ここ6年の競馬レーティングにみる「スーパーG2」(前回:2022 → 23Ver.)

【はじめに】
この記事では、中央競馬における「レーティング(ワールド・ベスト・レースホース・ランキング)」について、“通常の倍”にあたる6年間を対象期間として平均値を求める分析を行ってみました。今回は『スーパーG2』と呼ばれるレースに関する結果です。

皆さん、2017年以降の6年間で、最も平均レーティングの高い「G2」レースは、『【 何 】記念』か分かりますか? 早速、今年も『スーパーG2』シーズンを前に振り返っていきましょう!

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「レースレーティング」に関する基本情報

レーティングに関するキホンについては、2022年当時の記事も参照て頂ければと思いますが、ウィキペディアの記載を借りれば、

競馬の競走格付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

この様に定められています。基本となるのが、『3歳以上の牡馬・牝馬混合競走の基準が110ポンド』です。そして、2歳戦は5ポンド、牝馬限定戦では4ポンドを減じた値が基準となるのです。ただし、日本競馬の実態としてはこの基準を下回るレース自体が少なく、私の集計では「G2の平均値」は112ポンドあたりになるという計算結果が出ています。(↓)

ここまでを教科書とした上で、レースレーティングにみた時に『スーパーG2』はどれぐらいを指すのかについて検討していきます(もちろんレースレーティングで全てを語れる訳ではないのですが、参考程度にはなるのかなと感じています)

集計方法の概略

JRAのホームページも、日本グレード格付け管理委員会も基本的には『直近3年間』を対象期間としています。ただ3年ではバラツキも大きいため、本記事では通常の倍の『6年分』を集計対象とします。具体的にいえば、2023年版の今回は『2017年から2022年』までの6年間を対象とするわけです。

また、昨年の記事で実質メインとしていた『(極端に低い年があるとそれに引っ張られてしまうため)最低年を除外』するという指標も算出はしていますが、今年は『6年間の単純平均』を軸に記事を書いていきたいと思います。

なお集計に際して、牝馬限定戦の4ポンド(いわゆるセックスアローワンス)に関しては予め4ポンドを加えた値、つまり全て牡馬・牝馬混合戦と同じ基準・目線で揃えてある点はご留意ください。仮に、牝馬限定戦で「115ポンド」と記事に出てきた場合、元の数字は「115-4=111ポンド」だったという意味になります。

オーバー115の「スーパーG2」群

早速、私(Rx)の作った一覧表から、2017年以降の平均値が115を超えたレースをピックアップしてみました。こちらです(↓)。

Rx(@yequalrx)作

1位:116.50『札幌記念』

冒頭のクイズの回答は、多くの方の予想どおり『札幌記念』でした。G1の平均にすら迫る116.50ポンドです。特に平成30年以降はスーパーG2の代表格として定着している感のある札幌記念。令和に入ってからの4年間の平均は117.38ポンドとなり、もはやG1の平均値とほぼ同レートです。

レースR勝ち馬
2016118.75ネオリアリズム
2017113.25サクラアンプルール
2018116.25サングレーザー
2019118.75ブラストワンピース
2020116.50ノームコア
2021117.00ソダシ
2022117.25ジャックドール

2016年はネオリアリズム、2019年はブラストワンピースが勝った年が118ポンド台であり、2021・2022年と話題となりましたが、どちらも117ポンド台です。レースレーティングだけでは決まらないものであることは理解していますが、ここ数年を見る限り最も『G1化』が求められている重賞となってきている印象です。

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2位:116.33『毎日王冠』

2022年は札幌記念と並びG2では最高の117.25ポンドを叩き出したのが、おなじみ『毎日王冠』です。もちろん、サイレンススズカは別格ですが、そうでなくとも好メンバーが揃う年の多い印象でしょう。

レースR勝ち馬
2017115.50リアルスティール
2018117.25アエロリット
2019118.00ダノンキングリー
2020114.75サリオス
2021115.25シュネルマイスター
2022117.25サリオス

近年は天皇賞(秋)が中2週であることを理由に、天皇賞直行組や札幌記念をステップとする一流馬が増え、毎日王冠を使う馬の中にはマイルCSや香港国際競走を見据える陣営も増えつつあるのかも知れません。平成とは一味違った『毎日王冠』の名勝負が期待されます。今年以降、ひょっとすると札幌記念と首位を逆転するかも知れませんね。

3位:115.83「神戸新聞杯」

3歳限定戦で屈指の高レートなのが『神戸新聞杯』です。菊花賞が116.13ポンドであることを考えると、トライアルでありながら『ほぼ同レート』というのが、令和の3歳秋路線を象徴しているようにも感じてしまいます。

2022年はここ最近で最も低い113ポンドというレースレーティングで、上位3頭もあまり活躍できていません。しかし、それ以前を見ると勝ち馬は錚々たる名前が並んでいます。

レースR勝ち馬1~3着
馬の次走
2016114.00サトノダイヤモンド菊-菊-菊
2017117.00レイデオロJC-菊-菊
2018116.75ワグネリアン休-菊-菊
2019117.25サートゥルナーリア天-菊-菊
2020116.00コントレイル菊-菊-菊
2021115.00ステラヴェローチェ菊-菊-菊
2022113.00ジャスティンパレス菊-菊-菊

注目したいのは、2・3着馬が必ずといって良いほど菊花賞を選択しており、令和に入ってから神戸新聞杯上位3頭のうち菊花賞に出走しなかったのは【サートゥルナーリア】1頭だけだという事実です。

『秋のG1全般の前哨戦』として秋緒戦に「神戸新聞杯」を選ぶ時代から、ひょっとすると『菊花賞の前哨戦』として神戸新聞杯を使う馬が居る一方、別路線に挑む馬は神戸新聞杯を使わないという時代が既に来ているのかも知れません。そうすると、牡馬三冠が懸かっていない春のクラシックホース陣営は、距離面などから積極的に菊花賞を志向しなくなっているため、令和に入って「神戸新聞杯」の立ち位置が徐々に落ちてくる可能性もあるかも知れません。要注目ですね。

4位:115.46「金鯱賞」

大阪杯とのレース間隔が狭い面はあるものの、2018年以降は非常にハイアベレージを叩き出しており、2019年に至っては120ポンドという大台に乗せているのは見過ごせません。

レースR優勝馬
2016112.25ヤマカツエース
2017110.00ヤマカツエース
2018116.25スワーヴリチャード
2019120.00ダノンプレミアム
2020113.25サートゥルナーリア
2021117.00ギベオン
2022116.25ジャックドール

2019年は2着にリスグラシュー、2021年はデアリングタクトをギベオンが下す大金星。そして2022年には①ジャックドール、②レイパパレ、③アカイイト、④ポタジェ、⑤ギベオンと入る豪華さで116.25ポンドとなっています。

ただこれも2017年までは『スーパーG2』感が全くなかったことからも明らかな様に、金鯱賞がこのままずっとこの位置をキープできるかは未知数ですし、周囲に大きく左右される面も否定できないことも今後の注目点となりそうです。

5位:115.33「京都記念」

2019年以降は113ポンド台が続いている「京都記念」ですが、レースとしては充実している印象です。

2016年2月14日京都114.25サトノクラウン牡4
2017年2月12日京都116.75サトノクラウン牡5
2018年2月11日京都118.25クリンチャー牡4
2019年2月10日京都113.00ダンビュライト牡5
2020年2月16日京都117.00クロノジェネシス牝4
2021年2月14日阪神113.75ラヴズオンリーユー牝5
2022年2月13日阪神113.25アフリカンゴールドセ7

2019年はマカヒキやステイフーリッシュをダンビュライトが破り、2020年はクロノジェネシスがカレンブーケドールに2馬身半差、2021年はラヴズオンリーユーが紅一点で優勝しています。そして2022年にはアフリカンゴールドがブービー人気で制するなど2月の別定G2らしい結果が並んでいます。

ただ、メンバーの充実ぶりとは別に、レースレーティングはやや低調な年が続いていることから明らかな様に、2000m超のG2はスキップしてG1に直行する馬が増えてきていることに鑑みれば、伝統のG2も安閑とはしていられないようにも感じました。

6位:115.13「中山記念」

1930年代から『スーパーG2』として存在感を発揮し続けている印象の「中山記念」ですが、こちらもレーティングとしては逓減傾向にあります。(↓)

2016年2月28日117.00ドゥラメンテ牡4
2017年2月26日116.00ネオリアリズム牡6
2018年2月25日114.50ウインブライト牡4
2019年2月24日119.50ウインブライト牡5
2020年3月1日117.25ダノンキングリー牡4
2021年2月28日111.25ヒシイグアス牡5
2022年2月27日112.25パンサラッサ牡5

2020年までは間違いなく『スーパーG2』らしいレートだったのですが、2021・22年とメンバーが思ったほど揃わず、2022年などは【パンサラッサ】が圧巻の走りを見せた反面、2馬身半差を2着につけてしまってレースレベル自体が低く見積もられる不運も起きています。

ひょっとすると、コースは違えど全く距離が同じ「サウジカップ」に挑む陣営が今後増えてくるのかも知れませんし、やはり本番(大阪杯)よりも距離の短い所から年を明けるのに慎重な陣営も出てくるのかも知れません。2023年以降どの段階で115ポンドを再度上回ってくるのかが注目です。

7位:115.08「産経賞オールカマー」

中山2200mを積極的に選ぶタイプの馬たちが楽しみなレースを見せてくれる印象となってきた「オールカマー」。2021年は、ウイン-ウイン(マイティー)のワンツーから、3着グローリーヴェイズ、4着レイパパレ、5着ステイフーリッシュという豪華さから119.00ポンドという高レートとなりました。

レースR勝ち馬
2016113.00ゴールドアクター
2017114.00ルージュバック
2018116.25レイデオロ
2019113.25スティッフェリオ
2020115.25センテリュオ
2021119.00ウインマリリン
2022112.75ジェラルディーナ

2022年にもジェラルディーナが重賞初制覇を果たし、次走には同じ2200mのエリザベス女王杯を制しています。俗に『非根幹距離』などとも言われますが、中山2200mを使って「天皇賞(秋)」以外のG1などを使う馬が増えてきている昨今。年によって引続き115ポンドを超えるようなことも起きるかも知れませんが、やはりメンバーによるでしょうね。

(参考)115.00未満 の G2レース

同じ指標で8位以下、すなわち平均115ポンド未満のG2レースをざっくり見ていきます。

牝馬限定戦としては「府中牝馬S」などが上位であり、マイルでは「富士S」が2020~22年で『G1』の国際基準を超えています。また、阪神Cも元来『スーパーG2』を意図して創設されたような節があるのでハイアベレージとなっています。なお表には載せていませんが、『東京スポーツ杯2歳S』や『デイリー杯2歳S』も2歳戦としては、上のカテゴリーに入ってくる安定感を見せています。

一方で下に示したのが国際的な基準110ポンドを平均で下回ってしまっているレースです。大別すれば『ハンデ戦』、『3歳限定重賞』、ダート・長距離といった個性が平均レートの枷となっているタイプの重賞たちとなります。(↓)

厳しい言い方をすれば、これらのレースはニュージーランドTで記憶に新しいように『遅かれ早かれG2降格の危険性』を指摘されたり、条件を変えざるを得なかったりする運命にあると思います。国際的には107.5ポンドあればG2を維持できますが、国内のG2の平均が112ポンド台であることを思うと、同列に扱って予想するのが危険なほどです。

現実的に『G2』の格付けを利用して、条件を変えたり、開催時期を動かしたりして再起を図るのが最も穏便で労力の少ない部分かと思います。また、相矛盾した言い方になりますが、『賞金の多いG3に格下げ』するか、『賞金の少ないG2維持』するかといった微調整を加えるなど、何かしらの手を打たないと『JRA(日本競馬)の重賞』の“格付け”の信頼性に関わってくる事を最後に述べておきたく思います。

もちろん、これら値が、今年以降どう推移していくのか引続き楽しみにしていきたいと思います。貴方のご意見をぜひお聞かせ願えればと思っています。では良き競馬ライフを!

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