【はじめに】
この記事では、中央競馬における「レーティング(ワールド・ベスト・レースホース・ランキング)」について、“通常の倍”にあたる6年間を対象期間として平均値を求める分析を行ってみました。今回は『スーパーG2』と呼ばれるレースに関する結果です。
皆さん、2019年以降の6年間で、最も平均レーティングの高い「G2」レースは、『【 何 】記念』か分かりますか? 早速、今年も『スーパーG2』シーズンを前に振り返っていきましょう!
「レースレーティング」に関する基本情報
基本情報については、2022年版も参照して頂ければと思いますが、ウィキペディアの記載を借りれば、

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
上の様に定められています。基本となるのが、『4歳(3歳)以上の牡馬・牝馬混合競走の基準が110ポンド』で、3歳限定戦は2ポンド、2歳戦は5ポンド、また牝馬限定戦では4ポンドを減じた値が、国際基準となります。ただ、日本競馬の実態としてこの基準を下回るレース自体少なく、私の集計では「G2の平均値」は112ポンドあたりになるという計算結果が出ています。(↓)
ここまでを教科書とした上で、レースレーティングにみた時に『スーパーG2』はどれぐらいを指すのかについて検討していきます。
(もちろんレースレーティングで全てを語れる訳ではないのですが、参考程度にはなるのかなと感じています)
集計方法の概略
JRAのホームページも、日本グレード格付け管理委員会も基本的には『直近3年間』を対象期間としています。ただ3年ではバラツキも大きいため、本記事では通常の倍の『6年分』を集計対象とします。具体的にいえば、2025年版の今回は『2019年から2024年』までの6年間を対象とするわけです。
なお集計に際して、牝馬限定戦の4ポンド(いわゆるセックスアローワンス)に関しては予め4ポンドを加えた値、つまり全て牡馬・牝馬混合戦と同じ基準・目線で揃えてある点はご留意ください。仮に、牝馬限定戦で「115ポンド」と記事に出てきた場合、元の数字は「115-4=111ポンド」だったという意味になります。
オーバー115の「スーパーG2」群
早速、2019年以降の平均値が115を超えたレースをピックアップしました。こちらです(↓)。

2023年までの段階では6レースあったのですが、2024年集計では「オールカマー」、「京都記念」、「神戸新聞杯」が115を切ってしまい、115以上は3レースのみとなってしまいました。
1位:116.54『札幌記念』
冒頭のクイズの回答は、多くの方の予想どおり『札幌記念』でした。2019年以降平均はG1にすら迫る116.54ポンドです。特に平成30年以降はスーパーG2の代表格として定着している感のある札幌記念。令和に入ってから2022年までの平均は117.38ポンドで、もはやG1の平均値とほぼ同レートでした。
年 | レースR | 勝ち馬 |
---|---|---|
2019 | 118.75 | ブラストワンピース |
2020 | 116.50 | ノームコア |
2021 | 117.00 | ソダシ |
2022 | 117.25 | ジャックドール |
2023 | 113.75 | プログノーシス |
2024 | 116.00 | ノースブリッジ |
2位:116.25『毎日王冠』
2023年は札幌記念と並び1位タイだった『毎日王冠』。アエロリットの年が抜けたため2019年からの6年間平均では2位となりましたが、2021年以降115ポンドを超え続けています。
年 | レースR | 勝ち馬 |
---|---|---|
2018 | 117.25 | アエロリット |
2019 | 118.00 | ダノンキングリー |
2020 | 114.75 | サリオス |
2021 | 115.25 | シュネルマイスター |
2022 | 117.25 | サリオス |
2023 | 117.00 | エルトンバローズ |
2024 | 115.25 | シックスペンス |
「スーパーG2」の伝説ともいえるサイレンススズカの頃は、天皇賞(秋)のステップレースとして有名でしたが、近年は中2週という間隔から敬遠され、むしろマイルCSや香港遠征を見据える陣営の秋初戦といった意味合いが強くなってきました。
ただし、2024年はグレード制導入後初めて「G1馬の出走がない」など、G2の空洞化が懸念されます。
3位:116.00『金鯱賞』
大阪杯とのレース間隔が狭い面はあるものの、2018年以降は非常にハイアベレージを叩き出しており、2019年に至っては120ポンドという大台に乗せているのは見過ごせません。
年 | レースR | 優勝馬 |
---|---|---|
2018 | 116.25 | スワーヴリチャード |
2019 | 120.00 | ダノンプレミアム |
2020 | 113.25 | サートゥルナーリア |
2021 | 117.00 | ギベオン |
2022 | 116.25 | ジャックドール |
2023 | 112.50 | プログノーシス |
2024 | 117.00 | プログノーシス |
2019年は2着にリスグラシュー、2021年はデアリングタクトをギベオンが下す大金星。そして2022年には①ジャックドール、②レイパパレ、③アカイイト、④ポタジェ、⑤ギベオンと入る豪華さで116.25ポンドとなっています。
また、2024年は5連勝中だったドゥレッツァを、プログノーシスが抑えて連覇したのも印象的でした。
ただこれも2017年までは『スーパーG2』感が全くなかったことからも明らかな様に、金鯱賞がこのままずっとこの位置をキープできるかは未知数ですし、周囲に大きく左右される面も否定できないことも今後の注目点となりそうです。
115.00未満の主なG2レースたち
114ポンド台:富士Sなど5レース
続いて、115ポンド台から落ちたものを含めた114ポンド台の5レースです。

オールカマー、中山記念、京都記念、神戸新聞杯はいずれも115ポンドを2024年は下回り、3レースは115ポンドを割り込みました。(※神戸新聞杯は3歳限定戦なのを考慮すると超えてきますが)
この中で唯一伸ばしたのは秋のマイル重賞「富士S」で、3年平均では116ポンドまで伸ばしてきています。(もちろんステップレースなのでG1昇格というのは考えづらいとは思いますが……)
112~113ポンド台:阪神C、府中牝馬S(→アイルランドT)など
それに準ずるところでは、スワンSや阪神Cといった1400m戦が名を連ね、日経賞、京都大賞典、AJCCといった伝統ある重賞が並びます。読売マイラーズCは2年連続115を超えてきました。また、弥生賞もなんとか3歳限定戦としてはG1の基準に達しています。

そして注目に値するのはアローワンスを加えると3年連続でG1の基準付近で推移していた「府中牝馬S」です。2025年からは「アイルランドT」と改称する予定の方の秋の重賞です。
110~111ポンド台:阪神大賞典、紫苑Sなど
G2の基準をギリギリ超える水準の110ポンド以上はこのあたりです。注目に値するのは、阪神大賞典が2024年に116ポンドを叩き出したことでしょうか。テーオーロイヤルが勝ち、ブローザホーンが3着となるなど、伝統ある長距離重賞が春に再注目されるとしたら喜ばしいことです。

また、紫苑Sに関しては、G2に昇格したことは良かったですし、2024年の勝ちタイム「1分56秒6」は衝撃的でしたが、いざ昇格するとレーティング上は埋没気味になってしまっているので、「113.00」は超えていきたいところです。
110ポンド未満:目黒記念、ニュージーランドTなど
110ポンドを切ったレースを見ていくと、3歳戦の下駄を履かせてもらったこともあってか「ニュージーランドT」の108.08ポンドもG2としては要件を満たす水準となっていますし、今のところは『降格』が喫緊の課題となっているレースはありません。
とはいえ、ここには載せている「東海S」が2025年にGIIIに降格してしまうのも、全般的に水準の高い日本の重賞の中で国際基準を5年連続で下回っていた実情に鑑みたものだったのかも知れません。

そうしてみると、やはり「ステイヤーズS」のG2維持が心配になってきますが、伝統もあり数少ない長距離重賞である本競走は何とか格付けを保ってもらいたいと願うばかりです。
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