【はじめに】
この記事では、仲冬の時候の季語である「小晦日(こつごもり)」について纏めていきます。
ウィキペディアに学ぶ「晦日」・「大晦日」・「小晦日」
まず基本的なところから抑えておきましょう。「小晦日/小晦」は『こつごもり』と読みます。一旦、何月何日を指すかといった部分は置いておいて、「晦日」とは何かおさらいしておきましょう。
晦日(みそか、つごもり、かいじつ)は、太陰太陽暦の暦法である中国暦、和暦の毎月の最終日のことである。具体的には、小の月では29日、大の月では30日となる。翌月の朔日の前日となる。
三十日に晦日の当て字や訓読みをするようになった所以は、満月の中旬以降、月が徐々に見えなくなっていくことにある。また晦のつごもりは「月隠り(つきごもり)」が転じ、晦は月相の意味とされる。
晦日
みそかは本来、「三十日」の古い表現(ふつか、みっか、…と続く先にある言葉)だが、実際の日付にかかわらず月の最終日を指す。みそかが29日を指す月には30日は存在しないので、混乱が起こることはない。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
言葉は難しいですが、月の満ち欠けを太陽の動きで補正していたいわゆる“旧暦”(太陰太陽暦)において、毎月の最終日のことを『晦日』といっていました。
三十路をみそじと読むように、三十日をみそかと読んだ古い言い方が、月が隠れる『晦日』という漢語の訓読みとして定着し、『月隠り』が転じて『つごもり』とも読むようになった経緯もあるそうです。
旧暦では毎月の最終日を晦日(みそか)といった。晦日のうち、年内で最後の晦日、つまり12月(旧暦12月、または閏12月)の晦日を大晦日といった。元々“みそ”は“三十”であり、“みそか”は30日の意味だった。ただし、月の大小が年によって変動するので、実際には29日のこともあった。
大晦日を大つごもりともいった。「つごもり」は、晦日の別名であり、「月隠り(つきごもり)」が転じたものである。
大晦日
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そうした文脈でみると、『大晦日』の『大』が何を指すかと言えば、一年という大きな範囲でみた最後の『晦日』であることを示していたのです。グレゴリオ暦と異なり、月の日付は一定でなかったため、旧暦12月の最終日が30日か29日か年によって異なりましたが、いずれにせよ慣習的に『12月最終日』のことを『大晦日』と呼ぶようになったのです。
そしてあまり厳密に捉えなければ、「小晦日」は「大晦日」の前日となり、以下のような解説文で終了となります。
対して大晦日の前日を「小晦日(こつごもり)」という。これは旧暦の十二月二十九日(閏十二月二十九日)、現在のグレゴリオ暦では12月30日を指す。
晦日
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ただ、少し気になり調べたもののあまりしっかりとした解答が得られなかったのが、『旧暦12月29日のことを小晦日といったとあるが、12月が29日までしかなかった年は12月28日のことを小晦日と積極的に呼んだのか』という疑問です。
ひょっとして、12月29日までしかない年には、『小晦日』と積極的に呼ぶ日がなかったのかも知れないなぁと(現実的に旧暦の中で生活することを考えた時に)考え至ったりもした訳ですが、一次資料として『小晦日』と呼んだとも呼ばないとも答えがなく、そこらへんをぼかして現代の時点群はサラッと書いてしまっている点、扱いに迷ってしまいました。
実際呼んだかどうかはともかく、12月30日までの旧暦ならば「旧12月29日」のことを指し、現代の暦に大晦日を当てはめるとすれば、小晦日は「新12月30日(31日が大晦日)」となります。現代の作句において『旧暦12月29日を詠まなければならん!』という古い考えの俳句の先生は皆無だろうとは思いますが、歴史的経緯を知った上で句の鑑賞、作句に臨めると幅が広がりそうです。
ちなみに、旧暦を現代に置き換えてみたときに、旧暦12月の『小晦日』は新暦だと以下のとおりです。
年 | 旧暦12月 の日数 | 大晦日 | 小晦日 | 備考 |
---|---|---|---|---|
2019 | 30日 | 2019/02/04 | 2019/02/03 | 「節分」と「小晦日」が同日 |
2020 | 30日 | 2020/01/24 | 2020/01/23 | 令和改元後初の「小晦日」 |
2021 | 30日 | 2021/02/11 | 2021/02/10 | |
2022 | 29日 | 2022/01/31 | 2022/01/30 | |
2023 | 30日 | 2023/01/21 | 2023/01/20 | |
2024 | 30日 | 2024/02/09 | 2024/02/08 | |
2025 | 29日 | 2025/01/28 | 2025/01/27 | |
2026 | 29日 | 2026/02/16 | 2026/02/15 |
新暦では1月下旬から2月前半に「小晦日」そして大晦日、旧正月を迎える流れとなります。ちょうど寒さの底から早春へと迎えっていく時期ですから、寒さの底に向かっていく印象の新暦の「小晦日」とはかなり異なっていることが窺えます。
俳句歳時記にみる「小晦日」の例句
まずは、旧暦の時代における代表的な作品で、辞書などにも例句として掲載されている18世紀の僧侶にして俳人の「蝶夢」の1句から。
- 『翌ありとたのむもはかな小晦日』/蝶夢
そして、改暦を経て現代の暦となり、徐々に「12月30日」が『小晦日』となっていった中で詠まれた近現代の俳句を見ていきましょう。
- 『小晦君を惜むと夜も青き』/高橋睦郎
- 『家中のふたり働く小つごもり』/黒田杏子
- 『小つごもり水を注げば海老鳴いて』/小林篤子
- 『地平線見たくて旅の小晦日』/土屋草子
他の年中行事の句でも同じですが、路線としては大きく2つ。
- 『ハレの日(の直前)として特別なことをする』系の俳句と、
- 『あくまでも日常と同じようなことをしているのに、特別な日だから特別に感じてしまう』系の俳句です。
いずれにしても『小晦日』という季語だけでなく、残りの12音ほどのフレーズが重要になってきます。貴方の俳句のタネが、年末年始に花開くことを期待し、タネを探すことも年支度の一つということで、師走の日々を過ごして参りましょう。
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