【はじめに】
この記事では、「緊急地震速報(警報)」で“続報”が出された事例についてまとめていきます。この記事が、皆さんがテレビなどで「緊急地震速報」の“続報”に接した際に冷静かつ適切な行動を取れるようになる一助になれば幸いです。早速みていきましょう!
「緊急地震速報(警報)」の“続報”って何?
まず緊急地震速報(警報)の“続報”というものについて、オフィシャル(気象庁HP)から引用します。
上のページを引用する形で書かれた日本語版ウィキペディアの説明は以下のとおりです。
「一般向け」速報においては、地震波が2つ以上の地震観測点で観測され、最大震度5弱以上と予測された場合に、地震の発生時刻、震源の推定値、震央の地名、震度4以上を予測した地域名を速報している。その後、さらなる解析により震度3以下と予測されていた地域が震度5弱以上と予測された場合に、続報を発表する。続報では、新たに震度5弱以上および震度4が予測された地域を発表する。
緊急地震速報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
なんか難しいんだけど、要するにどういうこと?
こういったケースのことを指します。「緊急地震速報」を最初から熟視しなければ気づかないですし、発生する機会も数える程度ですので、ご存知ない方も多いかと思います。関心のある方は、動画サイトで下に示すような地震を調べて当時の映像をご覧いただければ、“百聞は一見にしかず”かと思います。
(映像の権利の関係で、この記事での直リンクは避けさせていただきます、ご了承くださいませ。)
具体的な地震の例と改善の歴史をまとめてみた
2007年10月1日:この日の9時(JST) から「一般向け」速報を導入。先行的に提供していた速報は「高度利用者向け」として区別した。テレビ放送や一部の公共施設などでも速報が導入された。
緊急地震速報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ここ最近、誤解される向きもありましたが、「緊急地震速報(警報)」の“続報”自体は最初期から設定されていました。正式導入の翌年には、早速、“続報”が効果を発揮します。
①(2008/06)6強:岩手・宮城内陸地震
当時はまだ「緊急地震速報」の運用から1年足らずで、震度6以上の地震での発表例がなかったため、知名度や活用に課題が多かった時代でした。2008年6月に起きた「岩手・宮城内陸地震」で初めて続報が発表され、土曜朝という時間帯も相俟って多くの方が「緊急地震速報」を知ることとなりました。
警報が出たタイミングが網掛けになっています。1回目の警報ではM6.1と推定されていましたが、2回目ではM6.9と大地震と推定され、対象範囲が広がりました。1例目にしてほぼ完璧な運用がなされたのです。
一般向けの速報が発表されたのは3例目で、震源近くでは間に合わなかったものの震度4以上を観測した広い地域に揺れが到達する数秒から数十秒前に伝わった。当初の緊急地震速報の対象地域は、岩手県の全域、宮城県の北部と中部、秋田県の南部、山形県の最上地方であったが、その後規模が修正され、新たに青森県の三八上北、秋田県の北部、山形県の村山地方と置賜地方と庄内地方、宮城県の南部、福島県の全域、新潟県の下越地方が対象地域に追加された。
NHK総合テレビでは、NHK週刊ニュースが放送されており、北朝鮮の日本人拉致問題関連のニュースを伝えてる最中に緊急地震速報が発表され、これを受けVTRを急遽打ち切り、同番組キャスターの畠山智之アナウンサーが強い揺れに警戒するよう呼びかけた。
岩手・宮城内陸地震
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
②(2011/03)【誤報】による続報発表
しかし、2011年3月に起きた「東日本大震災」とその活発な地震活動によって、“続報”も本来の期待を裏切る結果となりました。1例だけ取り上げますと、2011年3月12日の午後11時半過ぎの事例です。
3月11日に東北地方太平洋沖で超巨大地震が起き、その半日後の3月12日未明に長野・新潟県境を震源とする誘発地震が発生。複数地点で小・中規模の地震が起きたことを正しく処理できなかったために、大誤報となるケースが発生しました。
(参考)“続報”が出されなかった「3.11」
その一方で、「緊急地震速報」の“続報”が最も効果を発揮するはずだった「3.11」の超巨大地震では、残念ながら“続報”が発表されませんでした。ご記憶にある方も多いかも知れませんが、警報が発表されたのは東北地方の一部のみで、関東地方などの民放ラジオなどは該当地域に警報が発表されないため、「緊急地震速報」が出されていないものとして警戒のアナウンスが遅れる事態となりました。
第1波検知から約1分後には、巨大地震クラス(M7.9)であるということを推計できていたにも拘らずです。その理由については以下のとおり説明されています。
2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の本震では一般向け緊急地震速報は東北地方のみに発表されたが、茨城県北部で震度5弱と予測した第14報が更新条件だった「初期検知から60秒」よりも後であったためで、震度5弱以上の強い揺れを観測した青森県、関東地方、甲信越地方には一般向け緊急地震速報は発表されなかった。
緊急地震速報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
当時はまだ本当に(巨)大地震に対する理解が十分ではなかったこともあり、「第1波検知から1分」が過ぎたら“続報”を出さない仕組みになっていました。陸地から離れた海域を震源とし、数分をかけて複数の断層が破壊される超巨大地震では、「1分を過ぎてから」こそが最警戒であったにも拘わらず、数少ない“続報”が出されなかった(事例となってしまった)のです。
③(2016/04)7 :熊本地震(本震)
内陸の大地震での“続報”の成功事例としては、恐らく8年ぶりとなったのが、2016年4月に起きた一連の「熊本地震」のうち本震とも見做される4月16日午前1時25分(Mj7.3、最大震度7)の地震です。
当初は、14日と15日に起きたMj6中盤の地震が最大と思われていましたが、第4報のM6.9以降はこの地震が規模の面で「最大地震」であると見做さざるを得ない内容となり、この速報データが現実のものとなりました。しかし“続報”が功を奏し、九州地方の広い範囲に警報が出され、備えに繋がりました。
結果的には、本震の断層破壊から約30秒後に大分県中部で起きたM5.7の地震についても、“続報”によって事前に注意喚起が促せていたため、その期待される役目を果たしました。
④(2018/09)7 :北海道胆振東部地震
「熊本地震」以来2年ぶりに「震度7」を観測した北海道胆振東部地震でも“続報”が発表され、北海道の広い範囲(一部、青森県まで)に対象範囲が拡大されました。
情報の精度の高まりは、この表の行の多さ(「第◯報」の数の多さ)からもお分かり頂けるかと思います。これまで見てきた地震の倍以上になっています。131秒の間に第26報まで数えています。1秒間に複数回データが更新されている時間帯も見て取れます。なぜここまで変わったのか見ていきましょう。
これも難しいですが、要するに「3.11」での反省を活かした改良ということになります。震源や規模の推定値よりも強い揺れが実際に観測された場合に、隣接する地域にも「警報」を発表するという技術がシステムに取り入れられたのです。
この改良によって、続報が発表されることが従来に比べて珍しくなくなり、より確度の高いものとなっていきました。具体例をみていきましょう。
令和時代
⑤(2019/06)6強:山形県沖地震
令和初の震度6弱以上の地震となった「山形県沖」の地震は、陸地に近かったこともあり、第1波検知から僅か9秒で続報が出され、瞬時に的確な警報が発表されました。
続報までの時間は僅か1.7秒であり、人間にはほぼ判別つかないほどのスピードで修正されています。
⑥(2021/02)6強:福島県沖地震
令和に入ると緊急地震速報の続報が大きく注目される事例が毎年のように発生します。2021年には2例(2か月)連続で発生しましたので、そちらを見ていきましょう。
震源位置や深さは最初から殆ど当たっていたのですが、数秒置きにマグニチュードが高まり、第29報の段階でM7.1が予測され、続報が発表されました。この地震でも最大震度6強を観測しています。
⑦(2021/03)5強:宮城県沖地震
上の事例の翌月に起きた最大震度5強の宮城県沖の地震では、第1波検知の段階で警報が発表され、そこから2秒の間に7度の更新を挟み、直後に“続報”が発表される形となりました。震源が宮城県の沖合すぐ近くだったこともあり、震度観測点が多かったことも迅速な続報に繋がったものと思われます。
⑧(2022/03)6強:福島県沖地震
そして、2022年3月16日に起きた「福島県沖」の地震では、緊急地震速報の運用開始から約15年で培った技術がうまく行った点と、伝える側の新たな課題を感じましたので、その両面から見ていきます。
これらは過去の地震での経験を活かして、“続報”の効果を最大限発揮できた好例だったと思いました。しかしその一方で、メディアの伝え方には若干の課題があるように感じました。
⑨(2024/01)7 :令和6年能登半島地震
3年以上群発地震化していた能登半島。2024年の元日午後にM7.6という大地震が起き、計2回続報が出されました。本震発生の約4分前に震度5強の地震があり、そこから16時10分に第1報を発表。約30秒後に第2報、約1分後に第3報が発表され、M7.4・最大震度6強~7、北陸から関東・近畿に至るまで発表されました。
【おわりに】
こうしてみると、約十数年の間に繰り返し「改良」に努めてきた“続報”ですが、新たな事例発生に伴って新たな課題(想定外の事態)が発生してきています。しかし“続報”が発表される事例の大半は、実際に強烈な揺れが襲っていて、その揺れのデータを元に更新されるものです。
なので、『続報』といったアナウンスがなされた場合には、大地震であることを覚悟した上で、迅速な行動を取る必要があるのだと改めて認識していただければと思います。
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