アラスカの巨大地震をまとめてみた（M8+ Earthquakes in Alaska）

【はじめに】
この記事では、アメリカ・アラスカ付近（アリューシャン海溝など）で起きた巨大地震（Ｍ８以上）をまとめていきます。

アメリカ地質調査所（USGS）の画像２枚

アラスカ州で起きた地震は、アメリカ国内の管轄ということもありますので、ここはやはり「アメリカ地質調査所（USGS）」のデータを中心に振り返っていくことに致しましょう。

地球規模でみれば日本列島も乗る北米プレートと太平洋プレートの境界付近で、20世紀以降で10回程度の巨大地震が発生していることが「灰色の●印」からも見て取れます。

９つある●のうち、世界的に見ても特筆して大きいのが、最も北にあり内陸部に印が打たれています「アラスカ地震」です。後述しますが、Mw9.2という20世紀で世界２番目とも言われる規模でした。

断層の広さを面的に捉える意味では、下の画像（Wikipediaを経由して引用）も、込み入っていますが参考になるかと思います。

●印（日本だと良く×印で描かれる）のは、震源＝あくまで断層破壊が始まった一地点であるに過ぎません。超巨大地震となった2011年の「東北地方太平洋沖地震」でも、震源は三陸沖でしたが、そこから日本海溝の非常に広い範囲（岩手県沖から関東の沖合）まで断層破壊が進みました。

この上のカラーの図だと、薄い茶色で塗られた部分の断層が破壊されたのだと直感的に分かると思います。それこそアリューシャン海溝沿いにほぼ隙間なく色が塗られている状況です。そしてこれらひとつ一つが、南海トラフ巨大地震に伍する規模があるという事実が恐怖でしかありません。

過去100回の巨大地震を振り返る

今回は、時系列ではなく地理的に西（日本に近い方）から順に見ていきたいと思います。

1965年：ラット諸島付近（Mw8.7）

地震
余震の分布から、この地震はプレート境界に沿った長さ600kmの断層破壊によるものと考えられている。エネルギー放出の形態は、プレート境界面に沿った3つのアスペリティの存在を示唆しており、それぞれのアスペリティがエネルギーを放出している。津波モデルも、上側のプレート内部の3つの構造的「ブロック」と関連付けると、この地震が3回のサブイベントから成るという説を補強する（連動型地震）。

本震から2か月近く後に、マグニチュード7.6の地震が発生し、小規模な津波を発生させた。これは余震ではなく、沈み込むプレート内（アウターライズ）内で発生した正断層型の地震で、本震より前に発生した地震に誘発されたものである。

津波
津波の最大遡上高は、シェミア島で10.7m、アムチトカ島で2.0m、アッツ島で1.6m、ハワイのカウアイ島北部で1.1m。ペルー、エクアドル、メキシコ、カリフォルニア、日本、ロシア東部でも津波が観測された。

日本語版ウィキペディア > アリューシャン地震 (1965年)　より

1957年：アンドリアノフ諸島付近（Mw8.6～9.1）

余震域の大きさは東端はクレニッツァン諸島沖、西端はアムチトカ島沖の長さ約1,200kmで、これは2004年スマトラ島沖地震とほぼ同程度の長さである。

この地震によりアダック島とウニマク島の地下に影響を与えただけでなく、長期間に渡り活動を休止していた火山・ブセビドフ山にも影響を与えた。

また、津波も発生しハワイでは16mの津波が到達して500万ドルもの被害をもたらした。津波でオアフ島では2つの村が破壊され、アリューシャン地域では2つの橋が破壊されたが、地震または津波での死者は無かった。

（　同上　）

1986年：アンドリアノフ諸島付近（Mw8.0）

上記地震の29年後にあたる1986年５月にもMw８前後の大地震が発生。日本時間では朝７時47分に地震が発生し、当日９時30分に東日本に、13時30分に西日本にも津波注意報が発表されました。

当日一杯、日本列島周辺でも津波が観測され、1986年～1990年に日本で観測された津波（気象庁）によれば、父島と御前崎で最大波高28cmを観測しました。

1946年：ウニマク島付近（Mw8.1～8.6）

1946年4月1日、アリューシャン列島のウニマク島近くで地震があり、津波が発生した。地震は震源の深さ50km、モーメントマグニチュード (Mw) 8.1（表面波マグニチュード (Ms) は7.8）だった。ウニマク島では海抜40メートル程度の所にある灯台が津波で破壊されたほどであったが、津波はハワイで激甚な被害を出した他は、太平洋沿岸の北アメリカ西岸でも日本でも殆ど観測されず、ハワイに被害が集中した。死者・行方不明者は165名。津波による被害は2600万ドルに及んだ。

この津波被害を受け、アメリカ合衆国は地震警戒システムをつくった。この組織は1949年に、太平洋津波警報センター (Pacific Tsunami Warning Center) という名称になった。センターの名に直接 Tsunami という語が使われたことから、Tsunami はアメリカ合衆国において津波を意味する学術用語化し、その後、国際語化する要因にもなった。

日本語版ウィキペディア > アリューシャン地震 (1946年)　より

終戦の翌年に発生し、1940年代から日本語の津波が「Tsunami」として定着していく流れとなる契機となったのがこの地震です。なお、日本語版ウィキペディアは「Mw8.1」と書かれたままですが、英語版ウィキペディアはUSGSの最新のデータを反映して「Mw8.6」としています。

この地震でもそうですが、津波は波源域の方向によって津波の伝播の仕方や高さに大きな違いが出ると言われています。
日本付近でいえば、南米・チリは対岸に当たるため津波が増幅されることがあり、一方でアリューシャン列島で起きる地震による津波は対岸に当たる「ハワイ」などで甚大な被害が発生する事が多いです。

1938年／2021年：シュマージン諸島付近（Mw8.2）

1938年と、そして直近（2021年７月29日）に起きた巨大地震が、アラスカ半島（シュマージン諸島）付近の海域です。ここでは主に2021年の事例を取り上げます。

2020年から大地震が複数発生しており、一連の地震活動の中で最も大きかったのが、2021年７月29日（日本時間、現地では28日午後10時15分）のMw8.2の地震でした。

この地震では小規模な津波が発生し、太平洋東部を中心に観測されました。日本列島には、津波予報が発表されましたが、明瞭な津波は観測されませんでした。

1964年：アラスカ地震（Mw9.2）

そして、「アラスカ地震」と言った場合、基本的には1964年に起きた超巨大地震のことを指します。

アラスカ地震（アラスカじしん、Great Alaskan Earthquake、アラスカ大地震）は、1964年3月27日にアメリカ合衆国アラスカ州で発生した地震。聖金曜日に発生したことから、聖金曜日地震（The Good Friday Earthquake）とも呼ばれている。

概要
震源はアラスカ州南西部のプリンス・ウィリアム湾。太平洋プレートと北アメリカプレートの境（アリューシャン海溝付近）における海溝型地震である。観測された表面波マグニチュード (Ms) は8.4〜8.6とされていたが、その後、金森博雄の推定によりモーメントマグニチュード (Mw) で9.2であることが判明し、アメリカ合衆国地震観測史上最大規模となった。この地震で131人が亡くなった。同年、日本で発生した新潟地震と並び、液状化現象による被害が大きく、これ以降、土質力学の分野で液状化現象が活発に研究されるようになった。

日本語版ウィキペディア > アラスカ地震　より

上の表はアメリカ地質調査所（USGS）の最新の解析でのモーメント・マグニチュード（Mw）でして、東北地方太平洋沖地震はMw9.1と推定されています。そして、1964年のアラスカ地震は東日本大震災をも上回るとされているのです。

NOAA（アメリカ海洋大気庁）によれば、津波はシャウプ湾で最大220フィート（≒67.1m）まで遡上したとのことで、アメリカ本土の西海岸やハワイ島でも被害が出たそうです。このクラスの地震となると、日本でも多少の被害が出たようで、大船渡では90cmを観測し、ところによっては現代でいう津波警報級の津波があったと伝わります。

2021年の地震では日本周辺で津波は観測されませんでしたが、巨大地震では時に日本にも津波が襲う事があります。断層の向きの関係で大津波となることは少なかったですが、決して油断してはならないと考えられましょう。