「バレンタイン・デー」って季語として使って良いのかしら? でも8音って長いわよね……。
今日は春の季語でもある「バレンタイン・デー」について、俳句歳時記の例句などを纏めていきます。貴方の悩みに答えられていれば幸いです、質問があればぜひコメント欄までお寄せくださいませ。それでは参りましょう~
「バレンタイン・デー」の基本情報について
まずは、日本語版ウィキペディアの「バレンタイン・デー」の冒頭部を紹介しましょう。こちらです。
バレンタインデー(英: Valentine’s Day)、または聖バレンタインデー(せいバレンタインデー)・セイントバレンタインデーは、キリスト教圏の祝いで主に欧米で、毎年2月14日に行われるカップルが愛を祝う日とされている。家族や親友などと祝う人もいる。
元々269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した「聖ウァレンティヌス(テルニのバレンタイン)に由来する記念日」だと、主に西方教会の広がる地域においてかつて伝えられていた。
この日、キリスト教圏では一般に恋人や家族など大切な人に贈り物をすることが、習わしとなっている。
非キリスト教圏である日本においては伝統的に「女性が男性にチョコレートを送る日」とされてきたが、これについて国内で批判や不満が多く、近年は大きく変化している。
日本や中国大陸、台湾、韓国では、バレンタインデーに派生して「ホワイトデー(英: White Day)」が存在する。
バレンタインデー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そして、日本語版ウィキペディアをみると『バレンタイン・デー』の歴史について細かく書かれていますが、その詳細については『世界各国における状況』を是非ご覧ください(長いので丸投げ^^;)。ポイントをまとめると、
日本において『バレンタイン・デー』が定着したのは昭和時代
となるかと思います。戦前か戦後か、日本人か外国人か大手菓子メーカーか中小菓子店かの違いはありますが、1970年代あたりに定着していったので、約半世紀ぐらいの歴史となるかと思います。そうした意味では、俳句の季語として認められるには決して長い歴史を持つイベントではないとも言えます。
もはや殆どの歳時記では『バレンタイン・デー』が季語として収録されています。キリスト教の宗教行事であれば積極的に掲載されている昔ながらの歳時記でも、昭和に入ってから菓子メーカーが主導で流行らせた感のある『バレンタイン・デー』や『バレンタイン・チョコ』などを季語に認めるのは消極的……という世代が居たのは事実ですが、既に半世紀以上定着しているので、なかなかこれを季語と認めない論を張り続けるのも難しい様に感じます。
基本的に、『バレンタイン・デー』そのものについては安心して使っていただける季語だと思います。
一方で、先日の記事にも書いた『恵方巻』や平成に入って日本でも話題になった『ハロウィン』などはまだ季語として掲載していない歳時記が多いですので、場によっては慎重さが求められるでしょう。
ただ、厳密にいえば『バレンタイン』それ単体では本来、聖職者の名前を指すものであり、厳しい方は『バレンタイン・デー』など「日」に関する要素を入れないと不十分だという論を敷いてきますので、そういった下地があることは予め抑えておきたいところです。
さて、俳句歳時記の季節の分類によれば、立春からが「春」となります。なので、太陽暦「2月14日」にあたる『バレンタイン・デー』は、春(初春)の季語に分類されます。肌感覚としてはまだ寒い盛りではありますが、いわゆる『暦の上では春』といった具合です。そこは受け入れていきましょう。
歳時記にみる季語「バレンタイン・デー」のバリエーション
そして、俳句をある程度なさっている方がぶち当たる壁の一つに、どこまで『バレンタイン・デー』という季語のバリエーションが認められるのか論争があります。
先ほど少し触れましたが、『バレンタインチョコ』はOKなのか? 『バレンタイン』はOKなのか? といった具合です。17音という小さい器に盛るにあたって『バレンタイン・デー』では8音(約半分)となってしまうため、そこは時に大きな問題となります。
季語として認めるのかは俳句界で統一見解がある訳ではなく、最終的には俳句歳時記の編者だったり、俳句の選者他に委ねられています。なので結論から言ってしまえば『人(底本)による』となります。ただ、それでは何の解決にもならないので、手元の俳句歳時記から幾つかバリエーションを季語の表記別にご紹介していきます。
えっ、『~~~』って、こんな名句(例句)があるんですけど、ダメなんですか?
みたいな感じで(本当に言ったら喧嘩になりますが^^;)、有名俳人が使用した事例があることを知っておくだけでもグッと心強くなるはずです。一緒に学んでいきましょう!
まずは最も王道な「バレン/タインデー」です。本来の意味とは違うかも知れませんが8音という季語を「3+5」に分けると収まりが良いため、『○○○○○ ○○○○バレン タインデー』という形の句またがりにするのが一つの形です。また、上五を長い字余りとして、中七 → 下五で整えるという形も有効になるのを上の句を読んで参考にしてもらえれば幸いです。
「デー」とせずに「の日」とすることで助詞の効果も得られるのが愛されるパターンもあるでしょう。音数的には同じなのですが、受ける印象や字のイメージが変わることまで使いこなせるようになると、しっかり中級者レベルかと思います。
おっと夏井いつき先生の有名な作品も登場しました。上2つの季語の音数半分になる4音で表現するものとして『愛の日』という季語もあるそうです。
そして、ここから派生して、こういった応用技を使った句も掲載されていました。
これはおそらく『愛の日』という季語を経由した使い方だと思います。ここから『チョコ』を使った例を見ていきます。当然「チョコ/チョコレート」だけでは季語となりませんが、バレンタインデーや、『愛の~』といった組み合わせによって説得力を持たせているのだと思います。
上の2句なんかどちらも大好きです。気づけそうで案外難しいところに着目した印象を受けます。
【結論】『バレンタイン』単体では季語としては心細い?
そして、手元の歳時記では『バレンタイン』だけで季語を委ねている事例は見受けられませんでした。以上の例句のバリエーションをパターン化してまとめると、
『バレンタイン』or『愛の』 × 『デー』or『日』or『チョコ(レート)』
この2×3=6パターンぐらいが現実的な所じゃないかと感じました。裏を返すと、『バレンタイン』単体では季語として認めない派の方が多くなることが想定されますので、音数が仮に微妙でも、可能な限り(他人に出すのであれば)上のパターンを守っておくことをオススメします。
以上です。最後までお読み頂きありがとうございました!
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