大地震の「前震」などだった事例をまとめてみた(東日本大震災、熊本地震、能登半島地震など)

【はじめに】
この記事では、東日本大震災や熊本地震の2日ほど前から顕著だった「前震」と言われるような地震についてまとめていきます。

前震(ぜんしん、: foreshock)とは、特定の時間と地域でバラツキと群れをなして発生する一連の地震活動において、発生した地震の最も大きな揺れを本震とした際に本震に先だって起こっていた地震のことである。しかし、定義は明確で無く現在の科学技術では活動の最中に前震か本震かは判断できず、解析後に判明する。

多くの地震では、突然発生する最も大きな規模の本震の後に規模の小さな余震が生じる「本震-余震型」の推移を経る。しかし、実際には大きさ自体はさまざまで、時に本震と見まちがう場合もある。また、地域差があり全ての大地震に対して先行して発生するとは限らない。
例えば、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の前震(三陸沖地震)はM7.3(最大震度5弱)、平成28年熊本地震はM6.5(最大震度7)であった。この2つの地震で、当初本震として発表されたものが、のちに前震であったと修正された。
尚、現在の気象庁は前震・本震という定義を無くし、すべての揺れを“地震”と呼ぶ様にして紛らわしくない表記へ変更されている。

前震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィキペディアに学ぶ「前兆現象」

2011年3月11日に「東北地方太平洋沖地震」が起きる2日前(2011/03/09)、三陸沖を震源とするM7.3の地震が起き、それから中規模地震が何回も発生しました。

これについて、日本語版ウィキペディアの「東北地方太平洋沖地震」にこんな記述があります。(↓)

予知及び前兆現象 > 前震活動

地震学において前震では、地震の規模と回数の関係式(グーテンベルグ・リヒター則)における系数b値が通常の1よりも小さな値となり、「地震の規模に比して小さな余震が少ない」ことが知られている。この3月9日の地震ではb値が約0.47と、通常の日本海溝付近における0.8に比べて顕著に小さく、前震の可能性が高い有力な根拠の一つとされているほか、日本海溝地域で1960年代から2011年までb値が減少し続けていたことが明らかとなった。

ただし、3月11日の本震と震源域が重複せず隣接していることから、前震ではなく9日の地震により11日の地震が誘発された可能性を指摘する研究者もいる。

東北地方太平洋沖地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

「グーテンベルグ・リヒター則」のb値というのは、地震に関するもので時折見かけるものなのですが、ひとまずウィキペディアから2枚ほど画像引用しておきます。

グーテンベルグ・リヒター則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
( 同上 )

詳細については私は理解していませんので、専門の方々にお尋ねいただきたく思うのですが、「b値」が特徴的な数値を取ると、懸念の声がSNSなどで聞かれるように感じますので、抑えておいて頂きたく思います。

ここ100年の主な事例について

「b値」を算出することは私には困難なので、もう少し分かりやすい形で過去の事例を振り返ります。

Mj6以上かつ震度3以上の地震を『気象庁震度データベース』で検索し、それをベースに以下の条件に当てはまる地震を中心に半世紀ごとに纏めていっています。その条件というのはおおよそ、

  • 最初に起きた地震がM6以上
    • M6以上の地震が複数回認められた
    • M6以上が1回だけでも、最初の地震と同等以上(で強めな震度を記録)
  • 数ヶ月前など長期にわたって、中規模地震を含む有感地震が頻発
    • なおかつ「群発地震」というより、終わってみれば大地震の前兆現象だったというパターンに限り掲載

こういった形です。下の段はおおよその時刻の目安で、①が最初のM6クラスの地震、②~③がそれに続くM6クラス以上の地震の中でも規模の大きなものを示しています。そして、M6クラス以上が3回程度以上続いた後に、それらを上回る大地震が発生した場合に限り、一番右の「最大」欄に本震を記載しました。

20世紀前半:北伊豆地震・鳥取地震ほか

大地震の前に半年以上、地震が認められた事例として、北伊豆地震や鳥取地震が昭和前半の事例としては著名です。また、関東大震災や1938年の福島県沖の三つ子地震などのように、大地震が連発した事例も記録に残っています。

発生日地震名最大
1922
12/08
島原地震M6.9
01:50
M6.5
9h後
1923
09/01
関東地震M7.9
11:58
M7.3
5分後
M7.3
1日後
1930
11/25
北伊豆地震2~8月
約千回
11/7-
2千回
M5.1
16:05
M7.3
11/26
1931
11/02
日向灘M6.0
03:53
M7.1
15h後
M6.3
16h後
1938
11/05
福島県沖M7.5
17:43
M7.3
2h後
M7.4
1日後
1943
03/04
鳥取地震M6.2
19:13
M5.7
22m後
M6.2
9h後
M7.2
09/10
1943
06/13
青森県東方沖M7.1
14:11
M6.4
3h後
M6.6
2日後
1945
01/13
三河地震M6.8
03:38
M6.4
3日後
1945
02/10
青森県東方沖M7.1
13:58
M6.2
14m後
M6.6
8日後
1949
12/26
今市地震M6.2
08:17
M6.4
7m後

20世紀後半:半日以上経ってより大きな地震の例が複数

発生日地震名最大
1960
03/21
三陸沖M7.2
02:07
M6.6
2日後
M6.2
2日後
1961
01/16
茨城県沖M6.8
16:20
M6.5
5h後
M6.5
8h後
1963
09/06
日本海中部M6.0
15:03
M6.2
19h後
1968
05/16
十勝沖地震M7.9
09:48
M7.5
10h後
1973
06/17
根室半島沖M7.4
12:55
M7.1
7日後
M6.5
10日後
1978
03/23
択捉島南東沖M7.0
12:15
M7.3
2日後
1984
09/14
長野県西部地震M6.8
08:48
M6.2
23h後
1992
07/18
三陸沖M6.9
17:36
M6.9
3m後
M6.4
2h後
1995
10/18
奄美大島近海M6.9
19:37
M6.5
14h後
M6.7
16h後
2000
07/01
新島・神津島
近海
M6.5
16:01
M6.1
8日後
M6.3
14日後
2000
07/30
三宅島近海M6.0
09:18
M6.5
12h後

21世紀前半:三陸沖、熊本地震など顕著な事例が

21世紀になると、「前震」の顕著な事例が知られています。すなわち、2011年3月9日の「三陸沖」の地震と、2016年4月14日の「熊本地震(1回目の震度7)」です。

これらは2日後(偶然の一致だと思うので、『地震が起きた2日後に本震が来る』といったSNSに惑わされないよう)に最初の地震を上回る規模の大地震が起きています。歴史的にみても『珍しい』ことは事実ですが、21世紀だけでも太い赤文字で示したような事例なら他にも起きていることを考えると、油断は禁物です。

発生日地震名最大
2003
09/26
十勝沖地震M8.0
04:50
M7.1
68m後
2004
09/05
三重県南東沖M7.1
19:07
M7.4
5h後
M6.5
2日後
2004
10/23
新潟県中越地震M6.8
17:56
M6.3
7m後
M6.5
38m後
2004
11/29
釧路沖M7.1
03:32
M6.0
4m後
M6.9
20h後
2007
04/20
宮古島北西沖M6.3
09:26
M6.7
79m後
M6.1
2h後
2011
03/09
三陸沖M7.3
11:45
M6.4
16h後
M6.8
19h後
M9.0
2日後
2011
04/11
福島県浜通りM7.0
17:16
M6.4
21h後
2016
04/14
熊本地震M6.5
21:26
M5.8
41m後
M6.4
3h後
M7.3
28h後

過去の事例からみても、この表に載るような事例は基本的には「数年に1~2回程度」で、そう頻繁に起きるものではありません。なので毎回毎回警戒をすることが適当かはわかりません。
大地震に繋がらなかったものの活発だった「中越地震」や「福島県浜通り」の地震もあれば、「東日本大震災」や「熊本地震」のように、M6~7クラスが更に大きな地震の前兆だったケースもありまして、両者を前兆の段階では区別しづらい点は再認識する必要がありそうです。

表をわけて、令和時代の事象をピックアップしますと、数分単位のものとして、2022年の福島県沖地震が2分後、2024年の能登半島地震が4分後に大地震が起きていて、その直前に緊急地震速報が出されていたパターンが続きました。

発生日地震名最大
2022
03/16
福島県沖地震M6.1
23:34
M7.4
2分後
2024
01/01
能登半島地震2022年
M5.4他
2023年
M6.5他
M5.5
16:06
M7.6
4分後

ただ、能登半島地震は数年単位で活動が続いていましたし、2022年の翌年に福島県沖で双子地震のようなものが発生していることなどを考えても、安易に『終息宣言』を出せるものでないことは、パターンの多さからも伺い知れるところかと思います。

大きめの地震が起きても、それが『最大』で、余震活動では本震を上回る地震は起きない。 ←こういった考えはリアルタイムに地震活動に見舞われている我々には通用しないことがあります。事例としては数年に1回で確率的には高くないものの、実際に起きてしまうと被害は甚大です。無視できないリスクとして考えていただく際の一助にこの記事がなったら幸いです。

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