「流氷」って、季語としては冬なの? それとも春なの?
なかなかオホーツク海側などでないと日本では見られない「流氷」ですが、全国で販売されている俳句歳時記には季語として収録されています。答えは「春」です。立春を迎える頃には全国ニュースでも「流氷初日」が報じられたりしますが、今日は様々な視点で「流氷」を見ていきたいと思います。
皆さんの知識の助けになれば幸いです。早速みていきましょう!
ウィキペディアで学ぶ「流氷」
流氷(りゅうひょう、英: drift-ice、driftice)とは、海に浮かび漂流している氷のことである。海で見られる氷(海氷)は、その運動形態から、海を漂っている「流氷」と、岸にへばりついている「定着氷」とに分けられ、定着氷は流氷には含まれない。組成に注目すると、いずれも海氷が凍ってできた氷である。ただし、一般用語の「流氷」は、河川から流下した氷も、氷山や氷河が崩れた氷も、海を漂う全ての氷の意として広義に用いられる。
また、海面上の氷に限らず、より広く河川や淡水湖の氷が水面に漂っているものも含めて流氷と呼ぶこともある。北極海や南氷洋(南極海)などのほか、日本近海ではオホーツク海で見られる。
北風によって海岸に打ち上げられた流氷が重なり合って、小さな丘のような形を作ることがある。これを氷丘(ひょうきゅう)と言い、氷丘が水辺にあたかも山脈のごとく、高さ数メートル、長さは長いときには1キロメートル以上にもわたって造り出されたものを流氷山脈という。
流氷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本では北海道の北東に位置するオホーツク海の流氷が有名である。北海道立オホーツク流氷科学センター(紋別市)によると、オホーツク海北岸付近で寒風により海水が凍っては流されを繰り返し、東樺太海流に乗って北海道へ南下してくる。オホーツク海は北半球における流氷の南限である。
北海道沿岸から流氷が確認できたそのシーズンの最初の日を「流氷初日」という。日本での流氷初日は、平年では北海道のオホーツク海沿岸で1月中旬から下旬頃であり、その後1月下旬から2月上旬頃にかけて接岸する。接岸した初日を「流氷接岸初日」という。その前に、海上自衛隊八戸航空基地(青森県)に所属する哨戒機が空中から流氷を発見・観測し、報道されるのが1960年から恒例となっている。
風向きによって流氷はさらに南下を続け、太平洋側に位置する釧路市に接岸することもある。
春が近づき、沿岸から見渡せる海域に占める流氷の割合が5割以下となり、かつ船舶の航行が可能になると「海明け」が宣言される。また、沿岸から最後に流氷が見られた日を「流氷終日」という。
道東の流氷は観光資源であると同時に、接岸している冬季に巨大地震などによる津波が押し寄せると建物などにぶつかって被害を増大させるおそれがあり、十勝沖地震(1952年)で実例がある。
観光
日本人にとってオホーツク海といえば北の最果ての地という印象が強い。
しかし、例えば網走市の位置する北緯44度にはモナコやコートダジュールなどの地中海沿岸の温暖な保養地が位置するように、オホーツク海沿岸などの北海道周辺の海域は、世界で最も低緯度の流氷が見られる場所である。流氷は、日本のオホーツク海沿岸の観光資源ともなっている。
俳句歳時記やプレバト!! にみる「流氷」の例句10句
俳句歳時記をみると「流氷」は(仲)春の地理の季語となっていて、多くの例句が掲載されています。まずは、地名が読み込まれている作品を見ていきましょう。
宗谷や稚内といったものが中心ですが、北海道各地で「流氷」は詠まれていることでしょう。皆さんも探してみて下さい。そして、地域を限定していない一般的な作品も多くご紹介していきたく思います。
「流氷」を一物仕立て(季語のみで俳句を成立させているもの)などで特に顕著なのですが、どうやら『音』にフォーカスした作品が多いように感じました。動画サイトなどで調べてみると分かりますが、流氷の『音』というのを体感できると、「流氷」俳句に奥行きがましてくるように感じますね。
- (19/01/24)『流氷の声逞しき漁港なり』/加藤登紀子’
「プレバト!!」で平成の終わりに歌手・加藤登紀子さんが披露した作品は、細かい文法のところで68点と才能アリに届きませんでしたが、その着眼点を高く評価されていました。
加藤登紀子さんがカバーして大ヒットした『知床旅情』を思い出すまでもなく、北海道の地理の代表的な現象である『流氷』を、現地に行かなくても詠める映像・画像などの情報が増えてきている令和において、あなたも1句試しに作ってみませんか?
お天気歳時記「流氷」の観測について
ではここからは、科学的……と言うのか分かりませんが、いわゆる気象観測の側面から「流氷」という物理現象をざっくり抑えておきたいと思います。
気象庁の観測項目に北海道では長らく「流氷」に関するものがありました。過去形で書いたのは、有人観測が縮小されていく過程で、以下のような状況となってしまったからです。
2020年までの平年値で、30年間をしっかり記録しているのは「網走」の1地点のみとなってしまいました。更に稚内・網走・釧路では「流氷終日」の観測を終えていることに鑑みれば、気象庁による観測は風前の灯火となっている状況です。
断片的な実測値に基づく「平年値」をみる限り、「流氷」という季語を季節で敢えて分けるならば、
- 「流氷初日」 :晩冬~初春
- 「流氷接岸初日」:初春
- 「海明け」 :仲春
- 「流氷終日」 :仲春~晩春
こういった分類になりそうです。ややもすると「流氷」と一括りにしてしまいそうですが、現地の方々にとってはこういった季節感がはっきりとあるはずです。より細かくリアルに考えるならば、やはりこういった蓄積をないがしろにしてはいけないなと感じました。
こうしてみた時に、私が以前書いた記事の『1億総観測点』計画も参考にして、オホーツク海側各地のお天気カメラなどと連携した「観測」を行うことが出来ていくのではないかと思います。つまり、各地のお天気カメラで『流氷』初日や接岸初日、海明け、終日を確認できれば、測候所の有人観測でなくても『平年値』などを出していけるのではないかと考えた訳です。(↓記事参考)
そして、今や「気象衛星ひまわり」による可視画像を遡ることも可能となりました。例えば、2023年に網走で流氷初日を観測した2月2日の正午の様子を試しにみてみましょう。
北海道は真冬の雲と雪に覆われていますが、オホーツク海上にあるウネウネとした白い部分が「流氷」です。動かしてみると雲とは違って停滞している様子が分かるのですが、いずれにしてもおおよそでの流氷の位置や流れが分かりますから、これらも複合的に使えるとデータの幅が広がりそうです。
「流氷」の各データも、実測できなければどんどん古びていってしまいます。地球規模でみても「氷」に関する状況が刻々と変化していっている中で、季語としての旬の時期も変わっていくかも知れませんし、流氷の期間も短くなっていることを捉えていく必要がありそうです。
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