Rxヒット指標にみる令和の「日本レコード大賞」(提言:年間1位に負けない大賞曲作りが必須)

【はじめに】
この記事では、令和時代の「日本レコード大賞」について、私が昭和・平成・令和を通じて活用できるものとして考案した独自指標「Rxヒット指標」に基づいて振り返っていきます。

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平成までの「日本レコード大賞」受賞曲

各時代の終わりに権威が低下し、新時代の幕開けに名実で変化を遂げる傾向ある「日本レコード大賞」ですが、ここ数年は時代の変化に多少追いついてきた感じを受けます。平成の後半などに比べれば多少は評価を巻き返してきていて、妥当性が高まった大賞選定となってきている印象です。

2021年に「note」に書いた記事から、画像を引用します。各リンク先から「note」の記事を参照して頂きたいのですが、ざっくり流れだけ抑えておきます。

昭和の「日本レコード大賞」大賞受賞曲について(Rxヒット指標)分析してみた
https://note.com/yequalrx/n/n9a2586e7edc3

昭和40年代や昭和50年代以降にミリオンに達していない楽曲が大賞を受賞するタイミングもあります。レコード売上が低迷した昭和60年代は特にレコ大始まって以来の低水準が続き、移動平均線も100万ptを割ってしまう危機に立たされました。

Rxヒッツ! ~平成・令和の「日本レコード大賞」大賞受賞曲
https://note.com/yequalrx/n/nf3d50e8abc1e

平成に入って、歌謡曲・演歌部門とポップス・ロック部門に分けたりするも3年でもとに戻り、CDは売れるのにレコ大受賞曲は低水準の楽曲が中心という錯誤が続く結果となってしまいました。平成20年代になると、ヒットのトレンドがCD以外に移ったにも関わらず『CD売上』を基本軸としていたために錯誤が決定的となっていき、様々な黒い噂と共に昭和期を上回る権威の失墜を招きました。

上の表はCD売上を調整した値となっています。本来のヒットソングであれば、CD売上だけに集中しないはずなのですが、CD売上以外は他の曲に劣後する楽曲が並ぶ年も多く、視聴者の『肌感覚』と違う「供給者側」の賞という見方をされて以降、全く見向きもされないレベルの関心低下が顕著でした。

Rxヒット指標にみる令和の「日本レコード大賞」受賞曲

しかし、令和に入って、良い方向に急ハンドルを切ったかのようにトレンドが変わります。まず、私(Rx)のヒット指標による令和の「日本レコード大賞」受賞曲をみていきましょう。こちらです(↓)

発売累計pt
CD

DL

再生

カバー
曲名
第61回
2019年
18/08/1519510 2511050パプリカ
/Foorin
第62回
2020年
20/10/142603010012010
/LiSA
第63回
2021年
20/11/25 70 10 60CITRUS
/Da-iCE
第64回
2022年
22/04/28 60 10 50Habit
/SEKAI NO OWARI
集計方法や企画の主旨については、下の記事に纏めてありますので初見の方はぜひご覧ください(↓)

上の画像でも2年分掲載されているのですが、『パプリカ』、『炎』と2年連続で令和を代表する楽曲が名を連ねます。ソニー系が前人未到の5連覇を果たした点で事務所の偏りは顕著でしたが、それでも「THE FIRST TAKE」などの成功からも分かるとおり、サブスク時代のネットマーケティングに成功しています。

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事務所の偏りがあっても、『その年を代表する楽曲だ』という印象を受ければ、賞としては存在意義があろうかと思います。平成時代に乖離していた部分を、令和に入っての2年で掴み直した感じでした。


2021年の受賞曲は、世間知名度はその前2年の楽曲には劣ったため、受賞を疑問視する声もありましたが、そもそもアンテナを高くしなければヒット曲に触れる機会も少なくなってる昨今にあって、しかもテレビには(やや不当に)出演が制限されているアーティストの楽曲です。アンテナを意図して高くしなければ『知らない』楽曲にスポットライトが当たったという点で興味深いものがありました。もちろん事務所が常連であったことなどは影響したことは否定できないかも知れませんが。

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2022年も、総合的なヒットとなった『Habit』が初の大賞受賞に輝き、ユニバーサルから久々の大賞を輩出することとなりました。過去10年をエイベックスとソニーが寡占していたことを思うと『新時代』への“復活”を感じさせる大賞だったという見方を個人的にはしています。

受賞段階での得点

上で示した表は、2022年12月時点での得点です。要するに大賞受賞後のロングヒット分を含んでしまっています。パプリカや炎がダブルミリオン相当の大ヒットなことは分かりましたが、

では、受賞当時(年末時点)での得点はどんな感じだったのか。当時を可能な限り復元した形で表を作り直してみるとこちらになります。(↓)

発売累計pt
CD

DL

再生

カバー
曲名
第61回
2019年
18/08/1510510255020パプリカ
/Foorin
第62回
2020年
20/10/14115207520
/LiSA
第63回
2021年
20/11/25 301020CITRUS
/Da-iCE
第64回
2022年
22/04/28 601050Habit
/SEKAI NO OWARI

『パプリカ』や『炎』はミリオン超えの話題作と(当時から)なっていました。後述しますが、その年の最大級のヒットソングとみてまず間違いなかった点で、『日本レコード大賞』の選出に納得感のあるものだったのです。『パプリカ』が2018年発売の楽曲だった点においては当時物議を醸しましたが。

2021年の『CITRUS』に関しては、個人的には大賞ノミネート時の歌唱パフォーマンスが非常に鬼気迫るものがあって好きだったことを先に書いておきます。結果だけを見た人と、ちゃんと優秀作品賞10組を見て「賞レース番組」に好意的にどっぷり浸かった人では印象が違ったのではないかとも思います。

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ただ、2021年の正直非常に手薄だった大賞ノミネート作品の中では「再生回数1億回」は相対的にみて上位となりましたが、2010年代後半からの流れでみると「再生回数1億回」だけをもって『大ヒット』として『大賞』に文句なく推薦できるほどの実績とも言い難い面があったように感じました。

あっという間にサブスク再生1億回(≒ RIAJ・プラチナ認定)を達成し、累計で5億回(ダイヤモンド)を得る楽曲も増えてきている昨今です。再生回数1億回はある種、令和時代における「下限」とも言える値であり、サブスク1億回は私の指標に当てはめると「20万pt(≒枚)」相当に抑まります。

「CDバブル時代の20万枚」に相当すると考える「サブスク全盛の時代の1億回再生」は確かにヒットではあるものの、レコ大に押し上げるほどの特筆した結果だったかと言われると……。そこにチャートを普段見ていない人々が少しの違和感を覚えるのも無理はないかなとも感じました。

チャート分析の方々のおっしゃる『CD売上偏重からの脱却』および『ノミネート楽曲の中での上位』であることと、下に見せる『主な対抗馬だった楽曲たち』との比較で相対的に劣る(『~~~』がエントリーされていたらそちらの方が大賞に相応しい今年を代表する1曲だ)という感想両立するものだという観点は見落とせないと思います。

主な対抗馬だった楽曲たち

とはいえ、「『~~~』が大賞なのは納得できない!」といった声をインターネットの裏の世界で見かけることはありますが、そこにはきっと『他にもっと相応しい曲がある』という前提が多かれ少なかれあるのだと思います。

ここからは、「大賞」受賞曲と、その他の楽曲とを比較して、さらなるレコ大の切磋琢磨する余地があるかどうかを見ていきたいと思います。

(狭義)ノミネート10作品の中での最高得点

現在の『日本レコード大賞』は、基本的に10曲の「優秀作品賞(かつての金賞)」の中から1曲が大賞に選ばれます。故に、「大賞」1曲とその他9曲を比較することが、主な対抗馬を探る意味で有意義かと思いました。

2019・20年の大賞受賞曲に関しては、大賞がそれなりのヒット曲だったため省略します。確かに、AKB48・乃木坂46の楽曲などがCD売上でミリオンに達していて、単純な合計得点では伍するものとなっていますが、CD売上以外では大賞受賞曲に劣るため、令和の時代の基準では対抗馬となりえなかった可能性があります。

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一つ飛ばし、2022年『Habit』と互角以上の戦いをしていたと見られるのが、Adoの『新時代』です。TikTokや踊ってみた系では『Habit』に軍配が上がりますが、YouTubeや歌ってみた系では『新時代』が圧勝しており、軸とするプラットフォームによって雌雄が分かれるレベルでの接戦だという見方ができそうです。

日本レコード協会(RIAJ)の認定状況では、デジタル配信で『新時代』に軍配が上がっており、定量的なもの以外を含めると『Habit』に大賞が送られたという可能性もありますかね。

発売累計pt
CD

DL

再生

カバー
曲名
第63回
2021年
21/02/10 551540勿忘
/Awesome City Club
第64回
2022年
22/06/08 803050新時代
/Ado
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そして、2021年は手薄な印象だったノミネート10曲。AKB48が40万枚、乃木坂46が70万枚程度とCD売上でミリオンに届かず、久々にミリオン相当の楽曲が1曲もない中での選考となりました。確かに、10曲の中では「CITRUS/Da-iCE」と上記の「勿忘/Awesome City Club」が上位だったのですが、50万pt付近では『大賞』にはやや心もとない値だったことは事実でしょう。エイベックス系列の楽曲が上位になるようなノミネートだったという見方すらできるかも知れません。

(広義)ノミネート以外の全楽曲での最高得点 ← ここが大事

そして大半の世間の人が比較対象とするのは、ノミネート10作品以外を含めた「巷のヒット曲」です。もちろん事務所の力関係で判断するのは“レコ大ファン”や業界人ばかりであり、その曲がどのレーベルの楽曲なのかということに興味がないどころか辟易としている人が大半かと思われます。

令和の時代に『日本レコード大賞』よりも『Billboard Japan Hot 100』の年間1位などの方が肌感覚に合っていることなどからも明らかな様に『日本レコード大賞』受賞曲と『肌感覚でのその年の最大級のヒットソング』をタイマンで戦わせた時に「遜色ない」ことが最終的な権威の復権に繋がるのだと思います。逆にそうしなければ、いつまで経っても『日本レコード大賞』の真の意味での復活とはならないのではないかと感じるほどです。

発売累計pt
CD

DL

再生

カバー
曲名
第61回
2019年
19/05/15 9050 40Pretender
/Official髭男dism
第62回
2020年
19/12/1510040 60夜に駆ける
/YOASOBI
第63回
2021年
20/10/2515050100ドライフラワー
/優里
第64回
2022年
22/06/08 8030 50新時代
/Ado

厳密には、平成に発売された『紅蓮華』や『マリーゴールド』、『Lemon』の方が単純得点で上回る可能性があるのですが。『その年の代表曲』という観点から私のヒット指標での最高得点のものを選んでみました。

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いずれも『Billboard Japan Hot 100』で年間1位ないし上位に来た楽曲たちであり、言ってしまえば前述の2021年は、『CITRUS/Da-iCE』vs『ドライフラワー/優里』などと比較されるとどう考えても不利だという単純な論理で厳しい側面があったのではないかと考えます。
しかし、真に『日本レコード大賞』に求められているのは、こういった楽曲への大賞授賞か、それらとタイマンで戦っても遜色ない楽曲への授賞かの2択に収斂しましょう。

【まとめ】日本レコード大賞受賞曲が『年間1位にも負けない存在であること』が復権への鍵

例えば、今でも語られる1970年代の「日本レコード大賞」受賞曲と、当時の代表的な指標であるオリコンシングルチャートの年間1位楽曲を左右に並べてみるとこんな感じ(↓)。

レコ大受賞曲オリコン年間1位
第12回1970年今日でお別れ黒ネコのタンゴ
第13回1971年また逢う日までわたしの城下町
第14回1972年喝采女のみち
第15回1973年夜空女のみち
第16回1974年襟裳岬なみだの操
第17回1975年シクラメンのかほり昭和枯れすゝき
第18回1976年北の宿からおよげ!たいやきくん
第19回1977年勝手にしやがれ渚のシンドバッド
第20回1978年UFOUFO
第21回1979年魅せられて夢追い酒

一致しているのは1978年の『UFO』のみですが、殆どの年は「レコ大受賞曲」が負けていないと素直に感じるレベルのラインナップです。この頃の大賞を逃した他の候補曲というのも、細かい年度ごとに見れば裏にドロドロしたものがあるかも知れませんが大枠でみて『大賞受賞曲が年間1位にも負けない存在』です。このことが「日本レコード大賞」黄金期などと呼ばれる時代の大きな要因の一つだったのではないかと感じるのです。

日本レコード大賞の改革案の一つに、選考員の透明化や投票先の公表などがあります。個人的にはやって頂いて損はないという風に感じますが、上の論点を使ってみると、

誰が選考員に選ばれ、誰が誰に投票したかに興味を持たなくなるぐらい、『日本レコード大賞』受賞曲が納得のいくチョイスならば問題ない

という理想論にたどり着きました。もちろん腐敗せずに継続するに越したことはないのですが、昭和の中盤には腐敗が進行してしまっていたという回顧録もあるように厳密にはうまく行きません。

なぜ「選考員の透明化や投票先の公表」が求められるかと言えば、その不透明性にある……というのが表面的な論理です。ただ他にも選考員や投票先が透明でない賞は山ほどあります。むしろその方が普通です。そのような意見が飛び出す背景には、『結果やアプローチへの不信感』が根底にあるのだと思うのです。

仮に大賞受賞曲が納得のいくチョイスならば、わざわざ選考員が誰で、誰が誰に投票したかの関心は薄まると思います。ここを監視しなければ大賞に疑問符がつくという状況だから公表が求められているのだと思うのです。逆に「透明」にしたからといってそれで肌感覚との乖離が解消されなければ全く意味がありませんし、要求した側は納得しないでしょう。

最終的には、『結果(大賞選考)で黙らせる』という強権的なまでのスタンスを10年スパンで続けなければ『日本レコード大賞』の信頼は回復できないでしょう。『数年に1回ならば良いだろう』となった瞬間に一気に失墜して一からやり直しになるのです。恐らく、次に失墜したら、もう継続は困難となるでしょう。そこを遅まきながら気づいたからこその令和の変革があったのだと……信じたいです。

令和に入ってから今のところ、平成の頃よりかはマシというよりかなり良くなってきている印象です。だからこそ、この路線を加速させていくことが、表面的な『日本レコード大賞』の復権に繋がるのだと信じています。そうしなければ時代の流れの早い令和の時代に途絶えてしまうでしょう。いつまでこの流れが続くのか、長いスパンで見ていきたいと思います。ではまた、今年の年末にお会いしましょう。Rxでした。

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