【春・天文】季語「黄砂/霾(つちふる)」

【はじめに】
この記事では、春の天文の季語である『黄砂/霾(つちふる)』とその傍題について纏めていきます。

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ウィキペディアにみる「黄砂」

黄砂(こうさ、おうさ、黄沙とも)とは、特に中国を中心とした東アジア内陸部の砂漠または乾燥地域砂塵強風を伴う砂塵嵐(砂嵐)などによって上空に巻き上げられ、を中心に東アジアなどの広範囲に飛散し、地上に降り注ぐ気象現象。あるいは、この現象で飛散した自体のことである。

黄砂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』( 以下省略 )
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気象現象としての黄砂は、砂塵の元になる土壌の状態、砂塵を運ぶ気流など、大地大気の条件が整うと発生すると考えられている。発生の頻度には季節性があり、春はそういった条件が整いやすいことから頻繁に発生し、比較的遠くまで運ばれる傾向にある。ただ、春に発生する頻度が極端に多いだけであり、それ以外の季節でも発生している。

一方、黄砂が自然環境の中で重要な役割を果たしていることも指摘されている。飛来する黄砂は、洪水による氾濫堆積物や火砕物と並ぶ堆積物の一種であり、土地を肥やす効果がある。また、黄砂には生物の生育に必要なミネラル分も含まれており、陸域だけではなく域でもプランクトンの生育などに寄与している。

( 同上 )
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また、芸術の分野では、黄砂のもたらす独特の景観などが文化表現にも取り入れられており、黄砂のもたらす情景を詠った古代中国の漢詩が伝えられるなどその歴史は古い。黄砂が生活に深刻な被害を与えている地域もある一方で、影響が軽微であり珍しい自然現象・季節の風物詩などとされている地域もある。

( 同上 )

季節変化

時期としては、にもっとも多く発生する。降水量が少なく地面が乾燥するは、シベリア高気圧の影響で風があまり強くない穏やかな天候が続くうえ、ほとんどの乾燥地帯の表土は積雪に覆われてしまうため、黄砂が発生しにくい。
春になると、表土を覆った積雪が融け、高気圧の勢力が弱まる代わりに偏西風が強まり、低気圧が発達しながら通過するなどして風が強い日が増えるため、黄砂の発生も増えると考えられている。春の中盤に入り暖かくなってくると植物が増え、になると雨も多くなるため、土壌が地面に固定されるようになって次第に黄砂の量は減り、に最少となる。

飛来地側の日本では、春にあたる2月から5月の4か月間に年間の約90%が集中し、夏にあたる7月 – 9月はまったくと言っていいほど観測されない。ただし、これは地上での観測をもとにした統計であり、上空を通過する薄い黄砂は夏にも観測されている。

( 同上 )

以上のように、自然現象としての「黄砂」は皆さんもご存知のとおりかと思います。続いて、本題とも言える「文化面」からの「黄砂」を捉えていきましょう。

ウィキペディアにみる「文化における黄砂の表現」

黄砂は、古くよりなどの表現に取り入れられている。

春によく見られる春霞やそれが夜の月を霞ませる朧月夜には、黄砂が(すべてではないが)影響している。「春霞」や、黄砂の古名である「霾」(つちふる)のほかに、「霾曇」(よなぐもり)、「霾晦」(よなぐもり)、「霾風」(ばいふう)、「霾天」(ばいてん)、「黄塵万丈」、「蒙古風」、「つちかぜ」、「つちぐもり」、「よなぼこり」、「胡沙」(こさ)など、黄砂に関する言葉は多数ある。現代では、「黄砂」自体も歌や句に用いられる。いずれも季語である。

( 同上 )
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ちなみに、『角川俳句大歳時記』の解説によると、季語として注目され始めたのは大正時代の終わり頃なのだそうで、明治時代以前には作句例が少ないことも抑えておきたいところでしょう。

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俳句歳時記にみる「霾」の例句16句

では、ウィキペディアにも名前が上がっていた昭和以降の俳人の例句をみていきたいと思います。

  1. 『真円き夕日霾なかに落つ』/中村汀女
  2. 『速達の束ねて来たり黄沙降る』/廣瀬直人
  3. 『つちふるや強制疎開の日の父よ』/大牧広
  4. 『霾や古墳に描きし舟と馬』/岡部六弥太
  5. 『よなぼこり蝕ばまれゆく日が宙に』/山内遊糸
  6. 『六甲も街もにびいろ黄砂来る』/小川濤美子
  7. 『つちふるや洋書に鳥の飾り文字』/森賀まり
  8. 『エレベーターつちふる街を垂直に』/玉城一香
  9. 『太陽を遠きものとし霾ぐもり』/浅利恵子
  10. 『霾や度を甘くして眼鏡買ふ』/井垣清明
  11. 『黄沙ふる地球の微熱続きをり』/山口隆右

季語として使われる時には、黄砂よりも「霾(つちふる)」の方が主季語とされていることもあって作句例が多いように思います。音数的には4音で使いやすいのでしょうね。

個人的には、古代史が好きなので4句目の着眼点は面白かったですし、1・9句目のような「太陽」の霞み具合を描くのも「黄砂」ならではの気付きかと思います。そして、8句目のように「霾」でなくても変わらない街の様子に特別感を演出するのも見事だというふうに感じますね。

以上示したのは主に国内の情景かと思うのですが、「霾」の傍題に異国情緒のあるもの(例えば、蒙古風や黄塵万丈、胡沙来るなど)があるように、大陸を思わせる作品も魅力的なので見ていきましょう。

  1. 『長城の表裏山河ぞ胡沙に立つ』/加藤楸邨
  2. 『黄沙いまかの楼蘭を発つらむか』/藤田湘子
  3. 『殷亡ぶ日の如く天霾れり』/有馬朗人
  4. 『黄砂来る黄旗滅びし黄土より』/的野雄
  5. 『霾るや旅信に唐の切手貼る』/河野頼人

やはり異国の地に縁・見識の深い方の作が光ります。なかなか妄想で描こうとしても17音の俳句の器で冴え、凡庸な発想になってしまいがちです。一方で、海外旅行で中国など大陸を訪れたことのある方はきっと(本場の?)「黄砂」を目の当たりにして感じる部分があったと思います。

これは「白夜」という季語を実際に北欧に行って読むとリアリティが全く違うのと似ているでしょう。あなたに経験があればよりリアリティとオリジナリティのある「霾/黄砂」の俳句が生み出せるのではないかと思います。ぜひトライしてみてください!

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