも4段に昇格した『ひまわりや廃線沿いのラーメン屋』も、基本に忠実な型を使って、本来の定型俳句に立ち返るような作品だったと思います。

タイトル戦に関して言えば、冬4位、春3位、夏5位、秋3位と善戦続きではありましたが、2018年が5位が最高だったのに対し2019年は最悪で5位となるなど、個人的には句の内容的にも「復調の兆し」を感じていました。

炎帝戦3位:『リハ室のコーヒー苦し八重桜』

八重桜は、俳句歳時記では「晩春」の季語とされていて、ソメイヨシノなどで連想する「桜」と季節が同じ分類となっていますが、俳人にとっての本意としては、『半月から1か月遅く咲く』【遅咲き】の桜という印象です。

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デビューするまでに下積みを経験したことを、季語『八重桜』の本意に託し、『リハ室のコーヒー』というモノに対して『苦し』という主観の言葉で季語へ橋を渡すバランス感覚は、作者の思いを託している定型俳句としては絶品だと思いました。

個人的にはこの句のあたりから、『横尾先生が覚醒した』というふうに感じていました。

2020年:タイトル戦初優勝 → 下期の快進撃

横尾名人のファンにとって、初挑戦から4年あまり、待望の瞬間が訪れます。2020年1月3日放送の「冬麗戦」で、悲願のタイトル戦初優勝を遂げたのです。

冬麗戦優勝:『庖丁始め都心は計画運休』

新年の季語「庖丁始ほうちょうはじめ」という季語を選び、『都心』と指差すように限定した上で、季語とギャップのある新しい言葉『計画運休』を取り合わせる力強さ。五七五の調べを崩したことによる効果も相俟って、強烈なインパクトを残しました。

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タイトル戦初優勝の反動からか、半年ほど活躍できない時期を経験しますが、そのスランプを乗り越えて、下半期は2017年をも上回るような充実期に入ります。

  • 07/23 炎帝戦予選2位
    『夕虹やデビュー知らせし茶封筒』
  • 08/02 4→5段
    『遠雷の夜汽車カカオの奴隷史』
  • 09/10 5→6段
    『ヘッドホン外しはとバス初紅葉』
  • 09/24 東大王チームに勝利
    『<2020年>体温だけ記す九月の予定帳』
  • 10/29 金秋戦予選1位
    『休暇明アルトのビブラート太し』
  • 11/12 金秋戦決勝2位
    『流星のターミナル三分で蕎麦』

6回挑戦して、その全てで結果を残すというのは、並大抵の実力では達成することが出来ません。個人的には、予選通過とはならなかったもののファンやメンバーとの思いがひしひしと伝わった『茶封筒』の句だったり、『九月の予定帳』だったり、視聴者の心を揺さぶる句が多かったので、この時期の横尾さんの句が一番好きかも知れません。

2021年:2度目のタイトル戦を優勝

この年は、冬麗戦で9位、炎帝戦で8位など今までなかった順位を取ることも出てきますが、春と秋は2位以上という安定感があり、名人上位としての意地を見せる展開となりました。

春光戦優勝:『浜風光るスクイズの土埃』

千原ジュニア名人の「じゃんけん」の句や、東国原・梅沢永世名人の「志村けんさん追悼」の句などを抑えて、約1年ぶり2度目のタイトル戦優勝を果たしたのが上の句でした。

番組内でもあったとおり、「風光る」という季語に手を加えることに拒絶反応を示す方もいらっしゃるでしょうが、この句は『浜風光る』とする工夫と捉えるべきでしょうし、その直後に『スクイズ』という用語が出てくることで「野球」だとすぐに分かります。
季語への理解が定着している方なら、「風光る」が春の季語なので、「浜風」+「春」で確かにセンバツ(春の甲子園)まで発想できるかも知れません。(私は一読した時には無理でしたが^^;)

そして、『スクイズの土埃』という映像に持っていくことで、『浜風光るグラウンド』の光景を描いている点で、映像喚起能力の高さに驚かされました。まるで今、目の前で春の土埃が上がって、その匂いまで香ってきそうな具合です。 名人10段に向けて王手を掛けた横尾先生の新作に期待しています。

To Be Continued…

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