【はじめに】
この記事では、中央競馬における「レーティング(ワールド・ベスト・レースホース・ランキング)」の値を、私なりに(通常の倍の)6年間抽出しました。
その分析の一貫として、レーティングにみる「スーパーG2」とは一体どのレースなのか見ていきます。
2016年以降の6年間で、「G2競走」のうち最もレーティング平均が高かったレースは何だと思いますか?
(↓)2022年夏に寄稿した新たな2つの記事もぜひ合わせてお読みください!
☆「スーパーG2」を3つの基準で分析してみた
https://yequalrx.com/superg2-3kijun/
☆ここ6年の競馬レーティングにみる「スーパーG3」
https://yequalrx.com/rating-superg3/
「レーティング」の基本情報
競馬の国際レーティングでは、ポンド(1ポンド ≒ 0.4536kg)で馬の実力を表現しています。例えば、120ポンドといえば約54.5kg、130ポンドといえば約59kgに該当することとなります。そして日本馬での最高評価は1999年のエルコンドルパサーの134ポンド(約60.8kg)となっています。
加えて、馬ごとに評価される「レーティング」について、各レースの上位4頭の平均値を取ったものを「レース・レーティング」として別途集計しています。令和で最も高評価だった例を取ると、
2020/11/29 第40回 ジャパンカップ | ||
1着 128 アーモンドアイ 2着 124 コントレイル 3着 123 デアリングタクト 4着 123 カレンブーケドール | → | 上位4頭の平均 =124.50ポンド |
※牝馬の4ポンドはあらかじめ調整済 |
となり、あの伝説の2020年のジャパンカップのレースレーティングは「124.50ポンド」となります。
そして、この値はある種「レース」のレベルを図る国際指標の一つとなっており、引いては「格付け」判定ファクターにもなっているもので、『格上げ』や『格下げ』の根拠として話題になったりします。
これらのレーティングは国際競走の格付け認定のための重要なファクターとなる。各競走4着までの入線馬の平均レーティングを基に、GIでは115、GIIは110、GIIIは105、またはそれ以上の平均レーティングが必要となっている。
日本語版ウィキペディア > ワールド・ベスト・レースホース・ランキング より
かつて日本でグレード制が導入された頃は独自に格付けを決めていましたが、2007年から国際パート1国に昇格。2009年の「日本グレード格付け管理委員会」発足によって格付けされるようになってから、このレーティングという指標の重要性が増してきています。
最近では、「ニュージーランドT」への警告や「葵S」のグレード認定の是非などでも話題になったので競馬ファンでご存知の方も多いかとは思います。
今回の集計対象について
本題に入っていきましょう。ここまで説明してきた「レースレーティング」を、中央競馬の重賞レースで具体的に見ていきたいと思います。
一般的には、過去3年の平均値を取ったりするのですが、個人的には3年でも短い(年ごとのバラツキがかなり大きい印象)と思うので、とりあえずJRAのデータが現在の形で整備されているという意味で「その倍=直近6年分」を集計対象としました。今回の記事でいえば、2016年から2021年までの6年間が対象となります。
ただし、当然、年によってメンバーが揃わず極端に低いこともあるので、6年のうち最低年を除外した「5年間平均値」を取ることにしてみました。
オーバー115の「スーパーG2」群
左から2番目の「最低除」が、今回取り上げたい指標です。
(1)札幌記念 【5年平均:117.45】
冒頭の質問の答えは、多くの方が予想されていたかとは思いますが、『札幌記念』です。5年平均しても「117.45」と、G1の基準をも上回る安定感を見せています。
具体的には、2016年(モーリスが2着に敗れ、ネオリアリズムが1着)や2019年(ブラストワンピースが同じ4歳のフィエールマンやワグネリアンを下した)の「118.75」が際立っています。サクラアンプルールが勝った2017年を除き4年連続で「115」を上回っていることからハイレベルさが分かります。
(2)中山記念 【5年平均:116.85】
昨年(2021年)はやや低評価ですが、「119.50」だった2019年は、ウインブライトが連覇を達成しました。その相手が、ラッキーライラック、スワーヴリチャード、エポカドーロ、ディアドラでしたから、ちょっとしたG1でもおかしくないメンバーだったかと思います。
(3)神戸新聞杯【5年平均:116.40】
3歳限定競走で唯一115を超えているのが「神戸新聞杯」です。2016年は「114.00」ですが勝ったのはサトノダイヤモンドですし、その他の年はクラシックホースばかりです。
特に2019年は「サートゥルナーリア」、2020年は「コントレイル」が制していまして、ここ最近は、「菊花賞」と「天皇賞(秋)」などに路線が二分する直前に春の有力馬が激突するレースとして見応えがあります。
(4)毎日王冠 【5年平均:116.15】
近年は「天皇賞(秋)」だけに限りませんが、中距離のスピード自慢が揃って叩きに使ってくる印象の「毎日王冠」。超一流馬が「天皇賞(秋)」を初戦に使うことが多くなった関係で、やや……と感じてしまっていたのですが、レーティング的には一定のレベルを維持していることが分かります。
これらのレースは、いずれも国内外のG1の「トライアルレース」という印象が強まっていまして、いわゆる独立した『スーパーG2』という印象は弱いかも知れませんが、レーティング的には「G1昇格」の話題が出てもおかしくない状況といえるでしょう。
ちょうど同じ境遇だった「産経大阪杯(G2)」が2017年に「大阪杯(G1)」に昇格し、キタサンブラックがG1としての大阪杯の初代王者となったのと似ています。
(参考)112.50以上のG2レース
同じ指標で「112.50」以上まで広げたデータを参考までに掲載しておきます。
「日経賞」や「阪神大賞典」といった長距離レースから、「阪神C」や「読売マイラーズC」などの短・中距離路線、「府中牝馬S」や「阪神牝馬S」といった牝馬限定競走、「弥生賞」や「チューリップ賞」などの3歳限定競走も名を連ねています。
この値が、2022年以降どう推移していくのか楽しみにしていきたいと思います。
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