【はじめに】
厳密な用語ではないかも知れませんが、「双子地震」という概念が語られることがあります。今回は、過去に日本で起きた地震のうち、特に規模が殆ど同じ(いわば)『一卵性双生児』の様な「双子地震」を時代ごとにピックアップして行きたいと思います。
双子地震(ふたごじしん)とは、同規模(近い規模)の複数の地震が、同地域あるいは近い距離で、ほぼ同時、または短期間に連続して起こる、大規模な地震のこと。双発地震ともいう。
双子地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
通常の「本震-余震」型や、例外的な「前震-本震-余震」型だけでなく、ほぼ同規模のものが複数回起きるパターンは、レアながら被害が拡大しやすく警戒が必要です。(これは「前震」ありの地震にも言えることですが)最初に起きた地震が必ずしも最大ではないということを再確認して参りましょう。
ウィキペディアにみる「双子地震」
概要
双子地震は、1つ目の地震が起こることによって周辺の断層に負荷がかかり、新たに誘発されて2つ目の地震が発生することで、発生することが多い。また、本震の際に大きな揺れ(断層の破壊)が続けて起こること(例:関東地震、熊本地震)や、連動型地震において、同規模の地震が続けて起こること(例:安政南海地震と安政東海地震、2004年と2005年のスマトラ島沖地震)を指して「双子地震」と呼称する場合がある。
通常、本震後に発生する余震は、本震よりもマグニチュードが1程度小さい場合が多いが、双子地震の場合、2つ目の地震の方が規模が大きいこともある。
双子地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
現代において最も怖い過去事例だと思われるのが、「安政東海・南海地震」でしょう。昭和の時は東南海地震と南海地震の間隔が2年でしたが、安政(厳密には嘉永年間)の2つの巨大地震は30時間あまりという短さで連続して発生し、大被害をもたらしました。
地震 | 安政東海地震 | 安政南海地震 |
---|---|---|
発生日時 | 嘉永7年11月4日 AM9:30頃 | 嘉永7年11月5日 PM4:20頃 |
規模(M) | M 8.4, Mw 8.4 -8.6 | M8.4, Mw8.5 -8.7 |
津波 | 最大22.7m | 最大16.1m |
こういったほぼ同じ規模の地震が、あまり間を置かずに発生したものを、この記事では『一卵性の双生地震』などと呼び、いわば『本震が2回来た』事例として振り返っていくことにします。
大正・昭和時代(戦前)
1922/12「島原地震(橘湾)」
島原地震とは、1922年(大正11年)12月8日に、日本の九州地方で発生した地震である。M6.9の地震とM6.5の地震が立て続けに発生した。
島原地震 (1922年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1922/12/08 01:50:20.6 | 橘湾 | 19 km | 6.9 | 震度5:長崎 震度4:熊本、鹿児島 |
1922/12/08 11:02:10.7 | 橘湾 | 0 km | 6.5 | 震度4:長崎、鹿児島 |
普段は地震の少ない「長崎」でこういった地震が今から100年前にあったことは、どうぞ知っておいて下さい。
1938/11「福島県沖」【三つ子】
1938/11/05 17:43:18.4 | 福島県沖 | 43 km | 7.5 | 震度5:6地点 |
1938/11/05 19:50:14.9 | 福島県沖 | 30 km | 7.3 | 震度5:4地点 |
1938/11/06 17:53:51.9 | 福島県沖 | 10 km | 7.4 | 震度5:2地点 |
はっきりと「一卵性の三つ子地震」な中では最も顕著な事例かも知れません。福島県沖でちょうど1日で3度の大地震が発生したケースです。
1939/05「男鹿地震」【三つ子】
地震のメカニズム
いわゆる双子地震で、5月1日の14時58分にMj 6.8・最大震度5の地震(第一震)が、1分44秒後の15時00分頃にMj 6.7・最大震度5の地震(第二震)が連続して発生した。また、約10時間後の5月2日01時05分にもMj 6.5・最大震度4という大きな余震が発生している。何れの地震も震源の深さは浅く、地殻内で発生した地震と見られている。震害
男鹿地震
第一震・第二震、及びそれに続く余震活動によって、震央周辺の男鹿半島内の集落において大きな人的・家屋被害をもたらした。人的被害としては、家屋の倒壊、土砂災害などによって27人が死亡、その他52人が負傷した。住家被害としては、479戸が全潰、858戸が半潰した。中でも船川港町と五里合村は被害が著しく、全潰率が60%を超える地区もあった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
1939/05/01 14:58:26.5 | 秋田県沿岸北部 | 0 km | 6.8 | 震度5:秋田、鷹巣 |
1939/05/01 15:00:07.0 | 秋田県沖 | 0 km | 6.7 | 震度5:秋田、鷹巣 |
1939/05/02 01:05:50.6 | 秋田県沿岸北部 | 23 km | 6.5 | 震度4:秋田、酒田 |
1943/03「鳥取地震(前震)」
1,000名超が犠牲になった「鳥取地震」の約半年前に、全く同じ規模(Mj6.2)の地震が半日足らずの間に発生したことがありました。インフラや地盤への被害もあったと伝わります。
1943/03/04 19:13:45.4 | 鳥取県東部 | 5 km | 6.2 | 震度5:鳥取 |
1943/03/05 04:50:09.0 | 鳥取県東部 | 9 km | 6.2 | 震度5:鳥取 |
先行地震活動
本地震発生の約半年前に鳥取県東部でM6前後の地震が続発し小被害があり、先行地震活動と考えられている。1943年3月4日19時13分ごろ、最初の地震M6.2が発生、引き続き19時35分ごろにもM5.7の地震が発生した。また翌日の4時50分ごろには再びM6.2の地震がほぼ同じ場所で発生した。
鳥取地震
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昭和時代(戦後)
1949/12「今市地震」
今市地震(いまいちじしん)は、1949年(昭和24年)12月26日に発生した栃木県今市市(現在の日光市)鶏鳴山付近を震源とする内陸地殻内地震。8時17分 M6.2と8時24分 M6.4の地震が8分の間隔をおいて続けて発生した。
今市地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
僅か8分後に、内陸でM6クラスの地震が起きるというのは極めて稀です。当時の階級でも、栃木県内の震度観測点で震度階級が3から4に上がるなど、2回目の地震の方が大きかったと見られますが、これはほぼ「双子地震」と言っても良いレベルかと思います。
1949/12/26 08:17:31.1 | 栃木県北部 | 1 km | 6.2 | 震度4:水戸、柿岡、熊谷 震度3:宇都宮、日光 他 |
1949/12/26 08:24:55.0 | 栃木県北部 | 8 km | 6.4 | 震度4:水戸、柿岡、熊谷 宇都宮、日光 |
(参考)1987/2~4「福島県沖」
著名ではないですが、1987年の春にはM6以上かつ最大震度4以上でフィルタリングしても、これだけの地震が「福島県沖」で起きていました。1987年2月6日に2回、そして4月にも2回、中規模地震が起きていて、規模は一回り小さいですが1938年の事例を彷彿とさせられます。
1987/02/06 21:23:44.6 | 福島県沖 | 30 km | 6.4 | 震度4 |
1987/02/06 22:16:15.3 | 福島県沖 | 35 km | 6.7 | 震度5 |
1987/04/07 09:40:43.4 | 福島県沖 | 44 km | 6.6 | 震度5 |
1987/04/23 05:13:23.4 | 福島県沖 | 47 km | 6.5 | 震度5 |
平成・令和時代
(参考)1997/3~5「鹿児島県北西部地震」
1997年3月26日に鹿児島県北西部でM6.6の地震が発生した。負傷者31人、住家全壊2棟の被害があり、鹿児島県川内市(現:薩摩川内市)で最大震度5強を観測した。
約1か月の5月13日に3月の地震の震央の近傍でM6.4の地震が発生。負傷者43人、住家全壊4棟の被害があり、川内市で最大震度6弱を観測した。
この2つの地震はともに北東-南西方向に圧縮軸、北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、メカニズムが類似しているが余震域の分布が異なり、後者は前者に誘発された可能性がある(後述)。これらの地震によって、負傷者74人、総額200億円の被害を出した。
鹿児島県北西部地震
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1997/03/26 17:31:47.9 | 鹿児島県薩摩地方 | 12 km | 6.6 | 震度5強:3地点 |
1997/05/13 14:38:27.5 | 鹿児島県薩摩地方 | 9 km | 6.4 | 震度6弱:薩摩川内市中郷 |
2004/09「紀伊半島南東沖地震」
紀伊半島南東沖地震、または東海道沖地震とは、2004年(平成16年)9月5日の19時7分と23時57分、9月7日8時29分(いずれもJST)に起きた地震である。いずれも、東南海地震の想定震源域の南側の海溝軸付近のフィリピン海プレート内で発生した逆断層型のプレート内地震と考えられている。気象庁の地震震源地域区分で「紀伊半島沖」と「東海道沖」をまたぐように起こった。
紀伊半島南東沖地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
どちらも注意報クラスの津波が発生し、まだ東海地震への警戒感が強い中での大規模地震の連発ということで、きっとSNSが普及した現代に発生していたら大騒ぎになっていたのではないかと思います。
人的被害こそ少なかったものの、言ってしまえば運が良かったとすら思えるほどの『双子地震』です。
2004/09/05 19:07:07.5 | 三重県南東沖 | 38 km | 7.1 | 震度5弱 |
2004/09/05 23:57:16.8 | 三重県南東沖 | 44 km | 7.4 | 震度5弱 |
2016/04「熊本地震(前震)」
最初の地震から約2時間半後の4月15日0時3分に熊本県熊本地方を震央とするMj6.4(Mw6.0)、最大震度6強の地震が発生している。気象庁が発表したこの地震の 震央は、最初の地震の震央より南西に約5.5 kmずれている。
熊本地震 (2016年)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
熊本地震のいわゆる「本震」は4月16日にMj7.3という大地震が起きましたが、その前日までにも主に2回(Mj6クラス)の地震が起きていました。これはある種「双子地震」といえる規模です。
2016/04/14 21:26:34.4 | 熊本県熊本地方 | 11 km | 6.5 | 震度7 |
2016/04/15 00:03:46.4 | 熊本県熊本地方 | 7 km | 6.4 | 震度6強 |
こういった事象への注意喚起という観点では、ウェザーニュースの山口さん(🐯ぐっさん)の呼びかけが非常に参考になります。(↓)
☆ウェザーニュースで振り返る「熊本地震(4月15日)」|Rxのnote
https://note.com/yequalrx/n/nc4f417aa6d84
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