【プレバト!!】2ランクアップ(2つ前進)の俳句

【はじめに】
この記事では、プレバト!!の俳句査定史上に燦然と輝く『2ランクアップ』(そして2つ前進)の作品を振り返っていきます。

他の査定(特に芸術系など)は頻度が低いことから「◯ランクアップ」(いわゆる「飛び級」)が当たり前となっていますが、俳句査定では『3ランクアップ以上』例はなく、『2ランクアップ』が数える程度あるだけです。それだけに、『2ランクアップ』の作品の価値が高いと言えると思います。

(2017/01)『初日記とめはねに差すひかりかな』/村上健志(5→3級)

「プレバト!!」の俳句査定が始まって3年強、特待生制度が始まって1年あまりで開催された2017年の新春『特待生・昇格降格一斉査定』スペシャル

前年の秋に75点(コスモスや女子を名前でよぶ男子)→78点(テーブルに君の丸みのマスクかな)と、僅か2回で「特待生」に昇格したフルーツポンチ・村上健志さん。彼が特待生昇格後、初めて出演したのが2017年の新春SPでした。

特待生5級ということで、最初に紹介されて句が紹介されるも、先輩特待生たちにイマイチな評価(いじられキャラ的な要素は勿論含んでのもの)をされてしまいますが、査定結果は本人も驚きを隠せない『2ランクアップ』となりました。その作品がこちら(↓)

『初日記とめはねに差すひかりかな』/村上健志

上五の季語『初日記』は、新年の季語で、1年最初に書く日記のことです。まずこの季語は歳時記を調べなければボキャブラリーとして、持っていないものでしょうし、さらに「とめはね」で日記を書く人の動作を描き、さらに『に』と助詞から「差す」という動詞で下五への期待を高め、

最後に『ひかり』(ひらがな表記)で新春らしい明るいおめでたさを演出しつつ、最後に『かな』という切れ字で優しく詠嘆をするという格調高い新春らしい一句です。

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フルーツポンチ村上さんに対して、夏井先生は特待生昇格の時にも、

・この人は本物です。本物の詩人です。他の特待生を蹴落とすかもしれない

(夏井いつき)

と絶賛していましたが、このスペシャルにおいて「確信」に変わった様で、

・巧い。やっぱり巧い

(夏井いつき)

と発想だけでなく技術の高さも絶賛していました。実際、史上最速で名人、名人10段、そして永世名人にまで昇格しているのですから、その見立ては本物だったということでしょう。それぐらいの「逸材」であるとの存在感が「俳句の2ランクアップ」にはあるのです。

(2019/03)『「犯人逮捕」干鱈を毟る母の黙』/柴田理恵(5→3級)

2017年の新春SP以降「俳句タイトル戦」が開催されるようになり、特待生も増加の一途を辿ります。そうした中で久々に開催された、平成最後(H31)の「特待生の一斉査定」で、史上2例目の『2ランクアップ』が誕生します。先程のフルポン村上さんと対極に位置する苦労人・柴田理恵さんの句です。

「犯人逮捕」干鱈を毟る母の黙/柴田理恵

号外という兼題から「犯人逮捕」というところまで発想を飛ばし、富山県出身の俳人・柴田理恵さんが良く用いる富山の季語干鱈ひだらの特性をうまく取り入れて読み込んだ力作です。

とんかちで叩きながら「むしる」様に食べる『干鱈』を食べつつも、号外が出るような凄惨な事件に対する母の無念や思いをもだという一語で描ききっています。

これも先ほどと同様、「特待生5級」という低位だったことから、『2ランクアップ』になったという見方も出来ますが、作品単体として見ても非常に完成度が高いと感じます。

(2021/06)『宵宮の慈雨は屋台の人波へ』/千賀健永(2→4段)

過去と同様、また2年3か月ほどの間隔をあけて誕生した「史上3例目の『2ランクアップ』」は、Kis-My-Ft2の千賀健永・名人によるものでした。

  • スペシャルでない「通常回」での『2ランクアップ』
  • 名人(というか特待生4級以上)での『2ランクアップ』
  • 季重なりの作品での『2ランクアップ』

『宵宮』は、作者いわく、熱田神宮の前夜祭のことで、『宵宮』の日に降る『慈雨(恵みの雨)』が、屋台の人波に降る情景を描いた作品です。

実は、「宵宮」も「慈雨」も夏の季語であり、渋い季重なりの作品となっているのです。作者がそれに気づいていたかはさておき、両季語が相互に作用しあって並び立っていることを高く評価されました。

句を披露する前に、『飛び級を狙いたい』と豪語していた千賀さん。これがスペシャルならば、きっとフジモン名人にいじられていたでしょうが、今回ちゃんと(冒頭に示した様な史上初の快挙を含めた)『2ランクアップ』を実現したことで、『予告ホームラン』を成功させるスター性が垣間見えました。

(2021/12)『母の余命知る冬の日のレイトショー』/向井慧(5→3級)

4例目は、過去に比べてかなり早いペースで誕生しました。前回の千賀さんから約半年、2021年12月に、2人の永世名人と特待生5級ながらタイトル戦などでは予選通過の実績があった向井慧さんです。

春光戦では『花疲れ臓腑に溶けるチョコレート』で予選1位通過を果たしたものの、その他は最下位&現状維持など特待生昇格後は「ガヤ芸人」ポジションが確立しかけていた中で、この句を披露、ネットを驚かせます。

母の余命知る冬の日のレイトショー/向井慧

まず、下の記事にも書きましたが、上五を大胆に「字余り」とします。音数的にも1音余っている感じをもたせながら「余命」という強烈なインパクトをもたらす単語を据えています。もはや、この段階で勝ち確演出といった感じです。

更に、「母の余命知る」という動詞で、夏井先生も仰っていたとおり「たった今(に準じるつい最近)知った」のだと分かります。そして句またがりで季語の「冬の日」が出てきて中七までが完結します。そこから加えてレイトショーという場所(新たな情報)が付くことによって、

母 → 余命 → 冬の日 → レイトショー → 母 → 余命

というスパイラルに陥って、気持ちの整理がつかない詠み手の心境が19音に収められています。これも、1・2例目と同じく「特待生5級」時での作品ですが、タイトル戦を圧勝していてもおかしくない傑作だと感じました。

(2022/06)『雲の峰ぱんっと乾いたピザの薪』/藤本敏史(☆1→3)

下の記事でも、この句について触れていますので是非ご覧ください。

(詳細は後日追記予定)

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