【はじめに】
この記事では、創設以来、日本馬の活躍が目立つサウジアラビア競馬の一大イベント「サウジカップ・デー(Saudi Cup Day)」について、日本馬の活躍という観点で纏めていきたいと思います。
(↑)昨年(2022年)に、全体のまとめ記事を書いているのですが、この翌年(2023年)に【パンサラッサ】を始め日本馬がメインの「サウジカップ」でも大活躍を遂げました。そこで日本馬が初回からどういった活躍をみせてきたのかを振り返って行きたく思います。
サウジカップデーへの遠征
サウジカップ(アラビア語: كأس السعودية、英語: Saudi Cup)は、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で開催されている競馬の競走である。距離はダート1800m。賞金総額2000万米ドルを誇る世界最高賞金レースである。
サウジアラビアジョッキークラブが2020年に創設した国際競走。総賞金は2000万米ドルで、施行日はサウジカップデーと称して、本競走を含め8つの競走(6つは国際競走で1つはアラブ馬限定)が行われる。
本競走はダート1800mで行われるが、アメリカやドバイ、日本と異なって、ウッドチップを含んでいるというキング・アブドゥルアズィーズ競走馬術広場のダートコースや高額な賞金の影響か第1回のベンバトル、マジックワンド、第2回のミシュリフなど主に芝のレースに出走してきた欧州馬も毎年数頭が参戦している。
サウジカップ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サウジカップ創設後に「パートII国」となり、国際グレードが認められた訳ですが、それ以前から高額賞金などもあって、日本だけでなく世界各国から中東遠征が計画されました。日本馬も、サウジカップこそ当初は活躍できませんでしたが、その他のレースでは強さを誇り『固め打ち』する年もあります。ここからは日本馬の遠征結果に着目して、過去の結果を振り返っていきましょう。
ちなみにサウジアラビア調教馬限定戦や純血アラブ限定戦には、日本のサラブレッドは出走できませんので、この記事では全くもって触れませんことをご了承ください。
芝2100m:ネオムターフC
2020年に「モハメドユスフナギモーターズC」として創設され、2021年からは「ネオムターフC」として開催されている同競走は、芝2100mと日本馬が得意としそうな距離設定です。
日本からすると格上な印象を受ける2頭:2020年の【ディアドラ】と2022年の【オーソリティ】が出走して連対を果たしています。ジャパンCで好走したオーソリティが逃げ粘る姿は、2022年の日本馬の大活躍を予感させる勝ちっぷりでした。
芝1351m:1351ターフスプリント
第1回は「Stc1351C(スプリント)」、第2回から現名称となった本競走は、初回から1351mでの開催となっています。どうやら、サウジアラビアの建国がイスラム暦で「1351年」にあたることが由来だそうで、結果として日本馬には非常に挑んでみたい距離・賞金額のレースとなっています。
2022・2023年と日本馬は3~4頭挑戦して、どちらも勝っています。第3回を好走したソングラインとラウダシオンは翌年は大敗しましたが、2023年は【バスラットレオン】がゴドルフィンマイル以来の重賞制覇となり、芝ではニュージーランドT以来2年ぶりの勝利を決めています。
なお6歳となった【レシステンシア】は5着と善戦してこのレースを最後に現役引退となるようです。
芝3000m:レッドシーターフH
第1回は「ロンジンターフハンデキャップ」として開催された同競走。レッドシーはもちろん「紅海」を指す表現で、日本馬としては『天皇賞(春)』などと比べても賞金が非常に高額ということもあり、挑むインセンティブが高いレースとなっています。
ややお騒がせな面もあるような馬たちがこのレースで『一変』するかのようにカッコいいレースを見せました。2022年は【ステイフーリッシュ】が「京都新聞杯」以来実に4年ぶりの勝利を飾り、続く「ドバイゴールドC」でも重賞連勝を果たしています。
そして、天皇賞(春)でのカラ馬が印象的だった【シルヴァーソニック】は、ステイヤーズSで重賞初制覇を果たすと、初の海外遠征となった2023年の本レースで重賞連勝を果たしています。
ダ1600m:サウジダービー
第1回は「サンバサウジダービーカップ」として、第2回は「アルラジヒ銀行サウジダービー」として開催された。森秀行厩舎所属馬が第1回・第2回と連覇している。
日本調教馬の日本国外への遠征
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
当初に比べて、徐々にレースレベルも上がってきている印象があります。フルフラットと、国内に戻って非業の最期を遂げたピンクカメハメハの2年連続勝利に驚かされたのは記憶に新しいところですが、2022・23年と日本馬は惜敗を喫しています。
回 | 施行日 | 参戦馬名 | 英字表記 | 管理調教師 | 着順 |
---|---|---|---|---|---|
第1回 | 2020年2月29日 | フルフラット | Full Flat | 森秀行 | 1着 |
第2回 | 2021年2月20日 | ピンクカメハメハ | Pink Kamehameha | 森秀行 | 1着 |
第3回 | 2022年2月26日 | セキフウ | Sekifu | 武幸四郎 | 2着 |
コンシリエーレ | Consigliere | 稲垣幸雄 | 3着 | ||
第4回 | 2023年2月25日 | デルマソトガケ | Derma Sotogake | 音無秀孝 | 3着 |
2023年は全日本2歳優駿(Jpn1)という日本のダート世代代表格が挑んで3着、それ以下は5・9・12着という成績だったことを思えば、以前のように簡単に勝てるレースではないかと思います。今後、日本国内で地方・中央を合わせたダート路線の大改革が控えている中で少し心配になる次第です。
ダ1200m:リヤドダートスプリント
第1回は「サウジアスプリント」として開催されました。平成までであれば距離的に厳しくてもマイルの国内G1・フェブラリーSに挑戦していたスプリント勢が、この舞台に大挙するようになっています。
回 | 施行日 | 参戦馬名 | 性齢 | 着順 |
---|---|---|---|---|
第1回 | 2020年2月29日 | マテラスカイ | 牡6 | 2着 |
第2回 | 2021年2月20日 | コパノキッキング | 騸6 | 1着 |
マテラスカイ | 牡7 | 2着 | ||
第3回 | 2022年2月26日 | ダンシングプリンス | 牡6 | 1着 |
チェーンオブラブ | 牝5 | 3着 | ||
第4回 | 2023年2月25日 | リメイク | 牡4 | 3着 |
2023年は、フェブラリーSで短距離勢が活躍した一方で、JBCスプリントで連対した馬であっても馬群の中団が精一杯という結果に終わり、リメイクの3着が最高でした。
ダ2000m:サウジカップ
当初の「ペガサスワールドカップ」に触発された感の超高額賞金レースとして発足した「サウジC」。
日本からは、第3回まで「ダートの一流馬」がこぞって参戦していました。
国内無敗だった【クリソベリル】が7着と大敗での初黒星を喫した時には、『新たな日本馬の鬼門』が誕生したものと嘆息をしてしまう感じでした。冒頭の記事にも書いたとおり、最高でも6着(それでもフェブラリーSで勝つのと大差ない高額の賞金が与えられる)という状況が続いていました。
しかし、状況が一変したのは2023年でした。芝の一流馬を4頭出しても惨敗した『凱旋門賞』の記憶も新しい中、日本馬なんと6頭が『サウジカップ』に挑むこととなったのです。13頭立ての6頭出走ですから、昔の『ジャパンC』ぐらいの日本馬の寡占率という状況です。
そして“苦手”の記事にも書きましたが、ダートの一流馬だけでなく、芝G1ホースが多く参戦したというのも日本勢にとって画期的だったといえます。従来と違い、『ダートの一流馬』から『1800m付近での芝の一流馬』も加わったことで、レース展開・ペースなどの面も含めて日本馬が束になってかかれたのでしょう。結果的に、
と、昨年の1・2着馬を退けて上位7頭のうち5頭が日本馬となり、昨年はこの時期、「中山記念」を勝ったばかりだった【パンサラッサ】が、日本調教の牡馬で最高の獲得賞金記録を打ち立てる「サウジカップ日本馬初制覇」を果たしたのです。
ダートは「師走S11着」の1戦しか実績がなかったパンサラッサをサウジCに挑ませた矢作先生の喜びようは日本でも大きな話題となりました。
そして、芝G1馬であるパンサラッサとジオグリフが、ダートで活躍する馬たちと伍したことは、日本の陣営を勇気づけるものとなりました。また、一部ファンは日本人騎手唯一騎乗だった【パンサラッサ】が逃げ切ったことも好意的に受け取る意見が多くみられました。
馬券販売がなされていなかったことを悔いる声のあった反面、馬券の損得なく『日本馬を統一して応援できる』平成の頃の海外レースが戻ってきたかのような感覚を覚え、いささか懐かしくなりました。
To Be Continued…
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