昔の「気象庁震度階級」を現代に復活させたら?(Rx被害階級と計測震度)

【はじめに】
この記事では、体感で震度をはかっていた頃のかつて(1995年度)の「気象庁震度階級」について改めて学び、現代(令和の時代)に活かせる部分があるのではないかと考えていきます。

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今の震度は物理量(加速度)をはかる意味では精度が高まっている一方で、体感との違いが現れています。いわば「震度」が必ずしも「被害」を表しているとはいえない状況となってきているのです。

そうしてみると、簡素(シンプル)だった過去の方が、人間からすると理解しやすく肌感覚に合っているのではないか? そう感じてきたのです。複雑な時代だからこそ、シンプルなものの魅力を再確認し、皆さんの理解を深める一助になれば幸いです。早速みていきましょう!

体感時代の震度の「解説文」を読んでみると?

まず、日本語版ウィキペディアの「気象庁震度階級」から、1995年度まで使われていた「旧・気象庁震度階級」の解説文をみていきましょう。

震度別の周囲の様子と被害
1996年3月まで、体感や被害状況を表す説明文は判定表として機能してきた。

しかし同年4月からは、逆に計測された震度での被害状況を表す解説文(正式には「気象庁震度階級関連解説表」)となり、役割を変えている。なお、同年10月1日と2009年3月31日の2回、解説表が改訂されている。

気象庁震度階級
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

今と比べて遥かに簡素ではあったものの、意外と侮れないのが数十年の歴史を持っていた下の表です。

震度周囲の様子と被害
震度7 (激震)家屋の30%以上が倒れ、山崩れや地割れができる。
震度6 (烈震)家が倒れる割合が30%以下で、崖崩れ地割れが起こる。
震度5 (強震)壁が割れ、煙突が壊れたりする。
震度4 (中震)家が激しく揺れ、8分目くらいまで入れた水が容器からあふれ出る。
震度3 (弱震)家が揺れ、戸・障子などが音を立てる。
震度2 (軽震)人に感じられ、障子などがわずかに動く。
震度1 (微震)静止している人や特に注意している人だけに感じられる。
震度0 (無感)地震計(震度計)が検知し、人は揺れを感じない。

利点はまさに大人から子供まで想像がしやすい点、欠点は「ざっくり纏めすぎ」な印象がある点や、「体感・建物被害・地形への影響」などが整理されずに書かれている点などがあると思います。そこで次に私(Rx)が独自に項目ごと、旧・気象庁震度階級を整理し直してみようと思います。

「旧・気象庁震度階級」を整理し直してみた

以下のとおり、ざっくり「旧・気象庁震度階級」の解説文を『(建物)被害』、『(地形などを含む)現象』、『体感』の3つに分けてみました。ご覧ください。

震度被害現象体感
震度7
(激震)
家屋の30%
以上が倒れ、
山崩れや地割れ
ができる。
震度6
(烈震)
家が倒れる割合
が30%以下で、
崖崩れ、地割れ
が起こる。
震度5
(強震)
壁が割れ、
煙突が壊れ
たりする。
震度4
(中震)
家が激しく揺れ、
8分目くらいまで
入れた水が容器
からあふれ出る。
震度3
(弱震)
家が揺れ、
戸・障子などが
音を立てる。
震度2
(軽震)
障子などが
わずかに動く。
人に感じられ、
震度1
(微震)
静止している人や
特に注意している人
だけに感じられる。
震度0
(無感)
地震計(震度計)
が検知し、
人は揺れを
感じない。
(参考)1996年9月30日以前の『気象庁震度階級関連解説表』

以上のように分類してみました。ここで注目すべきはその空欄の多さです。「家屋被害」の記載があるのは震度5以上、「地象現象」の記載があるのは震度6以上である一方で、「体感」に関しては震度2以下です。敢えて更にこれを恐れを知らず纏めてみると、こんな形にもできないでしょうか?

区分被害現象体感
震度7(激震)
家屋の30%以上
が倒壊
震度4(中震)
家が激しく揺れ、
水槽溢れる
震度2(軽震)
人に感じられ、
震度6(烈震)
家屋の30%以下
が倒壊
震度3(弱震)
家揺れ、戸や障子
などが音立てる
震度1(微震)
一部の人のみが
感じられる
震度5(強震)
壁が割れたり、
煙突が倒壊
震度2(軽震)
障子などが
わずかに動く。
震度0(無感)
地震計のみで、
人は感じない。

左から、「被害」の程度で上中下(7~5)、「現象」の程度で上中下(4~2)、「体感」の程度で上中下(2~0)といった具合に『3×3』のシンプルな表になりました。如何ですか? 個人的にはこれぐらいシンプルかつ明瞭なものに魅力を感じます。

もちろん、現在のような物理量(加速度など)を厳密に正確に反映した方が適切な分野もあるでしょうが、一方で、『揺れの大きさ/物理量』よりも『被害や体感』の方が庶民には肌感覚として体感・目視しやすかったりもします。その観点からすると、体感の時代に培われてきた「旧・気象庁震度階級」を一切古いものとして抹殺するのは勿体なかったのではないかなと思ってしまうのです。

Rx考案「体感震度」に整理してみた

ここまで書いてきたものを私なりの解釈で整理し直すと以下のようになります。(↓)

震度解説文
震度7
(激震)
【被害(上)】
3割以上の家屋が倒壊する
震度6
(烈震)
【被害(中)】
3割未満の家屋が倒壊する
震度5
(強震)
【被害(下)】
家屋が一部損壊する
震度4
(中震)
 【現象(上)】
不安定なものが落下しうる
震度3
(弱震)
 【現象(中)】
落下しない程度に物も揺れる
震度2
(軽震)
  【体感(上)】
多くの人が揺れを体感する
震度1
(微震)
  【体感(中)】
一部の人が揺れを体感する
震度0
(無感)
  【体感(下)】
地震計のみで人は感じない

これで良いなら、専門的な知識がなくても判別可能ですし、恐らく地震に関するアンケートでも我々が識別できうるぐらいの水準になっているかと思います。この表を僭越ながら「Rx考案『体感震度』」と命名してみます。

改めて、上の方を「被害震度」として抜き出し

そして、特に重要になってくるのが上の方(震度5以上)でしょう。震度5~7の部分を抜粋しこれを『Rx被害震度』と命名することとします。(勝手に)

被害震度解説文
震度7
(激震)
【被害(上)】
3割以上の家屋が倒壊する
震度6
(烈震)
【被害(中)】
3割未満の家屋が倒壊する
震度5
(強震)
【被害(下)】
家屋が一部損壊する

現在の震度5~6は、物理量として大きなものを対象としており、確かに建物の中の物的被害が大きくなるケースもありますが、一方で「家屋そのものへの被害」が地震の周波数などの要因によって小さくなり、かつての『震度5・6・7』から受けるよりも外的な被害が小さく思えるケースが増えてきてしまった印象です。

いわば、現在の気象庁震度階級が『計測震度』としての意味合いが強い半面、上に示したような『被害震度』の概念が副次的なものになってしまっている現状を鑑みる必要があるのではないかと感じます。

ここ最近の地震で「Rx被害震度」を考えてみると?

ではここからは上に示した「被害震度」を、実際に起きた事例でみていきましょう。

令和に入って以降の主な被害地震

令和に入って以降の地震から、消防庁などの集計に基づき、以下のとおり纏めてみました。幸い、全壊3割以上の震度7相当の家屋被害をもたらす地震は今のところ起きていないために、震度5~6で分類しました。

発生日震源地計測
震度
全壊3割未満
震度6(烈震)
家屋一部被害
震度5(強震)
19/06/18山形県沖6強村上市ほか
19/08/04福島県沖5弱福島:1棟
20/06/25千葉県東方沖5弱千葉:6棟
21/02/13福島県沖6強宮城:  5棟
福島:137棟
21/03/20宮城県沖5強東北関東6県
21/05/01宮城県沖5強東北3県
21/10/07千葉県北西部5強関東ほか5都県
21/12/03紀伊水道5弱御坊市2棟
22/01/22日向灘5強愛媛高知各1棟
22/03/16福島県沖6強宮城: 52棟
福島:165棟
22/03/18岩手県沖5強野田村1棟
22/05/30福島県沖5弱いわき市1棟
22/06/20能登地方6弱珠洲市62棟
22/08/11宗谷地方北部5強中川町2棟
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旧・震度6に相当する地震としては、2021・22年と2年連続で発生した「福島県沖」地震です。特に福島県内では3桁にのぼる家屋が全壊しています。また、2019年の「山形県沖」の地震では、新潟県・村上市で大規模半壊が3棟起きたそうなので、震度6との境目付近だと思います。

平成時代の全壊(震度6以上)地震

そして、平成年間の全壊家屋が出た地震についてまとめてみました。以下のとおりです。ごく一部計測震度で「震度5強」の地震でも少数全壊家屋が出た事例がありますが、基本的には震度6弱以上がないと全壊家屋が生じていません。それだけ家屋は基本的に強まっていると言えるでしょう。

発生日地震名最大
震度
全壊3割以上
震度7(激震)
全壊3割未満  
震度6(烈震) 
93/01/15釧路沖53棟
93/07/12北海道南西沖(巨大津波)
94/10/04北海道東方沖61棟
94/12/28三陸はるか沖72棟
95/01/17大阪湾実地検分の通り
97/03/26薩摩地方5強4棟
97/05/03薩摩地方6弱4棟
97/06/25山口県北部5強阿東町1棟
00/07伊豆諸島北部6弱15棟
00/10/06鳥取県西部6強435棟
01/03/24安芸灘6弱広島山口愛媛70棟
03/05/26宮城県沖6弱2棟
03/07/26宮城県北部6強1,276棟
03/09/26十勝沖6弱116棟
04/10/23中越地方(局所的)3,715棟
05/03/20福岡県西方沖6弱玄界島50%144棟
05/08/16宮城県沖6弱※埼玉県加須市1棟
07/03/25能登地方6強門前町道下32%686棟
07/07/16中越沖6強1,331棟
08/06/14岩手内陸南部6強(土砂災害)30棟
08/07/24岩手沿岸北部6弱青森県1棟
11/03/11三陸沖(巨大津波)121,996棟
11/03/12長野北部6強青倉・横倉3割超73棟
13/04/13淡路島付近6弱8棟
14/11/22長野北部6弱堀之内地区3割超77棟
16/04熊本地方益城町:約3割8,667棟
16/10/21鳥取中部6弱18棟
17/06/25長野南部5強1棟
18/04/09島根西部5強16棟
18/06/18大阪北部6弱21棟
18/09/06胆振中東部(土砂災害)469棟
(参考)気象庁 ホーム > 各種データ・資料 > 日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降) ほか

旧・震度階級で、揺れ以外によるものは「震度7」に認定されていませんので、「東日本大震災」などの津波によるものや、北海道胆振東部地震などの土砂災害によるものなのはカッコ書きとしています。

影が薄いものの、内陸で発生したM6後半の地震ともなると、やはり直上では旧震度7に相当する全壊率を記録した地域が出てきます。ピンポイントでは「震度7」に認定されなかったかも知れませんが、少なくとも当該地域にお住まいの方にはそれだけ甚大な被害の爪痕があったというのも事実です。

なお、昭和以前に関しては、ウィキペディアの「震度7」をご参照ください。

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